メールの流れと SMTP に関するトラブルシューティング

 

Microsoft® Exchange Server 組織で SMTP (Simple Mail Transfer Protocol) を正しく構成し、セキュリティ保護する手段を講じた後でも、メールの流れに関する問題が発生する場合があります。ここでは、可能性のある一般的な問題と、それらの問題を解決する方法について説明します。

特に、ここでは次の内容を説明します。

  • telnet の使用方法
  • SMTP および X.400 キューの使用方法
  • メッセージ追跡センターの使用
  • イベント ビューアの使用
  • SMTP の診断ログ出力の構成方法

このトピックで説明するトラブルシューティングの推奨方法を検討する前に、まずメールを送受信できるように Exchange Server が正しく構成されていることを確認してください。次の一覧は、受信メールおよび送信メールの流れを正しく処理するための要件を簡単に示しています。

受信インターネット メールの流れを正しく処理するための要件は、次のとおりです。

  • 受信者ポリシーが正しく構成されている必要があります。
  • インターネット メールを受け付ける SMTP 仮想サーバーがポート 25 で正しく構成され、匿名接続を許可している。
  • インターネット DNS サーバーにドメインの MX (メール交換) リソース レコードが存在し、MX レコードがメール サーバーの外部またはインターネット ドメインを指している。
  • インターネット メール サーバーが、インターネット上のリモート サーバーにアクセスできる。

送信インターネット メールの流れを正しく処理するための要件は、次のとおりです。

  • インターネット メールを送信する SMTP 仮想サーバーが、ポート 25 を使用するように構成されている。
  • SMTP コネクタを使用している場合は、少なくとも 1 つのコネクタでアドレス スペースに * (すべての外部ドメイン) を指定している。
  • Exchange サーバーが外部 DNS 名を解決できる。外部 DNS 名は、次の方法で解決できます。
    • 外部 DNS サーバーにメールを転送する内部 DNS サーバーを使用する。
    • SMTP 仮想サーバーを構成して、特定の外部 DNS サーバーを使用する。
    • DNS の解決を行うスマート ホストにメールをルーティングする。

電子メール メッセージを送受信するために Exchange Server を構成する方法については、「DNS の設計と構成の確認」を参照してください。

Telnet を使用して SMTP をテストする方法の詳細については、次のトピックを参照してください。

SMTP および X.400 キューの使用

SMTP は SMTP キューを使用して、メールを内部および外部に配信します。Exchange Server Version 5.5 サーバー、MAPI クライアント (Microsoft Office Outlook® など)、およびその他のメール コネクタ (Microsoft Exchange Connector for Lotus Notes、Microsoft Exchange Connector for Novell Groupwise など) は、X.400 キューを使用して Exchange Server との間でメールを送受信します。ここでは、SMTP および X.400 キューの両方を使用して、メッセージの流れに関するトラブルシューティングを行う方法について説明します。

SMTP キューについて

メッセージを分類して配信するときに、アドバンスド キュー エンジンはすべてのメールを SMTP 仮想サーバーの SMTP キューを通して送信します。処理のどの時点でも、メッセージの配信に問題があると、メッセージは問題が発生したキュー内にとどまります。

SMTP キューを使用して、メールの流れに関する問題の、考えられる原因を特定します。キューの状態が "再試行" の場合は、キューのプロパティを確認して原因を特定します。たとえば、キューのプロパティで "SMTP エラーが発生しました" などのメッセージが表示される場合は、サーバーのイベント ログを調査し、SMTP エラーを見つける必要があります。ログにイベントが記録されていない場合は、SMTP プロトコルのログ出力レベルを上げます。SMTP プロトコルのログ出力レベルを上げる方法の詳細については、「イベント ビューアでアプリケーション ログを表示する方法」と「MSExchangeTransport のログ出力の設定を変更する方法」を参照してください。

次の表は、SMTP キュー、キューの説明、および各キューにメッセージが蓄積される場合のトラブルシューティング情報を一覧にしたものです。

SMTP キューの説明と関連するトラブルシューティング情報

SMTP キュー 説明 トラブルシューティング

[ローカル ドメイン名 (ローカル配信)]

Exchange メールボックスまたはパブリック フォルダ ストアへのローカル配信のために、Exchange サーバーのキューに置かれたメッセージが含まれます。

Exchange サーバーがローカル配信のメッセージを受け付けていない場合、メッセージがこのキューに蓄積される可能性があります。低速または散発的なメッセージ配信は、メッセージがループしているか、パフォーマンス上の問題が発生していることを示す場合があります。

このキューは、Exchange ストアの影響を受けます。「MSExchangeTransport のログ出力の設定を変更する方法」で説明されているように、Exchange ストアに関する診断ログ出力のレベルを上げます。

ディレクトリ参照待ちのメッセージ

Microsoft Active Directory® ディレクトリ サービスで未解決の受信者宛てのメッセージが含まれます。ここには、配布リストの展開中もメッセージが保持されます。

通常は、アドバンスド キュー エンジンがメッセージを分類できないために、このキューに蓄積されます。アドバンスド キュー エンジンがグローバル カタログ サーバーにアクセスして受信者情報にアクセスすることができないか、グローバル カタログ サーバーが到達不能であるかパフォーマンスが低下している可能性があります。また、次の原因でメッセージが蓄積される場合もあります。

  • Active Directory を利用できない (カテゴライザは Active Directory を使用してメッセージを分類するため)。
  • Active Directory に対する負荷が高すぎる (多くのメッセージが、分類前のキューに入れられている場合)。
  • 変換で障害が発生している。カテゴライザはコンテンツの変換も処理します。
  • メッセージ カテゴライザがメールボックス ストアを見つけられない。
  • SMTP が再インストールまたは削除され、IIS メタベース キー /smtpsvc/DsUseCat および /smtpsvc/vsi#/DsUseCat が無効になっている。SMTP が再インストールまたは削除されているかどうかを確認してください。

このキューはカテゴライザの影響を受けます。「MSExchangeTransport のログ出力の設定を変更する方法」で説明されているように、カテゴライザに関する診断ログ出力のレベルを上げます。

ルーティング待ちのメッセージ

次の宛先サーバーが決定されるまでメッセージを保持してから、対応するリンクのキューにメッセージを移動します。

Exchange Server のルーティングの問題が存在する場合は、このキューにメッセージが蓄積されます。メッセージのルーティングはバックアップされます。「MSExchangeTransport のログ出力の設定を変更する方法」で説明されているように、ルーティングに関する診断ログ出力のレベルを上げます。

リモート配信

[[コネクタ名|

サーバー名| リモート ドメイン]

リモート配信宛てのメッセージを保持します。キューの名前は、リモート配信の宛先と同じで、コネクタ、サーバー、またはドメインの名前です。

このキューにメッセージが蓄積される場合は、まずキューの状態を確認する必要があります。キューの状態が "再試行" である場合は、キューのプロパティを確認し、メッセージがこの状態にある原因を判断します。DNS の問題については、NSlookup と Telnet を使用してトラブルシューティングを行います。ホストに到達できない場合は、Telnet を使用して、リモート サーバーが応答していることを確認します。

配信先に到達できないメッセージ

これらのメッセージの最終的な配信先サーバーに到達できません。たとえば、Exchange が最終的な配信先へのネットワーク パスを特定できない場合がこれに該当します。

配信用のルートが存在しない場合は、このキューにメッセージが蓄積される可能性があります。さらに、コネクタまたはリモート配信キューが、使用できないか一定の期間 "再試行" の状態にあり、コネクタまたはリモートの送信先への代替ルートが存在しない場合は、新しいメッセージは常にこのキューに置かれます。これにより、管理者は問題を修正するか、代替ルートを定義できます。接続を回復し、ネットワーク モニタ (Netmon) トレースを取得できるようにして、新しいメッセージがリモートの配信先キューに配信されるようにするには、SMTP 仮想サーバーを再起動します。

発信前

SMTP サービスによって受領され許可されたメッセージを保持します。これらのメッセージの処理は開始されていません。

メッセージが絶えず蓄積される場合は、パフォーマンス上の問題を示している可能性があります。パフォーマンスが複数回にわたって上限に達すると、このキューにメッセージが断続的に現れる場合があります。

発信を保留中の DSN メッセージ

Exchange が配信しようとしている配信状態通知が含まれます。配信状態通知は、配信不能レポートとも呼ばれます。

   このキューに対して以下の操作を行うことはできません。

  • [削除 (NDR を送信しない)]
  • [削除 (NDR を送信)]

Microsoft Exchange Information Store サービスが使用できないか実行されていない場合、またはメッセージ変換を実行するコンポーネントである IMAIL Exchange ストア コンポーネントに問題がある場合、メッセージがこのキューに蓄積される可能性があります。

イベント ログに Microsoft Exchange Information Store サービスと関連したエラーがあるかどうかを確認してください。

失敗したメッセージの再試行キュー

他の処理が行われる前に、キューの発信に失敗したメッセージが含まれます。既定では、このキューのメッセージは 60 分後に再処理されます。

メッセージの発信に失敗した理由として、以下が考えられます。

  • メッセージが破損している。
  • サードパーティ製のプログラムやイベント シンクが、メッセージ キューや正確さに影響している。
  • システム リソースの不足により、システムの応答が遅延しているか、その他のパフォーマンスに関する問題が発生している。IIS の再起動により、リソースの問題が一時的に改善する場合もありますが、根本的な原因を解決する必要があります。

遅延配信のキューに置かれているメッセージ

以前のバージョンの Outlook によって送信されたメッセージなど、後で配信するためにキューに置かれるメッセージが含まれます (このオプションは Outlook クライアント コンピュータで設定できます)。

以前のバージョンの Outlook は、メッセージ配信のためにメッセージ転送エージェント (MTA) を使用します。現在、メッセージ配信は MTA ではなく SMTP によって処理されます。このため、以前のバージョンの Outlook によって送信されたメッセージに対しては、別の方法で遅延配信が処理されます。

これらのメッセージは、スケジュールされた配信の時間までこのキューに残ります。

メッセージが蓄積される理由として、以下が考えられます。

  • メールボックスの移動中にメッセージがユーザーのメールボックスに送信されると、メッセージがこのキューに置かれる可能性があります。
  • ユーザーがまだメールボックスを持っておらず、そのユーザーに対してマスタ アカウントのセキュリティ ID (SID) が存在しない場合。詳細については、マイクロソフト サポート技術情報の文書番号 316047「[XADM] ADC で作成された無効なアカウントを有効にする方法」を参照してください。
  • メッセージが壊れているか、受信者が有効ではない可能性があります。
  • メッセージが壊れているかどうかを確認するには、プロパティをチェックします。メッセージにアクセスできない場合は、メッセージが壊れている可能性があります。受信者が有効であることも確認できます。

メールの流れと SMTP のトラブルシューティングの詳細については、以下のトピックを参照してください。