1. フォースとハッカー「フォースとは、ジェダイの力の源じゃ。科学者たちは、生物が生み出すエネルギーの場 (フィールド) だと理論づけておる」[1] ダースベーダーというキャラクターで有名なスター・ウォーズは、実は、フォースの力を用いるジェダイの者たちのダークサイドとライトサイドのせめぎあいの物語である。ジェダイは、スター・ウォーズで宇宙に遍く広がる神秘的なエネルギー「フォース」を使うことができるものであり、各ジェダイは、その個性に応じて、未来を予知する力、他人の心を操る力、触れずに物を動かす力などを有している。その一方で、ジェダイの中の数名は、フォースの暗黒面に導かれてダーク・ジェダイとなっている。この物語の主人公であるアナキン・スカイウォーカーも、愛するパドメが亡くなる夢を見たことから、そのパドメをフォースの力で救いたい一心から、フォースの暗黒面へと吸い込まれ、ダースベーダーへと変身していく。この暗黒面へと導くもととなったのが、人間の心の中の不安感・怒りなどの感情である。 そして、このフォースをめぐるストーリーは、現実にコンピューター セキュリティのめぐる世界で起きていることを暗示する。セキュリティ・ウォーズは、現実のコンピューター セキュリティの世界で起きているダークサイド (攻撃側) とライトサイド (防御側) とのせめぎ合いをスター・ウォーズのメタファーから描き出そうというものである。 「オーダーへの誓いを放棄し、ジェダイ・ナイトとして働くことをあきらめた。失われた 20 人 (ロスト・トゥエンティ)。ドゥークーが加わったあと、名誉となつかしさをこめて、彼らはそう呼ばれた。」[2] ハッカーという用語は、もともとコンピューターの世界で、優秀なプログラムを書く能力のある人を指す言葉であり、ある意味で尊敬の言葉であった。RFC1983 「インターネット ユーザーの用語集 (Internet Users' Glossary) 」でも、「ハッカーとは、特にシステム、コンピューターやコンピューター ネットワークの内部のはたらきについて詳しく知ることに喜びを感じる人」と定義されている。しかし、その一方で、ハッカーという用語は、時間の経過とともにコンピューターをあやつり他人のコンピューターに侵入するものなどの邪悪な意味をもつものに変わっていく。ある意味で、この変わってくもととなったのは、自制力のなさや自己顕示欲などの人間のこころの中の感情だといえる。私たちがそこに、ジェダイのストーリーとの類似性を見つけることはきわめて容易である。 「テンプルのアーカイブには、ブロンジウムに掘られた彼ら (筆者注-失われた 20 人 (ロスト・トゥエンティ) をさす) の胸像が飾られている」
ジェダイ寺院の中には、暗黒面に堕ちたものの胸像がある。私たちは、コンピューター セキュリティの暗黒面に堕ち、もしくは、暗黒面を覗いたものが、ハッカーの中にいることを認めざるを得ない。ハッカーの中には、みずからの技術力がきわめて高いことを確信し、それを社会に誇示するために、社会的に許容される限界なども意識に留めず行動するものがいる。また、技術力の限界を越えるということをみずからの行動の正当化に用いて、社会制度を攪乱することに楽しみを覚えるものもいるであろう。 私たちは、技術といえども社会の中で正当な形で利用されなければならないし、また、人間の倫理観が、社会を向上させる基盤となるものであると考える。技術の進化が、ダークサイドに用いられたときに、私たちは、ライトサイドから、どのような対応をしてきたのか、そして、また、どのような対応をすべきなのか。まず、コンピューター セキュリティの世界におけるロスト・トゥエンティの胸像をつくることから、サーガを始めることとしよう。 2. ロスト・トゥエンティコンピューターセキュリティに関して、世界的にも、話題を読んだ事件を紹介していくことで、ロスト・トゥエンティの胸像をつくることとしよう。そして、また、近時、我が国や世界において注目を浴びている事件を紹介することも技術者にとって技術の限界と倫理のかかわりを物語ってくれる。 |