メールボックス データベース キャッシュについて

 

適用先: Exchange Server 2010 SP2, Exchange Server 2010 SP3

トピックの最終更新日: 2016-11-28

Extensible Storage Engine (ESE) エンジンは、データベース キャッシュを使用することで入出力 (I/O) 操作を減らします。一般的に、利用可能なデータベース キャッシュの容量が多いほど、Microsoft Exchange Server 2010 メールボックス サーバーで生成される I/O は少なくなります。データベースの I/O の減少は、主にサーバーで利用可能なデータベース キャッシュの容量とユーザーのメッセージ プロファイルによって左右されます。

データベース キャッシュの効率の向上

データベース キャッシュの効率は、さまざまな技術的変更により Exchange 2010 で改善されました。最も重要な変更の 1 つは、ログのチェックポイントの深さのターゲットの増加です。ログのチェックポイントの深さのターゲットは、ログ / データベース キャッシュに対して行われた変更が、妥当な時間内に確実にデータベース ファイルに書き込まれるようにするために使用されます。データベースに 1 つを超えるコピーがある場合 (データベース可用性グループ、または DAG 内) に、データベースごとに 20 MB から、データベースごとに 100 MB に増やされました。次の表は、Exchange 2010 における既定のログ チェックポイントの深さのターゲットを示しています。

メールボックス データベースごとの、既定のログ チェックポイントの深さのターゲット構成

データベース構成 ログ チェックポイントの深さのターゲット (MB)

スタンドアロン (1 つのデータベースのコピー)

20

メールボックスの復元:2 つ以上のコピーを持つアクティブなデータベースのコピー (DAG)

100

データベースのパッシブ コピー

5

この変更により、2 つ以上のコピーを持つアクティブ データベースのデータベース書き込み I/O は、スタンドアロン データベースの書き込み I/O と比較して最高で 40% 削減されます。データベースのチェックポイントの深さのターゲットが高い場合、データベースの変更をメモリに長い間保持することができ、その結果、I/O を結合する能力 (コーリス) が改善され、繰り返し発生する書き込み I/O (変更をデータベース ファイルに書き込む前に、複数のデータベースの変更をメモリに対して行うことにより、書き込みを十分に遅らせて節約できる I/O) が削減されます。

チェックポイントの深さのターゲットをより深くすることで、アクティブなデータベースをデータベース エラーから回復するのにかかる時間が著しく増加するため、この変更はメールボックスの復元ソリューションに対してのみ行われました。この問題は、メールボックスの復元の構成で対処されています。なぜなら、アクティブなデータベースで障害が発生すると、別の正常なコピーに対して自動的にフェールオーバーが発生するからです。障害が発生したデータベースを復元するとログ再生処理が再開されます。

チェックポイントの深さのターゲットは、データベースの切り替え / フェールオーバーにかかる時間を削減するために、パッシブ データベース コピー上では引き続き削減されます。5 MB のチェックポイントの深さのターゲットを持つパッシブ データベース コピーは、より高いチェックポイントの深さのターゲットを持つコピーよりも、かなり速くアクティブ化できます (パッシブとアクティブの状態の間を移行する時に通して読み込むログの数が少ない)。パッシブ データベース コピーにはトランザクション I/O はありませんので、追加の書き込み I/O をより低いチェックポイントの深さのターゲットで処理できる予備の能力があります。

データベース キャッシュの最小要件

ESE データベースが効率的に動作するのに十分なメモリがあることを確認するため、データベースの数に基づいたサーバーごとの物理メモリの必要最小量があります。これらの要件は、アクティブおよびパッシブ両方のデータベース コピーに適用されます。要件については、次の表を参照してください。

メールボックス サーバーあたりの必要最小メモリ

データベースの数 Exchange 2010 に最小限必要な物理メモリ

1-10

2 GB

11-20

4 GB

21-30

6 GB

31-40

8 GB

41-50

10 GB

51-60

12 GB

61-70

14 GB

71-80

16 GB

81-90

18 GB

91-100

20 GB

データベース キャッシュのメトリックス

以前のバージョンの Exchange では、記憶域のサイズ計算に必要な主要指標の 1 つとして、各ユーザーによって消費される 1 秒あたりのデータベース I/O (IOPS) の数がありました。Exchange 2010 メールボックスの IOPS を予測するのに使用できる最も重要な 2 つの要素は、メールボックスごとのデータベース キャッシュの容量と、各ユーザーが 1 日に送受信するメッセージの数です。

次の表では、メッセージのアクティビティとデータベース キャッシュに基づいたメールボックスあたりの IOPS の予測値を提供します。表の情報を使用して、ベースライン Exchange 2010 メールボックス I/O の要件の予測に役立てることができます。

これらの推定値は、各メールボックスのサイズが 3 MB ~ 30 MB のデータベース キャッシュに対してのみ有効です。これらの推定値は、次のような特徴を持つユーザーで検証済みです。Microsoft Exchange Office または Outlook 2007 のいずれかの、利用率の高い Outlook 2010 キャッシュ モード クライアント、2 GB のメールボックス、および Exchange ActiveSync の利用率が高いこと。予測に使用した平均的なメッセージ サイズは 75 KB でしたが、メッセージ サイズは IOPS の主要な要素ではありません。クライアントの種類および使用シナリオが異なると、得られる結果が正確でない場合があります。

メッセージ アクティビティおよびメールボックス データベースのキャッシュに基づいた、メールボックスあたりの IOPS の予測値

メールボックスごとの、1 日あたりの送信 / 受信メッセージ (平均メッセージサイズが 75 KB 以下) ユーザーあたりのデータベース キャッシュ (MB) 1 つのデータベースのコピー (スタンドアロン):メールボックスあたりの予測される IOPS 複数データベースのコピー (メールボックスの復元):メールボックスあたりの予測される IOPS

50

3

.060

.050

100

6

.120

.100

150

9

.180

.150

200

12

.240

.200

250

15

.300

.250

300

18

.360

.300

350

21

.420

.350

400

24

.480

.400

450

27

.540

.450

500

30

.600

.500

データベース キャッシュ サイズの要件を算出したら、次のステップは、データベース キャッシュ サイズの要件に見合うような、サーバーごとの最低メモリ要件を算出することです。データベース キャッシュ サイズは、サーバーごとの物理メモリの量が、特定のユーザー プロファイルのメールボックス数の要求に対して適切であるようにするため、サイジングのプロセスに織り込まれる必要があります。

次の表では、複数の役割のサーバーだけでなく、1 つの役割のメールボックス サーバーの両方について、既定のメールボックス データベース キャッシュ サイズを一覧表示します。

既定のメールボックス データベース キャッシュ サイズ

サーバーの物理メモリ (RAM) データベース キャッシュ サイズ:(メールボックスの役割のみ) データベース キャッシュ サイズ: 複数の役割 (たとえば、メールボックスとハブ トランスポート)

2GB

512 MB

非サポート

4GB

1 GB

非サポート

8GB

3.6 GB

2 GB

16GB

10.4 GB

8 GB

24GB

17.6 GB

14 GB

32GB

24.4 GB

20 GB

48GB

39.2 GB

32 GB

64GB

53.6 GB

44 GB

96GB

82.4 GB

68 GB

128GB

111.2 GB

92 GB

注意

Active Directory の msExchESEParamCacheSizeMax および msExchESEParamCacheSizeMin 属性を変更することで、既定のデータベース キャッシュ サイズの値を変更できます。属性の詳細については、「Exchange 2000 Server でストア データベースの最大キャッシュ サイズを変更する方法」を参照してください。キャッシュ サイズの計算に、32 KB のページを使用します。

サーバーのメモリ要件を確認する方法については、適切なメモリ、容量、I/O および CPU パフォーマンスを定量できるようにメールボックス サーバーの役割を設計する方法を説明した「Exchange 2010 メールボックス サーバーの役割の設計例」を参照してください。

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