データベース サイズの制限の構成および管理

 

Microsoft Exchange Server 2003 Service Pack 2 (SP2) より前のバージョンでは、Exchange Server 2003 のデータベース サイズの制限を構成する方法はありませんでした。Exchange Server 2003 SP2 では、以下の新機能が導入されています。

  • Standard Edition では、既定で構成されるデータベース サイズの制限値は以前より 2 GB 増えて 18 GB になり、最大値は 75 GB になりました。
  • Enterprise Edition では、既定で構成されるデータベース サイズの制限値はありません。また、最大値を設定するソフトウェアも存在しません。
  • Exchange Server 2003 SP2 のどちらのバージョンにも、レジストリ キーを使用することによって制限、警告のしきい値、および警告の間隔を構成する機能があります。
  • データベースのサイズ チェックは、論理データベース サイズを使用して行われます。データベース内の空のスペースまたは空白は、構成されるデータベース サイズの制限の対象外になります。したがって、構成されたデータベースの制限またはライセンス データベースの制限を超えた場合に、オフラインで最適化して回復処理を行う必要はありません。
  • 定期的に行われていた制限のチェックは、JET の代わりにストア プロセスによって制御されます。既定の間隔は 24 時間で、この間隔はレジストリ キーを使用して構成することができます。

レジストリの設定

  • データベース サイズの制限のレジストリ キーは、(サービスの開始時ではなく) データベースのマウント時と、各制限チェック タスクの実行時に読み取られます。

サイズ制限を変更するデータベースごとに、レジストリ パラメータを設定する必要があります。レジストリ エントリは、ローカル サーバー レジストリ内の各データベース エントリの下に配置されています。したがって、/disasterecovery セットアップ スイッチを使用してサーバーを再構築する必要がある場合は、レジストリ キーを手動で再設定する必要があります。

note注 :
レジストリの編集を誤ると、オペレーティング システムの再インストールを余儀なくされるような重大な問題が発生する可能性があります。レジストリの編集を誤ったために発生した問題は、解決できない場合があります。レジストリを編集する前に、大切なデータはすべてバックアップしてください。

ここで説明されているすべてのレジストリ設定は、レジストリの次の場所で作成されます。

HKEY_LOCAL_MACHINE\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\MSExchangeIS\<SERVER NAME>\Private-013e2e46-2cd7-4a8e-bfec-0e4652b94b00

このキー (Private-013e2e46-2cd7-4a8e-bfec-0e4652b94b00) の GUID は例として示されているものです。これは、データベースの Active Directory オブジェクト上の objectGUID 属性の値と一致している必要があります。

note注 :
既定では、このドキュメントに記載されているレジストリ エントリは存在しません。このエントリを作成すると、コードで設定されている既定値が上書きされます。
note注 :
このドキュメントに記載されているレジストリの値は、すべて 16 進値でなく 10 進値です。
  • SP2 では、次の新しいレジストリ設定を使用できます。
  • Database Size Limit in GB
  • Database Size Buffer Warning in Percentage
  • Database Size Check Start Time in Hours from Midnight

Database Size Limit in GB

[Database Size Limit in GB] 設定は、構成可能なデータベースの最大値です。この値は、ライセンス データベースの最大値を超えることはできません。Standard Edition では、データベース サイズの制限を 1 ~ 75 GB の範囲で設定できます。既定では、制限値は 18 GB です。Enterprise Edition では、データベース サイズの制限を 1 ~ 8,000 GB の範囲で設定できます。既定では、制限はありません。

次のレジストリ値は、構成可能なデータベース サイズの制限を制御します。

データ型 名前 値 (GB) 既定値 (GB)

REG_DWORD

Database Size Limit in GB

Standard: 1 ~ 75 1-75

Enterprise: 1 ~ 8000 1-8000

Standard: 18 18

Enterprise: 8,000 (制限なし)

Database Size Buffer in Percentage

[Database Size Buffering in Percentage] 設定は、構成可能なエラーしきい値です。このしきい値は、データベースの容量が制限値に達するか制限値に近づくとイベント ログ エントリを通して警告し、イベントがログ出力された後 24 時間以内にシャットダウンを実行します。既定では、Exchange Server 2003 SP2 は、構成されたデータベース サイズの制限値の 10% にデータベースの容量が達するとイベントをログ出力します。このしきい値は構成可能です。バッファの最小サイズは、構成されたサイズの制限値の 1% です。

次のレジストリ値は、データベース サイズ バッファを制御します。

データ型 名前 値 (%) 既定値 (%)

REG_DWORD

Database Size Buffer in Percentage

1 - 100

10

Database Size Check Start Time in Hours from Midnight

[Database Size Check Start Time in Hours from Midnight] 設定を使用すると、データベースの容量が、現在構成されているデータベース サイズの制限を超えていないかどうか確認する時間を構成できます。既定では、データベース サイズのチェックは毎日午前 5 時に行われます。この時間は変更できます。変更すると、次回のタスクが新しく設定した時間にスケジュールされます。[Database Size Check Interval] で設定されているチェックは、新しい開始時間までスキップされます。

最初に行われるデータベース サイズのチェックでは、サイズの制限が超えている場合でもデータベースはオフラインになりません。データベースがオフラインにならないため、既定の制限値を超えてから少なくとも 24 時間はオンラインの状態を維持できます。

データ型 名前 既定値 説明

REG_DWORD

Database Size Check Start Time in Hours from Midnight

1 - 24

5

データベースがマウントされた後に最初に行うデータベース サイズのチェックの時間を決定します。

構成されたデータベース サイズの制限またはライセンス データベース サイズの制限に達した場合の動作

データベースがマウントされると、ストア プロセスは物理的なデータベース サイズを [Configured Database Size Limit in GB] の値と比較します。物理サイズが、構成された [Database Size Warning Buffer in Percentage] の値の範囲内にあるか、範囲を超えている場合、ストアによりデータベース サイズの論理計算が行われます。物理サイズがこの警告バッファの値より小さい場合、論理サイズが物理サイズを超えることはないため、空き領域を計算する必要はありません。通常、物理サイズは警告のしきい値より小さいため、サイズ チェックは 1 ミリ秒以内に完了します。空き領域を計算する必要がある場合は、データベースを解析して論理サイズの計算を行う必要があるため、サイズ チェックに数分かかる場合があります。

[Database Size Warning Buffer in Percentage] の値に達するか、値を超えた場合、イベント ID 9688 のエラー イベントがアプリケーション イベント ログに出力されます。

Exchange Server 2003 SP2 以降では、構成可能な (または既定で構成された) データベース サイズの制限に達した場合、サーバーは次のタスクを実行します。

  • データベースがマウントされた後に最初に行われたチェックでデータベース サイズが制限を超えていることが検出された場合、データベースはオフラインになりませんが、アプリケーション イベント ログにエラー イベント (ID 9689) がログ出力されます。
  • これが 2 番目に行われたチェックである場合は、エラー イベントがアプリケーション イベント ログに出力され、データベースがオフラインになります。

管理者がデータベースを再マウントした後に修正作業を行うための時間が、24 時間 (または、次のデータベース サイズのチェックが行われるか、既定の設定の場合は午前 5 時まで) 確保されます。

ライセンス データベースのサイズ制限

Exchange Server 2003 Standard Edition は、単一プライベート インフォメーション ストア データベースと単一パブリック フォルダ データベースを持つ単一ストレージ グループに制限されています。SP2 より前のバージョンでは、データベースはそれぞれ物理サイズの合計が 16 GB に制限されていました。SP2 では、Exchange Server 2003 Standard Edition のライセンス データベースのサイズ制限が 16 GB から 75 GB に増加されました。既定で構成されるデータベースのサイズ制限は 18 GB です。Exchange Server 2003 Enterprise Edition ストレージ グループおよび Exchange ストア オプションは、SP2 を適用しても機能上の変更はありません。ただし、構成可能な Exchange ストアのサイズ制限が Enterprise Edition に追加されます。

Exchange Server 2003 バージョン ライセンスによる制限 既定の構成による制限

SP 2 より前の Standard Edition

16 GB

該当なし

Standard Edition SP2

75 GB

18 GB

SP2 より前の Enterprise Edition

8,000 GB (制限なし)

該当なし

Enterprise Edition SP2

8,000 GB (制限なし)

8,000 GB

note注 :
JET データベースでハード コードされている現在の制限値は、8,192 GB (8 テラバイト (TB)) です。

障害回復計画に関する考慮事項

Exchange データベースのサイズ制限を変更すると、Exchange データベースのバックアップおよび復元計画の再評価が必要となる場合があります。特に、Exchange データベースのサイズ制限を引き上げた場合は、新しいデータベース サイズの制限を使用してバックアップおよび回復操作をテストし、引き続きサービス レベル契約に適合していることを確認する必要があります。たとえば、メールボックス ストアの以前のサイズが 15 GB であり、8 時間以内にデータを回復することによってサービス レベル契約に適合できていた場合、メールボックス ストアのサイズを 20 GB 以上にすると、以前ほど迅速にデータベースを回復できなくなる可能性があります。

サービス レベル契約については、Exchange 2003 可用性向上に関するガイドの可用性の目標設定に関するトピックの、サービス レベル契約の確立に関する記述を参照してください (このサイトは英語の場合があります)。

データベース サイズの制限のオプションを構成する方法については、Exchange Server 2003 SP2 オンライン ヘルプの「データベース サイズの制限の構成」を参照してください。