Windows 7 評価ガイド

PC のスムーズな実行の維持

デスクトップのサポート コストを最小限に抑える最も優れた方法の 1 つは、安定して安全なデスクトップ構成を維持することです。しかし、デスクトップ構成管理そのものが非常に困難な場合もあります。 Windows 7 は、 Windows Vista で強化された機能の上に構築されており、 IT プロフェッショナルがさらに効率的にデスクトップやモバイル PC を管理できるようになっています。 Windows PowerShell 2.0 、強化されたグループ ポリシー、 Windows トラブルシューティング プラットフォームなどの機能によって、 IT プロフェッショナルは、ユーザーの生産性を保持するというニーズと、ユーザーが絶えず直面するコストの削減、コンプライアンスの維持、運用効率の向上へのプレッシャーとのバランスを保つことができます。

PowerShell の改良

Windows PowerShell によってIT プロフェッショナルは反復作業を簡単に自動化して、一貫性と生産性を向上させることができます。 Windows 7 では、IT プロフェッショナルは Windows PowerShell とそのグラフィカル スクリプト エディターを使用して、Windows 7 内の基盤のテクノロジにアクセスするための包括的なスクリプトを記述することができます。

Windows 7 の新しい自動化機能には、次のようなものがあります。

  • PowerShell 2.0: Windows PowerShell 2.0 は Windows 7 に組み込まれている強力で完全なスクリプト言語で、分岐、ループ、関数、デバッグ、例外処理、国際化をサポートしています。提供されるコマンドレットのセットは、 Windows ベースの PC とサーバーのどちらの管理にも使用できます。
  • Windows PowerShell Integrated Scripting Environment: PowerShell は強力なコマンドおよびスクリプト エンジンですが、スクリプト初心者にも非常にわかりやすい構造になっています。Windows PowerShell Integrated Scripting Environment によって PowerShell スクリプトを作成/ デバッグ/ 実行するためのグラフィカルな環境が提供され、PowerShell はさらに使いやすくなります。
  • PowerShell のリモートティング: PowerShell は標準の管理プロトコル WS Management (WS-MAN) を使用して、クライアント PC 上でコマンドレットを起動します。次の2 種類のリモーティングがサポートされています。 ファンアウトは 1 対多のリモーティング機能で、IT プロフェッショナルは、単一のコンソールから複数のPC 全体に対して管理スクリプトを実行できます。 1対 1のインタラクティブ リモーティング では、 IT プロフェッショナルは、特定マシンのトラブルシューティングをリモートから実行できます。
  • スクリプトの国際化: IT プロフェッショナルは、.NET ローカリゼーション モデルを使用して、PowerShell スクリプトのメッセージやコンテンツを簡単にローカライズできます。これは、従業員が多様な言語で業務を行っている多国籍企業において特に役立つ機能です。
  • PowerShell Restricted Shell: IT プロフェッショナルは PowerShell Restricted Shell を使用してカスタム シェルを作成できます。このシェルでは、システム管理者は特定のコマンドとコマンド パラメーターしか使用できなくなります。また、カスタム スクリプトに対してアクセス許可 (ACL) を設定して、システム管理者が権限を付与されたスクリプトにしかアクセスできないようにすることもできます。これによって、 IT プロフェッショナルが特定のタスクに限定して実行機能を委任できるようになり、組織全体の自動化を促進します。
  • グループ ポリシーの自動化: 別途ダウンロードして使用可能になるグループ ポリシー管理コンソールによって、IT プロフェッショナルは、Windows 7 におけるグループ ポリシー オブジェクトの管理やレジストリベースのグループ ポリシー設定の作成/ 編集を、スクリプトを使って実行できるようになります。この方法により、複数のグループ ポリシーを管理する際の時間を節約し、エラーを防ぐことができます。
  • 豊富なログオン スクリプト: IT プロフェッショナルは PowerShell を使用して、シンプルで強力なログオン/ ログオフ/ スタートアップ/ シャットダウン スクリプトを作成できます。これらのスクリプトはグループ ポリシーを通して実行され、単純なバッチ ファイルを使用する場合よりも高度な方法でPC を構成できるようになります。

柔軟な管理の制御

Windows 7 では、IT プロフェッショナルは企業ネットワークから切断されたPC を柔軟に管理したり、実行可能なアプリケーション ユーザーを制限したり、リムーバブル ストレージ デバイスの暗号化を要求したり、ユーザーの活動をより詳細に監視することができます。

ネットワークを超えた管理: DirectAccess を使用して、インターネット接続を使用した企業リソースへのシームレスなリモート アクセスをユーザーに提供している組織は、リモートPC の管理をより効率的に行うこともできます。たとえば、グループ ポリシーを更新したり、リモート アシスタンスを使用して PC にアクセスしたり、企業管理ツールによってソフトウェアや更新を配布することができます。

グループ ポリシーの強化: Windows 7 ではこれまで以上に包括的なグループ ポリシー設定が用意されており、IT プロフェッショナルはユーザー PC の構成/ 管理をより効率的に行えます。セキュリティやデータ保護のための設定も追加され、グループ ポリシーを使用して管理できる新しいシナリオには、 BitLocker To Go 、より詳細になった監査、AppLocker などが含まれます。さらに、グループ ポリシーの管理エクスペリエンスが向上したことで、 IT プロフェッショナルは事前定義されたベスト プラクティスを利用し、アクティビティの自動化をさらに進め、グループ ポリシーの基本設定 ( 後述) を使用して管理設定の範囲を広げることができます。

  • グループ ポリシーの基本設定: グループ ポリシーの基本設定によって、グループ ポリシーの管理可能な内容や設定の適用方法の範囲が広がります。システム管理者は、グループ ポリシーの基本設定を使用して、割り当てられたネットワーク ドライブやデスクトップ ショートカットなど、グループ ポリシーに対応しない Windows コンポーネントを管理できるようになります。 Windows 7 には、柔軟な電源管理や高度なタスク スケジューリングを実現する新しいグループ ポリシーの基本設定も含まれています。また、グループ ポリシーの基本設定を使用して、アプリケーション管理用のレジストリ設定を展開することもできます。システム管理者は、グループ ポリシーの基本設定の拡張をカスタマイズすることもできます。
  • Starter グループ ポリシー オブジェクト: Windows 7 の Starter グループ ポリシー オブジェクトは、事前構成された管理テンプレートのコレクションで、IT プロフェッショナルはこれを標準のベースライン構成として使用して、有効なグループ ポリシー オブジェクトを作成することができます。これは、マイクロソフトのベスト プラクティスをカプセル化したもので、主要なエンタープライズ シナリオのための推奨されるポリシー設定や価値が含まれています。 IT プロフェッショナルは、社内または業界の規則要件に基づいて、独自のStarter GPO を作成し、共有することもできます。
  • URL ベースのQoS (Quality of Service): システム管理者は現在、アプリケーション、ポート番号、IP アドレスに基づいてネットワーク トラフィックの優先順位を決定しています。しかし、 SaaS (Software as a Service) などの新しいイニシアチブによって、ネットワーク トラフィックの優先順位を新しい方法で決定する必要が生じてきました。 Windows 7 では、URL に基づく QoS ( サービスの品質) を実装することができます。URL ベースの QoS はグループ ポリシーを使用して構成できるので、 IT プロフェッショナルはネットワークをより細かく調整できます。

トラブルシューティングとサポート

Windows 7 は非常に豊富なトラブルシューティング機能を提供しており、エンド ユーザーがヘルプ デスクに電話しなくても、自分でより多くの技術的問題を解決できるようになっています。どうしてもヘルプ デスクに電話する必要がある場合でも、 Windows 7 では、IT プロフェッショナルが問題をすばやく解決するために必要なツールが提供されています。

Problem Steps Recorder

Windows 7 の新機能である Problem Steps Recorder は、アプリケーションで障害が発生した場合にIT プロフェッショナルによるトラブルシューティングを支援するものです。この機能では、エンド ユーザーが、アプリケーション障害時のエクスペリエンスを再現して記録することができます。各ステップはスクリーン ショットとして記録され、ログとソフトウェア構成データがそれに付随します。 Problem Steps Recorder は圧縮ファイルを作成してサポート スタッフに送信し、これが問題のトラブルシューティングに使用されます。

Windows 回復環境 ( Windows RE )

Windows Vista では、Windows RE パーティション ( システムの復元やスタートアップ修復などの機能をサポート) を展開するために、IT プロフェッショナルと OEM は追加の手順を実行する必要がありました。 Windows 7 では、既定で Windows RE がオペレーティング システム パーティションに自動的にインストールされるので、すべてのユーザーがアクセスできるようになります。

Windows トラブルシューティング プラットフォーム

Windows 7 では、PowerShell ベースのメカニズムを使用して問題の解決を促す、包括的で拡張可能なトラブルシューティング プラットフォームが提供されています。 Windows トラブルシューティング プラットフォームの主要なコンポーネントは、次のとおりです。

  • Windows トラブルシューティング パック: Windows トラブルシューティング パックは、PowerShell スクリプトと関連情報のコレクションです。トラブルシューティング パックは、IT プロフェッショナルがコマンドラインからリモートで実行できます。また、各企業はグループ ポリシー設定を使用してトラブルシューティング パックの実行を制御できます。トラブルシューティング パックは、インフラストラクチャやアプリケーションの特定のニーズに対応するように、 OEM 、ISV 、および IT プロフェッショナルが簡単に作成できます。トラブルシューティング パックは CAB ファイルとしてパッケージ化され、企業全体のPC に簡単に展開できます。
  • Windows Troubleshooting Toolkit: Windows Troubleshooting Toolkit は、IT プロフェッショナルやサードパーティによる充実したトラブルシューティング パックの構築を支援する、グラフィカルな環境を提供します。これはPowerShell Integrated Scripting Environment とリンクして、検出/ 解決/ 検証のためのスクリプト作成を容易にします。 Windows Troubleshooting Toolkit には、シングル クリックによるコンパイルおよび実行機能も含まれています。この機能によって、トラブルシューティング パックの作成者は、コンパイル/ 証明書を使用した署名/CAB ファイルへのパッケージ化/ テストを、すべてツールキットの GUI でボタンを押すことによって簡単に実行できます。 Windows Troubleshooting Toolkit は Windows 7 ソフトウェア開発キット (SDK) の一部として提供されています。

統合トレース

IT プロフェッショナルにとって、ネットワーク接続に関する問題は、問題の識別や解決が非常に困難な場合があります。 Windows に含まれているネットワーク診断によってユーザーの抱える多くの問題を解決し、サポート コール数を減らすことはできますが、サポートの必要性が完全になくなることはありません。 Windows 7 より前のバージョンでは、トラブルシューティングに必要な情報のトレースや収集に関して、各ネットワーク コンポーネントに独自の方法があり、多くの場合、出力形式もそれぞれに異なっていました。このことによって、 IT プロフェッショナルが問題解決に必要なすべての情報を収集 / 分析することが困難になり、問題の再現やデータの収集に何サイクルもかかることがよくありました。

統合トレースによって、Windows 7 のネットワーク スタックでの発生内容を特定する単一のツールが提供され、サポート プロフェッショナル、システム管理者、開発者による問題の診断 / 解決が非常に簡単になりました。この機能では、組み込みツールのみを使用して、ネットワーク スタックの全層にまたがるイベント ログの収集とパケットのキャプチャが行われ、個々のコンポーネントのアクティビティにデータがグループ分けされます。

信頼性データへのリモート アクセス

Windows Vista では信頼性モニターが導入されました。これは、システム全体の安定性とイベント( アプリケーション/ デバイス ドライバーのインストールや、システム障害など ) を相関させるグラフィカル ツールです。このツールは、サポート スタッフが多くの一般的な問題の原因を識別する際に有効であることが実証済みです。

Windows 7 では、Windows Management Instrumentation (WMI) を通してプログラムによる信頼性データへのアクセスが可能になります。これによって IT プロフェッショナルは、 1 台または多くの PC の信頼性データに対して、 Windows PowerShell 、 System Center Configuration Manager 、 System Center Operations Manager 、およびサードパーティ製の管理ツールを使用して、リモート アクセスできるようになります。この方法によって、 IT プロフェッショナルは安定性の状態や最近のイベントをリモートで簡単に確認できるので、問題解決にかかる時間が短縮されます。

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