名前空間の不整合のシナリオについて

適用先 : Exchange Server 2010

ここでは、不整合の名前空間の概念と、名前空間に不整合があるドメイン内に Microsoft Exchange Server 2010 を展開するためのシナリオに関する情報を示します。

最初に、背景について説明します。インターネット上に存在するすべてのコンピューターはドメイン ネーム システム (DNS) 名を持っています。これはマシン名またはホスト名とも呼ばれます。また、ネットワーク機能を持つ、Microsoft Windows オペレーティング システムを実行しているすべてのコンピューターは NetBIOS 名も持っています。

Active Directory ディレクトリ サービス ドメイン内で Windows を実行しているコンピューターは、DNS ドメイン名と NetBIOS ドメイン名の両方を持っています。DNS ドメイン名は、ドット (.) で区切られた 1 つ以上のサブドメインで構成され、トップ レベルのドメイン名で終了します。たとえば、DNS ドメイン名 corp.contoso.com では、サブドメインが corp と contoso であり、トップ レベルのドメイン名が com です。一般に、NetBIOS ドメイン名は DNS ドメイン名のサブドメインです。たとえば、DNS ドメイン名が contoso.com である場合、NetBIOS ドメイン名は contoso です。DNS ドメイン名が corp.contoso.com である場合、NetBIOS ドメイン名は corp です。

また、Active Directory ドメイン内のコンピューターはプライマリ DNS サフィックスも持っており、追加の DNS サフィックスを持つことができます。既定では、プライマリ DNS サフィックスは DNS ドメイン名と同じです。プライマリ DNS サフィックスを変更する方法の詳細については、このトピックに記載されている手順を参照してください。

Active Directory ドメインの DNS ドメイン名と NetBIOS ドメイン名は、そのドメイン内の最初のドメイン コントローラーを構成するときに定義します。ドメイン コントローラーの構成の詳細については、「ドメイン コントローラーの役割:ドメイン コントローラーを構成する」を参照してください。

このトピックの手順では、Windows Server 2008 または Windows Server 2003 を実行しているコンピューターで次のアイテムを表示する方法について説明します。

  • DNS ホスト名
  • プライマリ DNS サフィックス
  • DNS ドメイン名
  • NetBIOS 名
  • NetBIOS ドメイン名

名前空間の不整合

大部分のドメインのトポロジでは、ドメイン内のコンピューターのプライマリ DNS サフィックスは DNS ドメイン名と同じです。

場合によっては、これらの名前空間をそれぞれ変えなければならないことがあります。これを名前空間の不整合と呼びます。たとえば、合併や買収によって、名前空間の不整合があるトポロジが生成されることがあります。また、企業内での DNS 管理が、Active Directory を管理する管理者とネットワークを管理する管理者の間で分割されている場合にも、名前空間の不整合があるトポロジが必要になることがあります。

名前空間の不整合のシナリオとは、コンピューターのプライマリ DNS サフィックスが、そのコンピューターが存在する DNS ドメイン名に一致していない状態を指します。一致していないプライマリ DNS サフィックスを持つコンピューターが不整合と言われます。ドメイン コントローラーの NetBIOS ドメイン名が DNS ドメイン名に一致していない場合も、名前空間の不整合のシナリオが発生します。

Exchange 2010 と名前空間の不整合

Microsoft Exchange 2010 では、名前空間の不整合があるドメイン内で Exchange を展開するための 3 つのシナリオがサポートされています。サポートされているシナリオは次のとおりです。

  • シナリオ 1   ドメイン コントローラーのプライマリ DNS サフィックスが DNS ドメイン名と同じではありません。このドメインのメンバーであるコンピューターは、不整合である場合も、不整合でない場合もどちらもあり得ます。
  • シナリオ 2   ドメイン コントローラーが不整合でないにもかかわらず、Active Directory ドメイン内のメンバー コンピューターが不整合です。
  • シナリオ 3   ドメイン コントローラーの NetBIOS ドメイン名が、そのドメイン コントローラーの DNS ドメイン名のサブドメインと同じではありません。

次に、これらのシナリオについて詳しく説明します。

Bb676377.note(ja-jp,EXCHG.140).gif注 :
上記で説明した名前空間の不整合のシナリオで Exchange 2010 を実行するためにサポートされています。存在している名前空間の不整合が、このトピックで説明した 3 つのシナリオのいずれにも当てはまらない場合は、Microsoft のサービスと協力して Exchange 2010 を展開する必要があります。詳細については、Microsoft のサービスについてのページを参照してください (このサイトは英語の場合があります)。

シナリオ 1

このシナリオでは、ドメイン コントローラーのプライマリ DNS サフィックスが DNS ドメイン名と同じではありません。このシナリオでは、ドメイン コントローラーが不整合です。このドメインのメンバーであるコンピューター (Exchange サーバーおよび Microsoft Outlook クライアント コンピューターを含む) は、ドメイン コントローラーのプライマリ DNS サフィックスに一致するか、または DNS ドメイン名に一致するプライマリ DNS サフィックスを持つことができます。

シナリオ 2

このシナリオでは、ドメイン コントローラーのプライマリ DNS サフィックスが DNS ドメイン名と同じであるにもかかわらず、Exchange 2010 がインストールされているメンバー コンピューターのプライマリ DNS サフィックスが DNS ドメイン名と同じではありません。このシナリオでは、不整合ではないドメイン コントローラーと、不整合であるメンバー コンピューターが存在します。Outlook を実行しているメンバー コンピューターは、不整合である Exchange サーバーのプライマリ DNS サフィックスに一致するか、または DNS ドメイン名に一致するプライマリ DNS サフィックスを持つことができます。

シナリオ 3

このシナリオでは、ドメイン コントローラーの NetBIOS ドメイン名が、そのドメイン コントローラーの DNS ドメイン名と同じではありません。

NetBIOS ドメイン名が DNS ドメイン名と一致していない

NetBIOS ドメイン名が DNS ドメイン名と一致していない

Exchange 2010 サーバーが、不整合であるドメイン コントローラーにアクセスできるようにします。

Exchange 2010 サーバーが、不整合であるドメイン コントローラーにアクセスできるようにするには、ドメイン オブジェクト コンテナーで msDS-AllowedDNSSuffixes Active Directory 属性を変更する必要があります。そして、この属性に、両方の DNS サフィックスを追加する必要があります。この属性を変更する手順の詳細については、「コンピューターのプライマリ DNS サフィックスが、コンピューターの配置先ドメインの FQDN と一致しない」を参照してください。

さらに、組織内に展開されているすべての DNS 名前空間が DNS サフィックス検索一覧に確実に含まれるようにするには、不整合であるドメイン内のコンピューターごとに検索一覧を構成する必要があります。名前空間の一覧には、ドメイン コントローラーのプライマリ DNS サフィックスと DNS ドメイン名だけでなく、監視サーバーまたはサード パーティ アプリケーション サーバーなどの Exchange が相互運用する可能性のあるサーバーの追加の名前空間もすべて含まれている必要があります。そのためには、このドメインのグループ ポリシーを設定します。グループ ポリシーの詳細については、以下のトピックを参照してください。

DNS サフィックス検索一覧のグループ ポリシーを構成する手順の詳細については、「名前空間の不整合の DNS サフィックス検索一覧を構成する」を参照してください。

Windows Server 2008 を実行しているコンピューターの DNS ホスト名、プライマリ DNS サフィックス、DNS ドメイン名、NetBIOS 名、および NetBIOS ドメイン名を表示する

  1. [スタート] ボタンをクリックし、[コンピューター] を右クリックします。次に、[プロパティ] をクリックします。
  2. [システム][フル コンピューター名] の横にある [コンピューター名、ドメインおよびワークグループの設定] の下に、DNS ホスト名とプライマリ DNS サフィックスが表示されます。DNS ドメイン名は、[ドメイン] の横に表示されます。
  3. [設定の変更] をクリックします。
  4. [システムのプロパティ][コンピューター名] タブで、[変更] をクリックします。
  5. [コンピューター名/ドメイン名の変更] で、[詳細] をクリックします。[このコンピューターのプライマリ DNS サフィックス] の下にプライマリ DNS サフィックスが表示されます。NetBIOS コンピューター名は、[NetBIOS コンピューター名] の下に表示されます。
    プライマリ DNS サフィックスを変更するには、[このコンピューターのプライマリ DNS サフィックス] の下に新しいプライマリ DNS サフィックスを入力し、[OK] をクリックします。
  6. コマンド プロンプト ウィンドウで、「set」と入力します。変数 USERDNSDOMAIN に DNS ドメイン名が表示されます。変数 USERDOMAIN に NetBIOS ドメイン名が表示されます。

Windows Server 2003 を実行しているコンピューターの DNS ホスト名、プライマリ DNS サフィックス、DNS ドメイン名、NetBIOS 名、および NetBIOS ドメイン名を表示する

  1. [スタート] ボタンをクリックし、[マイ コンピューター] を右クリックします。次に、[プロパティ] をクリックします。
  2. [システムのプロパティ] で、[コンピューター名] タブをクリックします。[フル コンピューター名] の横に DNS ホスト名とプライマリ DNS サフィックスが表示されます。DNS ドメイン名は、[ドメイン] の横に表示されます。
  3. [コンピューター名] タブで、[変更] をクリックします。
  4. [コンピューター名の変更] ページで、[詳細] をクリックします。[このコンピューターのプライマリ DNS サフィックス] の下にプライマリ DNS サフィックスが表示されます。NetBIOS コンピューター名は、[NetBIOS コンピューター名] の下に表示されます。
    プライマリ DNS サフィックスを変更するには、[このコンピューターのプライマリ DNS サフィックス] の下に新しいプライマリ DNS サフィックスを入力し、[OK] をクリックします。
  5. コマンド プロンプト ウィンドウで、「set」と入力します。変数 USERDNSDOMAIN に DNS ドメイン名が表示されます。変数 USERDOMAIN に NetBIOS ドメイン名が表示されます。
Bb676377.note(ja-jp,EXCHG.140).gif注 :
また、コマンド プロンプト ウィンドウでコマンド ipconfig /all を実行して、プライマリ DNS サフィックスを表示することもできます。ただし、プライマリ DNS サフィックスより優先されるポリシーがある場合は、このコマンドでは正しいプライマリ DNS サフィックスが表示されません。