ピックアップおよび再生ディレクトリについて

 

適用先: Exchange Server 2010 SP2, Exchange Server 2010 SP3

トピックの最終更新日: 2009-10-14

既定では、ハブ トランスポート サーバーの役割またはエッジ トランスポート サーバーの役割がインストールされ、Microsoft Exchange Server 2010 を実行しているすべてのコンピューターに、ピックアップ ディレクトリと再生ディレクトリが存在しています。正しい形式の電子メール メッセージ ファイルをピックアップ ディレクトリまたは再生ディレクトリにコピーすると、そのメッセージ ファイルが配信のために送信されます。ピックアップ ディレクトリは、管理者がメール フローのテストに使用したり、独自のメッセージを作成して送信する必要があるアプリケーションが使用します。再生ディレクトリは、外部ゲートウェイ サーバーからメッセージを受信し、管理者はこれを使用して Exchange 2010 サーバーのキューからエクスポートするメッセージを再送信できます。

ピックアップ ディレクトリと再生ディレクトリに関連する管理タスクについては、「コネクタの管理」を参照してください。

目次

電子メール メッセージ ファイルの詳細

ピックアップ ディレクトリのメッセージ処理方法

再生ディレクトリのメッセージ処理方法

ピックアップ ディレクトリおよび再生ディレクトリに関するセキュリティ上の考慮事項

ピックアップ ディレクトリおよび再生ディレクトリに対するアクセス許可

電子メール メッセージ ファイルの詳細

標準的な SMTP 電子メール メッセージは、メッセージ エンベロープとメッセージのコンテンツで構成されます。メッセージ エンベロープには、メッセージの転送と配信に必要な情報が含まれます。メッセージのコンテンツには、総称して "メッセージ ヘッダー" と呼ばれるメッセージ ヘッダー フィールドと、メッセージ本文があります。メッセージ エンベロープは RFC 2821 で定義され、メッセージ ヘッダーは RFC 2822 で定義されます。

送信者が電子メール メッセージを作成し、配信のために送信した段階でメッセージに含まれるのは、SMTP 標準に準拠するために必要な基本的な情報 (送信者、受信者、メッセージの作成日時、省略可能な件名、省略可能なメッセージ本文など) です。この情報は、メッセージ自体 (定義上はメッセージ ヘッダー) に含まれます。

送信者のメッセージング サーバーは、メッセージ ヘッダーで見つかった送信者と受信者の情報を使用してメッセージのメッセージ エンベロープを生成し、受信者のメッセージング サーバーに配信するためにメッセージをインターネットに送信します。メッセージ エンベロープはメッセージ送信プロセスによって生成されるものであり、実際にはメッセージの一部ではないため、受信者がメッセージ エンベロープを目にすることはありません。

メッセージの送信に関与する各サーバーによって、メッセージの配信におけるサーバーの役割に関連するメッセージ ヘッダー フィールドや、その他のアプリケーション固有のメッセージ ヘッダー フィールドがメッセージ ヘッダーに挿入される場合もあります。受信者が電子メール クライアントを使用してメッセージを開くと、メッセージ ヘッダーの情報のうち、送信者、受信者、件名などの比較的関連性の高い情報が、メッセージ本文と共に表示されます。

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ピックアップ ディレクトリのメッセージ処理方法

適切な書式が設定され、ピックアップ ディレクトリにコピーされた .eml メッセージ ファイルは、次の手順で送信用に処理されます。

  1. ピックアップ ディレクトリでは新しいメッセージ ファイルの有無が 5 秒ごとに確認されます。このポーリング間隔は変更できません。メッセージ ファイルの処理速度は、Set-TransportServer コマンドレットの PickupDirectoryMaxMessagesPerMinute パラメーターを使用して調整することができます。既定値は 1 分あたり 100 メッセージです。開くことのできないファイルはピックアップ ディレクトリに残り、次のポーリング時に再評価されます。

  2. ピックアップ ディレクトリのメッセージ ファイルに適用される制限 (最大ヘッダー サイズ、受信者の最大数など) が確認されます。既定では、最大ヘッダー サイズは 64 KB、受信者の最大数は 100 です。Set-TransportServer コマンドレットを使用して、これらの制限を変更できます。

  3. ファイル名が <filename>.eml から <filename>.tmp に変更されます。<filename>.tmp ファイルが既に存在する場合は、<filename><datetime>.tmp に変更されます。ファイル名の変更に失敗した場合はイベント ログにエラーが生成されて、ピックアップ プロセスは次のファイルに進みます。

  4. .tmp ファイルが電子メール メッセージに正しく変換されると, .tmp ファイルに対して "delete on close" コマンドが発行されます。.tmp ファイルはピックアップ ディレクトリに残っているように見えますが、そのファイルを開くことはできません。

  5. メッセージが配信用のキューに登録されたら、close コマンドが発行され, .tmp ファイルはピックアップ ディレクトリから削除されます。削除に失敗した場合は、イベント ログにエラーが生成されます。ピックアップ ディレクトリに .tmp ファイルが残っている状態で Microsoft Exchange トランスポート サービスが再起動されると、すべての .tmp ファイルの名前が .eml ファイルに変更されて再処理されます。この場合は、メッセージ転送が重複する可能性があります。

ピックアップ ディレクトリのメッセージ ファイルの要件

ピックアップ ディレクトリにコピーされたメッセージ ファイルが正しく配信されるためには、ファイルが次の要件を満たしている必要があります。

  • メッセージ ファイルは、基本的な SMTP メッセージ形式に準拠するテキスト ファイルである必要があります。MIME メッセージ ヘッダー フィールドとコンテンツがサポートされます。

  • メッセージ ファイルのファイル名には, .eml 拡張子が付いている必要があります。

  • メッセージ ヘッダーの Sender または From メッセージ ヘッダー フィールドには、電子メール アドレスが少なくとも 1 つ存在する必要があります。Sender と From の両方のフィールドに 1 つの電子メール アドレスが存在する場合は、From フィールドの電子メール アドレスがメッセージの発信者としてメッセージ エンベロープで使用されます。

  • Sender フィールドに存在できる電子メール アドレスは 1 つだけです。複数の電子メール アドレスは許可されません。From フィールドに存在する電子メール アドレスが 1 つだけである場合は、Sender フィールドは省略可能です。

  • From フィールドでは複数の電子メール アドレスが許可されますが、Sender フィールドにも電子メール アドレスが 1 つ存在する必要があります。その Sender フィールドのアドレスが、メッセージの発信者としてメッセージ エンベロープで使用されます。

  • To、Cc、Bcc いずれかのフィールドに、電子メール アドレスが少なくとも 1 つ存在する必要があります。

  • メッセージ ヘッダーとメッセージ本文の間に空白行が存在する必要があります。

この例では、ピックアップ ディレクトリで受け入れ可能な形式を使用しているテキスト メッセージを示します。

To: mary@contoso.com
From: bob@fabrikam.com
Subject: Message subject

This is the body of the message.

ピックアップ ディレクトリのメッセージ ファイルでは、MIME コンテンツもサポートされています。MIME では、7 ビットの ASCII テキストでは表現できない言語、HTML、その他のマルチメディア コンテンツなど、広範なメッセージのコンテンツが定義されています。MIME の詳細な説明とその要件に関しては、ここでは扱いません。この例では、ピックアップ ディレクトリで受け入れ可能な形式を使用している単純な MIME メッセージを示します。

To: mary@contoso.com
From: bob@fabrikam.com
Subject: Message subject
MIME-Version: 1.0
Content-Type: text/html; charset="iso-8859-1"
Content-Transfer-Encoding: 7bit

<HTML><BODY>
<TABLE>
<TR><TD>cell 1</TD><TD>cell 2</TD></TR>
<TR><TD>cell 3</TD><TD>cell 4</TD></TR>
</TABLE>

</BODY></HTML>

ピックアップ ディレクトリのメッセージ ファイルに対して行われるメッセージ ヘッダーの変更

ピックアップ ディレクトリでは、次のメッセージ ヘッダー フィールドがメッセージ ヘッダーからすべて削除されます。

  • Received

  • Resent-*

  • Bcc

    注意

    メッセージ ヘッダーの省略可能な Bcc メッセージ ヘッダー フィールドで見つかった電子メール アドレスはすべて正しく処理されます。Bcc の受信者は、不可視のメッセージ エンベロープ受信者に昇格された後、ID 保護のためにメッセージ ヘッダーから削除されます。メッセージに Bcc 受信者しか指定されていない場合は、メッセージ ヘッダーの To フィールドに Undisclosed Recipients という値が追加されます。

ピックアップ ディレクトリでは、メッセージ送信プロセスの一環として、独自の Received ヘッダー フィールドがメッセージに追加されます。Received ヘッダー フィールドは次の形式で適用されます。

Received: from localhost by Pickup with Microsoft SMTP Server id <ExchangeServerVersion><datetime>

ピックアップ ディレクトリでは、次のメッセージ ヘッダー フィールドが存在しない場合または正しくない場合に、次のような変更が加えられます。

  • Message-Id   Message-Id フィールドが欠落しているか空白である場合、ピックアップ ディレクトリでは <GUID>@<既定のドメイン> という形式を使用して、Message-Id フィールドが追加されます。

  • Date   Date フィールドが存在しない場合または正しくない場合は、ピックアップ ディレクトリによるメッセージ処理の日時が追加されます。

ピックアップ ディレクトリのメッセージ処理のエラー

ピックアップ ディレクトリにコピーされたメッセージ ファイルを配信のためにキューに入れる処理が正しく行われない場合があります。発生する可能性があるメッセージ送信エラーには、次のカテゴリがあります。

  • 配信エラー   有効な送信者を持つ正しい形式のメッセージ ファイルを、ピックアップ ディレクトリで配信のために正しく送信できない場合は、配信不能レポート (NDR) が生成されます。また、コンテンツの形式が正しくない場合や、ピックアップ ディレクトリのメッセージ制限に違反している場合も、ピックアップ ディレクトリで NDR が生成されます。ピックアップ ディレクトリのメッセージ処理の間に NDR が生成されると、元のメッセージ ファイルが NDR メッセージに添付され、ピックアップ ディレクトリからそのメッセージ ファイルが削除されます。

    注意

    ピックアップ ディレクトリによって送信された正しい形式のメッセージが、その後の配信エラーによって、NDR と共に送信者に返される場合もあります。この種のエラーは、メッセージング サーバーの障害やメッセージの配信パスでのルーティング エラーなど、ピックアップ ディレクトリとは無関係の送信の問題によって発生します。

  • 不正メール   不正メールに分類されるメッセージは、重大な問題があるためにピックアップ ディレクトリで配信のために送信することができないメッセージです。また、メッセージの形式は正しいが受信者が有効ではなく、送信者も有効ではないために NDR メッセージを送信できない場合も、不正メールになります。

    不正メールと判定されたメッセージ ファイルは、名前が <filename>.eml から <filename>.bad に変更されて、ピックアップ ディレクトリに残ります。<filename>.bad ファイルが既に存在する場合、ファイル名は <filename><datetime>.bad に変更されます。ピックアップ ディレクトリに不正メールが存在する場合は、イベント ログにエラーが生成されます。ただし、同じ不正メール メッセージに対して繰り返し生成されることはありません。

    注意

    メッセージ ファイルは常に、別の場所で作成と保存を行ってから、配信のためにピックアップ ディレクトリにコピーするようにしてください。ピックアップ ディレクトリでは、5 秒ごとに新しいメッセージのポーリングが行われます。このため、ピックアップ ディレクトリ自体でメッセージ ファイルの作成と保存を行うと、メッセージの作成が完了する前にメッセージ ファイルがピックアップ ディレクトリによって処理されてしまう可能性があります。

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再生ディレクトリのメッセージ処理方法

適切な書式が設定され、再生ディレクトリにコピーされた .eml メッセージ ファイルは、次の手順で送信用に処理されます。

  1. 再生ディレクトリでは新しいメッセージ ファイルの有無が 5 秒ごとに確認されます。このポーリング間隔は変更できません。メッセージ ファイルの処理速度は、Set-TransportServer コマンドレットの PickupDirectoryMaxMessagesPerMinute パラメーターを使用して調整することができます。既定値は 1 分あたり 100 メッセージです。開くことのできないファイルは再生ディレクトリに残り、次のポーリング時に再評価されます。

  2. ファイル名が <filename>.eml から <filename>.tmp に変更されます。<filename >.tmp ファイルが既に存在する場合は、<filename><datetime>.tmp に変更されます。ファイル名の変更に失敗した場合、イベント ログ エラーが生成され、再生処理は次のファイルに移ります。

  3. .tmp ファイルが電子メール メッセージに正しく変換されると, .tmp ファイルに対して "delete on close" コマンドが発行されます。.tmp ファイルは再生ディレクトリに残っているように見えますが、そのファイルを開くことはできません。

  4. メッセージが配信用のキューに登録されたら、close コマンドが発行され, .tmp ファイルは再生ディレクトリから削除されます。削除に失敗した場合は、イベント ログにエラーが生成されます。再生ディレクトリに .tmp ファイルがある状態で Microsoft Exchange トランスポート サービスが再起動すると、すべての .tmp ファイルの名前は .eml ファイルに変更され、再処理されます。この場合は、メッセージ転送が重複する可能性があります。

再生ディレクトリのメッセージ ファイルの要件

再生ディレクトリは、エクスポートされた Exchange メッセージの再送信と外部ゲートウェイ サーバーからのメッセージ受信に使用されます。これらのメッセージは、再生ディレクトリ用にあらかじめ書式設定されています。管理者や他のアプリケーションが再生ディレクトリを使用することにより、新しいメッセージ ファイルを作成して送信する必要はほとんどありません。新しいメッセージ ファイルを作成して送信するには、ピックアップ ディレクトリを使用します。

再生ディレクトリ メッセージは X-Header を最大限に活用します。X-Header は、メッセージ ヘッダーに含まれている、ユーザー定義の非公式なメッセージ ヘッダー フィールドです。X-Header は RFC 2822 で具体的に記述されているわけではありませんが、"X-" で始まる未定義のメッセージ ヘッダー フィールドの使用は、メッセージに非公式なメッセージ ヘッダー フィールドを追加する方法として受け入れられています。再生ディレクトリ内のメッセージ ファイルで使用される Exchange 2010 固有の X-Header によって、通常はメッセージ エンベロープ内に存在する配信情報を実際に設定できます。この機能は、再生ディレクトリを使用して、別の Exchange サーバーからエクスポートされたメッセージを処理するときに、元のメッセージ情報を保持するために必要になります。

再生ディレクトリにコピーされたメッセージ ファイルが正しく配信されるためには、ファイルが次の要件を満たしている必要があります。

  • メッセージ ファイルは、基本的な SMTP メッセージ形式に準拠するテキスト ファイルである必要があります。MIME メッセージ ヘッダー フィールドとコンテンツがサポートされます。

  • メッセージ ファイルのファイル名には, .eml 拡張子が付いている必要があります。

  • X-Header は、すべての通常のヘッダー フィールドの前に付いている必要があります。

  • ヘッダー フィールドとメッセージ本文の間に空白行が存在する必要があります。

次に示す X-Header は、再生ディレクトリ内にあるメッセージの必須のフィールドです。

  • X-Sender   この X-Header は、標準の SMTP メッセージ内の From メッセージ ヘッダー フィールド要件に替わります。1 つの電子メール アドレスを含む 1 つの X-Sender フィールドが存在する必要があります。From メッセージ ヘッダー フィールドがある場合、再生ディレクトリはこれを無視します。ただし、受信者の電子メール クライアントには、メッセージの送信者として From メッセージ ヘッダー フィールドの値が表示されます。次の例で示すように、他のパラメーターは通常、X-Sender フィールドに存在します。

    X-Sender: <bob@fabrikam.com> BODY=7bit RET=HDRS ENVID=12345ABCD auth=<someAuth>
    

    注意

    これらのパラメーターは、通常は送信側サーバーによって生成されるメッセージ エンベロープ値です。エクスポートされたメッセージ ファイルを開くと、このようなパラメーターを見かけることがあります。
    RET には、メッセージを配信できない場合、送信者にメッセージ全体を戻すか、ヘッダーのみを戻すかを指定します。RET に指定できる値は、FULL または HDRS です。 ENVID は、メッセージ エンベロープの識別子です。BODY には、メッセージのテキスト エンコーディングを指定します。auth には、RFC 2554 に定義されている認証機構をメッセージング サーバーに対して指定します。

  • X-Receiver   この X-Header は、標準の SMTP メッセージ内の To メッセージ ヘッダー フィールド要件に替わります。1 つの電子メール アドレスを含む 1 つ以上の X-Receiver フィールドが存在する必要があります。複数の受信者がいる場合は、複数の X-Receiver フィールドを含めることができます。To メッセージ ヘッダー フィールドがある場合、再生ディレクトリはこれを無視します。ただし、受信者の電子メール クライアントには、メッセージの受信者として To メッセージ ヘッダー フィールドの値が表示されます。次の例で示すように、他の省略可能なパラメーターが、X-Receiver フィールドに存在することがあります。

    X-Receiver: <mary@contoso.com> NOTIFY=NEVER ORcpt=mary@contoso.com
    

    注意

    これらのパラメーターは、通常は送信側サーバーによって生成されるメッセージ エンベロープ値です。エクスポートされたメッセージ ファイルを開くと、このようなパラメーターを見かけることがあります。これらのパラメーターは、RFC 1891 に記述されている配信状態通知 (DSN) メッセージに関連するものです。
    NOTIFY は、NEVERDELAYFAILURE いずれかの値を取ることができます。ORcpt は、メッセージの元の受信者を保持します。

次に示す X-Header は、再生ディレクトリ内のメッセージ ファイル用のフィールドです。これらは省略可能です。

  • X-CreatedBy   ヘッダー ファイアウォール機能に対して使用されます。この X-Header が存在する場合、このフィールドを空白にすることはできません。X-CreatedBy フィールドが存在しない場合は、Unspecified という値を使用してこのフィールドが追加されます。通常、このフィールドの値は MSExchange14 ですが、Notes など、送信コネクタで設定されている、SMTP 以外の種類のアドレス スペースを含めることもできます。

  • X-EndOfInjectedXHeaders   存在しているすべての X-Header のサイズ (バイト単位) です。この X-Header は、通常のメッセージ ヘッダー フィールドが始まる直前の X-Header フィールドを示すマーカーとして使用されることがあります。

  • X-ExtendedMessageProps   メッセージの拡張メッセージ プロパティです。

  • X-HeloDomain   最初の SMTP プロトコル通信中に表示される HELO/EHLO ドメイン文字列です。

  • X-LegacyExch50   Exchange Server 2003 サーバーが存在する場合は、Exchange 2003 によって生成されたカスタム プロパティを保持するために使用されます。

  • X-Source** MessageSourceName** 列の下でキュー ビューアーによって使用されます。この X-Header の値が指定されない場合、Replay という値が使用されます。この X-Header で使用できるその他の値として、Smtp Receive ConnectorSmtp Send Connector があります。

  • X-SourceIPAddress   送信側サーバーの IP アドレスです。IP アドレスが指定されない場合、このフィールドは 0.0.0.0 になります。

この例では、再生ディレクトリで受け入れ可能な形式を使用しているテキスト メッセージを示します。

X-Receiver: <mary@contoso.com> NOTIFY=NEVER ORcpt=mary@contoso.com
X-Sender: <bob@fabrikam.com> BODY=7bit ENVID=12345AB auth=<someAuth>
Subject: Optional message subject

This is the body of the message.

再生ディレクトリ メッセージ ファイルでは MIME コンテンツもサポートされます。MIME では、7 ビットの ASCII テキストでは表現できない言語、HTML、その他のマルチメディア コンテンツなど、広範なメッセージのコンテンツが定義されています。MIME の詳細な説明とその要件に関しては、ここでは扱いません。この例では、再生ディレクトリで受け入れ可能な形式を使用している単純な MIME メッセージを示します。

X-Receiver: <mary@contoso.com> NOTIFY=NEVER ORcpt=mary@contoso.com
X-Sender: <bob@fabrikam.com> BODY=7bit ENVID=12345ABCD auth=<someAuth>
To: mary@contoso.com
From: bob@fabrikam.com
Subject: Optional message subject
MIME-Version: 1.0
Content-Type: text/html; charset="iso-8859-1"
Content-Transfer-Encoding: 7bit

<HTML><BODY>
<TABLE>
<TR><TD>cell 1</TD><TD>cell 2</TD></TR>
<TR><TD>cell 3</TD><TD>cell 4</TD></TR>
</TABLE>

</BODY></HTML>

再生ディレクトリ内のメッセージ ファイルに加えられるメッセージ ヘッダーの変更

再生ディレクトリでは、メッセージ ファイルから Bcc メッセージ ヘッダー フィールドが削除されます。

再生ディレクトリでは、メッセージ送信プロセスの中で、独自の Received メッセージ ヘッダー フィールドがメッセージに追加されます。Received メッセージ ヘッダー フィールドは次の形式で適用されます。

Received: from <ReceivingServerName> by Replay with <ExchangeServerVersion><DateTime>

再生ディレクトリでは、メッセージ ヘッダー内の次のメッセージ ヘッダー フィールドが変更されます。

  • Message-Id   このメッセージ ヘッダー フィールドが欠落しているか空白である場合、再生ディレクトリでは <GUID>@<既定のドメイン> という形式を使用して、Message-Id フィールドが追加されます。

  • Date   このメッセージ ヘッダー フィールドが欠落しているか形式に誤りがある場合、再生ディレクトリでは、再生ディレクトリによるメッセージの処理日時を使用して Date メッセージ ヘッダー フィールドが追加されます。

再生ディレクトリ メッセージ処理の失敗

メッセージ ファイルから電子メール メッセージへの変換過程で問題が発生すると、再生ディレクトリでは、メッセージが配信不能 (不正メール) と見なされます。不正メール メッセージ ファイルには、送信者の欠落、受信者の欠落、書式設定の問題など、重大な問題があります。不正メールと判定されたメッセージ ファイルは、名前が <filename>.eml から <filename>.bad に変更されて、再生ディレクトリに残ります。<filename>.bad ファイルが既に存在する場合、ファイル名は <filename><datetime>.bad に変更されます。再生ディレクトリに不正メールが存在する場合は、イベント ログにエラーが生成されます。ただし、同じ不正メール メッセージに対して繰り返し生成されることはありません。

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ピックアップ ディレクトリおよび再生ディレクトリに関するセキュリティ上の考慮事項

次の一覧は、ピックアップ ディレクトリと再生ディレクトリに共通するセキュリティ上の問題です。

  • 受信コネクタで構成されているセキュリティ チェック (スパム対策、ウイルス対策、送信者フィルター、受信者フィルターの動作など) は、ピックアップ ディレクトリや再生ディレクトリを通じて送信されるメッセージに対しては実行されません。

  • 侵害されたピックアップ ディレクトリや再生ディレクトリが第三者中継として機能する可能性があります。これにより、別のサーバーを使って実際のメッセージの送信元を隠すことで、メッセージを再送信または 中継 することができます。

次の一覧は、再生ディレクトリに当てはまるセキュリティ上のさらなる問題です。

  • 再生ディレクトリで使用される X-Header を使用すると、メッセージ エンベロープを手動で作成することができます。X-Sender および X-Receiver フィールドの情報は、電子メール クライアントで表示される To または From メッセージ ヘッダー フィールドとはまったく異なる場合があります。このような送信者やドメインのなりすましは、多くの場合、スプーフィングと呼ばれます。スプーフィングされたメールは、メッセージの実際の送信者とは別の送信者から発信されたように見せるために送信者アドレスが変更された電子メール メッセージです。

  • X-CreatedBy フィールドの値が MSExchange14 である場合、送信先は信頼できると見なされ、ヘッダー ファイアウォールは適用されません。ヘッダー ファイアウォールは、信頼できる Exchange 2010 サーバー間で転送されるメッセージ内の X-Header を保存したり、Exchange 組織外部の信頼できない送信先に転送されるメッセージから、情報漏洩の可能性がある X-Header を削除するための Exchange の手段です。これらの X-Header は、権限のある Exchange 2010 サーバー間の SCL (Spam Confidence Level)、メッセージの署名、暗号化などの Exchange 2010 情報を共有するために使用されることがあります。権限のない送信元にこの情報が漏れると、セキュリティ上のリスクを抱える可能性があります。

再生ディレクトリに関連するセキュリティ リスクが多いので、再生ディレクトリに適用するセキュリティを強化する必要があります。メッセージの作成や送信を行う必要があるユーザーやアプリケーションに対しては、ピックアップ ディレクトリへのアクセスのみを許可し、再生ディレクトリへのアクセスは許可しないようにしてください。

すべてのハブ トランスポート サーバーとエッジ トランスポート サーバーでは、既定で、ピックアップ ディレクトリと再生ディレクトリの両方が有効になっています。組織の特定のハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバーでピックアップ ディレクトリまたは再生ディレクトリが必要ない場合は、そのサーバーのピックアップ ディレクトリまたは再生ディレクトリを無効にしてもかまいません。詳細については、以下のトピックを参照してください。

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ピックアップ ディレクトリおよび再生ディレクトリに対するアクセス許可

ピックアップ ディレクトリおよび再生ディレクトリには次のアクセス許可が必要です。

  • 管理者: フル コントロール

  • システム: フル コントロール

  • ネットワーク サービス: 読み取り、書き込み、サブフォルダーとファイルの削除

既定では、Microsoft Exchange トランスポート サービスは、ネットワーク サービス ユーザー アカウントのセキュリティ資格情報を使用してピックアップ ディレクトリおよび再生ディレクトリの場所とアクセス許可を管理します。ネットワーク サービス アカウントには, .eml ファイルを開いて名前を .tmp に変更して削除したり、メッセージが不正メールとして分類された場合に名前を .bad に変更したりするために、ピックアップ ディレクトリに対してこれらのアクセス許可が必要になります。

ピックアップ ディレクトリの場所は、Set-TransportServer コマンドレットの PickupDirectoryPath および ReplayDirectoryPath パラメーターを使用して移動することができます。ピックアップ ディレクトリの場所を正しく変更できるかどうかは、新しいディレクトリの場所でネットワーク サービス アカウントに付与されている権利と、新しいディレクトリが既に存在しているかどうかによって決まります。ディレクトリが存在しておらず、ネットワーク サービス アカウントが変更先の場所でフォルダーを作成してアクセス許可を適用するために必要な権利を持っている場合、ディレクトリが新規作成され、適切なアクセス許可が適用されます。新しいディレクトリが既に存在している場合は、既存のフォルダーのアクセス許可は確認されません。Set-TransportServer コマンドレットで PickupDirectoryPath または ReplayDirectoryPath パラメーターを使用してディレクトリを移動する場合は、新しいディレクトリが存在し、正しいアクセス許可が適用されていることを常に確認してください。

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