アップグレードかクリーン インストールか : Windows XP Professional の最適な展開方法の選択

Windows XP Professional の最適な展開方法の選択

公開日: 2004年10月25日

By Jerry Honeycutt

概要

Microsoft® Windows® XP Professional の展開を計画するとき、組織が下さなければならない基本的な決定事項の 1 つは、アップグレードとクリーン インストールのどちらを採用するかです。アップグレードとは、Microsoft Windows の以前のバージョンを Windows XP Professional にアップグレードすることです。クリーン インストールとは、コンピュータのハード ディスクをフォーマットし、Windows XP Professional をクリーン インストールしてからドキュメントや設定を移行することです。このホワイト ペーパーでは、2 つの展開方法のメリットとデメリットを説明し、結論として、アップグレードではなく、クリーン インストールを選択することを推奨方法として提案しています。

トピック

概要
インプレース アップグレードのリスク
慎重にアップグレードする
クリーン インストールのリスク
クリーン インストールが最適な理由
まとめ
情報提供元

概要

展開計画は、Microsoft® Windows® XP Professional 展開プロジェクトの基本です。展開ガイドの「Windows XP の導入 パート 1: 計画」が計画作成に役立ちます。計画段階での重要な決定事項の 1 つは、インプレース アップグレードかクリーン インストールのどちらを採用するかです。インプレース アップグレードでは、既存のコンピュータを Windows XP Professional にアップグレードし、構成はそのまま維持します。クリーン インストールでは、コンピュータの現在の構成を新しい構成に置き換え、以前の構成を部分的に選択して移行します。

一見すると、インプレース アップグレードの方が適切な選択であると思われます。Windows XP セットアップ プログラムは無人インストールを実行し、既存の構成を維持します。しかし、このホワイト ペーパーで説明するとおり、インプレース アップグレードはクリーン インストールより劣っています。既存の構成を新しいバージョンの Windows に移行すると、以前の構成に存在する問題も、既知であるか未知であるかにかかわらず、そのまま持ち込まれます。その結果、展開プロセスは複雑化し、エラーが発生しやすくなり、展開後の管理やサポートのコストが増大します。

次のセクションの「インプレース アップグレード」と「クリーン インストール」で、アップグレードとクリーン インストールについて説明します。表 1 は、それぞれのリスクと利点を要約したものです。その後、これらの点についてさらに詳細に説明します。

表 1: 各展開方法のリスクと利点

方法

リスク

利点

インプレース アップグレード

  • 一部のアプリケーションは、以前のバージョンの Windows から Windows XP Professional にアップグレードすると、正常に動作しません。

  • Windows XP Professional に移行されないセキュリティ設定があり、インストール後のセキュリティ強化が必要です。ウイルス、スパイウェアなどの不正プログラムもアップグレード時に移行されてしまいます。

  • アップグレードでは、通常のパフォーマンスの低下によって発生するパフォーマンス問題も移行されます。

  • 構成が不統一であるために混乱が生じ、総保有コスト (TCO) を増大させます。

  • アップグレードでは、標準化された構成でコンピュータを構成し直す機会を失います。

  • アップグレード展開プロセスは、クリーン インストール展開プロセスに比べて複雑です。

  • ユーザーのドキュメントと設定の移行に追加の作業が発生しません。

  • インストール済みのアプリケーションの多くは、以前のバージョンの Windows から Windows XP Professional に正常に移行されます。

クリーン インストール

  • 標準構成に含まれない、ユーザーが任意にインストールしたアプリケーションは再インストールする必要があります。インストール元となるメディアへのアクセスが可能であることが前提になります。

  • ユーザーのドキュメントと設定を、以前の構成から新しい標準構成に移行するためにいくつかの手順を実行する必要があります。

  • クリーン インストールではネットワーク インフラストラクチャへのアクセスと、ソース ファイル、移行データ ファイル、およびシステムのバックアップ用の記憶域が必要です。

  • Windows XP Professional に組み込まれていないドライバのデバイスについては、サード パーティ製のデバイス ドライバをインストール ソース ファイルに追加するか、インストール後にデバイス ドライバをインストールする必要があります。

  • クリーン インストールでは、インプレース アップグレードで発生するアプリケーション移行問題は発生しません。

  • ウイルス、スパイウエアなどの不正プログラムは、コンピュータの新しい構成に移行されません。セキュリティ設定はグループ ポリシーとセキュリティ テンプレートを使用することで簡単に強化できます。

  • クリーン インストールでは新しい構成が展開されるため、インプレース アップグレードに関連するパフォーマンスの低下問題を回避できます。

  • クリーン インストールによる新規構成の展開は TCO を削減します。

  • クリーン インストールでは、新しく構成し直す機会を得ることができるので、管理された環境を作成するときには非常に有利です。

  • クリーン インストール展開プロセスはアップグレード展開プロセスよりも単純で、プロジェクト全体のコストを削減します。

インプレース アップグレード

インプレース アップグレードでは、以前のバージョンの Windows を実行しているコンピュータを Windows XP Professional にアップグレードします。Windows XP セットアップ プログラムは完全に無人で実行されます。無人セットアップ用応答ファイルを使用して追加の設定を加えることもできます。Windows XP セットアップ プログラムは、ユーザーの既存のドキュメントと設定 (デスクトップとアプリケーション) も移行します。以前にインストールしたアプリケーションもすべて残りますが、一部のアプリケーションはアップグレード後、正常に動作しないことがあります (詳細については「アプリケーションの移行」を参照してください)。

インプレース アップグレードの一般的な手順を次に示します。

  1. **コンピュータのハード ディスク全体をバックアップする。**アップグレードする Windows のバージョンに関係なく、Windows 組み込みのバックアップ プログラムを使用できます。またはサード パーティ製のバックアップ プログラムを使用できます。ディスク イメージング ソフトウェアを持っている場合、それを使用してコンピュータのハード ディスク イメージを保存できます。これは、アップグレードに失敗した場合の優れたセーフティ ネットになります。

  2. **Windows XP セットアップ プログラム (Winnt32.exe) を実行し、Windows XP Professional に無人でアップグレードする。**既定では、Windows XP セットアップ プログラムは以前のバージョンの Windows からアップグレードする場合、無人で実行されます。インストールを自動化するため、既存のオペレーティング システムの設定がセットアップ プログラムにより使用されます。無人セットアップ用応答ファイルを使用して、インストールをさらに調整することができます。たとえば、応答ファイルを使用して、Microsoft® Windows® 98 からアップグレードした後、コンピュータを自動的にドメインに参加させることができます。

  3. **必要に応じて追加アプリケーションのインストール、アップグレード、またはアンインストールを行う。**アプリケーションの多くは Windows XP Professional にアップグレード後、正常に動作しますが、そうでないものもあります。Windows XP Professional にアップグレードした後、正常に動作しないアプリケーションでも、そのアプリケーションをアップグレードしたり、再インストールすると、多くの場合、正常に動作します。ディスク ユーティリティなどのユーティリティでは、通常、独立系ソフトウェア ベンダ (ISV) からのアップグレードが必要になります。

インプレース アップグレードには、既存の構成を移行するという明白な利点があります。この利点はユーザー、特に消費者にとって確かに魅力的ですが、TCO の削減と管理された環境を目標としているビジネス環境では必ずしもそうではありません。インプレース アップグレードは簡単に実行できますが、問題があります。たとえば、以前のバージョンの Windows を Windows XP Professional にアップグレードしても、コンピュータは標準構成にリセットされません。Windows XP Professional へのアップグレード後、アプリケーションが正常に動作しないこともあります。インプレース アップグレードの問題についての詳細情報は、「インプレース アップグレードのリスク」を参照してください。

クリーン インストール

コンピュータのハード ディスクをフォーマットし、Windows XP Professional をクリーン インストールします。無人セットアップ用応答ファイルと、Sysprep や RIS (リモート インストール サービス) などのディスク イメージングの技術を使用することで、オペレーティング システムのインストールを完全に自動化できます。また、ユーザー状態移行ツール (USMT) などのツールを使用することにより、ユーザーのドキュメントと設定を保持できます。その結果、対象のコンピュータを標準的な構成にリセットできます。

クリーン インストールの一般的な手順を次に示します。

  1. **コンピュータのハード ディスク全体をバックアップする。**アップグレードする Windows のバージョンに関係なく、Windows 組み込みのバックアップ プログラムを使用できます。またはサード パーティ製のバックアップ プログラムを使用できます。オペレーティング システムの展開にディスク イメージングの技術を使用しますが、この技術をコンピュータのハード ディスク イメージの保存にも使用すると、インストール プロセスに失敗した場合のセーフティ ネットになります。

  2. **ユーザーのドキュメントと設定を移行のため保存する。**1 度限りの展開であれば、Windows XP Professional に含まれている、ファイルと設定の転送ウィザードを使用してユーザーの設定を保存できます。展開が大規模な場合は、ユーザー状態移行ツールを使用すると、移行したい設定を正確に保存できます。(多くのサード パーティ製の移行ツールも利用できます)。

  3. **ハード ディスクをフォーマットする。**元の Windows ディレクトリをそのまま残して、Windows XP Professional を別のディレクトリにインストールできますが、この方法はお勧めしません。その代わりに、ハード ディスクをフォーマットしてクリーン インストールします。パーティションの作成やフォーマットのためのさまざまなツールを利用できます。Windows プレインストール環境 (Windows PE) でコンピュータを起動する場合、ハード ディスクのパーティション作成とフォーマットは Diskpart.exe を使用することをお勧めします。ディスク イメージング ソフトウェアと Sysprep、または RIS を使用してコンピュータにディスク イメージをインストールする場合は、事前にハード ディスクをフォーマットする必要はありません。

  4. **Windows XP Professional 標準構成をインストールする。**既定では、クリーン インストールの場合、Windows XP セットアップ プログラムは無人で実行されません。無人セットアップ用応答ファイルと共にセットアップ プログラムを実行するとインストールを完全に自動化できます。ディスク イメージング ソフトウェアと Sysprep、または RIS を使用してコンピュータにディスク イメージをインストールする場合、インストールも無人セットアップ用応答ファイルを使用して自動化します。

  5. **手順 2 で保存したユーザーのドキュメントと設定を復元する。**手順 2 でユーザーのドキュメントと設定を保存するのに使用したツールで復元します。移行プロセス全体を簡単に自動化できるのでユーザーは対話的に操作する必要はありません。

  6. **手順 4 の標準構成に含まれていないアプリケーションをインストールする。**ディスク イメージング ソフトウェアと Sysprep、または RIS を使用して Windows XP Professional を展開する場合、ディスク イメージにアプリケーションを含めることができます。ディスク イメージにすべての必要なアプリケーションを含めるのではなく、ディスク イメージに標準のアプリケーションだけを含め、そのイメージを展開後、単一のアプリケーションをそれぞれインストールすることができます。ディスク イメージを使用せずに Windows XP Professional を展開する場合、オペレーティング システムのインストール後にアプリケーションをインストールします。

クリーン インストールの利点の 1 つは、インプレース アップグレードに伴うリスクを解決できる点です。これは主に、既存の構成の問題 (既知、未知であるかにかかわらず) が持ち込まれないためです。この方法は、組織全体で構成を標準化する場合に最も適した選択です。各コンピュータは同じ標準構成で起動し、すべてのアプリケーション、ファイル、設定が含まれているので、展開、管理、サポートのコストを削減できます。ポリシーを活用することで制御された構成を維持できます。クリーン インストールの最小のリスクと大きな利点についての詳細情報は「クリーン インストールのリスク」と「クリーン インストールが最適な理由」をそれぞれ参照してください。

インプレース アップグレードのリスク

次に挙げる各セクションでは、Windows XP Professional のインプレース アップグレードのリスクについて説明します。

  • アプリケーションの移行   コンピュータにインストールされているアプリケーションには以前のバージョンの Windows から Windows XP Professional にアップグレードすると、正常に動作しないものがあります。このセクションでは、アプリケーションの移行に関するリスクを扱います。

  • セキュリティとプライバシー   Windows XP Professional では、以前のバージョンの Windows よりもセキュリティが強化されました。Windows XP セットアップ プログラムは以前のバージョンから多くのセキュリティ設定を移行しますが、移行されないセキュリティ設定も多くあり、それらはコンピュータのアップグレード後に設定が必要です。また、インプレース アップグレードでは、コンピュータに既に存在している不正プログラムなどが新しいオペレーティング システムに移行されてしまうなどの問題もあります。

  • パフォーマンス問題   コンピュータ システムや、インストールされているオペレーティング システムのパフォーマンスは、時間が経つにつれて低下します。パフォーマンスに影響を与える問題は、断片化が主な原因ですが、コンピュータを Windows XP Professional にアップグレードした場合でも、使用されていない一時ファイルやアプリケーションなどがそのまま残ります。

  • 保有コスト   以前のバージョンの Windows を実行しているコンピュータを Windows XP Professional にアップグレードすると、コンピュータの構成における不統一、展開のトラブルシューティング、サポート要件の増加などで TCO が増大します。コンピュータの構成が統一され、展開のトラブルシューティングが少なく、ヘルプ デスクへの問い合わせ件数が少ないオペレーティング システムのクリーン インストールと比較すると、対照的です。

  • 好機を逃す   Windows の以前のバージョンから Windows XP Professional にアップグレードすると、大きな機会を逃すことになります。アップグレードの場合、管理された環境を作成するための標準化された構成を適用する機会を失います。

  • 展開プロセス   一般的な考えとは逆ですが、アップグレードでの展開プロセスはクリーン インストールほど簡単ではありません。このセクションでは、インプレース アップグレードの複雑な点を説明します。

アプリケーションの移行

一部のアプリケーションは Windows の以前のバージョンから Windows XP Professional にアップグレードすると、正常に動作しません。しかし、再インストールすると多くの場合正常に動作します。これは、16 ビット バージョンの Windows からアップグレードした場合に主に当てはまり、以前の 32 ビット バージョンの Windows から移行した場合は正常に動作します。この現象は、次の理由によって発生します。

  • レジストリの構成   レジストリの構成は Windows の 16 ビット バージョンと 32 ビット バージョン (Windows XP Professional を含む) では異なります。アップグレード後も、アプリケーションは 16 ビット バージョンの Windows のレジストリ構成を使用して設定を探し続けます。

  • 異なるバイナリ ファイル   一部のアプリケーションのセットアップ プログラムは、そのセットアップ プログラムが検出した Windows のバージョンによって異なるバイナリ ファイルをインストールします。16 ビット バージョンの Windows から Windows XP Professional にアップグレードした場合、アプリケーションが使用するバイナリファイルとの互換性が失われます。

これらのアプリケーションの多くは手動でインストールする必要はありません。そのアプリケーションが Windows XP Professional へのアップグレード後に正常に動作するよう、ISV によりアップグレード パックが作成されます。Windows XP セットアップ プログラムは、アプリケーションが移行後も正常に動作するよう、そのアップグレード パックを使用して必要な移行を行います。アプリケーションのアップグレード パックを入手できない場合は、そのアプリケーションを再インストールする必要があります。

アップグレード前のネットワーク調査で、再インストールしても Windows XP Professional と互換性を持たないアプリケーションが見つかることがあります。ISV では、これらのアプリケーションを Windows の特定のバージョン用に作成しています。最もよい方法は、ISV からアップグレードを入手することです。ただし、Microsoft では、アプリケーションの非互換性を検出し、修正プログラムの展開に役立つ「Application Compatibility Toolkit」(英語) を提供しています。

note.gif  メモ
一部のアプリケーションがアップグレード プロセス全体を妨害し、アップグレードを続行するのに、それらの削除または無効化が必要になることがあります。これらのアプリケーションには、ウイルス スキャナ、サード パーティ製のファイル暗号化技術、ファイル システム フィルタなどがあります。このような妨げとなる問題を調べるには、Windows XP セットアップ プログラムを Check Upgrade Only モードで実行します。このモードでは、Windows XP Professional にアップグレードする前に削除する必要があるアプリケーションの一覧を示すレポートが作成されます。このモードで Windows XP セットアップ プログラムを実行するには、checkupgradeonly というコマンド ライン スイッチを指定して Winnt32.exe を実行します。

セキュリティとプライバシー

Windows XP Professional は、セキュリティ設定が強化され、以前のバージョンの Windows よりもさらに堅牢で高度な安全性と機密性を提供します。このオペレーティング システムでは、組織が個々に実装できるセキュリティ関連の設定を数多く用意しました。Windows XP Professional には、定義済みのセキュリティ テンプレートも含まれています。このテンプレートを変更せずに実装するか、または、設定を変更して、よりカスタマイズされたセキュリティ設定のベースとして実装することができます。Windows XP Professional Service Pack 2 は、セキュリティがさらに強化されています。

アップグレードの間、Windows XP セットアップ プログラムは一部の重要なセキュリティ設定を Windows XP Professional の既定の設定にリセットします。他の設定、特に Microsoft® Windows 2000 Professional の設定はそのまま維持されます。そのためアップグレード プロセスは、Windows XP Professional の既定の設定にリセットして既存のセキュリティ設定のレベルを下げることがあります。これは、Windows 2000 Professional などの以前のバージョンの Windows を Windows XP Professional の既定の設定よりも高度なセキュリティに設定している場合にのみ、当てはまります。

インプレース アップグレードから生じるリスクに不正プログラムがあります。以前のバージョンの Windows を実行しているコンピュータにワームやウイルス、スパイウェアなどの不正プログラムが存在する場合、これらは、Windows XP Professional へのアップグレード後にも残ります。インプレース アップグレードでは、インストールしたアプリケーションが削除されないのと同様に、これら不正プログラムも構成から削除されません。

note.gif  メモ
Windows XP Professional にアップグレードするとき、最新のサービス パックを含むスリップ ストリーム バージョンのオペレーティング システムを使用することをお勧めします。また、Update.exe を含む重要な更新プログラムと推奨する更新プログラムをスリップストリームするには、「Microsoft Windows XP 修正プログラム インストールと導入ガイド」を参照してください。Update.exe が含まれていない重要な更新プログラムと推奨する更新プログラムは、スリップストリームすることができません。この場合、Windows XP Professional にアップグレード後、このオペレーティング システムは必要な重要な更新プログラムと推奨する更新プログラムなしで起動されます。この場合、インストール後のタスクを計画して残りの重要な更新プログラムと推奨する更新プログラムをインストールする必要があります。この間、コンピュータは、インストール後のタスクが終了するまで脆弱性が露呈したままになります。

パフォーマンス問題

コンピュータ システムの通常の使用において、大量のイベントが発生します。これらのイベントは、時間が経つにつれコンピュータのパフォーマンスに影響を与えます。それらを次に示します。

  • ディスクの断片化   多くのファイルをディスクに書き込んだり、削除したりすると、断片化が発生します。また、Word 文書の編集時に、ファイルの内容の追加、削除などで更新されたバージョンを保存しても断片化が発生します。断片化は正常な動作であり、単一のファイルの断片がディスク上の複数の場所に非効率に分散されている状態です。その結果、ファイルへアクセスするための時間がかかります。ディスク最適化プログラムを実行すると、ファイル全体の内容がディスク上で隣接した状態で配置されるようにファイルが再編成されます。

  • ディスク領域の使用   ディスクの使用領域は通常の使用において増加します。次の一覧では、時間の経過と共にディスク領域の消費量が増加するファイルの種類を説明します (これらのファイルの大部分は、ディスク クリーンアップ (Cleanmgr.exe) を実行すると自動的に削除されます)。

    • アプリケーションのインストール

    • コンテンツ インデクサのカタログ ファイル

    • デバッグ ダンプ ファイル

    • ダウンロードされたプログラム ファイル

    • イベント ログ

    • ディスクに不要なファイルを残すアプリケーションの不完全なアンインストール

    • Microsoft エラー報告の一時ファイル

    • Microsoft Office の一時ファイル

    • オフライン ファイル

    • オフラインの Web ページ

    • 古い Chkdsk ファイル

    • ごみ箱

    • セットアップのログ ファイル

    • 一時ファイル

    • インターネット一時ファイル

    • 一時オフライン ファイル

    • 一時リモート デスクトップ ファイル

    • 一時セットアップ ファイル

    • WebClient の一時ファイル

  • レジストリ サイズの増加と断片化   レジストリの当初の設計では、すべてのレジストリ ファイルをページ プールに格納するようになっていました。32 ビット カーネルの場合、カーネルの仮想アドレス空間のレイアウトによって、事実上、ページ プールの容量は約 160 MB に制限されます。ページ プールの大部分がレジストリだけに使用され、その他のカーネル モード コンポーネントにはわずかなメモリしか残されなくなり、問題が生じてきました。これは、レジストリで空き領域を使用するターミナル サービスや COM (コンポーネント オブジェクト モデル) などのアプリケーションが原因です。アプリケーションによりレジストリ キーの削除や書き込みが多く行われると、ディスクの断片化と同様、レジストリに断片化が発生します。その結果、レジストリ情報へアクセスするための時間がかかります。同様に、非効率的なアプリケーションが値を少しずつ増分している場合も断片化の原因になります。また、アプリケーションのアンインストール プログラムがレジストリからすべての設定を削除しない場合があります。その結果、不要なエントリによりレジストリは乱雑な状態になります。

  • マスタ ファイル テーブルのサイズの増加   NTFS ファイル システムは、マスタ ファイル テーブル (MFT) を使用してディスク上のすべてのファイルに関するカタログ情報を作成します。サイズ、日付および時間のタイム スタンプ、アクセス許可、データ内容などファイルに関するすべての情報は、MFT エントリか MFT エントリで示される MFT の外部の空き領域に格納されます。ファイルがファイル システムに追加されると、さらに多くのエントリが MFT に追加され、MFT のサイズが増大します。ファイルがファイル システムから削除されると、NTFS は MFT エントリを空きとしてマークして、再び使用します。ただし、これらのエントリに割り当てられていたディスク領域は再割り当てされません。したがって、MFT のサイズは減少しません。

  • ページ ファイルの断片化   すべてのバージョンの Windows が、仮想メモリという技術を使用して、物理的に利用可能なメイン メモリの容量よりも多くの容量を必要とするプロセスを実行しています。各プロセスは、それぞれ仮想アドレス空間を持ち、アプリケーションはコンピュータにインストールされている物理的なメモリ以上のメモリのアドレス指定が可能です。この技術を実装するには、ハード ディスク ドライブの空き容量を擬似的に増設したメモリとして使用します。この領域はページ ファイルと呼ばれます。時間が経つにつれ、メモリ マネージャによりページ ファイルに書き込みが加えられファイルが拡張される結果、断片化が生じます。ページ ファイルの断片化はパフォーマンスの低下の原因となります。

  • 任意にインストールするアプリケーション   任意にインストールするアプリケーションとは、ユーザーがインストールするアプリケーションです。たとえば、ゲーム、教育用ソフトウエア、個人財産管理ソフトウエア、Web アプリケーション、写真編集プログラム、ユーティリティ、Power toys などです。任意にインストールするアプリケーションは、Windows XP Professional へのアップグレード後もコンピュータにそのまま残ります。このようなアプリケーションは、COM の登録、シェル拡張、ハード ディスクの使用、レジストリの使用などによってパフォーマンスに影響を与える場合があります。これらのアプリケーションで不要なものは、ディスクの空き容量の浪費と問題発生の原因となりシステムを不安定にします。

  • ユーザー プロファイル   不要なユーザー プロファイルはコンピュータを乱雑な状態にし、Windows XP Professional へのアップグレード後も残ります。すべてのユーザー プロファイルが Windows XP Professional へのアップグレード後もそのまま残ります。

  • デバイス ドライバ   Windows 2000 Professional のデバイス ドライバのバージョンが Windows XP Professional 組み込みのデバイス ドライバよりも古ければ、Windows XP セットアップ プログラムは、標準の組み込み Windows 2000 Professional デバイス ドライバを Windows XP Professional デバイス ドライバに移行します。セットアップ プログラムが Windows 2000 Professional にインストールされているデバイス ドライバを使用した場合、このドライバは Windows XP Professional では正常に動作しない可能性があります。16 ビット バージョンのデバイス ドライバは、Windows XP Professional と互換性がありません。Windows XP セットアップ プログラムは 16 ビット バージョンのデバイス ドライバを識別し、組み込みのデバイス ドライバに置き換えます。どちらの展開方法でも、Windows XP Professional 用に作成されたデバイス ドライバを OEM (Original Equipment Manufacturer) メーカーからダウンロードする必要がある場合があります。

  • ネットワーク プロトコル   インストールされるプロトコルの数を制限することで、ネットワークのパフォーマンスが向上し、ネットワーク トラフィックが減少します。インプレース アップグレード プロセスでは、不要なプロトコルは削除されません。パフォーマンスを向上させるために不要なプロトコルを削除するには、これらを手動で削除する必要があります。

保有コスト

インプレース アップグレードの場合、Windows XP Professional をクリーン インストールした他のコンピュータとの互換性問題が発生する可能性があります。たとえば、Windows 2000 Professional では、システム ファイルが C:\Winnt のフォルダにインストールされます。Windows XP Professional では、アップグレードの場合にはシステム ファイルがこれと同じフォルダにインストールされますが、クリーン インストールの場合にはセットアップ プログラムがオペレーティング システムを C:\Windows のフォルダにインストールします。この不一致から混乱と問題が生じ、ヘルプ デスクへの問い合わせ件数が増え、管理コストが増大する可能性があります。Microsoft® Windows NT® 4.0 Workstation と Windows XP Professional のユーザー プロファイルの格納先フォルダについても、これと同じような不一致の問題が存在します。

以前のバージョンの Windows から Windows XP Professional にアップグレードしたからといって、これまで管理されていなかった環境が、瞬時に管理されたデスクトップ環境に変わるわけではありません。これは特に 16 ビット バージョンの Windows からのアップグレードのときに当てはまります。セキュリティ機能の欠乏により、管理は簡単ではありません。構成の不一致が原因で、組織内のデスクトップのほとんどが管理されていない状況の場合は、Windows XP Professional へのインプレース アップグレードは不一致の問題を軽減する手段にはなりません。今までと同じ問題が発生します。それぞれのコンピュータの設定が異なり、インストールされているアプリケーションも異なるという状況は存続します。この結果、懸案事項が増え、インプレース アップグレード中およびアップグレード後に発生する問題のトラブルシューティング、再現、および解決がさらに難しくなります。

好機を逃す

各コンピュータを標準化された構成にリセットできるため、組織に Windows XP Professional を展開することは、環境を整え直すチャンスと言えます。クリーン インストールではなく、インプレース アップグレードを採用すると、この貴重な機会を逃すことになります。インプレース アップグレードを選択することは、次に挙げる機会を失うことになります。

  • Microsoft Consulting Services の報告によると、ある企業ではコンピュータ 1 台につき年間 46 ドルのコスト削減を達成しました。これは、デスクトップの巡回回数の 3% 減、ヘルプ デスクの問い合わせ件数 10% 減、およびヘルプ デスクの通話時間 25% 減によるものです。

  • Microsoft Consulting Services によると、Windows XP Professional を導入した企業は、以前のバージョンの Windows と比較して、ディスク イメージを平均 60%、構成エラーを平均 71% 減らすことができます。コスト削減の総額は、コンピュータ 1 台につき年間約 104 ドルです。

展開プロセス

上で説明したように、アプリケーションの移行、セキュリティ、パフォーマンス、および TCO には、展開プロセスを複雑にする可能性がある問題がいくつかあります。インプレース アップグレード プロセスを実行した場合に、複雑になるいくつかのプロセスを次に挙げて、説明します。

  • **最新のサービス パックに含まれていない更新プログラムを展開する。**最新のサービス パック以降に公開された重要な更新プログラムまたは推奨する更新プログラムを展開するのは、クリーン インストールの場合より、アップグレードの方が困難です。Windows XP Professional のソース ファイルに重要な更新プログラムまたは推奨する更新プログラムをスリップストリームする方法については、「セキュリティとプライバシー」で説明します。

  • **既存の構成を標準構成に更新する。**Windows XP Professional にアップグレードした後に、既存の構成を標準構成に更新することは困難です。たとえば、ウイルス対策ソフトウェア、VPN クライアント ソフトウェアなどのアプリケーションを更新して展開し、標準構成にできるだけ適合するように設定を更新する必要があります。不要な、任意にインストールされるアプリケーションにアクセスできないようにしたり、削除したりするプロセスは複雑です。

  • **展開プロセスをトラブルシューティングする。**展開プロセスのトラブルシューティングとデバッグは、クリーン インストールよりインプレース アップグレードの方が困難です。標準構成に比べて未確認の構成があるためです。不確定要素も多数あります。

  • **アプリケーションのセットアップの失敗から回復する。**Windows XP Professional にアップグレードしたら、そのシステムが標準構成になるようにアプリケーションを自動でインストールしますが、インプレース アップグレードの場合は、インストールが失敗すると回復作業が複雑になるため、より高度なサポートが必要になります。

  • **インプレース アップグレードのスケジュール。**概して、インプレース アップグレードを完了するのに必要な時間は、クリーン インストールより相当長くなります。必然的な問題から「インプレース アップグレードのリスク」で説明している問題までさまざまな問題点があるためです。これにより、プロジェクト全体のコストが高くなり、また、展開、管理、およびサポートの問題が発生する可能性が高まります。

  • **バックエンドの変更点に適合する。**インプレース アップグレードでは、バックエンドの変更箇所に適合している標準構成に既存の構成を更新する作業が面倒なため、バックエンドの変更箇所に適合することは困難です。たとえば、インプレース アップグレードでは、Novel Netware から Microsoft® Active Directory® に移行する作業との調整が困難です。

慎重にアップグレードする

上で説明したように、インプレース アップグレードは多くのリスクを伴います。システムをアップグレードすると、セキュリティが脆弱になるため、インストール後のタスクとしてセキュリティを再構成する必要があります。このアップグレードに伴うパフォーマンスの問題を解決するのは面倒な作業です。標準構成を展開することは不可能ではありませんが、困難です。さらに、展開プロセス全体が、クリーン インストールより複雑です。

これらの理由から、クリーン インストールを採用することをお勧めします。クリーン インストールでは、これに伴うリスクがほとんどなく、多くの利点があります。それでもインプレース アップグレードを採用する場合は、Windows XP Professional と Microsoft® Office 2003 Editions にアップグレードするときのベスト プラクティスを次に紹介するので、参考にしてください。

Windows XP Professional

ホワイト ペーパーの「Windows XP の導入 パート 1: 計画」では、インプレース アップグレードとクリーン インストールで Windows XP Professional を展開する場合の考慮事項について述べています。次に示したのは、インプレース アップグレードに伴うリスクを主に減らすための手順です。

アプリケーションの移行

  • Windows 98 の圧縮されているボリュームを圧縮解除する。Windows XP セットアップ プログラムは、Windows 98 の圧縮されているボリュームをアップグレードできません。これらのボリュームを圧縮解除してから、Windows XP Professional にアップグレードするように計画する必要があります。

  • アップグレードが不可能または不必要なアプリケーションを削除する。アップグレード後に正常に動作しない、または必要ないアプリケーションを削除する計画を立てます。それらの種類を次に示します。

    • カスタムの電源管理ソリューションとツール   Windows XP Professional は、ACPI (Advanced Configuration and Power Interface) をサポートしているため、APM (Advanced Power Management) を ACPI に置き換えます。カスタムの電源管理ソリューションを削除してから、アップグレードしてください。

    • カスタムのプラグ アンド プレイ ソリューション   このソリューションは必要なくなりました。Windows XP Professional では、プラグ アンド プレイをフル サポートしています。カスタムのプラグ アンド プレイ ソリューションを削除してから、アップグレードしてください。

    • フォールト トレランス オプション (ディスク ミラーリングなど)

    • Windows NT 4.0 Workstation 用に設計された他のネットワーク クライアントとサービス   TCP/IP、IPX/SPX のプロトコル スタックなどの他社製のネットワーキング ソフトウェアのうち、Windows NT Workstation 4.0 用に設計されたものは、Windows XP Professional にアップグレードした後に機能しません。

    • 無停電電源ソフトウェア   Windows XP Professional では、無停電電源装置 (UPS) のサポートが組み込まれています。アップグレード中に UPS がコンピュータに接続されていないことを確認してください。

  • 互換性のないアプリケーションのアップグレードを入手する。インストールされているアプリケーションに関するネットワークのインベントリを収集します。インプレース アップグレード プロセスで優先順位の高いアプリケーションに互換性があるかどうかを動作確認します。Windows XP Professional にアップグレードした後に正常に動作しないアプリケーションがある場合は、ISV に連絡してアップグレード パックを入手するか、インストール後のタスクとしてそのアプリケーションを再インストールする計画を立てます。たとえば、ファイル システム フィルタに依存するアプリケーション (ウイルス対策ソフトウェア、ディスク ツール、ディスク クォータ ソフトウェア) をアップグレードする必要があります。アプリケーションの互換性の動作確認に関する詳細については、ホワイト ペーパーの「Windows XP の展開 - アプリケーションの互換性について」を参照してください。

  • コンピュータごとにアップグレードの確認テストを実行する。Windows XP のセットアップ プログラムには、Check Upgrade Only モードがあります。実際にアップグレードする前にこのモードでアップグレード プロセスをテストできます。実際のアップグレード中に発生する可能性のある問題を警告するレポートが作成されます。たとえば、ハードウェアの互換性の問題、アップグレードで移行されないソフトウェアなどが報告されます。このモードで Windows XP セットアップ プログラムを実行するには、checkupgradeonly のコマンド ライン スイッチを指定して Winnt32.exe を実行します。詳細については、「Application Compatibility—Migrating from Windows Me or Windows 98」(英語) を参照してください。

セキュリティとプライバシー

  • 各コンピュータをスキャンして、ウイルスや不正プログラムがないかどうかを調べる。「セキュリティとプライバシー」では、Windows XP Professional にアップグレードしても、既にインストールされている不正プログラムは削除されないことについて説明します。既存のオペレーティング システムをアップグレードする前に、ウイルス、スパイウェアなどがないかどうかをスキャンして、移行しないように注意してください。

  • グループ ポリシーとセキュリティ テンプレートを利用してセキュリティ設定を強化する。Windows の以前のバージョンから Windows XP Professional にアップグレードすると、一部のセキュリティ設定が Windows XP Professional の既定値にリセットされます。セキュリティ設定の管理には、グループ ポリシーとセキュリティ テンプレートを使用して、組織のセキュリティ設定を定義します。詳細については、「Best Practices for using Security Templates」(英語)、および「脅威とその対策 : Windows Server 2003 と Windows XP のセキュリティ設定」を参照してください。

パフォーマンス問題

  • ディスク領域を回復する。アップグレード対象の各コンピュータで、ディスク クリーンアップを実行し、浪費されているディスク領域を回復します。ディスク クリーンアップでは、「パフォーマンス問題」で説明したような使用されていないファイルのほとんどが削除されます。ディスク クリーン アップ機能のないバージョンの Windows をアップグレードする場合は、このようなファイルを自動的に削除するスクリプトを記述し、Windows XP Professional へのアップグレード前に実行してください。

  • 使用していない、不要なアプリケーションを削除する。[プログラムの追加と削除] で使用していない不要なアプリケーションを削除し、ディスク領域を回復します。また、任意にインストールするアプリケーションで不要なものは削除します。任意にインストールするアプリケーションは、ユーザーの作業妨害やシステムの不安定要素になります。

  • 使用していないユーザー プロファイルを削除する。コマンド ライン ユーティリティやスクリプトを使用すると、不要なユーザー プロファイルの削除作業を自動化できます。

  • 不要なネットワーク プロトコルとソフトウェアを削除する。不要なネットワーク プロトコルやソフトウェアがパフォーマンスに与える影響は、「パフォーマンス問題」で説明したとおりです。Windows XP Professional にアップグレードする前に削除してください。

  • 代替デバイス ドライバを入手する。16 ビット バージョンの Windows からのアップグレードの場合、コンピュータにインストールされている各デバイス ドライバが、Windows XP Professional に組み込まれていることを確認します。それ以外のバージョンの Windows からアップグレードする場合でも、Windows XP セットアップ プログラムにより既存のデバイス ドライバが移行されるかどうかをテストします。また、移行によりコンピュータのパフォーマンスに悪影響が出ないかどうかもテストします。移行が行われない場合やパフォーマンスの低下が見られる場合は、OEM から代替のデバイス ドライバを入手します。

  • 各コンピュータのハード ディスクを最適化する。Windows XP Professional へのアップグレード直後に、コンピュータのハード ディスクを最適化します。Windows XP Professional には、ディスク デフラグ ユーティリティが含まれています。詳細については、Windows XP Professional オンライン ヘルプを参照してください。

展開プロセス

  • アップグレード後の構成を標準構成に更新するための、インストール前のタスクおよびインストール後のタスクについて計画する。このタスクには、ウイルス対策ソフトウェアや仮想プライベート ネットワーク (VPN) クライアントなどの標準構成に含まれるアプリケーションをインストールすることも含まれます。

  • 最新のサービス パック、重要な更新プログラム、および推奨する更新プログラムを、Windows XP Professional ソース ファイルにスリップストリームする。Update.exe を含む重要な更新プログラムまたは推奨する更新プログラムは、ソース ファイルにスリップストリームすることができます。ただし、Update.exe を含まない更新プログラムについては、インストール後のタスクでこれらのプログラムをインストールすることを計画してください。

  • 動的な更新を設定する。動的な更新機能により、Windows XP セットアップ プログラムを拡張する重要なコンテンツがコンピュータにダウンロードされ、使用されます。詳細については、「Using Windows XP Professional with Service Pack 1 in a Managed Environment」(英語)、および「Planning for Dynamic Update」(英語) を参照してください。

Office 2003 Editions

以前のバージョンの Windows を Windows XP Professional にアップグレードするのに伴うリスクに比べて、以前のバージョンの Microsoft Office を Office 2003 Editions にアップグレードするのに伴うリスクは多くありません。Office 2003 セットアップ プログラムはアップグレード プロセスを巧妙に実行します。以前のバージョンの Office を削除して、現行バージョンをインストールし、オプションで既存の機能のインストール状況や設定を移行することも可能です。機能のインストール状況および設定の移行を管理者が完全に制御できます。

次に説明する内容を実行すると、Office 2003 Editions へのアップグレードに伴うリスクをさらに軽減することができます。

  • 最も大きなリスクは、ドキュメントとソリューションの互換性です。ホワイト ペーパーの「Office 97 から Office 2003 Editions への移行」は、以前のバージョンの Office から Office 2003 Editionss にアップグレードする際に発生する可能性のある問題点を知るうえで有用な参考文献です。既知の問題を 88 ページにわたって説明し、詳細が記述されているサポート技術情報のリンク情報も記載されています。

  • Microsoft® Office® Outlook 2003 のユーザーは、以前のバージョンの Microsoft 電子メールやカレンダー アプリケーションのユーザーと、電子メール メッセージや予定表データを交換でき、他のアプリケーションのユーザーともデータのやり取りができます。ただし、以前のバージョンの Microsoft Outlook やその他のアプリケーションが、Outlook 2003 のすべての機能をサポートしているわけではありません。アップグレードの方針を検討する際は、新しい機能をどのように、どの時点で利用できるようにするのかについても検討するようにしてください。詳細については、「Outlook 2003 へのアップグレード」を参照してください。

  • Office 2003 Editions では、新しい配布方法を利用できます。圧縮 CD イメージを使用して、ローカル インストール ソースを展開できます。ローカル インストール ソースがあると、Office 2003 Editions の機能の修復にネットワーク接続が要求されなくなるため、モバイル ユーザーに対するサポートが特に向上します。修正プログラムの適用も、Microsoft Office 2000 と Microsoft Office XP の展開に使用する管理者インストール ポイントに適用するよりも、ローカル インストール ソースに適用する方が簡単です。詳細については、「ローカル インストール ソースの利用」を参照してください。

クリーン インストールのリスク

クリーン インストールに伴うリスクは、インプレース アップグレードほど多くありません。ここでは、クリーン インストールに伴うリスクについて説明します。

  • 任意にインストールするアプリケーション   クリーン インストールでは、標準構成に含まれていない任意にインストールするアプリケーションを再インストールする必要があります。

  • 設定とデータの移行   コンピュータのハード ディスクをフォーマットして、Windows XP Professional をインストールすると、ユーザーのドキュメントと設定がコンピュータから削除されます。そのため、クリーン インストールでは、ユーザーのドキュメントと設定を移行する方法を検討する必要があります。

  • インフラストラクチャの要件   ほとんどの場合、クリーン インストールでは、ネットワーク インフラストラクチャへのアクセスが必要になります。通常、インストール プロセスでは、広いネットワーク帯域幅が必要です。システムのバックアップ、一時的な移行データ、Windows XP Professional ソース ファイル、ディスク イメージなどに使用するために、相当量のネットワーク記憶域が必要になります。

  • デバイス ドライバ   Windows XP Professional の組み込みのデバイス ドライバに含まれていないデバイス ドライバは、すべて再インストールする必要があります。これらのデバイス ドライバは、ユーザーのソース ファイルに追加することもできます。

任意にインストールするアプリケーション

コンピュータに標準構成をインストールした後、インストールが許可されている任意のアプリケーションは、再度インストールする必要があります。これは、次の理由から問題になることがあります。組織がこの方式の利点を利用して、管理されたデスクトップ環境を構築した場合、ユーザーには、自分のアプリケーションをコンピュータにインストールする権限が付与されません。オペレーティング システムのインストール終了後、管理者には、ユーザーのためにアプリケーションをインストールする作業がさらに発生します。また、このような許可された任意にインストールするアプリケーションも、インストール元となるメディアが利用できなければインストールすることはできません。

note.gif  メモ
この問題がリスクに値するかどうかは、組織の環境によります。管理された環境の構築が組織の目標であれば、任意にインストールされるアプリケーションを環境から排除し、アプリケーションをインストールするのに管理者権限が要求されることは、むしろ利点と言えます。任意にインストールするアプリケーションはユーザーの作業の妨げとなったり、システムを不安定にさせたりする原因にもなります。管理された環境の最終目標は、これらの発生を防ぐことです。

設定とデータの移行

フォーマット後のハード ディスクに Windows XP Professional をインストールする、または、ディスク イメージをコンピュータに適用すると、ユーザーのドキュメントと設定は削除されてしまいます。そのため Microsoft では、ユーザーのドキュメントと設定を移行するユーザー状態移行ツールを提供しています。このツールを使用する場合には、ユーザーのドキュメントと設定を保存するためのインストール前のタスク、および、それらを復元するためのインストール後のタスクの計画が必要になります。このツールの使用方法の詳細については、「Creating a User State Migration Plan for Image-based Installations」(英語) を参照してください。

ユーザーのドキュメントと設定を移行するかどうかを選択できることが、クリーン インストールの大きな利点です。さまざまな値の設定を標準構成に置き換えることができます。ユーザー状態移行ツールなどのツールを使用すると、承認されている設定は移行し、それ以外の設定は標準値に戻すことも可能です。ユーザーのニーズと組織のデスクトップ管理要件のバランスを考慮しながら、インストール前およびインストール後のタスクを綿密に計画しても、その計画の中にリスクは潜んでいます。

インフラストラクチャの要件

クリーン インストールでは、次のタスクを実行するためにネットワーク インフラストラクチャへのアクセスが必要になります。

  • **標準構成のインストール前にコンピュータのバックアップを作成する。**バックアップ ファイルを格納するために、ネットワーク記憶域が必要になります。別のパーティション上のローカル記憶域や USB デバイスなどのリムーバブル メディアを使用してもかまいません。4GB 以上の USB フラッシュ デバイスや高速 USB ドライブがあれば、ネットワークに影響を与えずに、ユーザーのデータを格納したり転送したりすることができます。

  • **ユーザーのドキュメントと設定を保存および復元する。**移行データ ファイルを格納するには、ネットワーク記憶域が必要です。

  • **Windows XP Professional ソース ファイルまたはディスク イメージにアクセスする。**ソース ファイルやイメージ ファイルを格納するには、ネットワーク記憶域が必要です。

  • コンピュータをドメインに参加させる。

また、アプリケーションによっては、ネットワーク接続を必要とするものがあります。Office Outlook 2003 と Exchange キャッシュ モード機能が、この例です。Exchange キャッシュ モードの使用により、Microsoft Exchange Server の電子メール アカウントを使用しているユーザーは、より高度なエクスペリエンスを得ることができます。ユーザーのメールボックスのコピーが作成され、ローカル コンピュータに格納されます。このコピーによりデータへのアクセスが速くなり、メール サーバーとの同期も頻繁に行われるようになります。ユーザーのメールボックスのフォルダ サイズによっては、最初の同期プロセスに長時間かかる場合があります。

デバイス ドライバ

Windows XP Professional の組み込みのデバイス ドライバに含まれていないデバイス ドライバをユーザーがインストールしている場合があります。このような場合、適切なデバイス ドライバを入手して、それらを標準構成のインストール後にインストールする必要があります。ただし、このリスクを軽減することもできます。必要なデバイス ドライバのうち Windows XP Professional で提供されないデバイス ドライバを予測できる場合は、それらを OEM から入手して標準構成に加える方法もあります。Windows XP セットアップ プログラムにより、それらのデバイス ドライバは自動的に検出され、利用されます。詳細については、「OEM プラグ アンド プレイ ドライバを Windows XP に追加する方法」を参照してください。

クリーン インストールが最適な理由

このホワイト ペーパーでは、インプレース アップグレードとクリーン インストールに伴うリスクについて説明しました。これまで説明したとおり、インプレース アップグレードは複雑でリスクが伴います。これに比べて、クリーン インストールに伴うリスクは少なく、Microsoft やサード パーティのソフトウェア ベンダが提供しているツールを使用すると、ほとんどの移行は簡単に実行できます。

より管理された環境への移行を望んでいる組織では、クリーン インストールが最適な選択肢です。この方式を採用することで得られる最大の利点は、組織内のすべてのデスクトップが標準化された構成に統一されることです。標準外の構成が原因で発生するサポート問題、ヘルプ デスクへの問い合わせ件数、およびトラブルシューティングとデバックにかかる時間は大幅に削減されます。

次の表は、クリーン インストールが最適な選択肢となる理由をまとめたものです。

アプリケーションの移行

クリーン インストールでは、インプレース アップグレードで発生するアプリケーションの移行問題が発生しません。以前のバージョンの Windows をアップグレードするわけではないので、アップグレード後に再インストールする必要のあるアプリケーションについて考慮する必要はありません。また、展開する標準構成には承認されたアプリケーションが含まれているため、承認されていない任意にインストールするアプリケーションのインストールを防止できます。このような承認外のアプリケーションはユーザーの作業の妨害になり、システムの安定性を損なう原因にもなります。

セキュリティとプライバシー

クリーン インストールでは、セキュリティとプライバシーに関する次のようなリスクに対処できます。

  • その時点までに公開された重要な更新プログラムや推奨する更新プログラムをすべて含めたディスク イメージを展開することで、更新プログラムを適用していないコンピュータが原因で生じるアップグレード プロセス中のセキュリティ リスクを軽減できます。

  • アップグレード プロセスによって、セキュリティ設定のレベルが低下することはありません。その代わり、グループ ポリシーとセキュリティ テンプレートを使用して、組織に必要なセキュリティ レベルで Windows XP Professional を展開することができます。

  • コンピュータの各構成が新しい構成に置き換えられるため、コンピュータ上に存在するウイルスや不正プログラムが移行されることはありません。

パフォーマンス問題

クリーン インストールでは、コンピュータの各構成が新しい構成に置き換えられるため、次のパフォーマンス低下の問題に対処できます。

  • ハード ディスクの断片化

  • ハード ディスク上の不要なファイルおよびディスク領域の浪費

  • レジストリ内の不要な項目および断片化

  • ページ ファイルの断片化

  • 不要なアプリケーション

  • 完全に最適化されていないデバイス ドライバ

  • 標準にリセットされたソフトウェアとネットワーク プロトコル

保有コスト

クリーン インストールでは、管理されたデスクトップ環境が実現し、展開、管理およびサポートにかかる全体的なコストを削減できます。

  • 現在自分のコンピュータに対してフル コントロールの権限を持つユーザーを制限できます。ローカル Administrators グループではなく、Users グループまたは Power Users グループにユーザーを追加すると、承認されていないアプリケーションをユーザーがインストールする権限を制限できます。また、ユーザーに勝手に変更されたくない設定を、ユーザーが変更できないように権限を制限することもできます。

  • クリーン インストールでは、承認されていない任意にインストールするアプリケーションが取り除かれるため、ユーザーの作業妨害要素とシステムの不安定要素がなくなります。

  • クリーン インストールでは、標準化された構成がすべてのコンピュータに格納されます。そのため、展開、管理およびサポートをより簡単かつ低コストで実行できるコンピューティング環境を実現できます。不確定要素が少なくなれば、構成の管理とサポートにかかるコストは少なくなります。

  • 標準構成を展開することで、コンピュータは必要なアプリケーションが確実にインストールされた状態になります。ユーザーによっては、必要なアプリケーションを削除してしまっている可能性があります。インプレース アップグレードではこれらのアプリケーションは改めてインストールされません。

展開プロセス

クリーン インストールの展開プロセスは、インプレース アップグレードよりも簡単です。インプレース アップグレードと比較して、検討が必要な内容やミスが発生する可能性は少なくなります。このように展開プロセスが複雑でない理由は、展開前のコンピュータの準備として「慎重にアップグレードする」に示した手順を踏む必要がないためです。

まとめ

このホワイト ペーパーでは、Windows XP Professional をインプレース アップグレードおよびクリーン インストールの 2 つの方式で展開したときの、それぞれのリスクと利点について説明しました。最初の方式には、既存の構成を Windows XP Professional にアップグレードすることも含まれています。ユーザーのドキュメントや設定が失われることはなく、インストールされているアプリケーションはアップグレード後も残ります。Windows XP セットアップ プログラムが完全に無人で実行され、ユーザーの既存構成も失われないため、一見すると、インプレース アップグレードの方が簡単のように感じますが、この方式は想像するほど簡単ではありません。簡単な方式だと感じさせているその特質が、まさにこの方式を複雑にする要因となっています。この複雑性に関しては「インプレース アップグレードのリスク」で説明したとおりです。

クリーン インストールでは、コンピュータの現在の構成を標準構成に置き換えます。「クリーン インストールのリスク」で説明したとおり、この方式に伴うリスクは少なく、それらのリスクも Microsoft が無償で提供しているツールを使用すれば簡単に回避できます。これらのリスクを鑑みても、この方式を採用する価値は大いにあります。現在の管理されていない環境を維持し続けるよりも、クリーン インストール方式でコンピュータを標準化された構成にリセットした方が、その後の管理とサポートが容易になります。現存する問題を切り捨て、環境を最初から整え直すことができます。この方式の利点の詳細については、「デスクトップ展開センター : 評価」を参照してください。これらの理由から、Microsoft ではクリーン インストールによる Windows XP Professional の展開をお勧めしています。

情報提供元

Christy Sutton (Microsoft Corporation)

David Talbott (Studio B)

Elisa Stelwagon (Microsoft Corporation)

Elsa Rosenberg (Studio B)

Frank Murphy (Microsoft Corporation)

Igor Leybovich (Microsoft Corporation)

Ilijana Vavan (Microsoft Corporation)

John Colleran (Microsoft Corporation)

John Jendrezak (Microsoft Corporation)

Nathan Cornillon (Microsoft Corporation)

Paul Barr (Microsoft Corporation)

Roelof Kroes (Microsoft Corporation)

Seth Wilcox (Microsoft Corporation)

Tony East (Microsoft Corporation)

Trevor Williamson (Microsoft Corporation)

Wes Miller (Microsoft Corporation)

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