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共同編集の概要 (SharePoint Server 2010)

 

適用先: SharePoint Foundation 2010, SharePoint Server 2010

トピックの最終更新日: 2010-07-16

互いがネットワークで密接に接続されている現代の作業環境では、複数の作成者、編集者、関係者によって作成されるドキュメントが例外ではなく、当たり前になろうとしています。組織は、Microsoft SharePoint Server 2010 の通信機能とグループ作業機能を利用して、エンド ユーザー間の通信およびグループ作業の促進と同時に、それをサポートする管理作業の軽減を図っています。Microsoft Office 2010 は、SharePoint Server 2010 での Microsoft PowerPoint 2010 ドキュメント、Microsoft Word 2010 ドキュメント、および Microsoft OneNote 2010 ドキュメントの共同編集機能を備えることで、その動向に対応しています。

共同編集は、サーバーベースのドキュメントのグループ作業を妨げる障壁を取り除き、組織が添付ファイルを利用した従来のドキュメント共有に伴うオーバーヘッドを軽減することに役立ちます。共同編集は、複数のユーザーが互いの作業を妨げたり、互いをロックアウトしたりすることなく、同じドキュメントの作業を生産的に行えるようにすることで、グループ作業を簡易化します。この機能は、SharePoint Server 2010 に保存されたドキュメントの既定の状態であり、サーバーの追加のセットアップを必要としません。共同編集機能は、既に SharePoint の管理に使用されているツールおよびテクノロジと同じものを使用して管理されるため、管理者への影響は最小限で済みます。

この記事の内容:

  • SharePoint Server 2010 の共同編集機能

  • エンド ユーザーへの影響について

  • 重要な考慮事項

  • OneNote のノートブック

  • ソフトウェアのバージョンに関する要件

  • Office の混在環境での共同編集

  • パフォーマンスと拡張性

SharePoint Server 2010 の共同編集機能

従来のグループ作業では、電子メールの添付ファイルを利用してドキュメントを共有します。複数の作成者が関わっているドキュメントのバージョンや編集内容を追跡することは、ユーザーにとって困難であり、時間がかかります。電子メール システムでは、同じドキュメントが繰り返し送信されることでネットワーク トラフィックが増大するだけでなく、同じドキュメントの複数のコピーを保存する作業を強いられます。

SharePoint を使用してグループ作業用のドキュメントを保存することで、ドキュメントの最新バージョンへの一貫したアクセス、以前のバージョンの追跡、および一元的な管理が可能になるため、これらの問題は軽減されます。多数の添付ファイルではなく、1 つのドキュメントを保存することで、ネットワークとストレージのオーバーヘッドも軽減されます。

しかし、今までのこのソリューションは完璧ではありませんでした。ある作成者がドキュメントを開いていると、他の作成者はそのドキュメントの作業を行うことができません。だれかがドキュメントを閉じたりチェックインしたりすることを忘れると、他のユーザーがいつまでもロックアウトされる可能性があり、そのような状況では多くの場合、問題解の解決を IT 部門に依頼する必要が生じます。

SharePoint Server 2010 の共同編集では、複数のユーザーが互いの加えた変更に干渉することなく、いつでも 1 つのドキュメントに関する作業を行えるようにすることで、これらの問題に対処します。このアプローチを採用することで、以下に示すような、ドキュメントのグループ作業でよく発生する多くの状況に合理的に対処できます。

  • 複数の作成者が複合的なドキュメントの異なる部分に関する作業を行っています。1 人の作成者がドキュメントの 1 つのセクションの作業を行っている間、別の作成者が同じドキュメントの別のセクションの作業を行うことができ、2 人が互いの作業を妨げることはありません。

  • 数人の作成者が 1 つの複合的なスライド ショーを作成しています。個々の作成者がそれぞれ孤立して作業し、複数のドキュメントを結合すると同時に、それらのドキュメントの間に一貫性を持たせようとする代わりに、各自がプレゼンテーションにスライドを追加し、編集できます。

  • 1 つのドキュメントが、そのドキュメントの編集または追加を行う複数の専門家や関係者に送信されます。すべてのユーザーがサーバーに保存された一元管理されている 1 つのドキュメントで作業するため、どのユーザーの編集内容も失われません。

エンド ユーザーへの影響について

エンド ユーザーの立場から見れば、共同編集は使い方が簡単です。Word 2010、PowerPoint 2013、または OneNote 2013 でドキュメントの作業を行う場合、ユーザーは単に通常どおりに SharePoint Server からドキュメントを開きます。他のユーザーが既にそのドキュメントを開いている場合でも、両方のユーザーが同時にドキュメントを編集できます。ドキュメントへのアクセスはブロックされず、エラーは発生しません。

Word 2010 および PowerPoint 2013 では、ドキュメントの変更を保存すると、最新の編集内容があることを知らせる通知がそのドキュメントを表示している他のユーザーに送られます。通知を受けたユーザーは、直ちに表示を最新の情報に更新してその変更を確認するか、作業を続行し、後で最新の情報に更新して最新の編集内容を確認できます。作成者どうしが互いの作業を確認することもでき、だれがそのドキュメントの作業を行っているかがすべての作成者にわかります。作成者が不要な変更をロールバックできるように、SharePoint Server 2010 のバージョン管理ツールと追跡ツールがドキュメントを保護します。Office Communication Server が利用できる場合、ユーザーは共同作成者のオンライン状態を確認し、ドキュメントの作業を続行しながらインスタント メッセージングの会話を開始できます。

OneNote 2013 では、共有ノートブックを利用してユーザーがノートをシームレスに共有できます。ユーザーがノートブックのページを編集すると、すべてのユーザーがノートの完全なセットを使用できるように、編集内容がそのノートブックの他のユーザーとの間で自動的に同期されます。複数のユーザーが同じページで行った編集の内容が自動的に表示されるため、リアルタイムに近い状態でグループ作業を行うことができます。ユーザーは OneNote のバージョン管理などの共有機能を利用して、編集内容をロールバックしたり、最新の編集内容を表示したり、特定の編集をだれが行ったかを確認したりできます。

Excel 2013 クライアント アプリケーションは、SharePoint Server 2010 でのブックの共同編集をサポートしていません。ただし、Excel クライアントは、共有ブック機能を利用することで、ローカルで、またはネットワーク (UNC) パスに保存されたブックの非リアルタイムの共同編集をサポートしています。SharePoint でのブックの共同編集は、Office Web Apps に含まれている Microsoft Excel Web アプリケーションを使用することでサポートされます。Office Web Apps は Windows Live から利用でき、Microsoft Office 2010 ボリューム ライセンスと Microsoft SharePoint 2010 製品をベースにしたドキュメント管理ソリューションを利用しているビジネス カスタマーも利用できます。詳細については、「Office Web Apps (SharePoint 2010 製品にインストールされる)」を参照してください。

重要な考慮事項

管理者がそれぞれの使用環境で共同編集機能の利用を計画するときに考慮する必要のあることがいくつかあります。

SharePoint の共同編集機能は、セットアップが容易で、管理の手間が最小限で済むように設計されています。ただし、共同編集をセットアップして管理するときは、次のことを考慮する必要があります。

  • [権限] - 複数のユーザーが同じドキュメントを編集できるようにするには、そのドキュメントが保存されるドキュメント ライブラリに対する編集権限をユーザーに持たせる必要があります。それを行う最も簡単な方法は、ドキュメントが保存される SharePoint サイトへのアクセス権をすべてのユーザーに与えることです。一部のユーザーだけに特定のライブラリ内のドキュメントを共同編集する権限を持たせる場合は、SharePoint 権限を使用してアクセス権を管理できます。

  • [バージョン管理] - SharePoint Server のバージョン管理では、編集中にドキュメントに加えられる変更を追跡し、参照を目的として前のバージョンの保存も行います。SharePoint Server 2010 では、既定でこの機能が無効になっています。SharePoint Server 2010 は、メジャー バージョン管理とマイナー バージョン管理という 2 種類のバージョン管理をサポートしています。製品の一部である同期機能とバージョン管理機能を妨げる可能性があるため、OneNote の共同編集に使用されるドキュメント ライブラリでは、マイナー バージョン管理をオンにしないことをお勧めします。この制約はマイナー バージョン管理にのみ適用されます。メジャー バージョン管理は OneNote で使用できます。

  • [バージョンの数] - 保持するドキュメントのバージョンの数は、サーバーの記憶域の要件に影響を及ぼします。ドキュメント ライブラリ設定でこの数を調整することで、保持するバージョンの数を制限できます。OneNote のノートブックが頻繁に更新されると、サーバーに多数のバージョンが保存される可能性があります。不要なディスク容量を消費しないようにするために、OneNote のノートブックの保存に使用されるドキュメント ライブラリで保持するバージョンの最大数を管理者が適切な数に設定することをお勧めします。

  • [バージョン管理期間] – バージョン管理期間は、共同編集中の Word ドキュメントまたは PowerPoint ドキュメントの新しいバージョンが SharePoint Server で作成される頻度を決定します。この期間を小さい値に設定すると、バージョンを取得する頻度が高くなり、バージョンをより細かく追跡できますが、より多くのサーバーの記憶域が必要とされる可能性があります。バージョン管理期間は OneNote のノートブックには影響を与えません。この値は、サーバーで coAuthoringVersionPeriod プロパティを調整することによって変更できます。この設定を調整する方法の詳細については、「共同編集のバージョン管理期間を構成する (SharePoint Server 2010)」を参照してください。

  • [チェックアウト] - ユーザーが編集を目的としてドキュメントをチェックアウトすると、そのユーザーだけがドキュメントを編集できるようにドキュメントがロックされ、共同編集ができなくなります。共同編集機能を使用するドキュメント ライブラリで [チェックアウトを必須にする] を有効にしないでください。SharePoint Server 2010 では、既定で [チェックアウトを必須にする] が無効になっています。共同編集機能が使用されている間、ユーザーが手動でドキュメントをチェックアウトすることを禁止してください。

OneNote のノートブック

Microsoft Word や Microsoft PowerPoint と異なり、Microsoft OneNote では、バージョン情報をファイル自体に保存します。そのため、管理者は、OneNote のノートブックを SharePoint Server ドキュメント ライブラリに保存するとき、次の推奨事項に従う必要があります。

  • マイナー バージョン管理を有効にしないでください。SharePoint Server 2010 では、マイナー バージョン管理は既定で無効になっています。

  • メジャー バージョン管理が有効になっている場合は、保存するバージョンの最大数を適切な値に設定してください。SharePoint Server 2010 では、既定でメジャー バージョン管理が無効になります。

ソフトウェアのバージョンに関する要件

ユーザーが Office 2010 を使用してドキュメントを共同編集するには、共同編集するドキュメントを SharePoint Server 2010 または SharePoint Foundation 2010 に保存する必要があります。共同編集機能の利点を活かすには、ユーザーが Word 2010、PowerPoint 2013、または OneNote 2013 を持っている必要があります。

注意

ユーザーが Windows Live SkyDrive アカウントを持っている場合は、SharePoint Server 2010 または SharePoint Foundation 2010 がなくても Office 2010 の共同編集機能を使用できます。SharePoint Server 2010 または SharePoint Foundation 2010 を使用しない共同編集の使用については、この記事では説明しません。

Office の混在環境での共同編集

一部の組織では、使用している Office のバージョンがユーザーによって異なる環境で共同編集機能を使用する可能性があります。

Microsoft Office PowerPoint と Word 2007 を使用している混在環境

以前のバージョンの PowerPoint および Word のユーザーは、以前のバージョンの SharePoint と同様に、SharePoint Server 2010 に保存されたドキュメントを共有し、編集できます。ただし、共同編集機能を利用して、同時にドキュメントの作業を行うことはできません。PowerPoint および Word で共同編集の利点を最大限に活かすには、すべてのユーザーが Office 2010 で作業を行うことをお勧めします。Office PowerPoint および Word 2007 のユーザーは、現在のバージョンとそれほど変わらない操作性で Office 2010 を使用できます。たとえば、Office 2007 のユーザーが、Office 2010 に保存されている、現在他のユーザーが編集中のドキュメントを開くと、そのドキュメントが現在使用中であり、編集できないことを知らせるメッセージが表示されます。そのドキュメントを編集している他のユーザーがいない場合、Office 2007 のユーザーは通常どおりにドキュメントを開くことができます。Office 2007 のユーザーがドキュメントを開くと、ドキュメントにロックがかかり、Office 2010 のユーザーは共同編集機能を使用してそのドキュメントを編集できなくなります。この動作は以前のバージョンの SharePoint と同じです。

Microsoft Office OneNote 2007 を使用している混在環境

OneNote 2013 は Office OneNote 2007 ファイル形式と下位互換性があり、OneNote 2007 のユーザーとの共同編集をサポートしています。混在環境では、ノートブックを OneNote 2007 用の OneNote 2007 ファイル形式で保存し、OneNote 2013 のユーザーは、そのファイルでグループ作業を行う必要があります。ただし、OneNote 2013 ファイル形式にアップグレードすれば、ユーザーは Microsoft OneNote Web App との互換性を含む重要な機能を利用できるようになります。Microsoft OneNote Web App との互換性があると、OneNote のどのバージョンもインストールされていないユーザーがノートブックの編集や共同編集を行えます。

OneNote 2013 では、OneNote 2007 ファイルを OneNote 2013 ファイルにいつでもアップグレードできるため、組織が Office 2010 上の混在環境から統合環境へ移行するための簡単なアップグレード パスが用意されています。

パフォーマンスと拡張性

SharePoint Server 2010 および Office 2010 のアプリケーションは、使用環境での共同編集がパフォーマンスと拡張性に及ぼす影響が最小限になるように設計されています。Office クライアントは、編集を行う作成者が複数になるまで、サーバーから共同編集情報を送信またはダウンロードしません。1 人のユーザーがドキュメントを編集しているときのパフォーマンスに及ぼす影響は、以前のバージョンの SharePoint Server と同様です。

Office クライアントは、サーバーの負荷が重いとき、またはユーザーがドキュメントの編集に専念していないときに共同編集に関連する同期操作の実行頻度を低くすることによってサーバーに及ぼす影響を軽減するように構成されているため、全体のパフォーマンスに対する影響はさらに軽減されます。

See Also

Concepts

共同編集の管理 (SharePoint Server 2010)