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SQL Server Reporting Services における重大な変更

このトピックでは、Reporting Services の新しい変更点について説明します。これらの変更によって、以前のバージョンの SQL Server に基づくアプリケーション、スクリプト、または機能が使用できなくなる場合があります。この問題は、アップグレードするとき、またはカスタムのスクリプトやレポートで発生することがあります。詳細については、「アップグレード アドバイザを使用したアップグレードの準備」を参照してください。

レポート サーバーに関する重大な変更

レポート ビルダーに関する重大な変更

レポート処理に関する重大な変更

レポートの表示に関する重大な変更

新しい機能の詳細については、「新機能 (Reporting Services)」を参照してください。

レポート サーバーに関する重大な変更

ここでは、レポート サーバーおよび管理ツールに関する重大な変更について説明します。

機能

説明

IIS および ASP.NET

IIS を使用しなくても、Reporting Services から SOAP エンドポイントにアクセスできるようになりました。URL に IIS の Web サイトは含まれなくなっています。Reporting Services は、HTTP.SYS を使用して、レポート サーバーの URL に定義された特定のポートで要求を直接リッスンします。

この機能強化は、配置によっては重大な変更になります。

  • IIS のメタデータやプロパティを参照するスクリプト、ツール、または診断プロセスがある場合、レポート サーバー配置を管理するための新しい方法を開発する必要があります。

  • セキュリティのために ISAPI フィルターを実装している場合、ISA サーバーでホストされるように ISAPI フィルターを移動するか、Reporting Services で同じ操作を実行する新しい HTTP モジュールを作成する必要があります。

  • カスタム仮想ディレクトリ設定を使用している場合、新しいレポート サーバーの実装では、同等の設定または URL を構成できない可能性があります。場合によっては、アップグレード操作でレポート サーバーまたはレポート マネージャーの同等の URL を作成できないことがあります。

アップグレード アドバイザーによって、ISAPI フィルターおよびカスタマイズした仮想ディレクトリがチェックされ、重大な変更が検出されます。ただし、これですべてのカスタマイズをチェックできるわけではありません。アップグレード アドバイザーのチェックで変更が検出されなくても、予期しないエラーが発生することがあります。

Windows XP でのポートの競合

サポートされている Windows XP SP2 の 32 ビット エディションでは、IIS 5.1 と Reporting Services で同じポートを使用できません。IIS 5.1 とレポート サーバーの両方を、既定の HTTP ポート (ポート 80) でリッスンするように構成することはできません。

IIS 5.1 では、Web サーバーでホストされる Web アプリケーションに対して HTTP.SYS が使用されません。つまり、同じポートを介して受け取る要求に共通のキュー管理が適用されず、登録および予約された URL を格納するための共通のリポジトリがありません。

この問題は、Windows XP での SQL Server 2008Reporting Services のアップグレードで次のような動作の原因となります。

  • Windows XP の 32 ビット エディションで、既存の SQL Server 2005Reporting Services インストールを SQL Server 2008Reporting Services にアップグレードする場合、レポート サーバーはポート 8080 でリッスンするように構成されます。

  • Windows XP の 64 ビット エディションで、既存の SQL Server 2005Reporting Services インストールを SQL Server 2008Reporting Services にアップグレードする場合、レポート サーバーはポート 80 でリッスンするように構成されます。

  • SQL Server 2008 ビルド間のアップグレードを実行する場合、レポート サーバーは、アップグレード前に構成されていたポートと同じポートで引き続きリッスンします。

アップグレードの完了後に、別のポートを使用する場合は、Reporting Services 構成ツールを使用して、レポート サーバーがリッスンするポートを変更できます。

SQL Server 2008 でサポートされる Windows オペレーティング システムの詳細については、「SQL Server 2008 のインストールに必要なハードウェアおよびソフトウェア」を参照してください。

注意注意
IIS 5.0 はサポートされなくなりました。Windows 2000 サーバーは SQL Server 2008 でサポートされていません。

Reporting Services Windows Management Instrumentation (WMI) プロバイダー

Reporting Services Windows Management Instrumentation (WMI) プロバイダーは、以前のバージョンと互換性がありません。新しいバージョンには、URL 登録をサポートする方法が追加されています。レポート サーバー インストールに含めることができる Reporting Services WMI プロバイダーのバージョンは 1 つだけであるため、以前のバージョンはこのバージョンに置き換えられます。この変更は、配置によっては重大な変更になります。WMI プロバイダーを呼び出すスクリプトまたはツールを作成していた場合、新しいバージョンを使用するようにコードを変更する必要があります。詳細については、「Reporting Services WMI プロバイダ」を参照してください。

この変更は、ユーザーが <server_name>\<instance_name> 形式を指定して接続する場合に、SQL Server Management Studio で SQL Server 2005 インスタンスに接続するのを防ぐことができます。代わりに、ユーザーは、接続するレポート サーバー URL を入力する必要があります。

サービスとアプリケーションの統合

レポート サーバー Web サービス、レポート マネージャー、およびバックグラウンド処理アプリケーションは 1 つのサービスに統合されています。これらを個別に開始または停止することはできません。

Reporting Services 構成ファイル

Reporting Services 構成ファイルも統合されています。レポート マネージャーおよびレポート サーバー Web サービスのプライマリ構成ファイルは、RSReportServer.config ファイルです。RSWebApplication.config ファイルは使用されなくなりました。RSWebApplication.config の次の設定は、RSReportServer.config ファイルに移されています。

  • ReportServerUrl

  • ReportServerExternalUrl

  • ReportBuilderTrustLevel

  • 配信拡張機能の DeliveryUI 設定

  • DisplayErrorLink

次の設定は廃止され、使用されなくなりました。

  • ReportServerVirtualDirectory

  • MaxActiveReqForOneUser

これまで Reporting Services で RSWebApplication.config ファイルを変更していた場合、SQL Server 2008 へのアップグレード時にこのファイルは削除されません。手動で削除する必要があります。このリリースでは、RSWebApplication.config ファイル内のすべての設定が無視されます。

Reporting Services のトレース ログ

レポート サービスで実行されるすべてのアプリケーションのプライマリ トレース ログは、ReportServerService_<タイムスタンプ>.log です。SQL Server 2008 では、ReportServerWebApp_<タイムスタンプ>.log、ReportServer_<タイムスタンプ>.log、ReportServerService_main_<タイムスタンプ>.log の各ファイルが廃止され、今後は作成されません。

Reporting Services 構成ツール

Reporting Services 構成ツールで、データベースのアップグレード機能または権限の許可機能がサポートされなくなりました。以前はこれらの機能を使用して、アップグレードや権限の許可を独立した操作として実行したり、これらのタスクを実行するためのスクリプト テンプレートを生成することができました。このリリースでは、アップグレードもデータベース権限も内部操作として処理されます。

SQL Server Management Studio

このリリースの Management Studio では、ホーム フォルダーが削除されています。Management Studio でレポート サーバーのコンテンツを表示、管理、配信、または保護することはできません。

レポート マネージャー

レポート マネージャーの [サイトの設定] から、[アイテム レベルのロールの定義を構成]、[システム レベルのロールの定義を構成]、[ジョブの管理] のリンクが削除されています。レポート マネージャーでは、ロールの定義を作成、変更、または削除する機能がサポートされなくなりました。各ロールにどのタスクを追加するかを管理するには、Management Studio を使用する必要があります。同様に、ジョブの管理もレポート マネージャーから Management Studio に移されています。

電子メール サブスクリプション

レポート サーバーまたはリモート SMTP サーバーを Windows Vista または Windows Server 2008 にアップグレードすると、電子メール サブスクリプションが [送信者][宛先][Cc][Bcc]、および [返信先] の各フィールドの電子メールのエイリアスに対して機能しません。

これは、Windows Server 2003 には、エイリアスを完全な電子メール アドレスに変換する機能が備わっているためです。Reporting Services では、その機能に依存して、完全な電子メール アドレスの代わりに電子メールのエイリアスを使用できます。ただし、Windows Vista および Windows Server 2008 には、誤った電子メール アドレスを除外する目的からこの機能が含まれていません。この問題を回避するには、構成で DefaultHostName プロパティを構成する必要があります。この問題の解決方法については、Microsoft サポート技術情報の記事 945601「電子メール アドレスにエイリアスを使用すると Windows Vista および Windows Server 2008 で SQL Server 2005Reporting Services の電子メール サブスクリプションが機能しない」を参照してください。

SharePoint テクノロジ用 SQL Server 2008Reporting Services アドイン

SharePoint テクノロジ用 SQL Server 2008Reporting Services アドインは、SQL Server 2008 レポート サーバー インスタンスを SharePoint 統合モードで実行する場合に、レポートの表示機能、処理機能、および管理機能と、データ ドリブン サブスクリプションを提供します。アドインのダウンロードには、レポート ビューアー Web パーツおよび Web アプリケーション ページと、Windows SharePoint Services (WSS) または Microsoft Office SharePoint Services (MOSS) を使用するためのサポートが含まれています。

SharePoint テクノロジ用 SQL Server 2008Reporting Services アドインには、SQL Server 2008 レポート サーバー インスタンスが必要です。これは、このアドインが SQL Server の以前のバージョンではサポートされていないためです。SQL Server 2008 より前のレポート サーバーを使用している場合に、SharePoint テクノロジ用 SQL Server 2008Reporting Services アドインのインストールまたは SharePoint テクノロジ用 SQL Server 2008 Reporting Services アドインへのアップグレードを行うと、レポート サーバーが予期したとおりに機能しなくなります。たとえば、[データベース アクセスの許可] ページを使用してデータベース アクセスを構成したり、SharePoint の製品またはテクノロジを使用してレポートを表示したりできなくなります。この問題を解決するには、レポート サーバー インスタンスを SQL Server 2008 にアップグレードするか、SharePoint テクノロジ用 SQL Server 2008Reporting Services アドインをアンインストールして SharePoint テクノロジ用 SQL Server 2005Reporting Services アドインを再インストールする必要があります。

SharePoint テクノロジ用 SQL Server 2008Reporting Services アドインの詳細については、「Microsoft SQL Server 2008 Reporting Services アドインの Readme」を参照してください。

基本認証

SQL Server 2008Reporting Services では、基本認証でサポートされているログオンの種類は NETWORK と NETWORK_CLEARTEXT だけです。対話型ログオンと BATCH はサポートされていません。

レポート ビルダーに関する重大な変更

ここでは、レポート ビルダーに関する重大な変更について説明します。

完全信頼モードのみでのレポート ビルダーの実行

ネイティブ モードで実行される Reporting Services の以前のバージョンでは、次の URL を使用して SQL Server 2005 レポート ビルダーを起動できました。

  • **完全信頼   **例 http://<servername>/reportserver/reportbuilder/reportbuilder.application

  • 部分信頼   例 http://<servername>/reportserver/reportbuilder/reportbuilderlocalintranet.application

どちらの URL でも、<servername> はレポート サーバーを指定するコンピューターの名前です。また、reportserver はレポート サーバー インスタンスの名前です。

このリリースでは、完全信頼 URL を使用してレポート ビルダーを実行する必要があります。完全信頼 URL を最初に使用するときに、より高いレベルの権限をアプリケーションに与えるように求めるプロンプトが表示される場合があります。

注意注意

レポート ビルダーが実行されない場合、またはエラーが表示された場合は、システム管理者に問い合わせてください。より高いレベルの信頼をこのアプリケーションに与えるために必要な権限がない可能性があります。

これらの権限は、最初に付与すれば再度設定する必要はありません。

このリリースでは、部分信頼 URL を使用すると、レポートを開くか保存するとき、またはレポート サーバーを切り替えるときに、次のエラーが表示されます。

"失敗。要求の処理中にエラーが発生しました。レポートを保存し、アプリケーションを再起動してください。"

レポート処理に関する重大な変更

レポート処理アーキテクチャは、要求時レポート処理の導入により、このリリースで根本的に変更されています。要求時レポート処理によって、レポート サーバーでのメモリ使用量が大幅に減少します。

浮動小数点値への 10 進数形式の適用

.NET Framework のカスタム形式である "D" (10 進数) への浮動小数点値の変換は、サポートされていません。以前のバージョンの Reporting Services では、この状況でもエラーが生成されませんでした。

RDL のアップグレードの重大な変更

既存のレポートをアップグレードするときに、次の RDL 要素はサポートされません。

  • RDL のオブジェクト識別子が 256 文字に制限される

    RDL 内のオブジェクトの識別子 (textboxID など) の長さは、以前は制限がありませんでした。このリリースでは、オブジェクト識別子の長さが 256 文字に制限されます。識別子は、引き続き CLS に準拠する必要があります。

最後の要求の対話情報のみが保存される

以前のバージョンの Reporting Services では、ドリルスルー情報や切り替えの選択といった、対話形式での選択で可能なすべての組み合わせが、スナップショットに保存されていました。レポートの 5 ページ目を表示する一方で、プログラムでは切り替え用の正しい ID を追跡することで 1 ページ目のアイテムを切り替えることが可能でした。

SQL Server 2008 では、最後の表示要求の対話情報のみが生成されて保存されます。あるページを表示しながら、プログラムで別のページ上のアイテムを切り替えることはできません。現在のレポート ページのドリル ダウン アイテムのみを切り替えることができます。

レポート オブジェクト モデルの名前空間の変更

このリリースでは、レポート オブジェクト モデルの名前空間が変更されました。この名前空間では、カスタム コードから Fields、Parameters、ReportItems のようなグローバル コレクションへの読み取り専用アクセスが提供されます。既存のカスタム コードで以前の名前空間への完全修飾参照を明示的に使用している場合は、この変更が重大な変更になります。

コードから組み込みコレクションにアクセスする場合は、完全修飾参照を使用しないことをお勧めします。名前空間を明示的に指定していなければ、カスタム コードからの参照は、現在インストールされているバージョンの Reporting Services のレポート オブジェクト モデルに解決されます。

たとえば、SQL Server 2005 Reporting Services での次の 2 つの例は、レポート パラメーターのラベルを返すカスタム関数にレポート パラメーターを渡す際に、パラメーターへの完全修飾参照 (Microsoft.ReportingServices.ReportProcessing.ReportObjectModel.Parameter) を使用する場合と、パラメーターへの既定の参照 (Parameter) を使用する場合を対比して示しています。

次の例はお勧めしません。この例では、レポート パラメーターの完全修飾参照を示しています。レポート パラメーターの既定の名前空間参照を示す 2 番目の例をお勧めします。

DO NOT USE FULLY QUALIFIED NAMESPACE REFERENCES FOR RUN-TIME COLLECTIONS

Public Function ShowParams(ByVal reportparameter As _

Microsoft.ReportingServices.ReportProcessing.ReportObjectModel.Parameter) _

As String

Return reportparameter.Label

End Function

次の例では、実行時コレクションにアクセスする場合の推奨方法を示しています。

Public Function ShowParams(ByVal reportparameter As Parameter) _

As String

Return reportparameter.Label

End Function

レポートの表示に関する重大な変更

レポートの表示アーキテクチャは、このリリースで根本的に変更され、異なるレンダラー間でのページングおよびレイアウトに関する表示の一貫性が向上しています。

新しい表示オブジェクト モデルと一貫性のあるページ割り当て

表示オブジェクト モデル (ROM) が SQL Server 2008 で変更されました。以前のバージョンの表示オブジェクト モデルはサポートされなくなりました。マルチスレッドの表示拡張機能から表示オブジェクト モデルにアクセスすること (および複数スレッドからコンテキストを切り替えること) はできません。

新しい ROM により、ページを表示するルールの一貫性が向上しています。詳細については、「Reporting Services の改ページについて」を参照してください。

CSV データ レンダラーの設計変更

以前のバージョンの Reporting Services では、レポートを CSV ファイル形式にエクスポートするときに、レポート ページでのデータ表示方法を維持するようにデータが書式設定されていました。その結果、マトリックス データ領域の場合は、このデータを使って作業を続けるために他のアプリケーションにインポートする際のデータの書式が不適切になりました。

このリリースでは、レポートを CSV ファイルにエクスポートするときに、既定のモードと準拠モードの 2 つのサポート形式を選択できるようになりました。既定のモードでは Excel 向けにデータの形式が最適化されます。準拠モードでは、サードパーティのアプリケーション向けにデータの形式が最適化されます。詳細については、「CSV ファイルへのエクスポート」を参照してください。

以前の形式の CSV ファイルは使用できなくなります。ただし、マトリックス データ領域を使用しないレポートの場合は、準拠モードを使用すれば、以前の CSV ファイル形式に最も近いファイル形式になります。

ページ ヘッダーとページ フッターでの条件付き表示による集計

以前のバージョンの Reporting Services では、条件付き表示でレポート ページに含めるアイテムを決定する場合、レンダラーが異なれば使用するルールも異なりました。たとえば、印刷レポートでは非表示アイテムの集計計算は行われませんでしたが、ブラウザーや Excel に表示されるレポートでは非表示アイテムも計算されていました。

このリリースでは、ページに含めるアイテムの判断に、すべてのレンダラーが同じルール セットを使用します。

Excel の数式がサポートされない

以前のバージョンの Reporting Services では、RDL の式を Microsoft Excel の数式に変換する操作が限定的にサポートされていました。このリリースでは、レポートを Excel にエクスポートするときに、RDL の式が Excel の数式に変換されません。

重なり合うアイテム

以前のバージョンの Reporting Services では、レポートのデザイン画面に重なり合うアイテムがある場合にレポートをパブリッシュすると、警告 ("レポート アイテムの重なりは、どのレンダラーでもサポートされていません。") が生成されましたが、レポート アイテムはデザイン画面の元の位置に配置されたままでした。SQL Server 2008 では、レポート アイテムの重なりをサポートしないレンダラーにレポートが表示またはエクスポートされると、アイテムが移動されて境界の重なりが解消されます。詳細については、「レンダリングの動作について」を参照してください。