XP モードを展開するときに検討すべきこと

澤田 賢也 (Microsoft MVP for Small Business Server)

公開日: 2010 年 12 月 29 日

1 年前、Windows 7 について多くの皆様に知ってもらおうと「Windows 7 活用術」の連載が開始されました。前回の連載では、Windows 7 の機能について紹介をいたしました。今回は、企業の情報システムの立場から会社へ Windows 7 を導入するために検討すべきことについて解説いたします。

Windows 7 が発売されてから1年が経ち、多くの製品が Windows 7 に対応するようになってきました。個々の 製品の対応状況については、Windows 7 互換センターで確認することができます。

[Windows 7 互換センター]

この Windows 7 互換センターに掲載されていない製品でも、Windows 7 の高い互換性により多くの製品が Windows 7 で使うことができます。Windows 7 互換性を保つ機能の中でも特に注目度が高いもののひとつに仮想化技術を使って互換性を保つ「Windows XP モード」があります。今回の記事では、Windows XP モードを導入する際に検討すべきことについて解説いたします。

Windows XP モード とは、デスクトップの仮想化技術である Windows Virtual PC を利用してWindows 7 の中で Windows XP が使える機能となります。仮想技術を利用するにあたっては、いくつか注意しなければならないことがあります。

一般的に、仮想化というのは「リソースを抽象化することによって、使われないリソースを有効活用する」技術だといえます。すなわち、リソースに余力があるサーバーでなどその効力を発揮します。一般的にここでいうリソースというのは、メモリやハードディスク、ネットワークカードのことをさします。その結果として、1 台の物理コンピューターの中で複数のマシン (OS) を同時に動かすことができるようになります。


図: Windows 7 の中に Windows XP が存在する Windows XP モードのイメージ

当然のことながら、1 台の物理コンピューター上で複数のOSを動かすということは、それに見合ったリソース量すなわち、ハードウェアが必要となります。もう少しわかりやすく言えば、Windows XP モードを利用する Windows 7 のコンピューターは、単体で利用する Windows 7 のコンピューターよりも高スペックになります。Windows XP モードで利用する場合のシステム要件は以下の通りとなっています。

  Windows XP モードを利用
メモリ 2 GB 以上
HDD 20 GB 以上の空き容量

リソース以外にも Windows XP モードを利用するいくつかのポイントがありますので、詳しく見ていきましょう。

32 bit 版 OS について

Windows 7 には、32 bit 版と64 bit 版の 2 種類があります。32 bit 版 の Windows 7でも Windows XP モードを利用することはできますが、より多くのメモリを搭載できる 64 bit 版をお勧めします。

メモリについて

Windows XP モードの Windows XP は初期設定では 512 MB のメモリを使用するようになっています。システム要件では、メモリは 2 GB 以上となっていますが、アプリケーションの動作環境によっては、より多くのメモリが必要とされます。筆者が動作検証をしたところ、メモリが 2 GB ではスペックが不足しているように感じました。

ハードディスクについて

Windows XP モードは、Windows XP SP3 がプレインストールされた仮想ハードディスク (.vhd ファイル) として提供されます。そのため、Windows XP モード を利用するWindows 7 は、20 GB 以上の容量が必要となります。後述の常駐ソフトなどディスク アクセスがボトル ネックになる場合は、HDD の代わりに SSD やハイブリッド HDD を使うことも検討してください。

ネットワークについて

デフォルトではホスト OS である Windows 7 とゲスト OS である Windows XP の 2 つの OS が共通ネットワーク カードを使用しますので利用状況によっては遅くなる場合がありますので、より高速なネットワーク カードを選択してください。デフォルトでは、Windows XP には、NAT によって IP アドレスが配布されますので、ネットワーク越しのアプリケーションによっては、設定を変更する必要があります。

また、ネットワークの設定によっては、DHCP サーバーがリースする IP アドレスが Windows XP モードの台数分が必要になります。

ドメイン参加について

デフォルトでは NAT によって IP アドレスが配布されるため、ドメイン参加はできません。ゲスト OS である Windows XP をドメイン参加させるためには、ネットワークの設定の変更、ログイン資格情報の変更、ログイン ユーザーの対話的ログインの許可などの設定を変更する必要があります。

筆者ブログ:[Windows 7 の XP mode を Small Business Server 2008 のドメインに参加させてみた]

 

デバイス (周辺機器) について

Windows XP モードで USB デバイスはサポートされていますが、ホスト OS の Windows 7 とゲスト OS の Windows XP で同時に利用することができません。USB デバイスを利用するときには、USB デバイスと使用する OS を指定する必要があります。また、PCI バスや IEEE 接続機器などは Windows XP モードで使うことができません。

常駐ソフトについて

ウイルス対策ソフトなどの常駐ソフトをホスト OS の Windows 7 とゲスト OS の Windows XP で同時に動かすとパフォーマンスが極端に低下することがあります。

アプリケーションの起動について

Windows XP モードでは、ゲスト OS のアプリケーションを最初に起動するときに OS を起動させます。今までスタートアップでアプリケーションを起動している場合は、Windows XP モードを利用すると OS の起動する時間も追加されるので、今までよりもアプリケーションの起動が遅く感じられることがあります。

ライセンスについて

Windows XP モードの仮想マシンのライセンスは、Windows 7 のライセンスに含まれています。Windows XP モード内の設定をカスタマイズして別のマシンに配布するには、ボリュームライセンス契約が必要となります。Windows XP モードによって提供される OS は、 Windows XP Professional Service Pack 3 (32 bit 版) になります。

管理機能について

Windows XP モード には管理機能がないので、ポリシーによる OS の管理や Windows XP 上のアプリケーションの管理は各ユーザーが行う必要があります。Windows XP モード を含むコンピューターの集中管理を行いたい場合は、MED-V の導入を検討してみてください。

次回は、64 bit OS を選択した時に検討すべきことについて書きます。


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