Office 2010 用の Office Migration Planning Manager の概要

 

適用先: Office 2010

トピックの最終更新日: 2016-11-29

この Office Migration Planning Manager (OMPM) の概要では、OMPM ダウンロード パッケージの内容、OMPM を実行するための要件、および OMPM ツールの高度な使用方法の概要について説明します。

この記事の内容

  • OMPM の概要

  • OMPM の新機能

  • OMPM ダウンロード パッケージの内容

  • OMPM ツールの使い方

  • OMPM ファイル スキャナーを展開する

  • OMPM ファイル スキャナーのしくみ

  • 管理用コンピューターの要件

  • クライアント コンピューターの要件

  • OMPM で必要なアクセス権

OMPM の概要

OMPM は、Microsoft Office 2010 への移行環境を準備するためのツール セットです。OMPM は、Office 2010 移行計画で非常に重要な役割を果たします。OMPM のツールを使用して、次の操作を実行できます。

  • Office 97 から Office 2003 のファイルをスキャンして変換の問題を確認できます。

  • スキャンしてマクロの互換性の問題を確認できます。

  • レポートを作成してスキャン データを分析できます。

  • スキャン データを格納し、以前の Office ファイルを Office 2010 ファイル形式に変換できます。

OMPM はファイルのプロパティと内容をチェックして報告するので、環境を分析したり、Microsoft Office バージョン 97 から 2003 のファイル形式を Office 2010 のファイル形式に変換する際に生じる問題を確認したりするのに役立ちます。OMPM には次のコンポーネントが含まれます。

  • OMPM ファイル スキャナー (Offscan.exe)。ファイルをスキャンして変換の問題がないか確認し、結果を XML ログ ファイル (ファイルの場所も構成可能) に格納するコマンドライン ツールです。必要に応じて、それらのログ ファイルを .cab ファイルにまとめることもできます。OMPM ファイル スキャナーによるスキャンには次の 2 種類があります。

    • ライト スキャン。ユーザーのコンピューターまたはネットワーク ファイル システムにある Office ドキュメントをすばやく確認します。

    • ディープ スキャン。Office ドキュメントに対して実行し、変換の問題が発生する可能性のあるドキュメントのプロパティをクロールします。

    • マクロ スキャン。ドキュメントのマクロに含まれる VBA コードの潜在的な問題や、64 ビット版の Office 2010 の変更よる潜在的な問題の数をすばやく確認します。マクロ スキャンは、Office 97 から Office 2007 の Office バージョンで作成された Microsoft Excel、PowerPoint、および Word のファイルにのみ使用できます。

    重要

    Microsoft Outlook、Microsoft FrontPage、Microsoft OneNote、および Microsoft InfoPath のファイルは、ライト スキャンとディープ スキャンのどちらの対象にも含められません。

  • OMPM ファイル スキャナーで生成された XML ログ ファイルを次のいずれか、またはいくつかのデータベースにインポートするためのユーティリティ セット。

    • Microsoft SQL Server 2005

    • Microsoft SQL Server 2005 Express Edition

    • Microsoft SQL Server 2008

    • Microsoft SQL Server 2008 Express Edition

    • Microsoft SQL Server 2008 R2

    • Microsoft SQL Server 2008 R2 Express Edition

  • 分析のための各種レポートを提供する Microsoft Access 2010 ベースのレポート ソリューション。これで自動処理の対象となるファイル セットを定義できます。

  • Office ファイル コンバーター (OFC)。バージョン 97 から 2003 までの形式の特定の Office ファイルを Office 2010 のファイル形式に一括変換できます。

  • バージョン抽出ツール (VET)。複数のバージョンが保存された 1 つの Word 97 ~ 2003 の文書を Word 2010 の個別のファイルに抽出できます。

OFC および VET の詳細については、「Office ファイル コンバーター (OFC) およびバージョン抽出ツール (VET) を使用して Office のバイナリ ファイルを変換する」を参照してください。

OMPM の新機能

OMPM 2010 Update 1 は、OMPM ツールの信頼性とパフォーマンスを向上させます。OMPM 2010 Update 1 は、Microsoft Download Center (英語) (https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=199599\&clcid=0x411) (英語) から入手できます。

重要

OMPM の初期バージョンを使用している場合は、既存のクライアント スキャンの結果、データベース、または新しいバージョンの OMPM でエクスポートしたデータを再使用できません。新しいデータベースを作成し、新しいバージョンを使用してクライアントを再スキャンする必要があります。

次に、OMPM ファイル スキャナー、Office ファイル コンバーター (OFC) ツール、およびバージョン抽出ツール (VET) の Update 1 で強化される主な点をいくつか示します。

  • OMPM ファイル スキャナーのパフォーマンスの強化

  • OMPM と Office Code Compatibility Inspector (OCCI) の間でのマクロ分析の一貫性の向上

  • OFC および VET ツールの信頼性の向上

  • レポート ツールの操作性の向上

OMPM ダウンロード パッケージの内容

OMPM インストール プロセスは、OMPM コンポーネントを次の再配布可能なサブフォルダーに抽出します。

  • Scan   OMPM ファイル スキャナーが含まれているフォルダー。

  • Report   OMPM レポートが含まれているフォルダー。OMPM レポートからファイルの一覧をエクスポートするには、データベース フォルダーと関連コンポーネントも利用できるようにしておく必要があります。

  • Database   OMPM データベースの作成および入力用のスクリプトが含まれているフォルダー。

  • Tools   Office ファイル コンバーター (OFC)、バージョン抽出ツール (VET) などのツールが含まれているフォルダー。

OMPM ツールの使い方

以下に、OMPM の各ツールを使用して Office に移行するときの手順を概観します。

  1. OMPM ファイル スキャナーでコンピューターをスキャンし、スキャン結果が記録されたログ ファイルまたは .cab ファイルを生成します。詳細については、「Office 2010 の Office Migration Planning Manager ファイル スキャナーをセットアップする」を参照してください。

  2. ログ ファイルまたは .cab ファイルを OMPM データベースにインポートします。詳細については、「Office Migration Planning Manager ログ ファイルをデータベースにインポートする」を参照してください。

  3. OMPM レポートで、OMPM データベース内のデータに基づいてレポートを作成します。詳細については、「Office 2010 の Office Migration Planning Manager レポートを分析する」を参照してください。

  4. レポートの分析に基づいて、次の任意の手順を実行します。

    • Office Code Compatibility Inspector (OCCI) ツールを使用して、マクロの互換性について潜在的な問題があると認識されたファイルの修正に役立てる。一括スキャンは OCCI でサポートされていないため、OMPM を使用して問題の一覧を生成し、OCCI を使用して識別された各ファイルをスキャンしてマクロの互換性に関する詳細を確認することをお勧めします。

    • Office ファイル コンバーター (OFC) を使用して、バージョン 97 から 2003 までのファイル形式の特定の Office ファイルを Office 2010 のファイル形式に一括変換する。

    • バージョン抽出ツールを使用して、複数のバージョンが保存された 1 つの Word 97 ~ 2003 の文書を Word 2010 の個別のファイルに抽出する。

注意

OMPM が Office ファイルへのハイパーリンクが埋め込まれているファイルをレポートしても、OFC はハイパーリンクを解決または更新しません。ファイルを OpenXML に変換すると、ファイル拡張子が変更されるため、変換後のファイルをハイパーリンクは参照できません。

OMPM ファイル スキャナーを展開する

OMPM ファイル スキャナーを環境にインストールして実行するときは、次の 3 つの方法が考えられます。

  1. 一元管理スキャン   管理用のクライアント コンピューターにダウンロードし、そのコンピューターを使用して、指定されたネットワーク上の場所をスキャンします。これは最も簡易的なスキャン方法で、小規模な評価を行う場合に使用されるのが一般的です。

  2. 共有フォルダーからの分散型スキャン   中央のファイル共有にダウンロードし、その共有を使って環境内のすべてのクライアント コンピューターをスキャンします。この方法は、クライアント コンピューターのグループ間で一貫性のあるファイル スキャンを実行する場合に役立ちます。

  3. 分散スキャン   環境内の各クライアント コンピューターにダウンロードしてローカルにスキャンを行います。この方法では、最も効率的なスキャン実行結果が得られます。

これらの 1 つ以上の展開戦略を選択して環境のニーズに適合できます。これらの方法の詳細については、「Office 2010 の Office Migration Planning Manager ファイル スキャナーをセットアップする」を参照してください。

OMPM ファイル スキャナーのしくみ

OMPM ファイル スキャナーは、コンピューターに関する情報を収集し、指定のパスを再帰的にスキャンして Office ファイルを調査し、保存先パスの XML ログ ファイルに結果を記録します。

OMPM ファイル スキャナーは、1 回のスキャンで以下のタスクを実行します。

  • コンピューターをスキャンして、Offscan.ini 構成ファイルの FoldersToScan 設定で指定したフォルダー内の Office ファイルを調査する。

  • コンピューターをスキャンして、オペレーティング システム、メモリ、言語 ID などのプロパティを調査する。

  • ファイル名、パス、サイズ、形式、作成日時、変更日時、ファイル所有者など、ファイルのプロパティ情報をスキャンする。

  • Offscan.ini の [AccessScan] 設定が 1 に設定されている場合、Access ファイルをスキャンし、結果をレポート ツールの [Access 互換性] タブに表示する。

  • ディープ スキャンの場合は、バイナリ ファイル形式から OpenXML ファイル形式への移行に伴う互換性の問題を調査する。

  • マクロ スキャンが構成されている場合、OMPM 2010 は出現するすべてのマクロをスキャンして、オブジェクト モデル内の変更による移行の懸念事項を調査し、潜在的な問題の合計数をログに記録する。

  • XML ログ ファイルを保存先パスに出力して、各ファイル スキャンの結果を表示する。

  • Offscan.ini 内の CABLogs1 に設定されていれば、これらの XML ログ ファイルを一連の .cab ファイルに追加する (.cab ファイルはレポート分析のために後で SQL Server コンピューターにインポートされる)。

  • これらの XML ログ ファイルにエラーを記録する。

注意

  • /d パラメーターを使用すると、スキャナーが書き込みアクセス許可を持つファイルの [最終アクセス日付] が OMPM によって変更されるのを防止できます。このパラメーターを使用しない場合、またはスキャナーがスキャン対象ファイルに対する書き込みアクセス許可を持たない場合に、SkipOldAccessedFiles および OldAccessDate 設定を offscan.ini ファイルで使用すると、予期しない結果が生じることがあります。特に、これらの設定には初回スキャン時に従う必要があり、古いファイルはスキップされますが、スキップされたファイルの [最終アクセス日付] プロパティ設定は更新されるため、以前スキップされたファイルは後続のスキャンでスキャンされます。

  • OMPM ファイル スキャナーが、データを Microsoft Corporation に送信することはありません。

管理用コンピューターの要件

次の表に、OMPM ファイル スキャナーを実行して、ファイル スキャン レポートを完了する管理用コンピューターの要件を示します。

オペレーティング システム システム コンポーネント

管理用コンピューターで OMPM のデータベース作成ツールとデータ インポート ツールを使用するための要件

警告

インポート ツール、ログ ファイル共有、およびデータベースは、最適なパフォーマンスを得るために同じサーバーでメンテナンスしてください。あるいは、同じサブネットに配置してネットワーク トラフィックを減らすようにしてください。

Windows Server 2003 SP1

Windows Server 2008

Windows Server 2008 R2

Windows XP SP3

XP 上で動作する IExpress 2.0

Windows Vista SP3

Vista 上で動作する IExpress 2.0

Windows 7

Win7 上で動作する IExpress 2.0

警告

自己解凍パッケージの作成には IExpress を使用します。自己インストール パッケージは使用しないでください。

OMPM レポート

レポートには Office Access 2007 または Access 2010 (32 ビット バージョンのみ) が必要

データベース コンポーネント

システム コンポーネント

SQL Server 2005 (英語版のみをサポート)

4 GB の空き領域

SQL Server 2008 (英語版のみをサポート)

4 GB の空き領域

Microsoft SQL Server 2008 用 Feature Pack - 2008 年 10 月 (https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=199601&clcid=0x411) に含まれる Microsoft SQL Server 2005 用下位互換性コンポーネントが必要

SQL Server 2008 R2 (英語版のみをサポート)

4 GB の空き領域

Microsoft SQL Server 2008 用 Feature Pack - 2008 年 10 月 (https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=199601&clcid=0x411) に含まれる Microsoft SQL Server 2005 用下位互換性コンポーネントが必要

Microsoft SQL Server 2005 Express Edition (https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=95582&clcid=0x411)

警告

最大 100,000 件のスキャン可能なファイルにのみ使用してください。

2 GB の空き領域

Microsoft SQL Server 2008 Express Edition Service Pack 1 (https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=199604&clcid=0x411)

警告

最大 100,000 件のスキャン可能なファイルにのみ使用してください。

2 GB の空き領域

Microsoft SQL Server 2008 用 Feature Pack - 2008 年 10 月 (https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=199601&clcid=0x411) に含まれる Microsoft SQL Server 2005 用下位互換性コンポーネントが必要

SQL Server 2008 R2 Express

警告

最大 100,000 件のスキャン可能なファイルにのみ使用してください。

2 GB の空き領域

Microsoft SQL Server 2008 用 Feature Pack - 2008 年 10 月 (https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=199601&clcid=0x411) に含まれる Microsoft SQL Server 2005 用下位互換性コンポーネントが必要

SQLXML 4.0 SP1

SQL Server データベースの XML サポートを有効にします。Microsoft SQL Server 2008 用 Feature Pack - 2008 年 10 月 (https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=199601&clcid=0x411) の一部として使用できます。

SQLXML 3.0 SP3 は 32 ビット コンピューターでもサポートされます。64 ビット コンピューターでは SQLXML 4.0 SP1 を使用する必要があります。

Sqlcmd.exe コマンド ライン ユーティリティ (SQL Server および SQL Server Express Edition にバンドル)

Sqlcmd.exe: SQL 作成ツールやインポート ツールを実行するクライアント コンピューターで必要

Bcp.exe コマンド ライン ユーティリティ (SQL Server および SQL Server Express Edition にバンドル)

Bcp.exe: SQL 作成ツールやインポート ツールを実行するクライアント コンピューターで必要

ネットワーク

システム コンポーネント

OMPM ファイル スキャナーで収集された XML ログ ファイルを展開するためのファイル共有。読み取り/書き込み/作成のアクセス権が必要

ファイル共有上の 1 GB の空き領域

クライアント コンピューターの要件

次の表に、OMPM ファイル スキャナーを実行するクライアント コンピューターの要件を示します。

オペレーティング システム/OMPM コンポーネント 関連コンポーネント

Windows Server 2008

Windows Server 2008 R2

Windows XP SP3

DAO バージョン 3.5 または 3.6 (Access 2000、Access 2003、Access 2007、および Access 2010、Windows XP、Windows Vista、Windows 7、Windows Server 2003、および Windows Server 2008 に含まれている。これは Access ファイルのスキャンにのみ必要)

Windows Vista

Windows Script バージョン 5.6、5.7、または 5.8

Windows 7

Visual C ランタイム (msvcrt.dll)

Internet Explorer バージョン 5 ~ 8

ブラウザーは、検出された互換性の問題について説明している参考資料を表示するために必要

Office ファイル コンバーター (OFC): コンピューターに変換対象のファイルが含まれている場合に必要

Word/Excel/PowerPoint 用 Microsoft Office 互換機能パック https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=78517&clcid=0x411

バージョン抽出ツール: コンピューターで Vet.exe を実行する場合に必要

Microsoft .NET Framework 2.0 以上 (https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=224870&clcid=0x411)

Microsoft .NET Framework がインストールされていない場合は、PATH システム変数が示す場所に個々のコンポーネントを別途インストールすることが必要

Kernel32.dll、Msjet40.dll、Crypt32.dll、Ole32.dll、Oleaut32.dll、User32.dll、Advapi.dll

OMPM レポート (クライアント コンピューターに分析すべきデータがある場合)

レポートには Access 2007 または Access 2010 (32 ビット バージョンのみ) が必要

OMPM ファイル スキャナー (Office をインストールする必要はない)

Access ファイルのディープ スキャンを実行するには Access 2007 または Access 2010 が必要

OMPM ファイル スキャナー (SharePoint ドキュメント ライブラリなど、doc ストレージ システムのスキャン)

WebDAV (Web 分散オーサリングとバージョン管理) 対応の IIS 6.0 が必要

警告

IIS 6.0 版の WebDAV だけをサポートしています。SSL が有効な doc ライブラリでは、Windows Vista WebDAV を使用してください。それより以前のバージョンの WebDAV クライアントはサポートされません。

OMPM で必要なアクセス権

OMPM の使用環境を構成するときは、次の表に示すアクセス権を割り当ててください。

コンポーネント 必要なアクセス権

Offscan.ini ファイル

読み取り/書き込みアクセス権 (全コンピューター)

Offscan.exe

  • Offscan.ini の読み取り

  • スキャン ログを格納するディレクトリの読み取り/書き込み

  • スキャン対象ファイルの読み取り

  • スキャン対象ファイルの読み取り/書き込み (/d オプション付きの場合)

データベース ツール

  • スキャン ルールを含むファイルの読み取り

  • SQL Server を実行しているコンピューターへの所有者アクセス権 (データの構成/インポート)

レポート ツール

  • レポート ompm.accdr への読み取りアクセス

  • SQL データベースへの読み取り/書き込みアクセス

  • OMPM 2010 SQL データベースに対する所有者アクセス権

バージョン抽出ツール (VET)

  • 変換対象ファイルへの読み取りアクセス

  • 変換後のファイルを格納するディレクトリへの読み取り/書き込みアクセス

Office ファイル コンバーター (OFC)

  • Ofc.ini への読み取りアクセス (変更する場合は読み取り/書き込みアクセス権が必要)

  • 変換対象ファイルへの読み取りアクセス

  • 変換後のファイルを格納するディレクトリへの読み取り/書き込みアクセス