記憶域テクノロジ

 

適用先: Exchange Server 2007 SP3, Exchange Server 2007 SP2, Exchange Server 2007 SP1, Exchange Server 2007

トピックの最終更新日: 2011-05-19

記憶域テクノロジを選択する際には、信頼性、容量、パフォーマンス、複雑さ、管理性、およびコストが重要な要素となります。Microsoft Exchange Server 2007 で使用できる記憶域テクノロジの選択肢は、Serial ATA (SATA)、Serial Attached SCSI (SAS)、インターネット SCSI (iSCSI)、ファイバ チャネルなど、多岐にわたります。ここでは、これらの各テクノロジについて、Exchange 2007 と関連付けて説明します。さらに、さまざまな種類の RAID (Redundant Array of Independent Disks) を使用して記憶域設計に冗長性を持たせる方法についても説明します。

Exchange Server の以前のバージョンとは異なり、Exchange 2007 では Network Attached Storage はサポートされていません。Exchange 2007 でサポートされているネットワークベースの記憶域トランスポートは iSCSI だけです。

どのソリューションを選択する場合も、Exchange 2007 で使用するストレージ ソリューションはすべて Windows Server テスト済み製品カタログについてのページに記載されている必要があります。さらに、シングル コピー クラスタ (SCC) ソリューションの場合は、ソリューション全体が Windows Server テスト済み製品カタログについてのページに記載されている必要があります。地理的に分散した SCC ソリューションの場合は、ソリューション全体が Windows Server テスト済み製品カタログについてのページの地理的に分散されているクラスタ ソリューションのカテゴリに記載されている必要があります。

Serial ATA

Serial ATA (SATA) は、デスクトップ コンピュータで一般的に使用されている ATA (Advanced Technology Attachment) ドライブおよび IDE (Integrated Device Electronics) ドライブのための新しいシリアル インターフェイスです。SATA ドライブは一般に SCSI (Small Computer System Interface) ディスクやファイバ チャネル ディスクよりも低速ですが、容量が大きいという特徴があります。SATA ディスクの使用を検討しているときは、回転振動および耐熱に関する製造元の推奨事項を確認することをお勧めします。SATA ディスクの中にはディスク アレイ用に設計されていないものがあり、多数のディスクを接近させておくと、発生した熱と振動が原因でディスク エラーやパフォーマンス低下が引き起こされる可能性があります。また、コントローラは、書き込みキャッシュ アレイ コントローラを使用してください。書き込みキャッシュ動作を行うことで、スピンドルごとのトランザクションのスループットが向上するからです。

Serial Attached SCSI

Serial Attached SCSI (SAS) タイプの記憶域では、エンタープライズ クラスの高パフォーマンスのハード ディスクが使用されます。SAS アレイの多くはスループットが SATA や従来の SCSI (最大 3 Gbps) よりもはるかに優れており、保守またはバックアップ (ストリーミングのパフォーマンス) に関するサービス レベル契約 (SLA) を満たすのに役立ちます。多くの SAS アレイはサーバーへの直接接続が可能で、配線がシンプルです。SAS ディスクを小型にすると容量も小さくなりますが、それでも非常に高速なので、より小さいメールボックスでできるだけ速い速度が要求される Exchange Server 展開に適しています。ディスク速度と入出力 (I/O) 要件のバランスを取ることが重要です。大容量のメールボックスを使用する環境の多くでは、10,000 RPM の SAS ディスクを用意すれば容量と I/O のニーズのバランスが取れると考えられます。

インターネット SCSI

インターネット SCSI (iSCSI) は、Exchange 2007 でサポートされる唯一のネットワーク ベースの記憶域です。iSCSI はイーサネット経由でサーバーを記憶域に接続しますが、記憶域接続として扱い、iSCSI 記憶域ネットワークを他のすべてのネットワーク トラフィックから完全に分離することが重要です。可能な場合は、フロー制御、QoS (Quality of Service)、Jumbo Frame などのオプションを使用すればパフォーマンスをさらに向上させることができます。Microsoft iSCSI Initiator 2.0 ではマルチパス I/O (MPIO) がサポートされます。Microsoft のテスト環境では 3 つのネットワーク カードで 250 MB/秒以上を実現しており、iSCSI が、高いスループットが要求されるシナリオに対して十分な能力を持つ記憶域トランスポートであることが証明されました。

記憶域テクノロジとして iSCSI を選択する場合は、接続されたドライブがサーバー再起動後に自動的に再接続されるように iSCSI イニシエータを構成することが非常に重要です。そのためには、永続ログオンを行い、永続ボリュームを使用するように iSCSI イニシエータを構成します。iSCSI ドライブが永続的でない場合は、サーバーの再起動後に Exchange Server からドライブにアクセスできなくなります。

クラスタ連続レプリケーション (CCR) およびスタンバイ連続レプリケーション (SCR) で iSCSI を使用する場合は、永続性を持たせるように構成することが特に重要です。さらに、CCR または SCR を使用する場合は、サーバー サービスが連続レプリケーション ソース上の Microsoft iSCSI イニシエータ サービスに依存するように設定することを強くお勧めします。(CCR の場合は、アクションとパッシブの指定がクラスタの存続期間中に変化するので、両方のノードでこのように設定する必要があります。)このようにすれば、ディスク ボリュームが必ず存在するようになり、連続レプリケーションに必要なファイル共有が正しく作成されます。

永続ログオン ターゲットを構成するには iSCSI コマンド ライン インターフェイス (iSCSICLI) ツールを使用し、ボリュームを永続ボリュームにするにはコントロール パネルの iSCSI イニシエータ ツールを使用します。また、iSCSICLI コマンドを使用して永続ボリュームをバインドすることや、コントロール パネルの iSCSI イニシエータ ツールを使用して、iSCSI サービスによる永続ボリューム リストの構成を許可するように設定することもできます。

iSCSICLI ツールについては、Microsoft iSCSI Software Initiator 2.x ユーザー ガイドを参照してください (このドキュメントは英語の場合があります)。永続ログオンおよび永続ボリュームを使用するために iSCSI のターゲットとボリュームを構成する手順、およびサーバー サービスが Microsoft iSCSI イニシエータ サービスに依存するように構成する手順の詳細については、マイクロソフト サポート技術情報の記事 870964 コンピュータの再起動時に iSCSI デバイス上のファイル共有が再作成されない場合があることに関するページを参照してください (このサイトは英語の可能性があります)。

ファイバ チャネル

ファイバ チャネルとは、記憶域ネットワーク (SAN) で使用されるネットワーク テクノロジの一種で、多くの場合は光ファイバ ケーブルが使用されます。パフォーマンスの高いギガビット速度のネットワークであり、記憶域の統合と管理に最適です。ファイバ チャネル記憶域を使用する場合は、最適な構成設定を記憶域ベンダに問い合わせることをお勧めします。記憶域ベンダはそれぞれ、キューの深さ、キューの対象、または実行スロットルの設定に関して推奨事項を用意しているからです。

RAID の選択

記憶域の設計に冗長性を持たせることは、高可用性を達成するために不可欠です。すべての Exchange サーバーに対して、バッテリ バックアップ付きのコントローラの背後に RAID 記憶域を配置することを強くお勧めします。RAID には多くの種類があり、既知の RAID の種類に対する独自の変更も多く行われています。ただし、サーバー環境で最も一般的に使用されるのは RAID-1/0、RAID-5、RAID-6、および RAID-DP の 4 種類です。

次の表は、速度、領域の使用率、および再構築と障害発生時のパフォーマンスを基準として RAID-1/0、RAID-5、および RAID-6 のソリューションを比較したものです。

RAID ソリューションの比較

RAID の種類 速度 領域の使用率 再構築時のパフォーマンス ディスク障害時のパフォーマンス トランザクション I/O のパフォーマンス

RAID-1/0

RAID-5

RAID-6*

note注 :
*RAID-6 のパフォーマンスは、ディスク レイアウト、記憶域コントローラ、および記憶域構成によって変化します。RAID-6 ソリューションのパフォーマンスに関する詳細については、記憶域ベンダに問い合わせてください。

RAID-1/0

RAID-1/0 では、データはミラー化された (RAID-1) セット間でストライプ処理されます (RAID-0)。RAID-0-1 は RAID-1/0 とは異なるものです。Exchange のデータに対して RAID-0-1 を使用することはお勧めできません。RAID-1/0 によるトランザクション パフォーマンスは非常に良好です。これは、ミラー内のどちらのディスクも読み取り要求に応答できるためです。パリティ情報を計算する必要がないので、ディスク書き込みの処理効率が高くなります。ミラー化されたセット内の各ディスクが同じ書き込みを実行する必要があります。

RAID-1/0 アレイでディスク障害が発生しても、書き込みを受け付けることができるメンバがミラーにまだ存在するため、書き込みのパフォーマンスに影響が及ぶことはありません。読み取り要求に応答できる物理ディスクは 1 つだけになるため、読み取りは多少影響を受けます。障害が発生したディスクが交換されると、ミラーが再度確立され、データのコピーまたは再構築が必要になります。

RAID-5

RAID-5 では、パリティが計算されます。ディスクの障害が発生したときに、このパリティを残存メンバのデータと共に使用してデータを再作成することができます。RAID-5 アレイに書き込むときは、I/O を 1 回書き込むたびに最大 4 回の I/O が発生します。また、パリティ計算によってコントローラまたはサーバーのリソースが消費されることがあります。このような制約はありますが、RAID-5 のパフォーマンスを良好に保つことは可能です。特に、記憶域コントローラを使用してパリティを計算する場合です。

RAID-5 アレイでディスク障害が発生すると、アレイは機能低下状態になり、パフォーマンスが低下して待ち時間が長くなります。このような状況になるのは、ほとんどのアレイがパリティ情報をアレイ内の全ディスクに均等に分散しており、残存データ ブロックとパリティとを結合してデータをリアルタイムで再構築することが可能であるからです。失われたディスクのデータを再構築するために読み取りと書き込みの両方で複数の物理ディスクにアクセスする必要があるので、RAID-5 アレイで障害が発生すると待ち時間が増加し、パフォーマンスが低下します。障害の発生したディスクを交換すると、パリティと残存ブロックを使用して失われたデータが再構築されます。これは、数時間から数日かかる場合もある時間のかかる処理です。暫定データ回復モードまたは再構築の間に RAID-5 アレイの 2 番目のメンバで障害が発生すると、アレイを維持できなくなります。このような脆弱性が存在するため、RAID-6 が作成されました。

RAID-6

RAID-6 ではパリティ ブロックが追加されており、データ保護の度合いは RAID-5 のほぼ倍ですが、書き込みのパフォーマンスはさらに低下しています。物理ディスクが大きくなり、その結果 RAID の再構築時間が長くなるにつれて、再構築中に訂正不能なエラーが発生した場合やアレイ グループ内の 2 番目のディスクで障害が発生した場合の論理ユニット番号 (LUN) エラーを防止するために RAID-6 が必要になることがあります。ディスク容量を理由に、一部のベンダは RAID-5 ではなく RAID-6 をサポートしています。

note注 :
Storage Network Industry Association による RAID-6 の定義の詳細については、SNIA の用語集のページを参照してください (このサイトは英語の場合があります)。 このトピックにあるサードパーティの Web サイトに関する情報は、必要な技術情報を参照する際に役立つように提供されています。 この URL は、将来予告なしに変更されることがあります。

RAID-DP

NetApp によって開発された RAID-DP は、データ保護のための RAID 二重パリティを独自に実装したものです。Storage Network Industry Association (SNIA) の定義では、RAID-DP は RAID-6 に分類されます。RAID-DP は、NetApp の商標でもあります。

従来の RAID-6 とは異なり、RAID-DP は RAID グループ内の 2 つの専用パリティ ディスクを使用して、対角パリティを使用します。信頼性の数値と、2 つのディスクの消失を回避する能力に関しては、RAID-DP は他の RAID-6 実装と同様です。ただし、3 つ目のディスクに障害が発生するとデータが消失します。現在の RAID-6 実装では追加のパリティ ブロックを採用した結果として I/O パフォーマンスが低下するのに対し、RAID-DP は読み取り I/O の発生を抑えるように最適化されています。これは、NetApp のコントローラがパリティ書き込み操作を処理する方法によるものです。他の記憶域コントローラが変更を元の場所に書き込むのに対し、NetApp のコントローラは常に、データを新しいブロックに書き込みます。そのため、ランダムな書き込みがシーケンシャルな書き込みのように見えます。Exchange 実装のパフォーマンスを一定のレベルに保つには、アレイのサイジングに関する NetApp のベスト プラクティスに従うことが重要です。

note注 :
RAID-DP の詳細については、RAID-DP: Network Appliance の RAID Double Parity の実装によるデータ保護についてのドキュメント (http://www.netapp.com/library/tr/3298.pdf) および Exchange Server 2007 の記憶域設計での NETAPP RAID-DP の使用についてのドキュメント (http://www.netapp.com/library/tr/3574.pdf) (これらのサイトは英語の場合があります) を参照するか、NetApp に直接問い合わせてください。 このトピックにあるサードパーティの Web サイトに関する情報は、必要な技術情報を参照する際に役立つように提供されています。 この URL は、将来予告なしに変更されることがあります。

RAID の種類の選択

RAID の種類を選択するには、容量、トランザクション I/O、および障害や再構築のパフォーマンス特性のバランスを考える必要があります。たとえば、メールボックス サイズは容量に大きく影響し、ディスクのフォーム ファクタ縮小はパフォーマンスに影響します。RAID の種類の選択は、格納するデータと使用するコントローラによっても左右されます。トランザクション ログは最も重要なデータ セットであり、十分な書き込み待ち時間がサーバーのパフォーマンスにとって不可欠です。RAID を認識しない記憶域コントローラを使用する場合は、バッテリ バックアップ付きの書き込みキャッシュを備えた RAID-1 または RAID-1/0 アレイにトランザクション ログを配置します。トランザクション ログ用の記憶域が高速で待ち時間が短いことの重要性については、Exchange Server 2003 の記憶域の最適化に関するページを参照してください (このサイトは英語の場合があります)。同様に、RAID を認識しない記憶域コントローラを使用するときのデータベース用には RAID-1/0 が最適な構成であり、大容量ディスクに対して適切に動作します。

Exchange Server 2003 では、RAID-5 を使用すると容量使用率は最適になりますが、パフォーマンスが低いため、領域に余裕ができてもほとんど活用されませんでした。その結果、Exchange 2003 が展開された環境の多くでは、RAID-5 のトランザクション パフォーマンス要件を達成するために RAID-1/0 の場合よりも多くの物理ディスクを必要としていました。

Exchange 2007 では、データベース I/O に占めるデータベース書き込みの割合が増加したことにより、RAID-5 LUN のパフォーマンスは Exchange 2003 の場合より低下します。ただし、トランザクション I/O の削減を実現するための推奨事項に従うときは、RAID-5 が適切なソリューションになる場合もあります。RAID-5 が役立つのは、高速で小容量のディスクを使用するときです。大容量メールボックス ソリューションで RAID-5 を使用するときは、RAID-1/0 より少ない物理ディスクで容量要件を満たすのに必要なトランザクション パフォーマンスを超えるパフォーマンスを実現できる可能性があります。

RAID-5 と RAID-6 のどちらでも、再構築時のパフォーマンスは、記憶域のスループットに大きな影響を与えます。この影響により、記憶域アレイおよび設定に応じて、記憶域のスループットは半分になります。運用時間外に再構築をスケジュールすると、このパフォーマンス低下を補うことができますが、そうすると信頼性が損なわれます。CCR 環境では、メールボックス サーバーをパッシブ ノードに移動してアクティブ ノードにすることにより、ユーザーに影響を与えるスループットの低下を避けることができます。どちらのオプションも使用できない場合は、RAID-5 または RAID-6 を運用時間内に再構築するという状況にも対応できるように、I/O スループットをさらに高める設計をアーキテクチャに組み込む必要があります。この追加の I/O スループットは、エラー状態ではない I/O の要件の最大 2 倍にまですることができます。

参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。