パフォーマンスと容量の計画について (Office SharePoint Server)

ここでは、単一ファーム用のハードウェア要件を確認する作業について説明します。また、パフォーマンスと容量の要件に影響する特性を識別し、次の項目に関する推奨事項を示します。

  • サーバー ファーム内のサーバー コンピュータの数

  • サーバー ファームのアプリケーション サーバー ロールの構成

  • サーバー ファームの特定のサーバー ロール用のハードウェア要件

容量の計画プロセスには、各自の環境に固有の特性を明らかにするためのテスト プログラムを含める必要があります。特定の環境のパフォーマンスと容量にはさまざまな要因が影響を及ぼす可能性があるため、環境の特性を確認するうえで、テストの実行は不可欠です。

可用性に対する容量の計画

ここでは、「冗長性を計画する (Office SharePoint Server)」を参照して、可用性の要件を既に計画していることを前提としています。「可用性を計画する」を参照してから、組織の最低限の可用性要件を満たすトポロジを使用して、容量の計画を開始します。展開することを決めたトポロジを前提として、ここでは次の項目について判断できるようにします。

  • 容量およびパフォーマンスの目標を達成するために、さらにサーバーを追加する必要があるかどうか。

  • サーバー ファームの容量およびパフォーマンスを最適化するために、アプリケーション サーバー ロールの構成を調整する必要があるかどうか。

  • 容量の要件に基づいて複数のサーバー ファームを計画する必要があるかどうか。

ときには、組織の可用性要件から決定されるサーバー ファームのサイズによって、可用性以外の要件から必要な容量またはパフォーマンスを上回る容量やパフォーマンスが提供されることがあります。この場合、容量の計画プロセスでは、サーバー コンピュータの追加やパフォーマンスの高いハードウェアへの拡張ではなく、サーバー ハードウェアの経済的なサイズ変更に重点を置くことができます。

多くの場合、組織の最低限の可用性要件を満たすトポロジを出発点として使用し、容量およびパフォーマンスの目標を達成するためにサーバー コンピュータを追加または拡張します。

64 ビット版と 32 ビット版

Microsoft Office SharePoint Server 2007 は 32 ビット サーバー上で展開できますが、Office SharePoint Server 2007 ファームの展開には 64 ビット サーバーを使用することをお勧めします。このガイドで示すガイダンスは、64 ビット サーバーで行われたテストに基づいています。そのため、32 ビット サーバーへの展開を計画している場合は、各自の環境における 32 ビット サーバーで追加テストを行う必要があります。通常、このガイドで示すベスト プラクティスとパフォーマンスの傾向は 32 ビット環境にも当てはまりますが、実際の結果は異なる場合があります。

64 ビットのシステム アーキテクチャは、サーバーの拡張性とパフォーマンスを高めるいくつかの特性を備えています。

  • メモリ アドレス指定能力   32 ビット システムで直接アドレス指定できるのは、4 GB のアドレス空間だけです。64 ビット システム アーキテクチャ上で動作している Windows Server 2003 SP1 では、最大 1,024 GB の物理メモリとアドレス指定可能なメモリがサポートされます。

  • より多くのプロセッサのサポートと、プロセッサを追加するごとに向上するパフォーマンス   並列処理とバス アーキテクチャの改善により、64 ビット プラットフォームではより多くのプロセッサ (最大 64 個) をサポートできます。同時に、プロセッサを追加するごとにパフォーマンスがほぼ直線的に向上します。33 個以上の CPU を備えるサーバー プラットフォームは、64 ビット アーキテクチャでのみ構築できます。

  • 改善されたバス アーキテクチャ   現在の 64 ビット チップセットのバス アーキテクチャは、旧世代のアーキテクチャよりも高速化し、帯域も広くなっています。より多くのデータをキャッシュやプロセッサに渡せるようになりました。これは、ダイヤルアップ接続よりも高速な通信を実現するブロードバンド接続にたとえることができます。

32 ビット サーバーへの Office SharePoint Server 2007 の配置の詳細については、「Web サーバーのパフォーマンスを調整する (Office SharePoint Server)」を参照してください。

SharePoint Portal Server 2003 からのアップグレード

Office SharePoint Server 2007 にはより優れた機能セットが含まれているため、SharePoint Portal Server 2003 で確保したパフォーマンスのベンチマークを維持するには、より堅牢なサーバー環境が必要となります。現在お使いの SharePoint Portal Server 用のハードウェアが最新のものであると同時に、現在の環境のサポートに必要なリソースよりもはるかに大きなリソースを備えていないと、Office SharePoint Server 2007 を展開する際にハードウェアをアップグレードする必要が生じます。

各トポロジ層におけるアーキテクチャの均質性を確保すれば、32 ビット サーバーと 64 ビット サーバーが混在する Office SharePoint Server 2007 ファームを展開できます。たとえば、32 ビットと 64 ビットの Web フロントエンド (WFE) サーバーを組み合わせることはできませんが、32 ビットの WFE サーバーとアプリケーション サーバーの含まれるファームで 64 ビットのデータベース サーバーを使用することはできます。

既存のファームをアップグレードする場合や、必要な場所にのみ 64 ビット サーバーを展開することを計画している場合は、64 ビット サーバーの使用に次のような優先順位を付けることをお勧めします。

  1. SQL Server を実行するコンピュータ

  2. アプリケーション サーバー (次の順序で)

    1. インデックス

    2. Excel

    3. 検索

  3. WFE サーバー

パフォーマンスと容量の計画のアプローチ

パフォーマンスと容量の計画に影響する要因はいろいろあります。このため、単純な質問にも明快な答えを得られないことがあります。その結果、パフォーマンスや容量に関連した質問に対する答えは、"状況によって異なりますが" という前置きから始まる場合がほとんどです。

ここで実践するパフォーマンスと容量の計画は、考慮する要因の数を減らして、一般的なシナリオに基づいて単純明快な答えを提供できるように考えられています。ただし、個々のソリューションの特性に基づいて容量およびパフォーマンスの要件を計算するためのガイダンスも提供します。ここに記載されているのは、2 種類の計画のガイダンスです。

  • **パフォーマンスと容量の要件を推定するための推奨事項   **目的のシナリオに基づいて、一連の記事が提供されています。各記事では、標準的な使用法プロファイルを定義し、そのシナリオで容量およびパフォーマンスに影響する主要特性を明らかにします。このプロファイルと主要特性に基づき、あらかじめ用意したデータにより、各自のソリューションについての容量の特性を推定できます。

  • 特定のパフォーマンスと容量の要件を計算するための式とガイダンス   このガイダンスを使用すると、独自の使用法プロファイルを作成 (またはいずれかのシナリオのプロファイルを修正) して、各自のソリューションの容量およびパフォーマンスに影響するすべての要因を計算できます。

パフォーマンスと容量の計画のプロセス

パフォーマンスと容量の計画では、ソリューションのサイズ変更について 3 つの特性に重点を置きます。

  • ソフトウェア境界   実装できる機能、および作成できるオブジェクトにはそれぞれ拡張に関する制限があります。容量の境界を考慮した計画により、ソリューション設計がソフトウェアの拡張性に関する推奨事項に収まるようにします。このガイドで説明するソフトウェアの境界と制限は、すべての Office SharePoint Server 2007 環境に適用できます。

  • スループット目標   スループットは、サーバーやサーバー ファームで処理できる 1 秒あたりの操作の数を表します。サーバー ファームで実行されるすべての種類のアクションによって、サーバー ハードウェアにパフォーマンス負荷がかかります。主なアクションには、ユーザーによる操作、コンテンツのインデックス作成、運用作業 (データベースのバックアップなど) があります。特定の機能を使用することでも、パフォーマンス負荷がかかります。スループット目標を設定する際には、予期したスループット負荷をサポートするためにサーバー ファームが処理する必要のある、1 秒あたりの操作数の推定や計算を行います。

  • データ容量   データ容量には、予期されるコンテンツ データベースと構成データベースの量が含まれます。また、各サービス ロールには、コンテンツのインデックス用のディスク領域、コンテンツのキャッシュ用のディスク領域など、ソリューションに基づく独自のデータ要件があります。

スループット目標とデータ容量の特定に関するガイダンスについては、「パフォーマンスと容量の要件を予測する (Office SharePoint Server)」に記載されている各シナリオを参照してください。

推奨されるプロセスに含まれる手順は次のとおりです。

  • ソフトウェア境界を計画する ソリューション設計と照らし合わせてソフトウェア境界とソフトウェアの制限を確認し、必要に応じて設計を調整します。

  • パフォーマンスと容量の要件を予測する ソリューションに最も適したシナリオを特定し、計画に関する該当記事のガイダンスを確認します。その記事を参照し、各自の環境におけるパフォーマンスと容量の主要な特性を明らかにします。また、ソリューションのスループットとデータ容量の目標を推定し、いくつかのトポロジとハードウェア サイズの例で示されているパフォーマンスと照らし合わせて、その目標を評価します。

  • パフォーマンスと成長に基づくスケール処理を計画する   ソリューションのパフォーマンスの特性を明らかにし、ソリューションのサポートに必要なサーバー ハードウェアを特定した後で、将来の成長に対応するためのスケール処理を計画できます。

  • 各自の環境のソリューションをテストする   開始点トポロジの確定後、各自の展開計画に基づくテスト環境を展開できます。提供されるテスト ツールを使用して、各自の環境における実際のパフォーマンスと容量のデータを確認し、必要に応じて展開計画を修正してください。

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入手できるすべてのブックの一覧については、「Office SharePoint Server 2007 のダウンロード可能なブック」を参照してください。

関連項目

概念

ソフトウェア境界を計画する (Office SharePoint Server)
物理トポロジについての推奨事項 (Office SharePoint Server)
物理ストレージに関する推奨事項 (Office SharePoint Server)
Web サーバーのパフォーマンスを調整する (Office SharePoint Server)
Office SharePoint Server 2007 のキャッシュ
パフォーマンスと容量の計画に影響を与えるその他の要因 (Office SharePoint Server)
パフォーマンスと容量を計画するためのツール (Office SharePoint Server)
ホワイト ペーパー : Office SharePoint® Server 2007 で大きなリストを操作する
SharePoint 用 SQL Server 記憶域の計画と監視 : パフォーマンスの推奨事項とベスト プラクティス (ホワイト ペーパー)