Office テレメトリの概要

 

適用先: Office 2013, Office 365 ProPlus

トピックの最終更新日: 2018-01-27

概要: Office 2013、Office 2007、Office 2003 で動作する新しい互換性監視フレームワークである Office テレメトリについて説明します。

対象ユーザー: IT 担当者

Office テレメトリは、組織のビジネスに不可欠な Office ドキュメントや Office ソリューションを検出することで、Office の展開を迅速に行えるようにする新しい互換性監視フレームワークです。この記事では、Office テレメトリで使用するツール、監視対象となるドキュメントとソリューションの種類、テレメトリ データが収集されるしくみについて詳しく説明します。また、ダッシュボード内での移動およびアドインとプライバシー設定の管理についても説明します。

Office テレメトリ ポスターのサムネイル イメージ

重要

この記事は、「Office 2013 互換性のコンテンツ ロードマップ」に含まれています。このロードマップは、Office 2013 の互換性の評価に役立つ記事、ダウンロード、スクリプト、およびビデオを参照する際の出発点として使用します。


個々の Office 2013 アプリケーションに関する互換性情報については、Office.com で「2013 互換性」を検索してください。

この記事の内容

  • Office テレメトリとは

  • Office テレメトリのコンポーネント

  • Office 2013 で Office テレメトリが監視するドキュメントとソリューションの種類

  • テレメトリ データが収集されるしくみ

  • テレメトリ ダッシュボード内での移動

  • テレメトリ ダッシュボードを使用したアドインの管理

  • テレメトリ ダッシュボードでのプライバシー設定の管理

Office テレメトリとは

Office テレメトリは、Office 2010 の互換性ツールである Office Migration Planning Manager (OMPM)、Office Code Compatibility Inspector (OCCI)、Office Environment Assessment Tool (OEAT) に代わる新しい互換性監視フレームワークです。「Office 2013 互換性の評価」に記載されている最新の Office 互換性プロセスの一部として Office テレメトリを使用すると、Office の互換性の評価に費やす時間を最小限に抑えることができます。また、Office のアップグレードに伴うリスクも低減されます。

Office 2013 の Office テレメトリを使用すると、特定の Office 2013 アプリケーションで Office ドキュメントまたは Office ソリューションを読み込む、使用する、閉じるなどのイベントやエラーが発生したときに、そのイベントに関するレコードがローカル データ ストアに追加されます。各レコードには、問題の説明と詳細情報へのリンクが含まれています。また、インベントリ データと利用状況データも追跡されます。

以前のバージョンの Office では、Office テレメトリはどのように動作するのでしょうか。Office テレメトリは Office 2013 の新機能であるため、Office 2003、Office 2007、Office 2010 には組み込まれていません。これらのクライアントでは、インストールされているアドインや最近使用したドキュメントに関する情報を収集するエージェントを展開します。Office 2013 クライアントとは異なり、これらのクライアントのアプリケーション イベント データは取得できませんが、ビジネスで使用され、重要と考えられるものを検出する際に役立つインベントリ データと利用状況データを取得できます。

テレメトリ ダッシュボード の使用方法について質問がある場合は、TechNet の「Office 2013 と Office 365 ProPlus - 計画、展開、互換性フォーラム」に質問を投稿できます。また、「Office IT Pro ブログ」で テレメトリ ダッシュボード に関するブログの投稿を閲覧できます。

Office テレメトリのツールとコンポーネント

テレメトリ データは、Office 2013 テレメトリ ダッシュボードと Office 2013 テレメトリ ログの 2 つの新しいツールを使用して表示できます。これらのツールの説明を次の表に示します。

Office テレメトリ ツール

ツール 説明
このアイコンは、テレメトリ ダッシュボードを表しています。

テレメトリ ダッシュボード:

  • IT 担当者にインベントリ データとテレメトリ データをまとめて表示します。

  • Excel 2013 が必要です。

  • Office Professional Plus 2013 および Office 365 ProPlus と共にインストールされます。

  • テレメトリ データベースに接続します。

  • 複数の IT 担当者が表示できます。

このアイコンは、テレメトリ ログを表しています。

テレメトリ ログ:

  • 開発者や経験豊富なユーザーが、Office 2013 クライアントで発生する互換性の問題を診断する際に役立ちます。

  • Excel 2013 が必要です。

  • Office Professional Plus 2013 および Office 365 ProPlus と共にインストールされます。

  • クライアントのローカル データ ストアに接続します。

Office テレメトリのコンポーネントを次の表に示します。最初の 2 つのコンポーネントは、テレメトリ ログとテレメトリ ダッシュボードのどちらにも必要です。その他のコンポーネントは、テレメトリ ダッシュボードにのみ適用されます。これらのコンポーネントでは、テレメトリ ダッシュボードで表示できるように、組織全体からテレメトリ データを収集します。これらのコンポーネントを展開する方法については、「テレメトリ ダッシュボードを展開する」および「テレメトリ ダッシュボードのトポロジおよびハードウェアの計画」を参照してください。

Office テレメトリのコンポーネント

コンポーネント 説明
このアイコンは、テレメトリ ログ記録を表しています。

テレメトリ ログ記録:

  • Word 2013、Excel 2013、PowerPoint 2013、および Outlook 2013 に組み込まれており、これらのアプリケーションのイベントを監視します。

  • 既定では無効になっています。

  • テレメトリ ログ記録を有効にするには、グループ ポリシーまたはレジストリ設定を使用するか、テレメトリ ログで [ログ収集を有効にする] を選択します。

  • 収集されたテレメトリ データは、ローカル コンピューターでテレメトリ ログを使用して表示できます。

このアイコンは、テレメトリ エージェントを表しています。

テレメトリ エージェント:

  • すべての Office クライアントの利用状況データとインベントリ データを報告します。

  • Office 2013 クライアントのアプリケーション イベント データを報告します。

  • Office 2003、Office 2007、Office 2010 の各クライアントに展開する必要があります。

  • Office 2013 クライアントに組み込まれています。

  • グループ ポリシーまたはレジストリを使用して有効にする必要があります。

  • Windows XP を除き、スケジュールされたタスクとして実行されます。

  • ドメイン メンバーシップが必要です。

  • データを共有フォルダーに定期的にアップロードします。

このアイコンは、グループ ポリシー設定を表しています。

グループ ポリシー設定:

  • 各クライアントのテレメトリ エージェントを有効にし、構成します。

  • Office15.admx と Office15.adml に含まれています。

  • ユーザーの構成\管理用テンプレート\Microsoft Office 2013\テレメトリ ダッシュボードにあります。

  • Microsoft ダウンロード センターからダウンロードできます。

このアイコンは、Office テレメトリ内の共有フォルダーを表しています。

共有フォルダー:

  • テレメトリ エージェントによってアップロードされたテレメトリ データが格納されます。

  • 内部設置型であることが必要です (クラウドはサポートされていません)。

  • 他のテレメトリ コンポーネントと同じコンピューターに配置できます。

  • テレメトリ プロセッサのインストール時に構成されます。

このアイコンは、テレメトリ プロセッサを表しています。

テレメトリ プロセッサ:

  • 共有フォルダーからテレメトリ データベースにデータをアップロードします。

  • "Office テレメトリ プロセッサ" という名前の Windows サービスとして実行されます。

  • Windows Server 2008 以降のバージョンでサポートされます。

  • Windows 7、Windows 8、Windows 8.1 上のテスト環境または小規模な環境で実行できます。

  • 他のテレメトリ コンポーネントと同じコンピューターで実行できます。

  • 大規模な展開では、複数のコンピューターにインストールできます。

  • 回避策を使用する場合を除き、ドメイン メンバーシップが必要です。

このアイコンは、テレメトリ データベースを表しています。

テレメトリ データベース:

  • テレメトリ ダッシュボードのデータ ソースとなります。

  • SQL Server 2005、SQL Server 2008、SQL Server 2008 R2、または SQL Server 2012 が必要です。

  • テスト環境または小規模な環境では、SQL Express Edition で実行できます。

  • 他のテレメトリ コンポーネントと同じコンピューターで実行できます。

Office 2013 で Office テレメトリが監視するドキュメントとソリューションの種類

Office 2013 で Office テレメトリが監視するドキュメントとソリューションを次の表に示します。

Office 2013 の監視対象のドキュメントとソリューションの種類

種類 Office アプリケーション 説明

アクティブ ドキュメント

Word 2013、PowerPoint 2013、Excel 2013

アクティブ ドキュメントは、この表に示す他のソリューションの種類には含まれていない Office ドキュメント ファイルです。次のファイルがあります。

  • Office バイナリ形式のファイル (.doc, .ppt, .pps, .xls)

  • Office OpenXML 形式のファイル (.docx, .pptx, .ppsx, .xlsx)

  • VBA コードを含むマクロ有効ファイル (.docm, .dotm, .pptm, .potm, .xlsm, .xltm)

  • ActiveX コントロールを含むファイル

  • 外部データ接続を含むファイル

COM アドイン

Word 2013、PowerPoint 2013、Excel 2013、Outlook 2013

COM アドインには、Visual Studio 2010 のアプリケーション レベルのアドインとして Microsoft Office 開発ツールが含まれます。

Excel オートメーション アドイン

Excel 2013

このソリューションの種類には、以前のバージョンの Excel でサポートされる、COM アドインを基盤にしたオートメーション アドインが含まれます。オートメーション アドインの機能は、Excel ワークシートの数式を使用して呼び出すことができます。

Excel XLL アドイン

Excel 2013

XLL アドイン (.xll) は Excel 固有のアドインであり、DLL (ダイナミック リンク ライブラリ) の作成をサポートするコンパイラを使用して構築されます。このアドインは、インストールも登録も不要です。XLL アドインには、ユーザー定義のコマンドや機能が含まれた DLL も組み込まれています。

Excel XLS RTD アドイン

Excel 2013

XLS リアルタイム データ (RTD) アドインは、RealTimeData ワークシート関数を使用してオートメーション サーバーを呼び出し、リアルタイムでデータを取得する Excel ワークシートです。

Word WLL アドイン

Word 2013

WLL (.wll) アドインは Word 固有のアドインであり、DLL の作成をサポートするコンパイラを使用して構築されます。

アプリケーション アドイン

Word 2013、PowerPoint 2013、Excel 2013

アプリケーション アドインは、VBA コードを含むアプリケーション固有のファイルです。マクロ有効 Word テンプレート (.dotm)、Excel アドイン (.xla, .xlam)、PowerPoint アドイン (.ppa, .ppam) などがあります。

テンプレート

Word 2013

Office ファイルに添付されている、文書 (.dot, .dotx)、ワークシート (.xlt, .xltx)、プレゼンテーション (.pot, .potx) などのテンプレートがあります。

Office 用アプリ

PowerPoint 2013Excel 2013、Word 2013、Outlook 2013

これらは、クライアント アプリケーションの作業ウィンドウ、コンテンツ、または電子メールでホストされる Office 用アプリです。詳細については、「Office 2013 用アプリの概要」を参照してください。

テレメトリ データが収集されるしくみ

データ収集がトリガーされるしくみ、およびテレメトリ エージェントとテレメトリ ダッシュボードとの間のデータ フローを次の表に示します。

データ収集プロセスの手順

手順 説明

ユーザーがログオンすると、テレメトリ エージェントのスケジュールされたタスクがトリガーされる

ユーザーがログオンすると、エージェントがトリガーされる。

ユーザーがログオンすると、テレメトリ データをアップロードするためのスケジュールされたタスクがトリガーされます。エージェントは、ログオン プロセスが完了するまで 10 分間待機し、その後にランダムな時間 (最大 4 時間) 待機してから、アップロード プロセスを開始します。

最初のアップロードの後、エージェントは 8 時間おきにテレメトリ データをアップロードします。モバイル クライアントまたはオフラインのクライアントは、接続が復元され、ユーザーがログオンすると、データをアップロードします。

テレメトリ エージェントのアップロード間隔を構成する方法については、テレメトリ エージェントの有効化および構成を参照してください。

テレメトリ エージェントがデータを共有フォルダーに送信する

テレメトリ エージェントがデータを共有フォルダーに送信する

この図では、すべてのバージョンの Office のテレメトリ エージェントが次のデータを収集して、共有フォルダーにアップロードします。

  • 最近使用したドキュメント

  • 登録済みのアドイン

  • システムとユーザーの情報

Office 2013 のテレメトリ エージェントは、特定の Office 2013 アプリケーションの次のデータも収集します。

  • アプリケーション イベント

  • アドインのパフォーマンス

テレメトリ エージェントがアップロードするデータ サイズ (KB 単位) は次のとおりです。これらのサイズは異なる場合があります。

  • Office 2003、Office 2007、Office 2010: 1 アップロードあたり約 50 KB

  • Office 2013: 1 アップロードあたり約 64 KB

アップロードされるデータの種類と、このデータのユーザー プライバシーを管理する方法の詳細については、テレメトリ ダッシュボードでのプライバシー設定の管理 を参照してください。

データベースに対してテレメトリ データの処理が実行される

データベースに対してデータの処理が実行される

エージェントがデータを共有フォルダーにアップロードすると、テレメトリ プロセッサがデータをテレメトリ データベースにインポートします。

共有フォルダー、テレメトリ プロセッサ、テレメトリ データベースは、同じコンピューターで実行することも、別々のコンピューターで実行することもできます。詳細については、「テレメトリ ダッシュボードのトポロジおよびハードウェアの計画」を参照してください。

IT 担当者がテレメトリ ダッシュボードを使用してテレメトリ データにアクセスする

IT 担当者がテレメトリ ダッシュボードを使用してデータにアクセスする

テレメトリ データベースへのアクセス権限が付与されている IT 担当者は、テレメトリ ダッシュボードを使用して、まとめられたデータを表示できます。詳細については、テレメトリ データベースにアクセスするための権限を他の管理者に付与するにはを参照してください。

テレメトリ ダッシュボード内での移動

すべてのコンポーネントを展開し、テレメトリ ダッシュボード をテレメトリ データベースに接続すると、ドキュメントとソリューションに関するテレメトリ情報やその他の情報を表示するための新しいワークシートが追加されます。ダッシュボード内のワークシート間を移動するには、テレメトリ ダッシュボードウィンドウの左側にあるナビゲーション ウィンドウを主に使用します。また、ナビゲーション ウィンドウを使用して、データ範囲とラベル フィルターを変更することもできます。次のビデオで、ダッシュボードでの移動方法について説明します。

テレメトリ ダッシュボード内での移動に関する短いビデオ

テレメトリ ダッシュボードのワークシートの詳細については、次のリソースを参照してください。

テレメトリ ダッシュボードを使用したアドインの管理

アドインがクラッシュする場合や読み込みに時間がかかる場合は、すべての Office 2013 クライアントでそのアドインを無効にすることができます。[アドインの管理] ワークシートを使用して、Office 2013 で使用されるアドインの構成状態を設定するグループ ポリシー オブジェクト スクリプトを生成します。次のスクリーンショットは、[アドインの管理] ワークシートを示しています。

テレメトリ ダッシュボードでアドインを管理するためのユーザー インターフェイス

このスクリーンショットは、Office テレメトリ ダッシュボードの [アドインの管理] ワークシートを示しています。

グループ ポリシー管理用テンプレートを使用して、管理対象のアドインの一覧を作成し、必要に応じて、このリストに含まれていないアドインをブロックすることもできます。許可されている場合を除き、ユーザーがこれらの設定を上書きすることはできません。

テレメトリ ダッシュボード を使用して、Office アドインを管理する方法の詳細については、「テレメトリ ダッシュボードを使用してアドインを管理する」を参照してください。

テレメトリ ダッシュボードでのプライバシー設定の管理

テレメトリ ダッシュボードでは、各ユーザーの最近使用したものの一覧にドキュメントのファイル名とタイトルが表示されるため、ユーザーに関する個人情報や組織の機密情報が漏洩する可能性があります。また、Office で使用されるアドインや他のソリューションの名前も表示されます。「テレメトリ ダッシュボードでのプライバシー設定の管理」には、ファイル名とタイトルを偽装する方法や、選択したアプリケーションまたはソリューションのデータが報告されないようにする方法など、ユーザーのプライバシーを保護する際に役立つ テレメトリ ダッシュボードの設定が記載されています。

次の図は、ユーザーのプライバシーを保護するために、テレメトリ ダッシュボードで使用できる 3 つの方法の概要を簡単に示しています。

テレメトリ ダッシュボードでのプライバシー設定の 3 つの構成方法

この図は、ユーザーのプライバシーを守る手段として Office テレメトリ ダッシュボードに提供されている 3 つの方法を示しています。

関連項目

Office 2013 互換性のコンテンツ ロードマップ
Office 2013 互換性の評価
テレメトリ ダッシュボードを展開する
テレメトリ ダッシュボードでのプライバシー設定の管理