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Exchange Server 2003 のストレージに関する機能

 

Microsoft® Exchange Server 2003 では、Exchange ストアに対して多くの機能強化が行われています。これらの機能強化は一般に、障害回復操作のより簡単で迅速な実行と、パブリック フォルダのレプリケーションなどの内部プロセスの効率化に焦点を合わせています。

具体的には、次のような機能強化が行われています。

  • 新しいボリューム シャドウ コピー サービスがサポートされています。このサービスは Microsoft Windows Server™ 2003 バックアップ API の一部として提供されます。
  • 新しい種類のストレージ グループである回復用ストレージ グループによって、復元されるメールボックス データの一時的な格納場所が提供されます。メールボックス データを回復用ストレージ グループに復元した後、メールボックス ストア全体を復元したり、少数の個別のメールボックスを復元するなど、必要なデータを元のメールボックス ストアと結合することができます。
  • Microsoft Mailbox Merge Wizard (Exmerge) を、Exchange ダウンロード Web サイト (https://go.microsoft.com/fwlink/?LinkId=25097) からダウンロードできるようになりました。
  • パブリック フォルダのレプリケーション プロセスが見直され、帯域幅をより効率よく使用するように変更されました。
  • Exchange VSAPI (Virus Scanning Application Programming Interface) が拡張されました。
  • SP2 の新機能 : Exchange Server データベースのデータベース サイズ制限に関連する設定を構成できるようになりました。たとえば、最大データベース サイズ、警告イベントを記録するしきい値、およびデータベース サイズの評価を行う時刻を構成することができます。

シャドウ コピー バックアップ

Exchange Server 2003 は、Windows Server 2003 で実装された新しいバックアップ インフラストラクチャをサポートします。Microsoft Windows バックアップ プログラムを含むバックアップ プログラムでは、既存の Microsoft Windows® 2000 のバックアップと復元 API または新しい API を使用できます。新しい API は、バックアップ プロセスの開始時に Windows ボリューム シャドウ コピー サービスを使用してディスクのシャドウ コピー (スナップショットとも呼ばれます) を作成します。Exchange は、作業ディスクではなくシャドウ コピーを使用して実際のバックアップを作成します。したがって、通常の操作はそのまま続行できます。この方法には、以前の方法と比べて次のような利点があります。

  • ボリュームのバックアップが作成されます。このバックアップは、バックアップの進行中にデータ変更があった場合でも、バックアップ開始時点でのボリュームの状態を反映します。すべてのバックアップ データは、内部的に一貫性を保ち、ある時点でのボリュームの状態を反映します。
  • アプリケーションおよびサービスは、バックアップを開始するという通知を受けます。サービスおよびアプリケーションは、通知を受けた後にディスク上の構造を削除し、キャッシュおよびログ ファイルをフラッシュすることによって、バックアップのために準備することができます。

シャドウ コピー バックアップの使用

Exchange API は、シャドウ コピー バックアップをサポートします。

現在でも Windows Server 2003 のバックアップ ユーティリティを使用して、Exchange Server 2003 データベース (メールボックス ストアとパブリック フォルダ ストア) をバックアップできますが、この方法ではシャドウ コピー バックアップ用ではない既存の API が使用されます。Windows Server 2003 のバックアップ ユーティリティは、ボリューム シャドウ コピー サービスを使用した Windows ファイル システムのバックアップはサポートしていますが、Exchange ボリューム シャドウ コピー サービス API はサポートしていません。新しいシャドウ コピー API を使用してデータベースをバックアップするには、サードパーティ製のソリューションを使用する必要があります。

回復用ストレージ グループ

メールボックスおよびメールボックス ストアを復元する際の柔軟性をさらに高めるため、Exchange 2003 は回復用ストレージ グループ機能を提供します。回復用ストレージ グループは特別なストレージ グループで、(サーバーに 4 つの通常ストレージ グループが存在する場合でも) Exchange 内の通常のストレージ グループと共存できます。以下の条件を満たす通常のストレージ グループすべてから、メールボックス ストアを復元できます。

  • ストレージ グループを格納しているサーバーで Exchange 2000 SP3 以降を実行している。
  • ストレージ グループを格納しているサーバーが、回復用ストレージ グループを格納しているサーバーと同じ管理グループに存在する。
  • 一度に複数のメールボックス ストアを復元する場合、すべてのストアが 1 つのストレージ グループのストアである。

メールボックス ストアを回復用ストレージ グループに復元した後、回復したメールボックス データを回復用ストレージ グループから通常のストレージ グループに移動します。この方法で、メールボックス ストア全体 (ログ データを含む、すべてのデータベース情報) または 1 つのメールボックスのみを回復できます。回復用ストレージ グループ内のメールボックスは、メール クライアントからは切り離されており、ユーザーはアクセスできません。

note注 :
回復用ストレージ グループを使用して回復できるのはメールボックス ストアのみです。パブリック フォルダ ストアは回復できません。

回復用ストレージ グループの使用

以下の手順は単純な復元シナリオを示します。これらの手順は、ユーザーが既にストレージ グループのバックアップを行っていることを想定しています。

これらの手順を開始する前に、すべての Exchange メールボックスで受信および送信の許可を持つ、Backup Operators などのアカウントでログインしていることを確認します。これらのアクセス許可が拒否されると、復元処理は完了できません。

回復用ストレージ グループを作成しないでメールボックス ストアを復元すると、Exchange の以前のバージョンと同様に、データは直接元のメールボックス ストアに復元されます。

回復用ストレージ グループを使用してメールボックス データを復元する処理は、次の 3 つの主要な手順で構成されています。

  1. 回復用ストレージ グループのセットアップ
  2. メールボックス ストアの回復用ストレージ グループへの復元
  3. 回復したメールボックス データと通常のユーザーのメールボックスとの結合

詳細については、Exchange Server 2003 の回復用ストレージ グループの使用に関するページ (英語ページの可能性があります)の回復用ストレージ グループのセットアップ方法のトピックを参照してください。

note注 :
データを結合する場合、フォルダ アクセス許可と受信トレイの仕訳ルールは結合対象になりません。結合後のデータに対するフィルタ処理もサポートされていません。この機能を使用する必要がある場合は、データの回復タスクの代わりに Microsoft Exchange Mailbox Merge Wizard (Exmerge) を使用できます。Exmerge ユーティリティは、Exchange ダウンロード Web サイト (https://go.microsoft.com/fwlink/?LinkId=25097) からダウンロードできます。適切なメールボックス ストアを回復用ストレージ グループに復元した後、Exmerge を起動し、ウィザードの指示に従ってメールボックス データを移動します。

回復用ストレージ グループの無効化の詳細については、「回復用ストレージ グループの無効化のレジストリ キーを設定する方法」を参照してください。

Microsoft Exchange Mailbox Merge Wizard

以前は、Microsoft Exchange Mailbox Merge Wizard (Exmerge) は、Exchange リソース キットのツールとして提供されていました。今回、このウィザードが Exchange ダウンロード Web サイトからダウンロードできるようになりました。このウィザードを使用すると、異なるメールボックス ストア内に存在する同一のメールボックス間でデータを移動できます。たとえば、バックアップからメールボックスを復元する場合、メールボックス ストアを回復用ストレージ グループに復元してから、ウィザードを使用して、復元されたメールボックス データと元のメールボックスを結合することができます。この手順の実行方法の詳細については、前の「回復用ストレージ グループの使用」を参照してください。

パブリック フォルダ ストアのレプリケーションの強化

Exchange 2003 では、パブリック フォルダのレプリケーション アルゴリズムが変更され、バックフィル時の効率が高められました。"バックフィル" は、サーバーが、レプリケートされるフォルダに対する一部の更新を受信しておらず、不足している更新を別のサーバーから取得する必要があると判断したときに実行されます。Exchange は、バックフィル元として使用する 1 つまたは複数のサーバーを選択するために、最初に必要なコンテンツの一部を保持しているすべてのサーバーの一覧を作成し、次に以下の方法で一覧を並べ替えます。

  1. トランスポート コストが小さい順に一覧を並べ替えます。同じサイトにあるサーバーが、リモート サイトにあるサーバーよりも優先されます。
  2. トランスポート コストが同じサーバーについては、Exchange のバージョンが新しい順に並べ替えます。以前のバージョンの Exchange では、トランスポート コストに関係なく、古いバージョンの Exchange を実行しているサーバーよりも、新しいバージョンの Exchange を実行しているサーバーが優先的に選択されます。たとえば、Microsoft Exchange Server Version 5.5 を実行しているローカル サーバーよりも、Exchange 2000 を実行しているリモート サイトが優先的に選択されます。Exchange 2003 では、選択基準におけるトランスポート コストの重要度が高くなっています。
  3. トランスポート コストも Exchange のバージョンも同じであるサーバーは、サーバー上で使用できる必要な変更の数の多い順に並べ替えます。以前のバージョンの Exchange では、トランスポート コストに関係なく、必要な更新をすべて保持しているサーバーが、一部の更新のみを保持しているサーバーよりも優先的に選択されます。Exchange 2003 ではこの優先順位が変更され、トランスポート コストが低いサーバー上で一部の更新が使用可能な場合は、残りの更新をコストが高い他のサーバーから取得する必要がある場合でも、コストが低いサーバーが選択されて更新のバックフィルが行われます。

新しい動作が Exchange 2000 Server のすべてのバージョンの動作とどのように異なるかを示す例として、複数のサイトに展開されている Exchange 5.5 (各サイトには複数のサーバーがあり、すべてのサーバーがパブリック フォルダをレプリケートします) を Exchange 2003 にアップグレードする必要がある場合について考えてみます。各サイトに 1 つの Exchange 2003 サーバーを追加します。各サイトの Exchange 2003 サーバーは、いずれかのリモート サイトにあるより新しいサーバーを検索するのではなく、ローカルの Exchange 5.5 サーバーからパブリック フォルダをバックフィルします。

Virus Scanning API の強化

Exchange 2000 SP1 は、Virus Scanning API (VSAPI) Version 2.0 を提供しました。この API では、インターネット コンテンツのスキャン機能と、ウイルスの送信者と受信者を報告する機能のサポートが強化されました。Exchange 2003 では、VSAPI が強化され、常駐の Exchange メールボックスがない Exchange サーバー (ゲートウェイ サーバー、ブリッジヘッド サーバーなど) 上でアンチウイルス ベンダ製品を実行できるようになりました。Exchange 2003 VSAPI Version 2.5 を使用すると、アンチウイルス ベンダ製品は、感染したメッセージを削除し、感染したメッセージの送信者に通知メッセージを送信できるようになります。ベンダ製品で追加のウイルス状態メッセージを作成して、クライアントが特定のメッセージの感染状態を識別できるようにすることもできます。新しい VSAPI 機能を使用するアンチウイルス アプリケーションの詳細については、アンチウイルス製品の製造元にお問い合わせください。

SP2 の新機能 : データベース サイズの制限の構成および管理

Exchange Server 2003 Service Pack 2 (SP2) では、データベース サイズの制限に関連する設定を、組織のニーズに合わせてカスタマイズできるようになりました。SP2 で追加された主な機能は以下のとおりです。

  • Exchange データベースごとに、論理データベース サイズの制限を構成できます。データベースの論理サイズは, .edb ファイルおよび .stm ファイルの物理サイズからそれぞれの論理空き領域を引いたサイズと同じです。この機能の制限は、実行している Exchange Server 2003 のバージョンによって異なります。
    • Exchange Server 2003 Standard Edition   Exchange Server 2003 Standard Edition を実行するサーバー上の各データベースのサイズ制限は、既定では 16 GB になっています。Exchange Server 2003 SP2 をインストールすると、各 Exchange データベースの既定のサイズ制限は 18 GB になります。また、Exchange Server 2003 SP2 を実行するサーバーでは、データベースあたりのサイズ制限を最大 75 GB に構成できます。
    • Exchange Server 2003 Enterprise Edition   Exchange Server 2003 Enterprise Edition を実行するサーバー上の各データベースのサイズ制限は、既定では 8,000 GB になっています。このサイズは理論上の制限です。Exchange データベースの実際のサイズは、サーバーのハードウェアとストレージ サブシステムのハードウェアに基づいています。Exchange Server 2003 SP2 をインストールすると、データベース サイズの制限を最大 8,000 GB までカスタマイズできるようになります。
  • Exchange Server を実行するサーバーが、特定のデータベースに対して構成したデータベース制限値に近づくと、警告イベントがアプリケーション ログに記録されます。どの時点で通知するかを決定するしきい値を指定できます。既定では、警告イベントを記録するしきい値は、最大論理データベース サイズの 90% が消費された時点となっています。
  • Exchange Server を実行するサーバーが、特定のデータベースに対して構成したデータベース制限値に達すると、エラー イベントがアプリケーション ログに記録されます。さらに、Exchange によって、データベースの制限値を超過したデータベースが直ちにオフラインになります。構成した制限値に達したデータベース上のユーザーの電子メール サービスを一時的に復元するには、データベースを再起動します。ただし、データベースのマウントは、データベースの論理サイズ制限値を超過していないかどうかを確認する毎日のチェック時に解除されます。
  • 構成した制限値に基づいて、Exchange Server が毎日データベース サイズの制限をチェックする時刻を指定できます。既定では、Exchange Server は、午前 0 時の 5 時間後 (午前 5 時) に各 Exchange データベースのサイズをチェックします。

格納域の制限を構成する方法については、以下を参照してください。

障害回復計画に関する考慮事項

Exchange データベースのサイズ制限を変更すると、Exchange データベースのバックアップおよび復元計画の再評価が必要となる場合があります。特に、Exchange データベースのサイズ制限を引き上げた場合は、新しいデータベース サイズの制限を使用してバックアップおよび回復操作をテストし、引き続きサービス レベル契約に適合していることを確認する必要があります。たとえば、メールボックス ストアの以前のサイズが 15 GB であり、8 時間以内にデータを回復することによってサービス レベル契約に適合できていた場合、メールボックス ストアのサイズを 20 GB 以上にすると、以前ほど迅速にデータベースを回復できなくなる可能性があります。

サービス レベル契約については、Exchange 2003 可用性向上に関するガイドの可用性の目標設定に関するトピックの、サービス レベル契約の確立に関する記述を参照してください (このサイトは英語の場合があります)。

格納域の制限を構成する方法については、以下を参照してください。