展開に使用する帯域幅のオプションを決定する

利用できるネットワーク帯域幅の量に関係なく、WSUS には、組織のニーズに最も適した展開を構成するための機能が用意されています。帯域幅を有効利用できるかどうかは、選択する Microsoft Update との同期の方法によって大きく左右されます。以下の項では、帯域幅を管理するための WSUS の機能について説明します。

インストール承認まで更新プログラムのダウンロードを保留する

WSUS には、同期時に、更新プログラム自体とは別に更新プログラムのメタデータをダウンロードする機能があります。この構成にすると、管理者が更新プログラムを承認するまで、そのプログラムをコンピュータにインストールするためのファイルは何もダウンロードされません。つまり、管理者がインストールを承認した更新プログラムだけが WSUS サーバーに完全な形でダウンロードされるため、帯域幅と WSUS サーバーのディスク領域を節約できます。ファイルは、ネットワークに展開してクライアント コンピュータがイントラネットから更新プログラムをダウンロードする前に、テストできます。ネットワークの帯域幅を有効利用するには、更新プログラムのダウンロードを保留するように設定することをお勧めします。

更新プログラムのダウンロードを保留している場合

WSUS サーバーをチェーン化している場合は、次の理由により、チェーンの層を深くしすぎないことをお勧めします。

  • WSUS サーバーのチェーンでは、すべてのダウンストリーム サーバーが、Microsoft Update に直接接続されているサーバーでオンになっているダウンロードの遅延オプションを使用するよう自動的に設定されます。この構成は変更できません。WSUS サーバーのチェーン全体は、更新プログラムのダウンロードを保留するか、または同期時にメタデータと更新プログラムの両方をダウンロードするか、のどちらかに設定されます。

  • ダウンロードの保留を有効にした場合、ダウンストリーム サーバーがアップストリーム サーバーで承認されていない更新プログラムを要求すると、その要求がトリガとなりアップストリーム サーバーでダウンロードが行われます。その後、ダウンストリーム サーバーは、図「複数の WSUS サーバー構成でのダウンロードの遅延」に示すように、次の同期時にコンテンツをダウンロードします。ダウンロードの保留を使用している WSUS サーバーの階層が深いと、コンテンツが要求されてダウンロードされてから、チェーンの最下層に渡されるまでに、遅延が生じる可能性が非常に高くなります。

複数の WSUS サーバー構成でのダウンロードを保留している場合

帯域幅を節約するには、ダウンロードを保留すると共に、クライアント コンピュータに更新プログラムが必要かどうかだけを検出する特別な承認を設定すると、特に効果があります。この種類の承認を設定した場合は、WSUS サーバーが更新プログラムをダウンロードしたり、クライアントが更新プログラムをインストールしたりすることはありません。代わりに、クライアントは、更新プログラムが必要かどうかだけを判断します。必要と判断した場合、クライアントは WSUS サーバーにイベントを送信します。このイベントはサーバー レポートに記録されます。管理者は、検出を承認された更新プログラムがクライアントから要求されていることを確認したら、そのプログラムのインストールを承認することができます。

このダウンロードの保留と検出の承認の組み合わせにより、管理者は、WSUS サーバーに接続されているクライアント コンピュータから要求された更新プログラムのみをダウンロードできるようになります。WSUS では、新しい更新プログラムの検出をすべて自動的に承認するルールを WSUS サーバーに作成することで、このシナリオを自動化できます。各種の承認の詳細、および自動承認ルールの作成方法については、Windows Server Update Services の Microsoft ベータ版 の Web サイト (https://go.microsoft.com/fwlink/?LinkId=3626) にある Windows Server Update Services 操作ガイドを参照してください。

WSUS のセットアップ時に、更新プログラムをローカルに格納するよう指定した場合は、ダウンロードの保留は既定で有効に設定されます。このオプションは手動で変更できます。詳細な手順については、「詳細な同期のオプションを構成する」を参照してください。

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更新プログラムのフィルタ

WSUS には、同期時に組織に必要な更新プログラムのみを選択できる機能があります。同期は、言語、製品および更新プログラムの種類によって制限できます。

WSUS サーバーのチェーンでは、すべてのダウンストリーム サーバーが、Microsoft Update に直接接続されているサーバーでオンになっている更新プログラム フィルタ オプションを使用するよう自動的に設定されます。言い換えれば、管理者は、アップストリーム サーバーでのみ更新プログラムのフィルタを設定できます。この構成は変更できません。WSUS サーバーのチェーン全体では、すべてが同じ更新プログラム フィルタを使用する必要があります。

ダウンストリーム サーバーではフィルタの変更はできませんが、更新プログラムのダウンロードを遅延して、言語、製品、または更新プログラムの種類に応じたサブセットを取得できます。ダウンロードの遅延については、「更新プログラムのダウンロードの遅延」を参照してください。

既定では、WSUS は、すべての言語のすべての Windows 製品に関する重要な更新プログラムとセキュリティ更新プログラムをダウンロードするよう設定されます。帯域幅およびディスク領域を節約するには、言語を必要なもののみに制限することをお勧めします。言語のオプションを変更するには、「詳細な同期のオプションを構成する」を参照してください。製品および更新クラスのオプションを変更するには、「製品とクラスを選択する」を参照してください。

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高速インストール ファイルの使用

高速インストール ファイル機能は、更新プログラムの配布メカニズムの 1 つです。高速インストール ファイルを使用すると、ローカル ネットワークの帯域幅は節約できる可能性がありますが、インターネット接続の帯域幅の使用コストは節約できません。既定では、WSUS は高速インストール ファイルを使用しません。この機能の長所と短所を理解するには、まず、WSUS がクライアント コンピュータをどのように更新するかを理解する必要があります。

更新プログラムは通常、更新対象のコンピュータにすでに存在するファイルの新しいバージョンで構成されます。バイナリ レベルでは、これらの既存のファイルと最新バージョンの間に大きな相違がない場合があります。高速インストール ファイル機能は、ファイルのバージョン間で変更された正確なバイトを識別し、その相違のみを含む更新プログラムを作成して配布する手段です。この機能はさらに、クライアント コンピュータ上の元のファイルを最新のファイルとマージします。この機能は、ファイルの 2 つのバージョン間の相違、すなわち差分のみをダウンロードするため、"デルタ配布" と呼ばれることがあります。

この方法を使用して更新プログラムを配布する場合は、帯域幅の初期投資が必要です。高速インストール ファイルは、配布が必要な更新プログラムよりサイズが大きくなります。これは、高速インストール ファイルに、更新する各ファイルの考えられる相違がすべて含まれている必要があるためです。

「高速インストール ファイル機能」の上の図は、更新プログラムを高速インストール ファイル機能を使用して配布する場合を示しており、下の図は、同じ更新プログラムを高速インストール ファイル機能を使用せずに配布する場合を示しています。高速インストール ファイルを有効にすると、最初のダウンロード サイズが更新プログラムの 3 倍近くになることに注意してください。ただし、そのコストは、企業ネットワーク上のクライアント コンピュータの更新に必要な帯域幅が減少することによって緩和されます。高速インストール ファイルを無効にした場合は、最初の更新プログラムのダウンロード サイズは小さくなりますが、ダウンロードしたものはすべて企業ネットワーク上の各クライアントに配布する必要があります。

高速インストール ファイル機能

図「高速インストール ファイル機能」に示されているファイルのサイズは、説明用の例示にすぎません。更新プログラムと高速インストール ファイルのサイズは、更新が必要なファイルに応じてそれぞれ異なります。また、高速インストール ファイルを使用してクライアントに実際に配布される各ファイルのサイズは、更新対象のコンピュータの状態によっても変化します。

重要

高速インストール ファイルを使用した場合はいくつかの不定要素がありますが、確定要素もあります。たとえば、高速インストール ファイルは、配布予定の更新プログラムより常にサイズが大きくなります。帯域幅に限れば、高速インストール ファイルを使用した更新プログラムの配布にかかるコストは、使用しない場合よりも常に低くなります。

すべての更新プログラムが、高速インストール ファイルを使用した配布に適しているわけではありません。このオプションを選択した場合は、この方法で配布する更新プログラムの高速インストール ファイルを取得します。更新プログラムをローカルに格納しない場合は、高速インストール ファイル機能は使用できません。既定では、WSUS は高速インストール ファイルを使用しません。このオプションを有効にするには、「詳細な同期のオプションを構成する」を参照してください。

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バックグラウンド インテリジェント転送サービス

WSUS は、クライアントへのダウンロードやサーバーの同期を含むすべてのファイル転送タスクに バックグラウンド インテリジェント転送サービス 2.0 (BITS) を使用します。BITS はコンピュータ上のネットワーク接続の空き帯域を使用してファイルをダウンロードするための Microsoft のテクノロジです。BITS は、ネットワークが切断されたり、コンピュータが再起動されても、ファイル転送を維持します。BITS の詳細については、MSDN サイト (https://go.microsoft.com/fwlink/?LinkId=15106) の BITS に関するドキュメント (英語) を参照してください。

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