Internet Explorer

Internet Explorer 8 の新機能

Matt Hester

 

概要:

  • Internet Explorer 8 に用意されている使いやすさのための機能
  • さまざまな機能強化
  • 標準ベースの Web 閲覧と互換性
  • セキュリティと信頼性

目次

使いやすさ
併用の利点
その他の新機能
互換性
セキュリティと信頼性
信頼性の向上
企業のサポート
開発者ツール
まとめ

何が World Wide Web をこれほどすばらしいものにしているのでしょうか。その答えはもちろん世界 (実にさまざまなニーズを持った人々でいっぱいの世界) です。私の父や私の子供たちのように、安全かつ容易な Web 閲覧を望んでいるユーザーもいます。IT プロフェッショナルやサポート担当者は、内部の重要な Web アプリケーションをサポートしつつ自分たちの業務を保護するセキュリティ保護された信頼性のあるブラウザを必要としています。また、Web 開発者は、自分たちが Web に対して抱いているすばらしいビジョンを実現したいと思っています。

Internet Explorer 8 は、これらのニーズをすべて満たす次世代の Web ブラウザです。この記事では、Internet Explorer 8 に導入された、あらゆるユーザーの Web 閲覧を強化する多くの機能強化について説明します。

使いやすさ

Internet Explorer 8 では、Web 閲覧エクスペリエンスをより容易で直感的なものにするために非常に多くの作業が行われました。ブラウザの新機能を代表する 2 つの優れた新機軸は、アクセラレータと Web スライスです。

アクセラレータは、毎日使用する Web サービスやプロバイダへの接続に役立つ手っ取り早くて簡単な方法です。アクセラレータを使用するために必要なのは、Web サイト上のテキストを選択して、目的の処理を実現するのにふさわしいサービスを選択することだけです。実現できる処理には、検索、地図の表示、ショッピングなどがあります。さらには、翻訳も可能です。

レストランへの道順を調べる必要があるとします。その場合、通常、住所を選択してコピーし、好きな地図サービスに移動して住所を貼り付け、検索ボタンをクリックします。Internet Explorer 8 のアクセラレータを使用すると、作業は大幅に簡単になります。住所を選択すると、アクセラレータ アイコンが表示されます。その後に必要なのは、その場所のプレビューを生成する地図サービスを選択することだけです (図 1 参照)。他にも必要な情報がある場合は、プレビューをクリックすると、その Web サービスに直接移動できます。

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図 1 Internet Explorer のアクセラレータ

Web スライスは、Internet Explorer 8 に導入されたもう 1 つの優れた機能強化です。皆さんはおそらく RSS についてご存じでしょう。RSS を利用したサービスを購読すると、頻繁に変更されるコンテンツを自動的に取得することができます。Web スライスでは非常によく似たしくみが使用されます。実際、Web スライスは RSS テクノロジに基づくものです。ただし、RSS フィードの場合はカテゴリ全体 (天気、金融、映画など) を購読しますが、Web スライスの場合はこれと違って、一部の情報のみを購読することができます。

たとえば、お住まいの都市の局地的な天気に関する通知や更新情報を受け取りたいとします。Web スライスを使用すると、簡単にお住まいの都市の天気予報を購読することができます。これを行うには、Live Search でたとえばダラスの天気について検索し、Web スライスを購読します (図 2 参照)。

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図 2 Live Search での検索によって見つかった Web スライス

または、ネット サーフィン中に Web スライスを持つ Web ページにたどり着くと、購読できるコンテンツをポイントした際に Web スライス アイコンが表示されます。アイコンをクリックすると、その Web スライスがお気に入りバーに追加されます。その後は、どのページを閲覧しているときでも、この Web スライスの内容を確認することができます。さらに嬉しいことに、なんと、なんらかの変更が加えられた場合、ユーザーはそれを知ることができます。更新が行われると、お気に入りバー上の Web スライスが強調表示されるのです。

併用の利点

アクセラレータと Web スライスは、別々に使用しても非常に強力です。ですが、この 2 つを併用すると、企業が自社のサービスにユーザーを誘導しユーザーの関心を維持するのに本当に役立ちます。たとえば、eBay は、オンライン オークション用にアクセラレータと Web スライスの両方を提供しています。eBay の顧客は、eBay のアクセラレータを使用して関心のあるオークションにすばやく移動し、その後、Web スライスを使用してこうしたオークションの経過を追うことができます。この方が、オークションの最新状況を知っておくためにブラウザの更新ボタンを絶えずクリックしなければいけないのよりもいいに決まっていますよね。

Internet Explorer 8 ギャラリーでは、多くのアクセラレータや Web スライスを入手することができます。また、ここには、Web サイト用の Web スライスやアクセラレータを作成する方法について説明しているいくつかのすばらしい記事も用意されています。

その他の新機能

Internet Explorer 8 には、Web 閲覧を強化する刺激的な新機能が他にも多数用意されています。以下にいくつかご紹介します。

InPrivate フィルタを使用すると、Internet Explorer を使用して好きなページを閲覧することができ、閲覧セッションに関する情報はローカル コンピュータで保持されません。InPrivate フィルタを使用するために必要なのは、新しいタブを開いて [Start InPrivate Browsing] (InPrivate ブラウズを開始) を選択することだけです。用が済んだら、タブを閉じればそれでおしまいです。何も記録されません。自分の履歴を残しておきたくない、キオスクや共有のコンピュータを使用する場合、これはすばらしいことです。また、これは、配偶者のための贈り物を買おうとしている場合、または、健康に関する情報や投資戦略について調査している場合に、特に役立ちます。InPrivate フィルタを使用すると、自分の閲覧履歴に対する制御権を握ることができます。

閲覧の履歴の削除は新機能ではありませんが、Internet Explorer 8 ではこの機能が強化されており、お気に入り Web サイト データを保持できるようになっています。お気に入りフォルダ内にある Web サイトのための Cookie とインターネット一時ファイルは、保持することができるようになりました。

強化されたクイック検索ボックスを使用すると、目的のコンテンツを見つけるのが大幅に簡単になります。また、検索結果が目的のコンテンツと関係のあるものとなる可能性が高まります。検索用語を入力すると、選択した検索プロバイダの検索候補 (イメージを含む) がリアルタイムで表示されます (図 3 参照)。さらに、強化されたクイック検索ボックスを使用すると、お気に入りや閲覧履歴の検索結果も表示されます。また、検索候補の下部にはクイック ピック メニューが表示され、ユーザーは単純なマウス操作で複数の検索プロバイダの検索候補間の切り替えを行うことができます。

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図 3 視覚的な手掛かりはユーザーが探しているものに的を絞るのに役立つ

強化されたページ内検索は、私が気に入っている新機能の 1 つです。この機能を確認するには、Crtl キーを押しながら F キーを押し、ボックスへの入力を開始します。入力を行うにつれて文字や単語が強調表示され、探しているものに的が絞られていくのを確認することができます。

タブ グループを使用すると、関連性のあるタブが、色分けされたグループに自動的にまとめられます。これによって、さまざまなコンテンツ セットや情報セットをより迅速かつ容易に追跡できるようになります。

互換性

Internet Explorer 8 における主要な変更の 1 つは、World Wide Web コンソーシアム (W3C) 標準に基づく新しいレンダリング エンジンの導入です。つまり、Internet Explorer 8 は、このような標準 (Firefox、Safari などの標準) に従って構築された Web ページをレンダリングするように設計されているということです。

コミュニティ標準を採用することだけでなく、Web サイト管理者や開発者の負担を軽減することもその目的でした。これまでは、ほとんどの管理者や開発者は、各サイトにつき 2 つのページを開発およびサポートする必要がありました。1 つは Internet Explorer 標準に従うページで、もう 1 つは他の Web 標準に従って設計されたページです。Internet Explorer 8 は、W3C の HTML 5 草案で言及されている DOM ストレージ標準、Web アプリケーション ワーキング グループの Selectors API や ECMAScript 3.1 に準拠した構文などの、台頭しつつある将来の標準をサポートしています。新しいエンジンの導入により、管理者や開発者は 1 つの Web ページ (W3C 標準に従って構築されたもの) だけ用意すれば済むようになりました。ただし、この重大な変化によって、以前のバージョンの Internet Explorer 向けに設計された Web サイトはどうなるのかという 1 つの明白な問題がもたらされることに注意してください。このようなサイトが期待どおりに動作しない可能性があるのは明らかです。ですが、このような状況について顧客と話し合う際に心に留めておくべきことがあります。Internet Explorer 8 で適切に動作しないページは、おそらく他のブラウザでも適切にレンダリングされない (そのようなブラウザ用のページが作成されている場合は話が別ですが) ということです。

さいわい、Internet Explorer 8 では、解決策としてツール バーの互換表示ボタンが用意されています。このボタンは、Internet Explorer 7 スタイルのレンダリングを想定して作成されたページを表示したときに表示されます。このボタンをクリックすると、IE7 スタイルのレンダリングに戻り、表示に関する問題はすべて修正されます。

Internet Explorer 8 には、互換表示一覧と呼ばれる機能も用意されています。これを使用すると、互換表示が最適な表示方法となっている主要なサイトの一覧を受け取ることができます。この一覧に含まれるサイトに移動すると、Internet Explorer 8 ではそのサイトが自動的に互換表示で表示されます。互換表示ボタンを使用して Internet Explorer 8 のレンダリング動作を制御するというのは、ユーザーにとってはすばらしい解決策ですが、互換性の面では推奨される方法ではありません。Web サイト管理者や開発者には、より細かい制御を可能にする方法が必要となるでしょう。

管理者が互換性に関する問題を管理する 1 つの方法は、いくつかの単純なグループ ポリシーを使用してこのような設定を制御するという方法です。また、Web サーバー管理者に、Web サーバーの HTTP 応答ヘッダーに簡単な変更を加える (次のような X-UA-Compatible タグを追加する) ことにより互換表示を組み込んでもらうという方法もあります。

 "X-UA-Compatible value="IE=EmulateIE7" 

このメタタグは、当該のサーバー上にあるすべての Web サイトに影響を与えます。

最終的に、こうした Web サイトやページが Internet Explorer 8 内でどのようにレンダリングされるかは開発者が制御します。開発者は、ページの特定のバージョンを思い描いたとおりにレンダリングするためのブラウザ検知ロジックとして、今まで使用していたのと同じもの (つまりユーザー エージェント文字列) を引き続き利用することができます。

ただし、この設定をより簡単に制御する方法もあります。Web 開発者は、サイトまたはページに似たようなメタタグを追加することができるのです。X-UA-Compatible タグは、サイトごとおよびページごとに機能します。したがって、これを使用するには、以下に示すタグを <head> タグの後に追加します。

  <meta http-equiv="X-UA-Compatible" content="IE=EmulateIE7" />

興味深い問題は、サーバー、サイト、ページ、ユーザー設定の間で競合が発生した場合にどのメタタグが優先されるのかということです。実際、サーバーに対してメタタグが設定されると、互換表示ボタンは表示されません。競合が発生した場合は、ページ設定が常に優先されます。メタタグは次のような順序で適用され、最後に適用された設定が優先されます。

  1. ユーザーの互換表示ボタン
  2. グループ ポリシー設定
  3. サーバー
  4. サイト
  5. ページ

互換性制御の詳細については、Internet Explorer 互換性センターを参照してください。

既定では、Internet Explorer 8 は、インターネット サイトを閲覧するときは標準ベースのモードで実行され、イントラネット サイトを閲覧するときは互換表示モードで実行されます。その主な理由は、Internet Explorer 8 を使用した場合に内部アプリケーションで発生する可能性のある、互換性に関する問題を軽減することでした。

セキュリティと信頼性

コンピュータを Web に接続した瞬間から、ユーザーは絶えず危険にさらされています。防御手段は何層にもわたって存在します (ファイアウォールやウイルス対策ツール、および他のインターネット セキュリティ メカニズム)。Internet Explorer 8 は、他のツールでは必ずしも可能とは限らない方法でユーザーを保護するのに役立つ、追加の機能を提供します。

最近の攻撃は、必ずしもブルート フォース攻撃という技術的分類に当てはまるものとは限りません。ソーシャル エンジニアリングの手口によるものがますます増えています。ハッカーやオンライン犯罪者はフィッシングの手口 (ユーザーに対して、無料の旅行が当たった、銀行のサイトにアクセスして口座情報を確認する必要がある、などの通知を行なう手口) を使用して成功を収めることがよくあります。脅威は、脆弱性に的を絞った攻撃から、Web サーバー/Web の脆弱性の悪用を巧みなソーシャル エンジニアリングの手口と組み合わせた複合的な攻撃へと様相を変えつつあり、このような攻撃を阻止するために従来のツールでできることはほとんどありません。

さいわい、Internet Explorer 8 には、この種の攻撃からユーザーを保護するのに役立ついくつもの機能強化が用意されています。さらに、開発者は、クロス ドキュメント メッセージング (xdm) およびクロス ドキュメント要求 (xdr) の組み込みサポートを利用することができます。これらはどちらも、他のアプリケーションと通信する Web アプリケーションのセキュリティを向上させます。

フィッシング フィルタは Internet Explorer 7 で最初に導入され、Internet Explorer 8 では SmartScreen フィルタと呼ばれるようになりました。フィルタは大幅に強化されています。具体的には、ユーザー インターフェイスが新しくなり、パフォーマンスが向上し、新しいヒューリスティックが導入され、マルウェア対策用のブロック機能やクリックジャッキング防止機能が組み込まれ、グループ ポリシーのサポートが強化されています。

おそらく、SmartScreen フィルタの最も良いところは、フィルタを作動させるサイトにユーザーがアクセスしようとしたときに "学びの瞬間" が与えられることです。Internet Explorer 7 では、フィッシング フィルタによるフラグが設定されているサイトにアクセスしようとしたときに表示されるエラー メッセージはわかりにくく、証明書のエラーと間違えられやすいものでした。一方、Internet Explorer 8 のエラー メッセージでは、当該のサイトが危険であることが明確に示されます (図 4 参照)。

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図 4 安全でないサイトが Internet Explorer 8 によってブロックされている

ますます一般的になっている攻撃方法には、この他にも、クロスサイト スクリプトを使用した攻撃があります。このような攻撃では、ユーザーは合法的なサイトにアクセスするよう電子メールで勧められますが、そのサイトは危険にさらされた状態になっています。ハッカーはサイト上の適切にコーディングされていないリモート サーバー アプリケーションを利用し、自分が用意した悪意のあるコードを挿入します。そして、このコードがサイトにアクセスしたユーザーを攻撃します。このような攻撃の特に怖いところは、ハッカーは実際に Web サイトやハードウェアを掌握しているわけではないという点です。そのため、利用されているリモート サイトは、起こっていることをまったく認識していない可能性があります。

Internet Explorer 8 は、クロスサイト スクリプト フィルタでこのような脅威に対処します。このフィルタを使用すると、ブラウザでは、スクリプトのうち危険な部分を検知し、その部分が実行されるのを阻止することができます。これはサーバー側の脆弱性から身を守る方法であり、従来のブラウザ セキュリティの枠をはるかに超えています。

前述の InPrivate フィルタ機能もセキュリティの向上にを役立ちます。公共 (共有) のコンピュータを使用している際に、自分のセッションの記録を削除するために忘れずに閲覧履歴を削除する必要はなくなりました。InPrivate ブラウズを使用すると、セッション中は Cookie、履歴、インターネット一時ファイル、フォーム データ、パスワード、クエリなどはすべて機能しますが、これらはコンピュータに残りません。

InPrivate フィルタを使用することによって、ユーザーが他のセキュリティ メカニズム (ファイアウォール、保護者による制限など) を回避することができてしまうように思えるかもしれません。しかし、InPrivate フィルタはこうしたメカニズムを回避するのではなく、むしろ、こうしたメカニズムと連携して機能します。

ほとんどのユーザーは、自分がアクセスした Web サイトによって自分の行為が追跡される可能性があることを知っていますが、多くの場合、一般ユーザーは、自分が意識的にアクセスすることを選択したサイト以外のサイトやコンテンツ プロバイダが自分の Web 閲覧行為をどの程度追跡する可能性があるのかを十分には認識していません。Internet Explorer 8 の InPrivate フィルタを使用すると、より多くの選択肢がユーザーに与えられ、また、ユーザーは自分の Web 閲覧行為を追跡しその情報を集約する可能性があるサードパーティをより細かく制御できるので、InPrivate フィルタは問題の軽減に役立ちます。

InPrivate フィルタは、ユーザーがアクセスした Web サイトを記録し、一意のドメインそれぞれについて確認された、サードパーティのコンテンツやオブジェクトに対する呼び出し (重複するものを除く) の表を作成することによって機能します。このフィルタが有効になっている場合、確認されたこのような呼び出し (重複するものを除く) の回数がしきい値 (既定値は 10 回) を超えるとサードパーティのコンテンツがブロックされます (同じファースト パーティ ドメインに繰り返しアクセスしても、この回数は増えません)。

最後に、既定では、Windows Vista Service Pack 1 で Internet Explorer 8 を実行すると、セキュリティ保護された信頼性のある Web 閲覧エクスペリエンスの提供に役立つデータ実行防止 (DEP) 機能を使用できることをお伝えしておきます。DEP は、セキュリティの脅威 (ウイルスなど) による被害からコンピュータを保護するのに役立ちます。この保護は、実行可能なメモリ領域への特定の種類のコードによる書き込みを阻止することによって行われます。

信頼性の向上

以前のバージョンの Internet Explorer でよく発生する問題の 1 つは、閲覧セッションが開かれていて複数のタブが開かれている場合、アクセスしたサイトの 1 つでクラッシュが発生するとすべてのタブが閉じられてしまうというものです。もう、このようなことはなくなります。Internet Explorer 8 では、タブは独立したプロセス内に存在します。これは Loosely-Coupled Internet Explorer (LCIE。"ルーシー" と発音します) と呼ばれる機能によるものです。LCIE は、ユーザー インターフェイス フレームをタブから切り離すという内部アーキテクチャ変更です。Internet Explorer を最初に起動すると、通常、2 つのプロセス (ユーザー インターフェイス用のプロセスと 1 つ目のタブ用のプロセス) が実行されます。これにより、Internet Explorer では、タブ プロセスで発生したエラーを分離することができるようになり、安定性が大幅に向上します。

クラッシュ回復機能も Internet Explorer 8 に導入された信頼性関連の新機能の 1 つです。タブがクラッシュすると、Internet Explorer 8 によって自動的にそのタブの再読み込みおよび復元が試行されます。これがうまくいかない場合は、Web サイト復元の試みは中止され、ホーム ページにリダイレクトされるか、問題のある Web サイトの表示を再び試みるかという選択肢がユーザーに与えられます。

ブラウザ全体がクラッシュした場合はどうなるのでしょうか。その場合は、最後の閲覧セッションを再読み込みするか、ユーザーのホーム ページに移動するかという選択肢がユーザーに与えられます。内部的には、ブラウザによって、タブに関するいくつかの側面 (現在の URI、戻る/進むの履歴、タブの順序、アクティブなタブ、フォーム データ、セッション Cookie など) が追跡されます。プロセスがクラッシュすると、新しいプロセスを開始し、その情報を新しいタブ内に回復することができます。

企業のサポート

新しいアプリケーションを組織に展開する場合はいつでも、アプリケーションが堅牢なサポート、セキュリティ、展開、および管理容易性を確実に提供することが望まれます。Internet Explorer 8 は企業対応で、いくつかの重要な機能強化を提供します。

展開 Internet Explorer 8 は、Windows Update を通じて入手できる Windows 更新プログラム パッケージです。これにより、世界中の大多数のユーザーに堅牢な配布メカニズムが提供されます。ですが、企業での展開では、一般にもう少し細かい制御が必要となります。これはいくつかのツールによって実現可能です。

現在、Windows 更新プログラムを展開する場合、ユーザーへの配布方法として使用するのは、おそらく Windows Server Update Services (WSUS)、Systems Management Server (SMS)、または System Center でしょう。これらの方法は Internet Explorer 8 でも引き続き非常に適切に機能し、展開を行うタイミングの制御を可能にします。ですが、他の方法を使用すると、ビジネス ニーズに合った設定を用いてあらかじめ構成されている Internet Explorer 8 を展開することができます。

このような方法の 1 つは、Internet Explorer 管理者キット (IEAK) を使用する方法です。IEAK は Internet Explorer 8 の新機能をサポートするように更新されました。IEAK は非常に使いやすいツール セットで、これを使用すると、Internet Explorer 8 をカスタマイズ、展開、および管理することができます。IEAK を実行するには、Internet Explorer 8 がインストールされている必要があります。管理者はローカル ブラウザから設定をインポートすることができるので、ユーザーに使用してほしい設定を用いて自分のブラウザをカスタマイズすると時間を節約できます。

IEAK の初回実行時には、ブラウザのバージョンを Web 上にある最新のバージョンと同期する必要があります。同期は、プラットフォームと言語の組み合わせ 1 つに対して 1 回行う必要があります。同期には少し時間がかかる場合がありますが、以前の設定ファイル (.ins) をインポートすることによって時間を節約できます。同期が完了し、設定をインポートしたら、ウィザードを再び最初から最後まで実行する必要はなくなります。

IEAK のカスタマイズ ウィザードを使用して、以下に示す 3 つの異なるパッケージを作成することができます。

  • 完全オプションを選択すると、Internet Explorer 8 用ソース ファイルとカスタマイズ設定の両方を含む MSI インストーラ パッケージが作成されます。
  • 構成のみのオプションを選択すると、カスタマイズ設定のみを含む Microsoft インストーラ (MSI) インストーラ パッケージが作成されます。これは、既に Internet Explorer 8 を展開済みのユーザーにとって非常に便利です。また、環境内のブラウザをメンテナンスする場合にも非常に便利です。
  • CD-ROM オプションを選択すると、Internet Explorer 8 用ソース ファイルとカスタマイズ設定の両方を含む CD-ROM パッケージが作成されます。

MSI インストーラ パッケージの展開は、グループ ポリシー、SMS、System Center を含むさまざまな手段を通じて行うことができます。パッケージをリムーバブル ドライブ (USB フラッシュ ドライブなど) にコピーして、構成する必要がある PC に持って行くこともできます。CD-ROM パッケージは、その他の選択肢を使用できない場合にすてきな代替手段となります。

Internet Explorer 8 を展開するもう 1 つの方法は、Internet Explorer 8 更新プログラム パッケージを Windows Vista イメージ用または Windows Server 2008 イメージ用の Windows Imaging Format (WIM) ファイルに組み込むという方法です。WIM はファイルベースのディスク イメージ形式で、これを使用すると Windows の展開をカスタマイズできます。WIM ファイルへの組み込みは、オペレーティング システムの展開で更新プログラムも展開する 1 つの方法です。

グループ ポリシー 展開を行なったら、管理者はグループ ポリシー設定を使用してデスクトップで Internet Explorer 8 を制御することができます。管理者は IEAK 構成パッケージを使用して基本的な設定を設定することができますが、ほとんどの場合、ユーザーはこのような設定を変更できます。

組織でのより細かい制御を行なう必要がある管理者の方は、ブラウザに対する非常にきめ細かい制御を可能にする 1,300 を超えるグループ ポリシー設定が用意されていますので、ご利用ください。前述の互換表示は、グループ ポリシーを通じてイントラネット サイトおよびインターネット サイトに設定することができます。既定では、Internet Explorer 8 では、インターネット サイトは Internet Explorer 8 標準モードでレンダリングされ、イントラネット サイトは互換表示 (IE7 モード) でレンダリングされます。管理者は、どの Web サイトを互換表示でレンダリングするかを制御することもできます。

セキュリティもグループ ポリシーを通じて設定できます。たとえば、InPrivate モードを無効にしたり、ユーザーが Web サイトが安全でないという SmartScreen フィルタ メッセージを無視してそのサイトにアクセスすることを可能にするオプションを無効にしたりすることができます。

グループ ポリシーを使用して、ユーザーがアクセラレータを使用できるかどうかや、ユーザーがどのアクセラレータを使用できるかを制御することもできます。さらに、ユーザーが履歴を削除できるかどうか、およびユーザーが履歴を削除した場合にお気に入りの設定が保持されるかどうかも制御できます。

開発者ツール

最後にお伝えする機能強化は、開発者向けのものです。Internet Explorer 8 は CSS 2.1 に準拠しており、また、将来を見据えて、CSS 3 の中で最も要望が多い部分の一部を実装しています。さらに、Internet Explorer 8 では AJAX 開発が強化されています。具体的には、Connection イベントがサポートされるようになりました。このイベントを使用すると、開発者は、接続が切断されたときのアプリケーションの動作を制御することができます。

開発者をサポートする優れたツールは他にもあります。1 つは、ページ メニューを使用するか、ページ上で右クリックして [ソースの表示] をクリックすることによって、ソースを表示する機能です。皆さんは、HTML のメモ帳表示が役に立つと思っている人なんているのだろうかとお考えかもしれません。ですが、Internet Explorer 8 ではメモ帳は使用されません。代わりに、色鮮やかな UI (図 5 参照) を提供する HTML レンダリング エンジンが使用されます。

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図 5 Internet Explorer 8 の組み込みの開発者ツール

もう 1 つの優れたツールをご覧になりたい場合は、閲覧セッション中に F12 キーを押してください。こうすると、Internet Explorer 8 の組み込みの開発者ツール (Web サイトの HTML、CSS、およびスクリプトを扱うツールなど) が起動されます。こうしたツールを使用すると、Web サイトにリアルタイムの変更を加えることができます。変更は一時的なものですが、これを利用すると、開発者は運用 Web サイトに修正を加える前にその修正をテストすることができます。組み込みのプロファイラも用意されており、これを使用すると、Web サイトで実行されているスクリプトの速度を監視することができます。

まとめ

この記事全体をとおして、Internet Explorer 8 に導入された、より高速でより安全な Web 閲覧エクスペリエンスを提供する機能強化について説明しました。少し時間をとって、Internet Explorer 8 の無償コピーをぜひ今すぐダウンロードしてみてください。

この記事の執筆に協力してくれた Craig Spiezle と Jane Maliouta に心から感謝します。

Matt Hester は米国マイクロソフトで IT プロフェッショナル エバンジェリストを務めています。彼のブログは、<blogs.techhnet.com/matthewms> で公開されています。