Windows 7: 移行のマジック

Windows 7 にユーザー、ファイル、および設定をスムーズに移行するのに役立つツールやテクニックを紹介します。

Jorge Orchilles

出典: 『Microsoft Windows 7 Administrator’s Reference』(Syngress、2010 年)

Windows 7 に移行するときには、既存のプラットフォームからの移行だけでなく、さまざまな新規インストールも行う必要があります。Windows 転送ツールは、ファイルと設定を保存して、古いコンピューターから新しいコンピューターに転送するのに役立ちます。

この Windows 7 に同梱されているツールは、コンピューターを個別に移行するときには、とても便利です。しかし、多数のコンピューターを移行する場合はあまり堅牢なツールであるとは言えません。Windows 7 の展開計画において移行戦略を準備するときには、複数のユーザーの設定とファイルを簡単に保存して管理できるツールが他にあります。

ユーザー状態移行ツール

ユーザー状態移行ツール (USMT) は、Windows 自動インストール キット (AIK) 2.0 に収録されているツールです。Windows AIK をダウンロードしてインストールすると、USMT のソース ファイルは C:\Program Files\ Windows AIK\Tools\USMT\Platform に配置されます (Platform は、x64 または x86 のいずれかになります)。USMT には、知っておくべきファイルがいくつかあります。

  • Scanstate.exe: 移行中にユーザー状態データをスキャン、収集、および、アップロードします。
  • Loadstate.exe: 収集したユーザー状態データを新しいコンピューターのユーザー プロファイルにインポートします。
  • Usmtutil.exe: インポート完了後にハード リンクの移行データを削除します。
  • MigApps.xml: 移行元コンピューターと移行先コンピューターに共通するプログラムのユーザー固有データを格納する場所を定義します。
  • MigUser.xml: 移行元コンピューターと移行先コンピューターにおいて、ユーザー固有のプロファイル データがある場所を定義します。
  • MigDocs.xml: 移行元コンピューターと移行先コンピューターに共通するプログラムのドキュメント固有データを格納する場所を定義します。
  • Config.xml: カスタム XML ファイルです。このファイルを作成すると転送するデータを指定したり、ドメインの移行を実行したり、独自のエラー コードや動作を作成したりできます。

USMT は、ユーザー状態、既存のファイル、および既存の設定を保持する必要があるコンピューターで使用します。保持しなければならない情報量は、コンピューターによって異なります。

ユーザーの "マイ ドキュメント" フォルダーのリダイレクト先としてネットワーク記憶域を使用しており、この設定の適用にグループ ポリシーを使用している場合、より少ない容量と時間で移行を行わなければならないことがあります。新しいハードウェアに設定を移行する場合、OS のインストール中には、リモート記憶域にユーザー状態を一時的に保存できます。

また、リフレッシュ インストール (インプレース移行) を実行するコンピューターで USMT を実行することも可能です。たとえば、同じハードウェアを使用して Windows XP 搭載のコンピューターを Windows 7 に移行する場合が、これに該当します。このシナリオでは、OS イメージをコンピューターに適用中に、USMT でハード リンク移行を利用して同じボリュームにデータを維持できます。イメージの適用が完了すると、保持していたユーザー状態は、ローカル コンピューターから新しい OS にインポートされます。

USMT は、各クライアント コンピューターまたはネットワーク共有に直接展開することが可能で、Microsoft Deployment Toolkit (MDT) 2010 を使用している場合は、展開共有に自動的にインストールされます。MDT 2010 には、USMT を使用して、各コンピューターでユーザー状態のデータを保持および復元するロジックが用意されています。また、USMT には、さまざまな使用方法があり、ネットワーク共有、Windows PE メディア、MDT 2010 の展開共有、または Microsoft System Center Configuration Manager で使用できます。

ハード リンク移行

ハード リンク移行ストアを使用すると、インプレース移行を実行できます。インプレース移行では、古い OS が削除されて新しい OS がインストールされる間、すべてのユーザー状態をローカル コンピューターに保持できます。これはコンピューターのリフレッシュ インストールのシナリオに最適な方法です。このシナリオで、ハード リンク移行ストアを使用すると、移行のパフォーマンスが大幅に向上し、ハード ディスクの使用率と展開コストを大幅に削減できます。これにより、まったく新しい移行シナリオを実現することが可能になります。

ハード リンク移行ストアは、計画中の移行が次のいずれかの条件を満たす場合に使用できます。

  • 新しいコンピューターへの移行ではなく、既存のハードウェアで OS をアップグレードする場合
  • コンピューターの同じボリュームで OS をアップグレードする場合

ハード リンク移行ストアは、計画中の移行が次のいずれかに該当する場合には使用できません。

  • 別のコンピューターへのデータの移行
  • 同じコンピューターの別のボリュームへのデータの移行 (たとえば C: から D: へのデータの移行)
  • Windows セットアップ外でのディスクのフォーマットまたはパーティションの再作成、あるいは (結果として移行ストアを削除する) Windows セットアップ中のディスクのフォーマットまたはパーティションの再作成の指定

ハード リンク移行ストアは、コマンド ライン オプション /hardlink を使用して作成します。これは他の種類の移行ストアと同様です。しかし、ハード リンク移行ストアは、移行中にハード リンクを使用して移行元のコンピューターにファイルが保持されるという点で、他の移行ストアと異なります。

移行元のコンピューターでファイルを適切に保持することで、ファイルの重複という無駄な処理を削減できます。また、このシナリオの主な利点であるパフォーマンスの向上とディスク使用率の削減も実現できます。

Jorge Orchilles

Jorge Orchilles は、勤め先の私立学校でネットワーク管理を担当したときからネットワークに携わっています。現在は、セキュリティ運用センターのアナリストとして活動しており、最近、フロリダ国際大学で管理情報システムの理学修士号を取得しました。

©2011 Elsevier Inc. All rights reserved.Syngress (Elsevier の事業部) の許可を得て掲載しています。Copyright 2011. 『Microsoft Windows 7 Administrator's Reference』(Jorge Orchilles 著) この書籍と類似書籍の詳細については、elsevierdirect.com (英語) を参照してください。

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