Microsoft Office 2003 Editions 導入と展開・管理 徹底ガイド : 第 1 章 ‐ 導入前の準備と計画

第 1 章 ‐ 導入前の準備と計画

この文書は、『Microsoft Office 2003 Editions 導入と展開・管理 徹底ガイド』 の一部を抜粋して掲載しています。

Microsoft Office 2003 Editions 導入と展開・管理 徹底ガイド

トピック

1-1. ライセンスとシステム要件
1-2. エディションの選択
1-3. 導入・展開に関する機能
1-4. インストールのシナリオ

※ 第 1 章では、以下のトピックも合わせて解説しています。

  • 1-5. 移行・アップグレード

  • 1-6. 多言語環境での Microsoft Office 2003 Editions の使用

1-1. ライセンスとシステム要件

1-1-1. 提供されるライセンス体系

Microsoft Office 2003 Editions をはじめとするマイクロソフト製品は、購入対象者に応じて複数のライセンスの種類が用意されています。企業内で Microsoft Office 2003 Editions を利用する場合は、ボリューム ライセンス プログラムが適しています。ライセンス体系の詳細については、以下のURLを参照してください。

Microsoft Volume Licensing Program
https://www.microsoft.com/japan/licensing/default.mspx

表 1.1   ライセンスの概要

ライセンスの種類

内容

パッケージ製品

家電量販店などで店頭販売される、一般ユーザー向け製品

プリインストール製品

PCにインストールされた状態で出荷される製品。一般ユーザー向けPCや企業向けPCにて提供される

ボリューム ライセンス

企業向けに提供されるライセンス。購入ライセンス数やアップグレードの形態に応じて Open License、Enterprise Agreement などいくつかに分類される。購入ライセンス数に応じて価格が下がるため、ライセンス コストを抑えることが可能

1-1-2. ボリューム ライセンス版で利用できる機能

ボリューム ライセンスで提供される Microsoft Office 2003 Editions は、大規模での展開に対応するための機能が含まれています。パッケージ製品を購入した場合、適切なライセンスであることを確認するために、アクティベーションという処理が必要になります。アクティベーション処理を行うには、インターネットもしくはマイクロソフト社への電話での確認作業が必要になりますが、ボリューム ライセンスで提供されるCD-ROMを利用してインストールした場合、アクティベーションは必要ありません。アクティベーションに関する詳細は、以下の URL を参照してください。

マイクロソフト ライセンス認証 (プロダクト アクティベーション) の概要
https://www.microsoft.com/japan/office/editions/prodinfo/activation.mspx

また、ボリューム ライセンスで提供されるCD-ROMを利用すると設定作業を簡略化できます。例えば、後述するカスタム インストール ウィザードを利用したセットアップのカスタマイズや、ユーザーがボリューム ライセンス キーの入力をしなくてもすむようにしたり、各アプリケーションのセキュリティ設定などをあらかじめ設定しておくことができます。ボリューム ライセンスで提供されるCD-ROMを使うと企業内で大規模な展開を行う際に、ユーザーが必要となる作業を最小限にするように設定をカスタマイズした状態でインストールすることが可能になります。本書はボリューム ライセンスで提供されるCD-ROMでインストールした場合を前提に記述しています。パッケージ版の Office 2003 Editions ではリソース キットに含まれるツールを利用したセットアップのカスタマイズなどは行うことができません。

1-1-3. システム要件

各エディション共通で必要となるシステム要件は、表1.2のとおりです。ただし、Microsoft Office InfoPath 2003 を含んだインストールを行う場合は、Internet Explore 6.0 以上が必要となります。

表 1.1   システム要件

プロセッサ

Pentium Ⅱ 233 MHz 以上 (PentiumⅢ 以上を推奨)

オペレーティング システム

Microsoft Windows 2000 Service Pack 3 以降、または Microsoft Windows XP 以降のオペレーティング システム (Microsoft Windows XP 以降を推奨)

メモリ

128MB 以上

モニター

SVGA (800×600 ピクセル)、256 色以上

インストール時に必要となるディスクの容量は、各エディションやカスタム インストールにおいて選択したアプリケーションの種類によって異なります。また、ローカル インストール ソースを利用する場合は、より多くの空き容量が必要となります。

表 1.1   インストールに必要なディスク容量

エディション

インストールに必要となる容量

ローカル インストール ソースを使用する場合に追加で必要となる容量

Professional Enterprise Edition

520MB (252MB の空き容量が起動ドライブに必要)

390MB

Standard Edition

341MB (210MB の空き容量が起動ドライブに必要)

310MB

  • ローカル インストール ソースを利用する場合、インストール中に約 2GB のハードディスク空き容量が必要となります。

  • ローカル インストール ソースは、空き容量が最も大きいドライブに作成されます。

  • システム要件の詳細な情報に関しては、以下のURLを参照してください。

Office 2003 Editions のライセンスとシステム要件
https://www.microsoft.com/japan/office/ork/2003/one/ch1/PlaB02.htm

1-1-4. 追加要件

Office 2003 Editions の各機能には、前述のシステム要件に加え、追加のハードウェアやソフトウェアを必要とするものがあります。以下に主な追加要件を示します。

  • 音声認識機能を使用するには、Pentium II 400 MHz 以上のプロセッサ、ヘッドホン型マイク、およびオーディオ入出力デバイスが必要です。

  • 圧縮されたデータの送受信など Outlook 2003 の高度な機能を使用するには、Microsoft Exchange Server 2003 が必要になることがあります。

  • 共有ワークスペースなどを利用した高度なコラボレーション作業を行うには、SharePoint Portal Server 2003 や Windows SharePoint Services が必要となります。

  • Microsoft Office InfoPath 2003 を使用するには、Microsoft Internet Explorer 6.0 以上が必要です。

  • リサーチ機能や Office Online などインターネット上のサービスを利用する場合は、インターネット接続環境が必要です。

  • IRM(Information Rights Management)機能を使用するためには、Windows Rights Management Services が実行されている Microsoft Windows 2003 Server およびIRMのクライアント ライセンスが必要となります。または、インターネットに接続し、Passport 認証の試用版サービスを利用します。

  • Microsoft Office PowerPoint 2003 のブロードキャスト機能を使用してビデオを含むブロードキャストを行うには、Windows Media Encoder と互換性のあるビデオ カメラが必要です。

  • Microsoft Office Access 2003 を使用するには、Microsoft Jet 4.0 Service Pack 7 にアップデートする必要があります。このサービス パックには、安全でない可能性がある式をAccess 2003 がブロックできるようにする新しいサンドボックス モードが含まれています。Microsoft Jet 4.0 Service Pack 7 がインストールされていないと、Access 2003 の一部の機能が正しく動作しません。

システム要件の詳細な情報に関しては、以下のURLを参照してください。

Office 2003 Editions のライセンスとシステム要件
https://www.microsoft.com/japan/office/ork/2003/one/ch1/PlaB02.htm

1-2. エディションの選択

ボリューム ライセンスで提供される製品は、単体製品とStandard Edition および Professional Enterprise Edition です。Microsoft Office 2003 Editions で提供される各エディション間の違いは製品構成だけでなく、機能も異なります。例えば、同じMicrosoft Office Word 2003 であっても、Microsoft Office Professional Edition 2003 に含まれるWord 2003(もしくは単体製品)以上でしか利用できない機能があります。後述の「Professional Edition 以上で利用可能な機能」のセクションを参考にして、どちらのエディションを挿入するか検討するようにしてください。

また、Office 2003 Editions では、Microsoft Office InfoPath 2003 が新たに追加されました。ボリューム ライセンスで提供されるMicrosoft Office Professional Enterprise Edition 2003 には、InfoPath 2003 が含まれています。

表 1.1   ボリューム ライセンス版 Microsoft Office 2003 Editions の製品構成

Microsoft Office Professional Enterprise Edition 2003

Microsoft Office Standard Edition 2003

Access 2003
Excel 2003
Outlook 2003
PowerPoint 2003
Publisher 2003
Word 2003
InfoPath 2003

Excel 2003
Outlook 2003
PowerPoint 2003
Word 2003

1-2-1. Professional Edition 以上の上位エディションで利用可能な機能

ユーザー定義の XML スキーマへの対応

Word 2003 および Excel 2003 ではユーザー定義の XML スキーマを文章中やセルに割り当てることができます。入力されたデータは XML スキーマに対応した部分のみを XML ファイルとしてエクスポートすることが可能です。表題やフォント情報などを除いたデータのみが XML として抽出されるので、業務システムなど他システムでのデータの再利用が容易になります。Standard Edition に含まれる Word 2003 や Excel 2003 では、ユーザー定義の XML スキーマが割り当てられた文書ファイルを開くことはできますが、XML スキーマを新規に割り当てたり、変更することはできません。

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図 1.1: Excel 2003 でのスキーマの割り当て

Information Rights Management でのアクセス権の設定

Word 2003、Excel 2003、PowerPoint 2003、Outlook 2003 では Information Rights Management(IRM)の機能が利用できます。文書ファイルや電子メールに閲覧・変更・印刷の制限をかけ、企業内の情報を保護します。これで、情報漏洩を防ぐことができます。

Standard Edition に含まれる製品では、すでにIRMが設定されたファイルを適切なセキュリティ権限で開き、権限に応じて文書内容の変更などを行えますが、新たにIRMを設定したり、設定済みの権限の変更をしたりすることはできません。

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図 1.2: IRM を利用した権限設定

SharePoint テクノロジとの統合機能の一部

Microsoft Office SharePoint Portal Server 2003 や Windows SharePoint Services では、リスト機能を用いてユーザーが定義した表形式のデータを管理することができます。標準のインターフェイスはWeb ブラウザ ベースですが、Microsoft Office Professional Edition 2003 以上がインストールされたコンピュータでは Excel と同様のインターフェイスを用いたデータシート形式でのデータの入力や編集ができます。Standard Edition がインストールされているコンピュータ、もしくはOffice 2003 Editions がインストールされていないコンピュータでは、データシート形式の利用はできません。

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図 1.3: データシート形式のビューによるリストの編集

Visual Studio Tools for the Microsoft Office System の利用

Visual Studio Tools for the Microsoft Office Systemを使うと、Word 2003、Excel 2003 を利用したカスタム アプリケーションをVisual Basic .NET および Visual C# を用いて開発できます。Visual Basic for Applications(VBA)と同様、イベント ハンドリングやオブジェクト モデルの利用が可能です。Visual Studio .NET の強力な統合開発環境を使用し、ADO.NET による強力なデータアクセス機能の利用や、XML Webサービスを利用した業務アプリケーションの開発が可能です。

Visual Studio Tools for the Microsoft Office System でのアプリケーション開発では、Visual Studio の開発環境に加え、単体製品もしくは Professional Edition 以上に含まれる Word 2003、Excel 2003 が必要となります。また、実行環境においても、単体製品もしくは Professional Edition 以上に含まれる Word 2003、Excel 2003 が必要となります。Standard Edition に含まれる Word 2003、Excel 2003 ではアプリケーションの実行はできません。

Visual Studio Tools for the Microsoft Office System の詳細やシステム要件については、以下のURLを参照してください。

Visual Studio Tools for the Microsoft Office System 製品情報
https://www.microsoft.com/japan/msdn/vstudio/office/

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図 1.4: Visual Studio Tools for the Microsoft Office System によるアプリケーションの作成

コラム : InfoPath 2003 における Visual Studio でのアプリケーション開発

InfoPath 2003 では ドラッグ アンド ドロップの操作で複雑な動作を行うデータ入力フォームを作成できます。高度なビジネスロジックを実装するためにコーディングによるフォーム開発の機能も備えています。通常InfoPath 2003 でコーディングを行う際は、他の Office アプリケーションと異なり、VBA ではなくVBScript や JScript を利用した開発を行います。

Service Pack 1 を適用した InfoPath 2003 では、Visual Studio Tools for Office を利用した場合と同様に Visual Studio .NET 2003 を利用したフォーム開発を行えます。Visual Studio .NET 2003 を利用したフォーム開発を行うには、以下の URL から InfoPath 2003 Toolkit for Visual Studio .NET をダウンロードします。

マイクロソフト社のダウンロード センター
https://www.microsoft.com/japan/downloads/

InfoPath 2003 Toolkit for Visual Studio .NET を利用することで、Visual Studio .NET 統合開発環境(Integrated Development Environment: IDE)で開発を行い、IntelliSense などの機能が利用できるようになります。ADO.NETによる強力なデータアクセスや、XML Webサービスとの高い親和性により高度なフォーム開発が可能です。このツールキットを使用し、InfoPath フォーム テンプレートを新規に作成すること、あるいは既存のテンプレートにマネージ コードを追加することができます。

1-2-2. Microsoft Exchange Server 2003 と Outlook 2003 の連携機能

Exchange Server 2003 は、メールを中心としたコミュニケーション基盤を提供し、スケジュールの共有やパブリック フォルダによる情報の共有を行うことができるサーバー製品です。Outlook 2003 は、Exchange Server 2003 の最適なクライアントとして設計されており、組み合わせて利用することで次のような高度な機能を利用することができます。

※ 以下の機能は以前のバージョンの Exchange Server や Outlook では利用できません。

キャッシュモードの利用

通常、Exchange Server のデータはサーバー上に保存されていますが、キャッシュ モードを利用すると、サーバー上のファイルをクライアント側にキャッシュしておくことができます。キャッシュ モードを有効にすると、オフライン フォルダ ファイル(OST ファイル)とオフライン アドレス帳(OAB ファイル)が作成されます。

キャッシュ モードを利用することにより、Exchange Server 2003 に接続できない場合や、回線が切断された場合でも、ユーザーは意識することなく、最後にキャッシュされたデータを用いて Outlook 2003 上でメールを参照したり、予定表のデータを確認することができます。

また、Exchange Server 2003 への再接続時には、サーバー上の情報とクライアント上にキャッシュされた情報の差分だけがやりとりされるため、データの送受信が最適化されます。

図 1.5: オンライン/オフライン状況の自動判断

図 1.5: オンライン/オフライン状況の自動判断

データの圧縮

Exchange 2003 と Outlook 2003 が通信を行う際は、圧縮されたデータが転送されています。送受信されるデータが最適化されているので、ネットワーク帯域を有効に利用することができます。

回線状況によるモードの切り替え

Outlook 2003 では、キャッシュ モードとの組み合わせにより、回線状況によってアイテムをダウンロードする方法を適切に選択する機能が組み込まれています。無線LANやPHSなどを利用している場合、一時的に回線が切断されることがあります。Exchange Server 2003 とOutlook 2003 を利用している場合は、接続が一時的に切断されても自動的に回線状況を判断し、ネットワークに再接続された際に Exchange Server 2003 との接続を自動的に回復します。

また、低速回線で接続されている場合は、メールのヘッダーのみをダウンロードして、メールの概要を確認することができます。本文や添付ファイルをあとからダウンロードしたり、重要なメールについてはすぐにダウンロードするようにマークを付けたりすることもできます。

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図 1.6: アイテムのダウンロードに関するオプション

RPC over HTTP の利用

クライアントに Windows XP を利用し、メール サーバーとして Exchange Server 2003、メール クライアントに Outlook 2003 を利用している場合は、RPC over HTTP の機能を利用することができます。RPC over HTTP を使えば、企業内のネットワークに直接接続しなくても、HTTPプロトコルを通して、Exchange Server に接続してデータの送受信を行うことができます。

LAN 環境における Outlook と Exchange Server との通信は、TCP/IP 経由の RPC(Remote Procedure Call)を使用することで、高速で効率的なアクセスが実現されています。以前のバージョンの Exchange Serverと Outlook では、リモート ユーザーが Exchange Server にアクセスするには、企業ネットワークへの VPN(Virtual Private Network)接続が必要でした。VPN 接続では、電子メール以外のネットワーク サービスへのアクセスも可能になってしまうため、Outlook 2003 では VPN 接続に代わるものとして RPC over HTTP が提供されています。RPC over HTTP を使えば、組織のファイア ウォールの外で作業している場合でも、インターネットから Exchange Server にリモート アクセスを行うことができ、スマート カードやセキュリティ トークンなどの特別な接続やハードウェアも必要ありません。

Exchange Server の構成の詳細については、マイクロソフト社から提供されているExchange Server に関するドキュメントを参照してください。

1-3. 導入・展開に関する機能

企業内では大規模な展開を行う前に、さまざまな項目に対して検討を行う必要があります。各ユーザーが必要とする機能、インストールするアプリケーションやハードウェアのスペックなどを考慮に入れた導入計画が重要になります。また、インストール後のメンテナンス作業に対する計画も重要です。

Office 2003 Editions からはシステム管理者の作業を軽減するローカル インストール ソースといった新機能を利用できます。この機能を使えば、ユーザーが設定を変更するたびにインストール用の CD-ROM を探す手間がなくなります。また、企業内で統一された機能やセキュリティ設定を行うために、グループ ポリシー テンプレートによる設定を行うことができます。グループ ポリシー テンプレートを利用すると、マクロのセキュリティなどの設定をインストール後に行うことができます。ユーザーによる設定項目の変更を制限したり、変更された項目を元の設定に戻すことも可能です。

グループ ポリシーによる設定の詳細は、以下のURLを参照してください。

ポリシーによるユーザー構成の管理
https://www.microsoft.com/japan/office/ork/2003/five/ch18/MntA04.htm

1-3-1. ローカル インストール ソースの利用

以前の Microsoft Office ではインストール時に設定されていなかった機能の追加や、サービスパックや更新プログラムなどを適用する際、インストール時に利用したCD-ROMやネットワーク上のインストール ソースが必要でした。Office 2003 Editions では製品CD-ROM またはネットワーク上の圧縮 CD イメージからインストールをする場合、CD-ROMやインストール ソースの要求を最小限にするために、必要なインストール ファイルをローカル コンピュータ上にコピーします。このインストール後にローカルのハードディスクにコピーされたインストール ファイルをローカル インストール ソースといいます。 ローカル インストール ソースは製品を修復する場合、インストール時に選択されていなかった機能を追加する場合や製品をアップデートする場合に利用されます。コンピュータ上のディスクに十分な空き容量がある場合は、既定ではインストールに用いるファイル全体がローカル インストール ソースとしてキャッシュされます。

ローカル インストール ソースは、隠しフォルダとして以下の場所に作成されます。

<空き容量が最も大きいドライブ>\Msocache\All users\<Downloadcode>

ローカル インストール ソースを利用するメリット

  • 企業内の各拠点に CD-ROM の配布が困難だったり、低速なネットワーク環境だったりする場合、メンテナンスに関わる作業が軽減されます。新機能の追加やメンテナンスを行う場合、ローカル インストール ソース上のファイルを利用するため、インストール時に利用したオリジナルのソースへのアクセスが最小限に抑えられます。

  • アップデート時にクライアントへ配布するパッチの容量を小さくすることができます。また、インストール時に利用したオリジナルのソースへのアクセスを最小限に抑えパッチを適用できます。

1-3-2. 他のアプリケーションの同時導入

Microsoft Office System では Office 2003 Editions の製品群以外に単体製品として、Microsoft Office FrontPage 2003 や Microsoft Office OneNote 2003、Microsoft Office Project 2003 が提供されています。Office 2003 Editions のインストール時にこれらの製品を続けてインストールすることができます。

インストールにはOffice単体製品だけでなくMicrosoft Windows Installer パッケージ(.msi)ファイルで定義されているパッケージを指定できるので、多言語環境とするためのMicrosoft Office 2003 Editions Multilingual User Interface Pack(MUI Pack)や、他のアプリケーションの導入も可能です。また、setup.iniファイルの設定を利用した場合、製品の更新プログラムを製品インストール時に連鎖させて適用することができます。例えば、初めて Office 2003 Editions をインストールしたコンピュータに Service Pack を連鎖してインストールさせ、製品を最新の状態にすることができます。

リソース キットに含まれるカスタム インストール ウィザードを利用することで、インストール時に特定のEXEファイルのインストールや、カスタム アプリケーションの連鎖インストールも可能です。ただし、再起動が必要なアプリケーションに対する制限などもあるため事前に検証作業が必要となります。連鎖インストールの詳細については、第3章および以下のURLを参照してください。

Office とその他の製品の同時導入
https://www.microsoft.com/japan/office/ork/2003/two/ch5/DepD02.htm

1-4. インストールのシナリオ

Office 2003 Editions のインストール ソースを展開する方法には、何種類かの方法が用意されています。企業内ではインストール時の作業だけではなく、新機能の追加時における作業やセキュリティ設定、アップデートのインストール方法についても事前に検討する必要があります。ネットワーク環境なども考慮し、適切な方法を選択する必要があります。

1-4-1. セットアップに利用するインストール ソースの作成

セットアップに利用するインストール ソースには、圧縮 CD イメージと管理者インストール ポイントの 2 つがあります。ローカル インストール ソースの利用の有無や Active Directory を用いた展開を行うかによって適切な方法を選択する必要があります。

圧縮 CD イメージ

Office 2003 Editions の CD-ROM から直接インストール、または CD-ROM の内容をネットワーク上の共有フォルダにコピーしてインストールを行います。CD-ROM 内には CAB 形式で圧縮されたソース ファイルが保存されています。

  • ローカル インストール ソースは、圧縮 CD イメージからインストールした場合に作成できます。

  • プロダクト キーの入力や使用許諾契約書(EULA)への同意を自動化するには、カスタム インストール ウィザードを利用して事前に設定を行う必要があります。カスタム インストール ウィザードの詳細については、第3章を参照してください。

管理者インストール ポイントの作成

管理者インストール ポイントは、Office 2003 Editions の CD-ROM に含まれるsetup.exe に /a オプションを追加して実行することで作成できます。これで、CD-ROM 上の CAB 形式のファイルが解凍・展開されます。

  • 管理者インストール ポイントを作成する先には、少なくとも 550MB の空き容量が必要となります。

  • 作成時にプロダクトキーの入力や使用許諾契約書への同意画面が表示されるので、ユーザーはインストール時に入力は不要です。

  • 管理者インストール ポイントからインストールを行った場合は、ローカル インストール ソースを作成することはできません。

  • Active Directory のグループ ポリシーを利用した展開では、管理者インストール ポイントの作成が必要となります。

代替の管理者インストール ポイントの用意

管理者インストール ポイントからインストールを行った場合は、ローカル インストール ソースは作成されません。そのため、ユーザーがインストール済みの Office 2003 Editions への新機能の追加やメンテナンスを行う場合は、インストール ソースへのアクセスが必要となります。

ネットワークの障害などインストール時に利用した管理者インストール ポイントが利用できないようなケースでは、代替の管理者インストール ポイントを利用できます。代替の管理者インストール ポイントを用意すると、Windows インストーラは複数指定されているサーバーを自動的にチェックしてそのうちの使用可能なサーバーに接続することができます。

また、低速回線などを使用している場合、CD-ROMなどの媒体に管理者インストール ポイントをコピーして利用することもできます。既定では CD-ROM などの物理メディアを代替ソースとして利用できない設定になっているため、あらかじめ管理者インストール ポイントの作成時に設定しておく必要があります。

1-4-2. セットアップの方法

セットアップの方法は、大きく分けて4つあります。インストールを行う台数や導入作業に伴うコスト、Active Directory の有無によって適切な方法を選択します。強制的に Office 2003 Editions のインストールを行わせる場合や、スケジュール設定などを行う場合は、Microsoft Systems Management Server などのアプリケーションの展開や管理を容易にする製品を併用することで、より集中管理しながら高度な展開作業を行うことが可能です。

バッチ ファイルやセットアップ プログラムの利用

インストールするには、setup.exe を直接ダブル クリックして実行するか、コマンド ライン オプションを指定した、setup.exe を実行するためのバッチ ファイルを利用します。ログイン スクリプトに含めることでインストールの自動化も可能です。小規模な組織でのインストールや、ユーザーが自由にインストールできる環境を準備する場合に適しています。

また、コマンドライン オプションの指定により、ユーザーに入力を求めないサイレント モードでのインストールも可能です。

ディスク イメージの複製による展開

この方法は、OS とともに Office 2003 Editions がインストールされたディスク イメージを作成し、複数のコンピュータに展開する方法です。クライアントのハードウェアを一斉に更新する場合や、統一されたハードウェア環境にて運用されている場合に適しています。この方法で行う場合は、ディスク イメージを作成するために、サード パーティーのディスク イメージ作成ツールが別途必要となります。

Active Directory グループ ポリシーを利用した展開

すでに Active Directory が導入されている場合は、グループポリシーを用いて、Office 2003 Editions のインストールを行えます。グループ ポリシーでのインストールを実行するには、管理者インストール ポイントが必要となります。 圧縮 CD イメージでは、グループポリシーを使ったインストールは利用できません。また、管理者インストール ポイントではローカル インストール ソースをインストール先のコンピュータに作成することはできません。

グループ ポリシーでの展開は、すでに Active Directory が導入されている小・中規模の組織での展開に適しています。また、ハードウェア構成が統一されており、厳密なインストールに関する管理を行う必要がない場合に利用します。

グループポリシーでの展開は次の3つの方法を利用できます。

  • ユーザーへの「公開」

    「公開」によりユーザーがインストールを自由に選択できる状態にします。公開されたソフトウェアは[アプリケーションの追加と削除]画面に表示され、選択するとインストールできます。

  • ユーザーへの「割り当て」

    次回、ユーザーがコンピュータにログオンした際にアドバタイズされます。アドバタイズとは、インストールまでは行わずに、ユーザーがソフトウェアを利用可能な状態にすることです。アドバタイズするとデスクトップまたは[スタート]メニューにプログラムへのショートカットが作成され、ユーザーが初めてアプリケーションを利用する際に実際にインストールが行われます。

    なお、アプリケーションを利用可能なのは、「割り当て」を行われたユーザーのみです。同一のコンピュータであっても「割り当て」が行われていないユーザーはアプリケーションを利用できません。

  • コンピュータへの「割り当て」

    次回、コンピュータが起動された際に、強制的にインストールを行う設定です。インストールされたコンピュータを利用するすべてのユーザーがアプリケーションを利用可能になります。

Office 2003 Editions の展開に関する用語の詳細は、以下のURLを参照してください。

リソース キット用語集
https://www.microsoft.com/japan/office/ork/2003/ref/glossary.htm

Microsoft Systems Management Serverによる展開

Microsoft Systems Management Server(SMS)は、ソフトウェアのインストールやセキュリティ パッチの配布・管理を行うサーバー製品です。Office 2003 Editions の導入には Systems Management Server 2.0(Service Pack 2以上を適用)以降のバージョンが必要となります。

この方法は、大規模な組織において、ハードウェアの構成が混在している場合や、正常にインストールが完了したことを管理するような場合に適しています。

SMS を用いることで、インストール時における次のような機能を利用できます。

  • ハードウェアのスペックに関するクエリを実行し、システム要件を満たすコンピュータのみにインストールを行う。

  • アプリケーション導入の予定を管理し、状況を監視する。

  • 強制的に Office 2003 Editions を導入する。

  • ユーザーがローカル コンピュータに管理者権限を持たない環境で導入を行う。

  • インストール時の処理に関するレポートを作成する

1-4-3. アップデートにおける考慮事項

Office 2003 Editions では特定の機能に対する修正やセキュリティ問題に対するアップデートおよび累積的な修正を含んだ Service Pack が提供されます。大量のクライアントの環境をメンテナンスするためには、次の2点を考慮する必要があります。

  • インストール済みのOffice 2003 Editions に対してアップデートを適用する。

  • インストール ソースに対してアップデートを適用し、新規インストール時にアップデートが適用された状態にする。

インストール ポイントの更新

更新プログラムがリリースされたあとで新規に Office 2003 Editions をインストールする場合、インストールと同時に更新プログラムを適用する方法があります。

  • 圧縮 CD イメージを利用する場合は、連鎖インストールを利用します。連鎖インストールを利用した場合は、製品版もしくは製品版にアップデートが加えられた状態の PC の両方に対する環境を保持できます。

  • 管理者インストール ポイントを利用する場合は、更新プログラムの展開を行い、製品版もしくは製品版にアップデートが加えられた状態のインストール ソースに上書きします。Active Directory を利用すると、各クライアントへ更新プログラムを適用した Office 2003 Editions を再展開できます。

管理者インストール ポイントの利用に対する考慮

すでにOffice 2003 Editions がインストールされているクライアントにアップデートを提供する際は、インストール時の方法を考慮する必要があります。管理者インストール ポイントを利用した場合は、アップデートの適用が管理されている必要があります。

管理者インストール ポイントを利用した場合の動作を図 1.7 に示します。

図 1.7: 管理者インストール ポイントを利用した場合の動作

図 1.7: 管理者インストール ポイントを利用した場合の動作

管理者インストール ポイントに更新プログラムを適用した時点では、クライアントの実行モジュールには更新プログラムが適用されません。そのため、各クライアントが新機能の追加や修復するときにインストール ソースにアクセスすると、クライアント上のソースと管理者のインストール ポイントに矛盾が発生するため、元のインストール ソースが利用できません。

管理者インストール ポイントに更新プログラムを適用する場合は、クライアントのアップデートと、管理者インストール ポイントのアップデートを同時に強制的に行えるような、各PCを集中管理している環境が適しています。

1-4-4. アップデートの方法

Office 2003 Editions の更新プログラムには大きく分けて2種類の方法があります。Office Update によるインストールと、更新プログラムをダウンロードしてから配布、適用する方法です。

Office Update の自動検出を利用したインストール

Office Update は、Windows Update と同様、Web サイトにアクセスして、コンピュータ上のソフトウェアを検出し、適用すべきアップデートを自動的に表示してからインストールを実行する機能です。Office Update は Office Online 上からアクセスできます。

Office Update サイト (日本語)
https://office.microsoft.com/ja-jp/officeupdate/default.aspx

Office Update を利用するには、クライアントがインターネット環境に接続されている必要があります。 Office Update から適用できるOffice 更新プログラムは、フルファイル版と差分版があります。フルファイル版は、更新されるファイル全体を含む更新プログラムで、差分版は更新されるファイルの更新情報だけを含む更新プログラムです。フルファイル版は差分版に比べてサイズが大きくなりますが、ファイル全体を置き換えるため、製品 CD-ROM への参照を最小限に抑えることができます。Office Updateを利用する場合、インストール ソースへのアクセスが必要になる場合があります。例えば、ローカル インストール ソースが利用できない状況にある場合が考えられます。その場合には、フルファイル パッチを使うことができます。Office Update では、既定では差分版が適用されますが、「Office アップデート」ページのオプション から、フルファイル版に切り替えることもできます。Office Update は、クライアント上からWeb サイトへのアクセスが必要なため、比較的小規模な環境で各ユーザーが自発的にアップデートを実施する場合に適しています。

更新プログラムをダウンロードしてインストール

更新プログラムを個別にダウンロードして実行します。低速なネットワーク環境上のクライアントへの更新プログラムの配布や、管理者インストール ポイントの更新時に利用します。

Office 2003 Editions の更新プログラムは、Office Update と同様に、フルファイル版と差分版の 2 種類が用意されています。差分版は基準となるバージョンとの差分がバイナリ ファイルとして含まれています。以前のバージョンの Microsoft Office へ更新プログラムを適用したときは、製品 CD-ROM やインストール ソースへのアクセスが必要となる場合が多くありましたが、フルファイル版の適用により、インストール ソースへのアクセスを最小限にすることができます。

Office Update による更新を抑制する方法

企業内でOffice 2003 Editions の更新を管理したり、クライアントとインストール ソースのアップデートにおける同期問題を避けるために、ユーザーに、Office Update の利用を制限させたい場合があります。

以前は、Office アプリケーションからのインターネット アクセスの拒否や、ダウンロード サイトへのアクセスを禁止するなどの方法が必要でした。Office 2003 Editions ではレジストリ キーの更新やポリシー テンプレートの配布により、Office Update の利用を制限させることができます。詳細な方法については以下のURLを参照してください。

Office のアップデートにアクセスするユーザーをブロックする
https://www.microsoft.com/japan/office/ork/2003/journ/blockOU.htm

注意   Office Update へのアクセスを制限した場合、Office 2003 Editions の各アプリケーションで、[ヘルプ]→[更新のチェック]メニューが表示されなくなります。また、Office Update ではアップデート ファイルの検出はできますが、ダウンロードや適用ができなくなります。

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図 1.8: [更新のチェック] メニューの非表示

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図 1.9: Office Update からのダウンロード禁止

1-4-5. ターミナル サービス環境への導入

Office 2003 Editions は、Windows 2000 Server または Windows Server 2003 のターミナル サービス環境を自動的に検出し、インストール時のオプションや実行方法を適切に設定します。セットアップのカスタマイズや、スクリプト ファイルの実行などは必要ありません。ターミナル サービス環境への最適な設定でのインストールを行うには、事前にサーバー側で「アプリケーション サーバー モード」に設定されている必要があります。「リモート管理モード」の場合、通常のクライアントと同様の設定でインストールされます。詳細については、以下のURLを参照してください。

ターミナル サービス環境での Microsoft Office 2003 Editions の展開
https://www.microsoft.com/japan/technet/prodtechnol/office/office2003/deploy/o2k3dpts.mspx

Windows ターミナル サービス環境での Office 2003 Editions の導入
https://www.microsoft.com/japan/office/ork/2003/two/ch5/DepD06.htm

ターミナル サービス環境への Outlook 2003 のインストール

ターミナル サービス環境で Outlook 2003 を利用する場合、オフライン ストア ファイルを利用するキャッシュ モードやタイム ゾーンの変更などいくつかの機能が利用できません。利用できない機能の詳細については、以下のURLを参照してください。

ターミナル サービス環境への Outlook のインストール
https://www.microsoft.com/japan/office/ork/2003/three/ch8/OutC02.htm