Microsoft が達成したタブレット PC による生産性の向上

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技術導入事例

発行 : 2003 8

Microsoft* IT 部門である OTG (Operations and Technology Group) は、従業員の生産性を高める手段としてタブレット PC に着目しました。タブレット PC の高い携帯性と強力なコンピューティング ****** プラットフォームは、 Microsoft の従業員には既によく知られていました。展開後に実施したアンケートの結果は OTG の予想を上回るもので、従業員の生産性が平均で 20% *近く向上したことが明らかになりました。

このドキュメントは、IT 業務上の意思決定者および IT ハードウェア仕様策定チームを対象としています。

状況

現在の不安定な経済状況の下では、業務コストの削減は最優先課題です。Microsoft では、OTG が生産性の向上と業務遂行における自在性の実現を目指し、努力を続けていました。

ソリューション

OTG では、生産性の向上を図る目的で Microsoft の社内にタブレット PC を展開しました。タブレット PC の導入によって達成された生産性の向上率を調べるために、OTG はハードウェア要件と投資利益を探る一連のアンケートを実施しました。

利点

  • 生産性の向上 - アンケートの結果から、従業員の生産性が平均で 20% 近く向上したことがわかりました。

  • 就業時間中のコンピュータ利用率が向上 - Microsoft の従業員は、会議でノートブック コンピュータを使用したがりませんでしたが、タブレット PC にはノートブック コンピュータのような問題がないことがわかりました。

  • 業界調査の結果が OTG のアンケート結果を裏付け - Microsoft がさまざまな調査を行い、その結果の検証を Gartner Measurement 社に依頼したところ、タブレット PC のユーザーにおいて生産性が向上していることが確認されました。

製品とテクノロジ

  • タブレット PC

  • Microsoftョ Windowsョ XP Tablet PC Edition

  • Microsoft Office XP Pack for Tablet PC

  • ワイヤレス ローカル エリア ネットワーク

トピック

はじめに
状況
ソリューション
利点
ベスト プラクティス
まとめ
詳細情報

はじめに

現在のビジネス環境においては、インフォメーション ワーカーが席を離れたり外出したりしているときでも生産性を高められるような機能とサポートを提供することは、競争優位を維持するうえで欠かせない要素です。Microsoft の IT 部門である OTG (Operations and Technology Group) は、モバイル テクノロジによって従業員の生産性を高めることを目的とした計画をいくつか実行しています。セキュリティで保護された全社レベルの無線 LAN の構築から、Pocket PC やスマートフォンなどのモバイル テクノロジと重要なユーザー データの無線同期サポート、さらには Microsoft 従業員向けの新たなノートブック コンピュータ テクノロジのテストおよび仕様定義まで、従業員がそれぞれに都合のよい場所、時、方法で仕事を行うことができるように方策を講じてきました。

状況

OTG では、一企業としての Microsoft の生産性向上に役立つツールやテクノロジを模索してきました。2002 年秋、目前に迫ったタブレット PC のリリースと、その生産性向上への効果は、OTG にとって最大の関心事でした。

企業および業界を対象としたさまざまな調査によって、コンピュータを使用した場合、従業員の生産性が大幅に向上することが証明されています。OTG では、タブレット PC がノートブック コンピュータをはるかに凌ぐ移動性を備えていることに注目し、従業員が仕事中にタブレット PC を長時間持ち歩く可能性が高いと考えました。これに無線 LAN のモバイル性が加わることによって、従業員の生産性はより高いレベルに保たれます。

2002 年の秋、多くのグループがタブレット PC のリリースを心待ちにしていました。OTG もタブレット PC が生産性の向上をもたらすという仮説を証明できると意気込んでいました。

ソリューション

タブレット PC は、新たなモバイル コンピューティング プラットフォームであり、デジタル ペンを使用して Windows ユーザー インターフェイスを操作し、データを入力することができます。タブレット PC では、コンピュータ画面に紙と同じように直接文字を書き込むことができます。タブレット PC の真価は、携帯に適した形状にあります。これによって、ビジネス コンピュータの能力を、これまでより多くの場所に持ち込むことが可能となります。さらに、タブレット PC では、デスクトップ コンピュータやノートブック コンピュータで使用されている Windows XP 対応のソフトウェアをすべて実行できます。タブレット PC の画面に直接文字を書くことができるため、会議が終わった後でメモの内容をキーボードから入力する手間が省けます。今までは紙に書いていたメモや図が、初めからコンピュータに入力されているため、それをもとにドキュメントや電子メールのメッセージを作成することができ、テキストに変換することも可能です。

Microsoft Office XP Pack for Tablet PC (タブレット Pack) には、Microsoft Office XP アプリケーションのドキュメントに、ペンで直接書き込むことができる機能があります。 タブレット PC では、新しいドキュメントを作成することもできますし、既存のドキュメントにコメントを付けたり内容を編集したりすることも可能です。Microsoft Office XP などの使い慣れたツールを使用できることが、さらなる生産性の向上につながります。タブレット PC はノートブック コンピュータの能力にデジタル ペンの機能を追加したものと言えます。

タブレット PC は、最も汎用性に富んだコンピュータの 1 つであり、小型で軽く、無線 LAN とペン入力の機能を備えています。タブレット PC には、キーボードが組み込まれているモデルと、取り外し可能なキーボードが付属したモデルがあります。タブレット PC の物理的な構成には次の 3 種類があります。

  1. コンバーチブル モデル - 一見したところ、外観も機能も普通のノートブック コンピュータと変わりません。ノートブック コンピュータと同じように、キーボードとポインティング デバイスが内蔵され、上蓋の内側にディスプレイが付いた軽量コンピュータです。上蓋は 180゜ 回転でき、ディスプレイを外側にして閉じることが可能です。これによって、ディスプレイを平らに置き、デジタル ペンを使用して文字や図を書いたりユーザー インターフェイスを操作したりすることができます。

  2. ピュアタブレット モデル - 内蔵ディスプレイと外付けキーボードで構成される超軽量薄型の全機能搭載コンピュータです。ピュアタブレット モデルは軽量ながら強力なコンピューティング プラットフォームであり、コンピュータというより、むしろメモ帳のように使用することができます。このデザインは、コンピュータでフォームにデータを入力する仕事や、人と会うことが多く、自分の席に着いていることがほとんどない「Corridor Warrior」と呼ばれる従業員に最適です。

  3. ハイブリッド モデル - ピュアタブレット モデルにキーボードを取り付けてノートブック コンピュータのように使用できるものです。キーボードは必要なときだけ携帯すればよいので、不要なときにはキーボードの分だけタブレット PC が軽くなります。

予約注文を受け付けるために、OTG はリリース日の 2 週間ほど前にタブレット PC を推奨ハードウェア リストに追加しました。Microsoft の従業員は、MS Market (イントラネットの設備購入サイト) で購入するモデルを選択できます。MS Market にタブレット PC を掲載した後、OTG は「薄型軽量」のカテゴリにタブレット PC 以外のハードウェアを載せておく意味はないと考え、すべてのノートブック コンピュータをこのカテゴリから削除しました。

OTG は、タブレット PC の配布をリリース日の 1 週間前に開始しました。そのためには、正式な製品出荷の前に 2,000 を超えるタブレット PC を用意する必要があり、作業は困難を極めました。多くのタブレット PC ベンダに協力を求めましたが、すぐには生産量を増やすことができず、OTG の要求に応じられないベンダもありました。もう 1 つの難題は、ヨーロッパの子会社ではハードウェア ベンダを 1 社に決めており、そのベンダがタブレット PC の販売を計画していないことでした。OTG は、ヨーロッパ チームとそのハードウェア ベンダの担当者に対し、タブレット PC を提供するよう働きかけました。

タブレット PC は、リリース以来、世界中の Microsoft の従業員から熱狂的な支持を受けてきました。OTG では、タブレット PC の全社的な展開に備え、ユーザーを対象として、設定、カスタマイズ、トラブルシューティングなどの方法を指導するプログラムを実施しました。

OTG が推奨するコンピュータを MS Market に掲載された認定ベンダに注文した場合、コンピュータは OTG が社内展開用に作成したディスク イメージによる設定が完了した状態で出荷されます。オペレーティング システムや業務アプリケーションを含め、最新のソフトウェア プログラムがインストールされています。タブレット PC については、OTG が Tablet PC Deployment Wizard (展開ウィザード) という専用ツールも作成しました。このツールは、ユーザーが無効に設定するまではコンピュータを起動するたびに実行され、簡素な HTML Web ページを表示します。このページには、一意な値 (エンド ユーザーのセキュリティ資格情報など) を必要とするため汎用オペレーティング システム イメージ ファイルには組み込むことができない機能へのリンクが一覧されます。また、タブレット PC を初めて使用するユーザーが参考にできる情報のリンクも含まれています。それらのリンクについて表 1 で説明します。

1 : Tablet PC Deployment Wizard の内容

リンク

目的

Tablet PC 101

タブレット PC の利用方法について説明したドキュメントやビデオのリンクがある OTG のイントラネット Web サイトにアクセスします。

Wireless 802.1X

Microsoft のセキュリティで保護された無線 LAN にアクセスするために必要なユーザー証明書およびコンピュータ証明書の設定ツールのリンクがある OTG のイントラネット Web サイトにアクセスします。

Qtools

OTG が推奨するハードウェアの OEM ドライバの最新版をインストールするツールのリンクがある OTG のイントラネット Web サイトにアクセスします。

PowerToys

タブレット PC エンド ユーザー エクスペリエンスの機能を強化するユーティリティをダウンロードできるインターネット Web ページにアクセスします。

Tuning ClearType

ディスプレイの画質向上を目的とした Microsoft ClearTypeョ の有効化と調整について説明したインターネット Web ページにアクセスします。

Tablet PC Web site

タブレット PC を扱った OTG のメイン イントラネット Web サイトにアクセスします。このサイトには、タブレット PC に関するドキュメント、ビデオ、サポート情報などのリンクがあります。

OTG では、Tablet PC Deployment Wizard に加え、タブレット PC ユーザー向けのサポート インフラストラクチャも作成しました。タブレット PC ユーザー同士の情報交換を目的として作成された Exchange 配布リストは、すぐに従業員の間に浸透し、操作方法やハードウェア設定に関する情報のやりとりや初心者へのアドバイスなどに利用されるようになりました。OTG は、タブレット PC 製品グループの担当者と共同でこの配布リストを管理し、ユーザーが質問しても他のユーザーから回答が得られなかった場合には、サポート情報を提供しました。

OTG は、ヘルプ デスク チーム向けに大量のサポート情報を作成しました。サポート用のイントラネット Web サイトを開設し、ドキュメントやヒントなど、さまざまな情報を掲載しました。

利点

タブレット PC の展開を開始してから数か月後、OTG では生産性が予想どおり向上しているかを確認し、向上率も調べることにしました。当初、生産性の向上率は 5% 程度だろうと予想していましたが、それを確認するためにはユーザー データを収集する必要がありました。そのために、OTG では 2 つのオンライン アンケートを実施しました。2003 年 4 月に行った最初のアンケートでは、タブレット PC の機能についての要望などをたずねました。そのほとんどにコメント記入欄を設け、詳細な意見を収集できるようにしました。

アンケート結果

1,500 人のユーザーにアンケートを依頼し、約 1,200 通の回答を得ることができました。回答者を職種別に分類した表 2 を見ると、Microsoft ではタブレット PC のユーザーがテクノロジに関して幅広い経験と知識を備えていることがわかります。

2 : OTG が行った第 1 回アンケート回答者の職種別分布

職種

割合

販売/マーケティング

24.5%

管理者/役員

23%

プログラム マネージャ

15.8%

コンサルティング/テクニカル セールス エンジニア

12.8%

テスト/ラボ技術者

6.5%

プログラマ/開発者

5.7%

テクニカル サポート

1.9%

管理/財務

1.7%

役職者

0.8%

ローカライズ スペシャリスト

0.2%

その他

7.6%

最初のアンケートによって、タブレット PC の 8 台に 7 台までがコンバーチブル モデルであることが明らかになりました。OTG では、その理由は以下の 3 点にあると分析しました。

  1. リリース直後、他のモデルは出荷数が少なかった。

  2. 従来、Microsoft の従業員は、オフィスの外で仕事をするときや飛行機で移動するとき、ホテルに滞在したり取引先を訪問したりするときなどにコンピュータを携帯し、自宅でもコンピュータを使用するが、これらの場所では多くの場合、キーボードが必要になる。

  3. 多くの従業員は、タブレット PC が持つタブレット特有の機能がどれくらい役に立つか予想できなかったため、最初のタブレット PC としてノートブック コンピュータのように使用することもできるモデルを選んだ。

ただし、現在はどのモデルが好きであるかをたずねた質問では、回答者の 25% がピュアタブレット モデルまたはハイブリッド モデルの方が良いと答えています。これは、ユーザーが超軽量薄型モデルのすばらしさに気付き始めていたことを示しています。OTG は、従業員がタブレット PC の使用目的について理解するようになると、ピュアタブレット モデルのユーザーが増加すると予想しました。

回答者の 68% がタブレット PC を日常業務の中心的なコンピュータとして使用していると答えました。さらに重要なことは、タブレット PC を使用することによって生産性が向上したと答えた回答者が 69% を超えている点です。

生産性が向上したことを示すデータをより多く集めるために、2 か月後の 2003 年 6 月に 2 回目のアンケートが実施されました。このアンケートでは、タブレット PC 導入の投資収益率を調べる目的でユーザーに対し 9 項目の質問をしました。2,400 人のユーザーにアンケートを依頼し、約 1,300 通の回答を得ることができました。

このアンケートでは、タブレット PC を使用することによってノートブック コンピュータを使用した場合より生産性が向上した作業の上位 3 つを挙げるように求めました。表 3、は生産性が向上した事例として挙げられた作業を回答が多い順に示したものです。

3 : タブレット PC によって生産性が向上した事例として回答が多かった作業

作業

回答率

会議の内容を書き留め、後で簡単に検索できるようにする。

79.6%

以前は不可能だった状況で仕事をする (会議中、通勤または移動中、立っているときなど)。

51.1%

キーボードを使うことができない状況で電子メールを使用する。

35.1%

タブレット PC をホワイトボードやメモ帳として使用する。

28.6%

ドキュメントの校閲またはコメント付け。

28.3%

これまでコンピュータを使用できなかった場所でタブレット PC を使用できるため、より多くのコンテンツを読むことができるようになった。

23%

議事録をコンピュータに入力することなく同僚と共有できる。

18.8%

アンケートによって、Microsoft の従業員は平均的な勤務日の 78% に当たる時間において、仕事でコンピュータを使用していることがわかりました。タブレット PC を使用する時間のうち、タブレット特有の機能を使用する時間の割合は 31% です。タブレット PC を使用することによって生産性がどれくらい向上したかという質問への回答を集計すると、向上率の平均は 19.7% となりました。「タブレット PC によって、コンピュータを使用することが以前より楽しくなった」という点について同意するかどうかを聞いたところ、「そう思う」または「まさにそう思う」と答えた人の割合が 91% を超えました。タブレット PC について全体的に満足しているかどうかを聞いた質問では、88% 近くの人が「そう思う」または「まさにそう思う」と答えました。

メモここに挙げた生産性の向上に関する数字は、タブレット PC を Microsoft の無線 LAN 環境で使用した場合のものです。これらの数字は、無線 LAN でタブレット PC 以外のコンピュータ (ノートブック コンピュータなど) を使用した場合の生産性に関する数字を上回っています。

タブレット PC の利点

Microsoft の従業員は、パワフルなビジネス レベルのコンピュータが導入されたことで、生産性が向上したと感じています。薄型軽量のデザインが効果を発揮し、1 日の大部分においてタブレット PC を持ち歩くようになりました。パワフルな Windows XP ベースのコンピュータを携帯する時間が増加したことが、そのまま生産性の向上につながりました。その効果は特に無線 LAN 環境において顕著でした。さらに、無線 LAN 環境でタブレット PC のような全機能搭載コンピュータを使用した場合、シン クライアントであるターミナル サービス ベースのスレート デバイスとは異なり、ネットワーク インフラストラクチャやサーバー インフラストラクチャに関して新たな要件に対応する必要がなく、ホスト システムの管理について新たな作業が加わることもないので、タブレット型のモバイル コンピュータ テクノロジがもたらす効果を容易に実現することができます。

Microsoft には、通常のコンピュータやノートブック コンピュータを使用するのに適さない状況がいくつかあります。会議でノートブック コンピュータを使用した場合、ディスプレイが話す側と聞く側の間に壁を作ってしまいます。また、キーボードを打つ音は他の参加者の迷惑になります。そのため、多くの従業員が周囲への配慮から会議にはノートブック コンピュータを持ち込まず、紙にメモを取っています。このようにコンピュータを使用しないことは、生産性低下の直接の要因となります。会議などでタブレット PC を使用すると、参加者の間に壁ができたりキーボードを打つ音が迷惑になったりすることが少ないうえ、ネットワークに接続されたコンピュータの利点を十分に活用できます。タブレット PC でメモを取ることは、紙に書き留めることと機能的に同じです。また、ネットワークに接続されたコンピュータが手元にあると、会議の合間にできる空き時間も有効に利用できます。

タブレット PC を活用できる場所や状況はノートブック コンピュータよりはるかに多く、会議だけにとどまりません。ノートブック コンピュータの場合、通常は平らな場所に置かなければキーボードを打つことはできません。それに対し、タブレット PC は紙と同じようにどのような角度でも使用でき、腕で支えて使用することも可能であるため、それほど広いスペースを必要としません。タブレット PC が持つ優れた携帯性によって、テキストの読み書きを効率よく行うことができます。

業界調査

OTG が行ったアンケートによって明らかになった生産性の向上は、Microsoft が行った一連の外部調査と Gartner Measurement (Gartner Inc. の 1 部門) の検証によって裏付けられています。こうした調査や顧客の利用状況を調べた結果によって、Windows XP Tablet PC Edition と Office XP Pack for Tablet PC を搭載したタブレット PC が金銭的な価値をもたらすことが実証されました。これらの調査で明らかになった事実から、インフォメーション ワーカーにおいて以下の点が可能になったことがわかります。

  • Windows XP Tablet PC Edition を搭載したタブレット PC を使用することにより、席を離れているときや外出中でも生産性を上げることができ、以前より効果的なコラボレーションが可能です。

  • それまでコンピュータを使用できなかった状況でタブレット PC を使用できるため、インフォメーション ワーカー個人の生産性が向上し、既存のビジネス プロセスの効率も高まります。

さまざまな調査の結果、情報の収集、分類、検索が大幅に効率化され、ドキュメントのコメント付けや校閲も迅速化したことで、インフォメーション ワーカーの作業時間を年間で平均 147 時間削減できることがわかりました。調査によると、このような時間の節約を金額に換算した場合、年間でインフォメーション ワーカー 1 人あたり平均 $9,525 となります。表 4 は、調査によって判明した事実を従来のビジネス評価基準に基づいてまとめたものです。

4 : タブレット PC がもたらすビジネス バリュー

従来の評価基準

平均値

投資収益率

159%

内部利益率

114%

回収期間

11.6 か月

タブレット PC 1 台あたりの正味現在価値*

$1,161

* 盗ウ味現在価値狽ニは、将来において生じる金額を現在の価値に換算したものを意味します。プロジェクトや投資から得られる利益の計算に使用されます。「割引現在価値」ともいいます。

調査報告書には、結論として以下の点が挙げられています。

  • インフォメーション ワーカーの生産性が直ちに向上 - 長時間、席を離れたり外出したりするインフォメーション ワーカーにおいては、例外なく即時に生産性向上の効果が現れました。この生産性の向上は、以下の点が可能になったことによるものです。

    • 紙に書き留めたメモを入力し直すのではなく、デジタル インクと Windows Journal を使用して議事録を取ることによって、情報の入力および検索をより効率的に行うことができます。 3 社の参加によって実施されたビジネス バリュー調査では、この作業に要する時間が 39% 減少したことがわかりました。この時間の節約を金額に換算すると、インフォメーション ワーカー 1 人あたり年間で $1,951 となります。

    • デジタル インクと Windows Journal を使用することによって手書きのメモを探す時間が短縮されるため、情報検索のコストを削減できます。 5 社の参加によって実施されたビジネス バリュー調査では、この作業に要する時間が 62% 減少したことがわかりました。この時間の節約を金額に換算すると、インフォメーション ワーカー 1 人あたり年間で $3,815 となります。

    • Office XP などの業務アプリケーションで作成されたドキュメントのコメント付けおよび校閲が迅速化されます。 1 社の参加によって実施されたビジネス バリュー調査では、この作業に要する時間が 27% 減少したことがわかりました。この時間の節約を金額に換算すると、インフォメーション ワーカー 1 人あたり年間で $3,759 となります。

    • デジタル ペン機能を使用することに よって定められた連絡作業の簡略化および迅速化が実現され、情報の共有やコラボレーションの改善につながります。 2 社の参加によって実施されたビジネス バリュー調査では、この作業に要する時間が 22% 減少したことがわかりました。この時間の節約を金額に換算すると、インフォメーション ワーカー 1 人あたり年間で $4,278 となります。

  • ワイヤレス通信がもたらすメリット - 無線 LAN 環境で日常業務として行うメッセージング、スケジュール管理、データ アクセスについては、インフォメーション ワーカー 1 人あたり年間で $3,921 に相当する生産性の向上が見られ、作業効率は 62% 向上します。

  • モバイル性がもたらすメリット - 調査に参加した企業の多くが、特殊化された基幹業務 (LOB) アプリケーションにおいてタブレット PC のモバイル性とペン入力機能を活用していました。これらの企業では、上記に加え、これまでコンピュータを使用できなかった状況でタブレット PC を使用できることがもたらすメリットも実現されており、そのために要したコストは、Windows XP Professional を搭載したミドルレンジからハイレンジのノートブック コンピュータを導入する場合にハードウェア購入、展開、管理に要するコストとほぼ同じです。

  • モバイル デバイスの統一 - タブレット PC は、高い能力と汎用性を備えているため、複数のデジタル デバイスを使用する必要がなくなり、それがインフォメーション ワーカーの生産性向上につながります。

このような生産性の向上は、Windows XP Professional を搭載したコンピュータから Windows XP Tablet PC Edition を搭載したタブレット PC へのアップグレードによって達成されるものであり、Windows 95、Windows 98、Windows Millennium Edition、または Windows NT Workstation を搭載したノートブック コンピュータからタブレット PC にアップグレードした場合は、それ以外のメリットも得られることになります。

Windows XP Tablet PC Edition の経済的なメリットの詳細については、https://www.microsoft.com/japan/windowsxp/tabletpc/default.mspx を参照してください。

ベスト プラクティス

OTG では、これまでの経験からタブレット PC の導入を成功させるためのベスト プラクティスをいくつか導き出しました。

  • 導入をグループ単位で行うことによってメリットが大きくなります。OTG は、タブレット PC を多くのグループの一部のユーザーに配布するよりも、グループの数を限定し、その中で多くのユーザーに配布した方が、コラボレーションに対する効果が大きくなることを発見しました。このアプローチは、コラボレーションに良い影響をもたらすだけでなく、タブレット PC の習得に関してもユーザーが互いに教え合えるという点で効果的です。

  • タブレット PC を初めて使用するユーザーを対象としてトレーニング コースを実施します。たとえ 1 時間でもタブレットとデジタル ペンの使い方を指導すると、ユーザーが独力で習得する場合より、はるかに早く生産性の向上という効果が現れます。

  • ネットワーク インフラストラクチャでタブレット PC の動作確認を行ってから配布を開始します。OTG が採用した無線 LAN セキュリティ プロトコルには、ワイヤレス イーサネット アダプタが内蔵されている初期のモデルでサポートされていないものがありました。この問題は最新版のドライバをインストールすることによって解決できました。

  • LOB アプリケーションとの互換性を確認します。Windows XP と互換性のある LOB アプリケーションは、ほとんどの場合、タブレット PC でも問題なく動作します。LOB アプリケーションにタブレット PC のデジタル インク サポートを追加するには、データ入力コントロールを標準のリッチ エディットからインク エディットに変更します。インク エディットは、元のコントロールの機能をすべて備え、しかもデジタル インクのサポートが追加されたプログラム コントロールです。フォーム コントロールを使用する Visual Basic プログラムの場合は、3 行のコードを追加するだけで、インク エディットに変更できます。

  • インク対応の業務アプリケーションを使用すると、タブレット PC を使用するメリットがさらに増大します。たとえば、Microsoft Office 2003 には強力なインク機能があり、Microsoft Word 2003 ドキュメントおよび Microsoft Excel 2003 スプレッドシートの編集に使用できます。Microsoft PowerPoint 2003 では、表示されているスライドに手書き入力することができ、従来のプレゼンテーションにはなかった、その場でのスライド編集が可能になりました。

まとめ

OTG では、従業員の生産性向上を目指し、Microsoft の社内にタブレット PC を導入しようと考えました。コンピュータを使用する時間と生産性との間に相関関係があることは、既に明らかになっていました。タブレット PC は小型で薄く軽いうえ、会議中に使用しても周囲に迷惑をかけることが少ないため、従業員がコンピュータを使用する時間が長くなり、それが生産性の向上につながると考えました。OTG では、生産性の向上率は 5% ほどだろうと予想していました。ところが、導入後に実施したアンケートによって、エンド ユーザーは生産性が 20% 近く向上したと考えていることが明らかになりました。OTG では、Microsoft におけるタブレット PC の普及率が上昇すると、高いレベルの生産性が維持され、作業時間が短縮されることによって、タブレット PC を導入するごとにコストが削減されていくと予想しています。

詳細情報

タブレット PC の詳細については、次の Web サイトを参照してください。

https://www.microsoft.com/japan/windowsxp/tabletpc/

インターネットでは、次の Web サイトで当社の情報をご覧いただけます。

https://www.microsoft.com/japan/

https://www.microsoft.com/japan/technet/itsolutions/msit/default.mspx

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