仮想化: ワークロードの統合

仮想化を使用して適切にサーバー ハードウェアを統合すると、ハードウェアのコストを削減できるだけでなく、はるかに多くのメリットを得ることができます。

Thomas Olzak

出典: 『Microsoft Virtualization』(Syngress、2010 年)

ワークロードの統合について考えるときには、データセンターで提供されるサービスを想像してください。ワークロードの統合に関する議論では、たいていの場合、まず、消費電力とラック スペースを検討することになるでしょう。これらは確かに仮想化戦略全体において検討すべき重要な項目ですが、最初の段階で、これらについて考慮すると、ワークロード計画で必要な論点がずれてしまいます。ですから、ハードウェアのフットプリントについて考えるのは止めて、データセンターがビジネスに提供するサービスに焦点を当ててください。このようなサービスの統合こそ、重点的に取り組む必要があります。

ワークロードの統合は、複数のビジネスにわたって画一的に実装できるものではありません。同じ業界に属するビジネスでさえ、タスクを実行する方法は同じではありません。そのため、ワークロードの統合について詳細に掘り下げて説明することはできません。ここでは一般論を紹介します。

アプリケーションの統合

ほとんどの業界で広く普及しているテクノロジの 1 つに、公開アプリケーションがあります。そこで、これを例に挙げて説明しましょう。アプリケーションをリモート ユーザーに公開するためには、非常に複雑で、場合によっては大規模なインフラストラクチャが必要になります。また、公開されるアプリケーションの数や性質によっては、さらに大規模になる可能性があります。

初期設計から現在の設計に至るまでの進化は、サーバーや公開アプリケーションの環境では一般的なものです。たとえば、5 年前に X というアプリケーションを公開するために設計されたファームでは、現在、Z というアプリケーションを公開しており、X というアプリケーションは公開すらしていない可能性があります。また、アプリケーションは追加されたり、ファームから完全に削除されたりする可能性もあります。このような進化は避けられないものですが、ワークロードの統合から得られるメリットの好例でもあります。

たとえば、5 年前に、1 つのアプリケーションを 1,200 人のユーザーに公開するために Farm One が構築されたとします。このファームでは、20 台のアプリケーション サーバー、1 台のライセンス サーバー、5 台の Web サーバー、および 1 台の 8 ウェイ データベース サーバーが使用されています。初期設計の時点では、ベンダーが提供する推奨事項と仕様に基づいて、新しいハードウェアを使用しました。

Farm One を構築し、ベンダーが推奨するソフトウェア構成、ハードウェア仕様、および公開されているアプリケーションに接続して使用するユーザーの数に基づいた環境に導入しました。数多くの組織と同様、時間の経過と共に、ファームの実際の使用法も進化しました。

当初は 1,200 人のユーザーがアプリケーションにアクセスしていましたが、アプリケーションにアクセスするユーザーは約 600 人にまで減少しました。新しいアプリケーションがファームに追加され、約 200 人のユーザーに公開されました。かつては最新で高性能であったハードウェアが時代遅れになる一方で、ソフトウェアは修正プログラムや更新プログラムの継続的な適用により、効率的になりました。このような詳細な進化は、すべてワークロードの統合計画に当てはまります。

アプリケーション公開ソフトウェアの主要ベンダーは、アプリケーション サーバーの最適な使用法を確認するのに役立つツールやガイドを提供しています。ワークロードの統合を計画する段階では、このようなツールの使用がきわめて重要になります。ベンダーが提供するソフトウェアに関する推奨事項であっても、それらは一般的な用途に基づいて定義されているものなので注意してください。ユーザーが公開されているアプリケーションを実際に使用する方法を特定する唯一の方法は、詳細な調査を行うことです。

負荷を軽減する

Farm One の初期仕様では、1,200 人のユーザーをサポートするため 20 台のアプリケーション サーバーが必要でしたが、現在サポートしているユーザーの数は 600 人に減少しています。ただし、アプリケーション サーバーの数も単純に半分に減らすことができるとは考えないでください。

この時点で、アプリケーションをサポートしているベンダーに問い合わせて、このベンダーが提供しているツールを使用して、サーバーの実際の使用状況に関する情報を収集する必要があります。この情報は、ベンダーが、ファームのサイズ要件を縮小するだけでなく、既存のサポート契約がこの処理全体で保持されるようにするのにも役立ちます。また、使用状況の統計も慎重に確認する必要があります。

架空の Farm One 環境を検証すると、プライマリ アプリケーションのデータベースが、以前ほど頻繁 (または以前ほど活発) にアクセスされていないことがわかりました。そのため、既存の 8 ウェイ サーバーを、それほど強力でないサーバーに置き換えることができます。また、必要な仕様を十分に満たしている可能性がある別のデータベース サーバーに、このデータベースを移行することもできます。今回のシナリオでは、データベースを別のデータベース サーバーに移行します。

ただし、既に説明したように、Farm One は、約 200 人のユーザーに公開される追加のアプリケーションが含まれるようになりました。そのため、このアプリケーションの実際の要件を確認するために同じ手順を実行する必要があります。

評価が完了すると、公開アプリケーションの環境に新しく統合されたワークロードの実際の要件を確認できたことになります。Web サーバーの数は 5 台から 4 台に減少し、これらのサーバーは仮想化環境に移行しました。

アプリケーション サーバーの数は 20 台から 10 台に減少し、スタンドアロン データベース サーバーは完全に廃止し、データベースはリソースに余裕のある別のデータベース サーバーに移行しました。また、ライセンス サーバーも仮想化しました。

Thomas Olzak

Thomas Olzak は、HCR ManorCare の情報セキュリティの責任者です。HCR ManorCare は、米国オハイオ州に本社を構える、短期および長期のリハビリ サービスと医療サービスを提供する企業で、米国内 32 の州に 500 以上の施設を持っています。この記事と出典元の書籍の執筆には、Jason BoomerRobert Keefer、および James Sabovik も貢献しています。

©2011 Elsevier Inc. All rights reserved. Syngress (Elsevier の事業部) の許可を得て掲載しています。Copyright 2011. 『Microsoft Virtualization』(Thomas Olzak 著) この書籍と類似書籍の詳細については、elsevierdirect.com (英語) を参照してください。

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