バック プレッシャについて

 

適用先: Exchange Server 2007 SP3, Exchange Server 2007 SP2, Exchange Server 2007 SP1, Exchange Server 2007

トピックの最終更新日: 2008-03-13

バック プレッシャとは、ハブ トランスポート サーバーの役割またはエッジ トランスポート サーバーの役割がインストールされた Microsoft Exchange Server 2007 を実行しているコンピュータ上に存在する Microsoft Exchange Transport サービスのシステム リソース監視機能です。使用可能なハード ディスク ドライブの空き容量や使用可能なメモリなどの重要なシステム リソースが監視されます。システム リソースの使用率が指定された制限を超えた場合、Exchange サーバーは新しい接続およびメッセージの受け付けを停止します。これにより、システム リソースが完全に消費されることが防止され、Exchange サーバーは既存のメッセージを配信できるようになります。システム リソースの使用率が標準レベルに戻ると、Exchange サーバーは新しい接続およびメッセージを受け付けるようになります。

バック プレッシャ機能の一部として、次のシステム リソースが監視されます。

  • メッセージ キュー データベースを格納するハード ディスク ドライブの空き容量
  • メッセージ キュー データベース トランザクション ログを格納するハード ディスク ドライブの空き容量
  • メモリ内に存在するコミットされていないメッセージ キュー データベース トランザクションの数
  • EdgeTransport.exe プロセスで使用されているメモリ
  • すべてのプロセスで使用されているメモリ

ハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバー上の監視対象の各システム リソースに対して、次の 3 つのリソース使用率レベルが適用されます。

  • 標準   リソースは適度に使用されています。サーバーは、新しい接続およびメッセージを受け付けます。
  •    リソースの使用率が若干高くなっています。サーバーには、限定されたバック プレッシャが適用されます。権限のあるドメイン内の送信者からのメールは処理されます。ただし、サーバーは、その他の送信元からの新しい接続およびメッセージを拒否します。
  •    リソースが過度に使用されています。完全なバック プレッシャが適用されます。すべてのメッセージ フローが停止し、サーバーはすべての新しい接続およびメッセージを拒否します。

バック プレッシャを構成するためのオプション

Caution注意 :
運用環境のサーバー上の EdgeTransport.exe.config ファイルのバック プレッシャの設定は変更しないことを強くお勧めします。バック プレッシャの設定を変更すると、パフォーマンスの低下やデータの損失が発生する可能性があります。バック プレッシャの設定を変更する前に、発生する可能性のあるバック プレッシャ イベントの根本原因について調査および修正することをお勧めします。

バック プレッシャのすべての構成オプションは、C:\Program Files\Microsoft\Exchange Server\Bin ディレクトリに格納されている EdgeTransport.exe.config アプリケーション構成ファイルで使用できます。EdgeTransport.exe.config ファイルは、EdgeTransport.exe ファイルと関連付けられている XML アプリケーション構成ファイルです。EdgeTransport.exe および MSExchangeTransport.exe は、Microsoft Exchange Transport サービスによって使用される実行可能ファイルです。このサービスは、すべてのハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバーで実行されます。EdgeTransport.exe.config ファイルに保存された変更内容は、Microsoft Exchange Transport サービスの再起動後に適用されます。以下の条件のいずれかに当てはまる場合は、既定値が使用されます。

  • 構成オプションが見つからない。
  • 構成オプションが存在し、そこに既定値が含まれている。

次の例は、EdgeTransport.exe.config ファイルの標準的な構造を示しています。

<configuration>

<runtime>

<gcServer enabled="true" />

</runtime>

<appSettings>

<add key=" 構成オプション " value=" " />

...

</appSettings>

</configuration>

<appSettings> セクションでは、新しい構成オプションを追加したり、既存の構成オプションを変更したりすることができます。使用可能な多くの構成オプションは、バック プレッシャとはまったく関係ありません。バック プレッシャとは関係のない構成オプションはすべて、このトピックの範囲外です。

note注 :
<add key=../> セクションのパラメータ名では、大文字と小文字が区別されます。

表 1 は、EdgeTransport.exe.config ファイルで使用できるバック プレッシャの一般的な構成オプションを示しています。

表 1   一般的なバック プレッシャのオプション

パラメータ名 説明

EnableResourceMonitoring

このパラメータは、バック プレッシャを有効または無効にします。既定値は True です。

ResourceMonitoringInterval

このパラメータは、システム リソースの使用率レベルを確認する頻度を制御します。値を指定するには、 hh:mm:ss の形式で期間として入力します。h = 時間、m = 分、s = 秒です。既定値は 00:00:02 です。このパラメータの有効な範囲は、00:00:0100:00:30 です。

メッセージ キュー データベース用のハード ディスク ドライブの空き容量の監視

既定では、メッセージ キュー データベースは C:\Program Files\Microsoft\ExchangeServer\TransportRoles\data\Queue に格納されています。この場所は、EdgeTransport.exe.config ファイル内の QueueDatabasePath パラメータで制御されます。

メッセージ キュー データベースの詳細については、「キュー データベースの管理」を参照してください。

既定では、次の数式を使用して、ハード ディスク ドライブ空き容量の高レベルの使用率が計算されます。

100*(ハード ディスク ドライブ サイズ - 固定の定数) / ハード ディスク ドライブ サイズ

Microsoft Exchange Server 2007 の RTM (Release To Manufacturing) 版では、固定の定数の値は 4 GB です。

Microsoft Exchange Server 2007 Service Pack 1 (SP1) では、固定の定数の値は 500 MB です。

この数式の結果は、使用されている合計のハード ディスク ドライブ容量の割合として表されます。この数式は、ハード ディスク ドライブのサイズには関係なく、メッセージ キュー データベースのためにハード ディスク ドライブ空き容量が常に使用できることを保証しています。数式の結果は、常に最も近い整数に切り捨てられます。

既定では、ハード ディスク ドライブ空き容量の中レベルの使用率は、高レベルより 2% 小さい値になります。既定では、ハード ディスク ドライブ空き容量の標準レベルの使用率は、高レベルより 4% 小さい値になります。使用可能なハード ディスク ドライブ容量が減少するにつれ、ハード ディスク ドライブの使用率は増加します。

ハード ディスク ドライブ使用率の高、中、および標準レベルに対する既定の計算は、EdgeTransport.exe.config ファイル内で値を指定することによって置き換えることができます。表 2 は、EdgeTransport.exe.config ファイルで使用できるメッセージ キュー データベース用のハード ディスク ドライブ空き容量の監視オプションを示しています。

表 2   メッセージ キュー データベース用のハード ディスク ドライブ空き容量の監視オプション

パラメータ名 既定値 有効な入力の範囲

PercentageDatabaseDiskSpaceUsedHighThreshold

0。この値は、既定の数式が使用されることを示します。

3 ~ 100

PercentageDatabaseDiskSpaceUsedMediumThreshold

0。この値は、実際の値が PercentageDatabaseDiskSpaceUsedHighThreshold の値より 2% 小さいことを示します。

3 ~ 100。この値は、PercentageDatabaseDiskSpaceUsedHighThreshold の値より小さくする必要があります。

PercentageDatabaseDiskSpaceUsedNormalThreshold

0。この値は、実際の値が PercentageDatabaseDiskSpaceUsedMediumThreshold の値より 2% 小さいことを示します。

3 ~ 100。この値は、PercentageDatabaseDiskSpaceUsedMediumThreshold の値より小さくする必要があります。

important重要 :
ハード ディスク ドライブ空き容量に対するバック プレッシャの制限が既定のレベルに設定されている場合は、エッジ トランスポート サーバーまたはハブ トランスポート サーバー上のメッセージ キュー データベースを格納しているハード ディスク ドライブに、常に一定量のハード ディスク ドライブ空き容量が存在する必要があります。Exchange 2007 RTM では、必要なハード ディスク ドライブ空き容量は 4 GB です。Exchange 2007 SP1 では、必要なハード ディスク ドライブ空き容量は 500 MB です。使用可能な空き容量が必要なハード ディスク ドライブ空き容量未満になった場合、ハード ディスク ドライブの使用率レベルは高と見なされます。そのため、すべてのメッセージ フローが停止します。この場合は、次のいずれかの手順を実行する必要があります。
- メッセージ キュー データベースを、より大きい空き容量がある別のハード ディスク ドライブに再配置します。詳細については、「キュー データベースの場所を変更する方法」を参照してください。
- PercentageDatabaseDiskSpaceUsedHighThresholdPercentageDatabaseDiskSpaceUsedMediumThreshold、または PercentageDatabaseDiskSpaceUsedNormalThreshold パラメータの値を増やします。

メッセージ キュー データベース トランザクション ログ用のハード ディスク ドライブの空き容量の監視

既定では、メッセージ キュー データベース トランザクション ログは C:\Program Files\Microsoft\ExchangeServer\TransportRoles\data\Queue に格納されています。この場所は、EdgeTransport.exe.config ファイル内の QueueDatabaseLoggingPath パラメータで制御されます。

メッセージ キュー データベースの詳細については、「キュー データベースの管理」を参照してください。

EdgeTransport.exe.config ファイルには、既定値が 20 MB の QueueDatabaseCheckPointDepthMax パラメータが含まれています。このパラメータは、ハード ディスク ドライブ上に存在するコミットされていないすべてのトランザクション ログの許可された合計サイズを制御します。このパラメータは、ハード ディスク ドライブの使用率を計算する数式で使用されます。

note注 :
QueueDatabaseCheckPointDepthMax パラメータの値は、ハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバー上に存在するトランスポート関連のすべての Extensible Storage Engine (ESE) データベースに適用されます。これには、メッセージ キュー データベースや IP フィルタ データベースが含まれます。QueueDatabaseCheckPointDepthMax パラメータの値を低く設定しすぎると、コミットされていないトランザクションがトランザクション ログに書き込まれるのではなく、データベースに強制的にコミットされるため、パフォーマンス上の重大な問題が発生することがあります。QueueDatabaseCheckPointDepthMax パラメータの既定値は変更しないようにすることをお勧めします。

既定では、次の数式を使用して、ハード ディスク ドライブの高レベルの使用率が計算されます。

100*(ハード ディスク ドライブ サイズ - 25 * DatabaseCheckPointDepthMax) / ハード ディスク ドライブ サイズ

DatabaseCheckPointDepthMax パラメータの 20 MB という既定値を使用する場合は、ハード ディスク ドライブのサイズには関係なく、メッセージ キュー データベース トランザクション ログ用に常に 500 MB が確保されます。数式の結果は、常に最も近い整数に切り捨てられます。

既定では、ハード ディスク ドライブ空き容量の中レベルの使用率は、高レベルより 2% 小さい値になります。ハード ディスク ドライブ空き容量の標準レベルの使用率は、高レベルより 4% 小さい値になります。使用可能なハード ディスク ドライブ容量が減少するにつれ、ハード ディスク ドライブの使用率は増加します。

ハード ディスク ドライブ使用率の高、中、および標準レベルに対する既定の計算は、EdgeTransport.exe.config ファイル内で値を指定することによって置き換えることができます。表 3 は、EdgeTransport.exe.config ファイルで使用できるメッセージ キュー データベース トランザクション ログ用のハード ディスク ドライブ空き容量の監視オプションを示しています。

表 3   メッセージ キュー データベース トランザクション ログ用のハード ディスク ドライブ空き容量の監視オプション

パラメータ名 既定値 有効な入力の範囲

PercentageDatabaseLoggingDiskSpaceUsedHighThreshold

0. この値は、既定の数式が使用されることを示します。

3 ~ 100

PercentageDatabaseLoggingDiskSpaceUsedMediumThreshold

0。この値は、実際の値が PercentageDatabaseLoggingDiskSpaceUsedHighThreshold の値より 2% 小さいことを示します。

3 ~ 100。この値は、PercentageDatabaseLoggingDiskSpaceUsedHighThreshold の値より小さくする必要があります。

PercentageDatabaseLoggingDiskSpaceUsedNormalThreshold

0。この値は、実際の値が PercentageDatabaseLoggingDiskSpaceUsedMediumThreshold の値より 2% 小さいことを示します。

3 ~ 100。この値は、PercentageDatabaseLoggingDiskSpaceUsedMediumThreshold の値より小さくする必要があります。

メモリ内に存在するコミットされていないメッセージ キュー データベース トランザクションの数の監視

メッセージ キュー データベースに加えられた変更の一覧は、それらの変更をトランザクション ログにコミットできるようになるまでメモリ内に保持されます。その時点で、この一覧はメッセージ キュー データベース自体にコミットされます。メモリ内に保持されるこれらの未処理のメッセージ キュー データベース トランザクションを、バージョンのバケットと呼びます。バージョンのバケットの数が、ウイルスの問題、メッセージ キュー データベースの整合性に関する問題、またはハード ディスク ドライブのパフォーマンスの問題のために、許容できないほど高いレベルに増加することがあります。

バージョンのバケットの数に対する高、中、および標準レベルの既定値は、EdgeTransport.exe.config ファイル内で値を指定することによって置き換えることができます。表 4 は、EdgeTransport.exe.config ファイルで使用できるバージョンのバケットの監視オプションを示しています。

表 4   バージョンのバケット数の監視オプション

パラメータ名 Exchange 2007 RTM での既定値 Exchange 2007 SP1 での既定値 有効な入力の範囲

VersionBucketsHighThreshold

100

200

1 ~ 8000

VersionBucketsMediumThreshold

60

120

1 ~ 8000。この値は、VersionBucketsHighThreshold の値より小さくする必要があります。

VersionBucketsNormalThreshold

40

80

1 ~ 8000。この値は、VersionBucketsMediumThreshold の値より小さくする必要があります。

EdgeTransport.exe プロセスで使用されているメモリの監視

既定では、次の数式を使用して、EdgeTransport.exe プロセスによる高レベルのメモリ使用率が計算されます。

物理メモリの合計の 75% または 1 TB のどちらか小さい方

この計算には、ハード ディスク ドライブのページング ファイル内で使用できる仮想メモリや、他のプロセスで使用されているメモリは含まれません。この数式の結果は、EdgeTransport.exe プロセスで使用されている合計メモリの割合として表されます。数式の結果は、常に最も近い整数に切り捨てられます。

既定では、EdgeTransport.exe ファイルによる中レベルのメモリ使用率は、物理メモリの合計の 73%、または高レベルの値より 2% 小さい値のどちらか小さい方になります。既定では、EdgeTransport.exe ファイルによる標準レベルのメモリ使用率は、物理メモリの合計の 71%、または高レベルの値より 4% 小さい値のどちらか小さい方になります。使用可能なメモリが減少するにつれ、メモリ使用率は増加します。

EdgeTransport.exe プロセスによる高、中、および標準のメモリ使用率に対する既定の計算は、EdgeTransport.exe.config ファイル内で値を指定することによって置き換えることができます。表 5 は、EdgeTransport.exe.config ファイルで使用できる、EdgeTransport.exe プロセスで使用されているメモリの監視オプションを示しています。

表 5   EdgeTransport.exe プロセスで使用されているメモリの監視オプション

パラメータ名 既定値 有効な入力の範囲

PercentagePrivateBytesUsedHighThreshold

0。この値は、既定の計算が使用されることを示します。

3 ~ 100

PercentagePrivateBytesUsedMediumThreshold

0。この値は、実際の値が PercentagePrivateBytesUsedHighThreshold の値より 2% 小さいことを示します。

3 ~ 100。この値は、PercentagePrivateBytesUsedHighThreshold の値より小さくする必要があります。

PercentagePrivateBytesUsedNormalThreshold

0。この値は、実際の値が PercentagePrivateBytesUsedMediumThreshold の値より 2% 小さいことを示します。

3 ~ 100。この値は、PercentagePrivateBytesUsedMediumThreshold の値より小さくする必要があります。

すべてのプロセスで使用されているメモリの監視

既定では、すべてのプロセスによる高レベルのメモリ使用率は、物理メモリの合計の 94% になります。この値には、ハード ディスク ドライブのページング ファイル内で使用できる仮想メモリは含まれません。使用可能なメモリが減少するにつれ、メモリ使用率は増加します。

指定したメモリ使用率のレベルに達すると、メッセージ退避が発生します。メッセージの退避とは、メモリ内にキャッシュされているキュー内のメッセージの不要な要素を削除する処理です。パフォーマンスを向上させるために、メッセージ全体がメモリ内にキャッシュされます。キューに格納されているメッセージの MIME コンテンツをメモリから削除すると、そのメッセージがメッセージ キュー データベースから直接読み取られるため、使用されるメモリは少なくなりますが、待ち時間は長くなります。メッセージの退避は、既定で有効になっています。EdgeTransport.exe.config アプリケーション構成ファイル内で、メッセージの退避を有効または無効にすることができます。

すべてのプロセスによる高レベルのメモリ使用率に対する既定値は、EdgeTransport.exe.config ファイル内で大きい値を指定することによって置き換えることができます。表 6 は、EdgeTransport.exe.config ファイルで使用できる、すべてのプロセスで使用されているメモリの監視オプションを示しています。

表 6   EdgeTransport.exe.config ファイルで使用できる、すべてのプロセスで使用されているメモリの監視オプション

パラメータ名 既定値 有効な入力の範囲

DehydrateMessagesUnderMemoryPressure

TRUE

TRUE または FALSE

PercentagePhysicalMemoryUsedLimit

94

3 ~ 100

バック プレッシャの適用方法

バック プレッシャでは、トラブルの最初の兆候が検出されたときに、すべてのメッセージ配信が停止されるわけではありません。監視対象のリソースが過度に使用されている兆候が見られると、監視とそれに対応する処理が複数の段階にわたって適用されます。これらの処理によっても使用率を標準レベルに戻すことができない場合は、追加の修正処理が実行されます。リソースの使用率が標準レベルに戻るまで、修正処理の重要度は上がり続けます。リソースの使用率レベルを確認する頻度は、ResourceMonitoringInterval パラメータによって制御されます。既定値は 2 秒です。

以下では、バック プレッシャを適用する各段階について説明します。

第 1 段階

EdgeTransport.exe プロセスのメモリ使用率が、PercentagePrivateBytesUsedNormalThreshold パラメータで指定されている値と比較されます。既定値は、物理メモリの合計の 71% です。EdgeTransport.exe プロセスのメモリ使用率が指定された標準レベルを超えている場合は、ガーベジ コレクションが強制的に実行されます。ガーベジ コレクションとは、メモリ内に存在する未使用のオブジェクトをチェックし、それらの未使用のオブジェクトで使用されているメモリを再利用するプロセスです。

第 2 段階

メモリ内に存在するコミットされていないメッセージ キュー データベース トランザクションの数が、VersionBucketsNormalThreshold パラメータで指定されている値と比較されます。Exchange 2007 RTM では、既定値は 40 です。Exchange 2007 SP1 では、既定値は 80 です。メモリ内に存在するコミットされていないメッセージ キュー データベース トランザクションの数が指定された標準レベルを超えている場合は、メモリ内に存在する未処理のメッセージ キュー データベース トランザクションのトランザクション ログへの強制的な書き込みが実行されます。

第 3 段階

すべての監視対象リソースの使用率レベルが、標準レベルの使用率として指定されている値と比較されます。標準レベルとして指定されている値を超えるレベルのリソースが存在すると、使用率レベルの最も高いリソースが処理の対象として選択されます。以下では、各種のリソース使用率レベルにあるハブ トランスポート サーバーおよびエッジ トランスポート サーバーで実行される処理について説明します。

ハブ トランスポート サーバー

ハブ トランスポート サーバーでリソース使用率が中レベルの場合 :

  • 他のハブ トランスポート サーバーからの受信 SMTP (簡易メール転送プロトコル) 接続は受け付けられます。
  • 他のメッセージング サーバーからの受信 SMTP 接続は拒否されます。
  • ストア ドライブは、引き続きメールボックス サーバーからのメッセージを受け付けます。
  • ピックアップ ディレクトリと再生ディレクトリは、メッセージの処理を停止します。

ハブ トランスポート サーバーでリソース使用率が高レベルの場合 :

  • 他のハブ トランスポート サーバーからの受信 SMTP 接続は拒否されます。
  • 他のメッセージング サーバーからの受信 SMTP 接続は拒否されます。
  • ストア ドライブは、メールボックス サーバーからのメッセージの受け付けを停止します。
  • ピックアップ ディレクトリと再生ディレクトリは、メッセージの処理を停止します。

表 7 は、ハブ トランスポート サーバーでのバック プレッシャの効果を示しています。

表 7   ハブ トランスポート サーバーでのバック プレッシャの効果

リソース使用率レベル 他のハブ トランスポート サーバーからの接続 メッセージング サーバーからの接続 メールボックス サーバーからのストア ドライバ接続 ピックアップ ディレクトリと再生ディレクトリの送信 内部メール フロー

許可される

拒否される

許可される

拒否される

機能する

拒否される

拒否される

拒否される

拒否される

機能しない

エッジ トランスポート サーバー

エッジ トランスポート サーバーでリソース使用率が中レベルの場合 :

  • 他のメッセージング サーバーからの受信 SMTP 接続は拒否されます。
  • ピックアップ ディレクトリと再生ディレクトリは、メッセージの処理を停止します。

エッジ トランスポート サーバーでリソース使用率が高レベルの場合 :

  • 他のメッセージング サーバーからの受信 SMTP 接続は拒否されます。
  • ピックアップ ディレクトリと再生ディレクトリは、メッセージの処理を停止します。

表 8 は、エッジ トランスポート サーバーでのバック プレッシャの効果を示しています。

表 8   エッジ トランスポート サーバーでのバック プレッシャの効果

リソース使用率レベル ハブ トランスポート サーバーからの接続 メッセージング サーバーからの接続 メールボックス サーバーからのストア ドライバ接続 ピックアップ ディレクトリと再生ディレクトリの送信 内部メール フロー

拒否される

拒否される

該当なし

拒否される

該当なし

拒否される

拒否される

該当なし

拒否される

該当なし

第 4 段階

EdgeTransport.exe プロセスのメモリ使用率が、PercentagePrivateBytesUsedNormalThreshold パラメータで指定されている値と比較されます。既定値は、物理メモリの合計の 71% です。EdgeTransport.exe プロセスのメモリ使用率が指定された標準レベルを超えている場合は、次の処理が実行されます。

  • Microsoft Exchange Transport サービスが再起動された場合は、サービスの再起動時、発信キュー内に存在するメッセージは自動的には処理されません。

メモリ内に存在するコミットされていないメッセージ キュー データベース内のトランザクションの数が、VersionBucketsNormalThreshold パラメータで指定されている値と比較されます。Exchange 2007 RTM では、既定値は 40 です。Exchange 2007 SP1 では、既定値は 80 です。メモリ内に存在するコミットされていないメッセージ キュー データベース内のトランザクション数が指定された標準レベルを超えている場合は、次の処理が実行されます。

  • トランスポート収集は無効になります。トランスポート収集は、ハブ トランスポート サーバーの役割の機能であり、クラスタ連続レプリケーション (CCR) またはローカル連続レプリケーション (LCR) を使用するときには有効にする必要があります。トランスポート収集は、CCR 環境では予定外の停止の後で、また LCR 環境ではアクティブ化プロセスの一部として、最近配信されたメールを送信します。トランスポート収集は、LCR 環境および CCR 環境でのみ使用されます。詳細については、「トランスポート収集を構成する方法」を参照してください。
  • リモート配信キューを使用するリモート送信先へのメール配信はすべて無効になります。これらの送信先には、リモート ドメインや、リモート Active Directory ディレクトリ サービス サイトが含まれます。メールボックス配信キューを使用するメールボックス サーバーへのメッセージ配信は影響を受けません。

第 5 段階

EdgeTransport.exe プロセスのメモリ使用率が中または高レベルにある場合や、他のすべてのプロセスのメモリ使用率が指定された最大値を超えている場合は、次の処理が実行されます。

  • 拡張 DNS キャッシュがメモリからフラッシュされます。
  • メッセージの退避が実行されます。

Exchange 2007 RTM でのバック プレッシャのログに関する情報

次の一覧は、Exchange 2007 RTM の特定のバック プレッシャ イベントによって生成されるイベント ログ エントリに関する説明です。

  • リソース使用率の変化に対するイベント ログ エントリ
    イベントの種類 : 警告
    イベント ソース : MSExchangeTransport
    イベント カテゴリ : リソース マネージャ
    イベント ID : 15001
    説明 : リソースの圧迫が以前の使用率レベルから現在の使用率レベルに変化しました。
  • 常に高レベルのリソース使用率に対するイベント ログ エントリ
    イベントの種類 : 警告
    イベント ソース : MSExchangeTransport
    イベント カテゴリ : リソース マネージャ
    イベント ID : 15002
    説明 : リソースの圧迫が高レベルで一定しています。
  • EdgeTransport.exe プロセスによるメモリ使用率の変化に対するイベント ログ エントリ
    イベントの種類 : 警告
    イベント ソース : MSExchangeTransport
    イベント カテゴリ : リソース マネージャ
    イベント ID : 15003
    説明 : プライベート バイトの消費状況が以前の使用率レベルから現在の使用率レベルに変化しました。

Exchange 2007 SP1 でのバック プレッシャのログに関する情報

次の一覧は、Exchange 2007 SP1 の特定のバック プレッシャ イベントによって生成されるイベント ログ エントリに関する説明です。

  • リソース使用率レベルが増加した場合のイベント ログ エントリ
    イベントの種類 : エラー
    イベント ソース : MSExchangeTransport
    イベント カテゴリ : リソース マネージャ
    イベント ID : 15004
    説明 : リソースの圧迫が以前の使用率レベルから現在の使用率レベルに増加しました。
  • リソース使用率レベルが減少した場合のイベント ログ エントリ
    イベントの種類 : 情報
    イベント ソース : MSExchangeTransport
    イベント カテゴリ : リソース マネージャ
    イベント ID : 15005
    説明 : リソースの圧迫が以前の使用率レベルから現在の使用率レベルに減少しました。
  • 利用可能なディスク領域が著しく不足した場合のイベント ログ エントリ
    イベントの種類 : エラー
    イベント ソース : MSExchangeTransport
    イベント カテゴリ : リソース マネージャ
    イベント ID : 15006
    説明 : Microsoft Exchange Transport サービスは、利用可能なディスク領域が構成されたしきい値を下回るため、メッセージを拒否しています。運用を続けるには、サービスの空きディスク領域を増やすための管理操作が必要な場合があります。
  • 利用可能なメモリが著しく不足した場合のイベント ログ エントリ
    イベントの種類 : エラー
    イベント ソース : MSExchangeTransport
    イベント カテゴリ : リソース マネージャ
    イベント ID : 15007
    説明 : Microsoft Exchange Transport サービスは、サービスが構成されたしきい値よりも多くのメモリを消費し続けているため、メッセージ送信を拒否しています。これにより、通常の運用を続けるには、このサービスを再起動する必要がある場合があります。

参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。