SharePoint

Microsoft Office SharePoint Server 2007 の概要

Thomas Rizzo

 

概要:

  • SharePoint の Web 統合
  • コンテンツ管理
  • ビジネス インテリジェンス

ある 2 つの現象によって、企業での作業スタイルが変わりつつあります。マイクロソフトではこの新しい作業スタイルを "new world of work" と呼んでいます。

第 1 に、"共同作業を行うチームのメンバが、異なる場所で、また異なる時間に働いている" というケースが増えています。このようにばらばらに働いているメンバどうしを結び付けるために、コラボレーション ソフトウェアの重要性が高まっています。第 2 に、デジタル情報の利用が急拡大すると共に、ビジネス データに対する遵守規則がこれまでになく複雑化しています。各企業は、コラボレーションと共有の実現、および、情報セキュリティとプライバシーの確保に取り組んでいます。これらすべての要件 (働く時間や場所が異なる相手とコミュニケーションをとること、効果的なコラボレーション ツールを利用すること、データを扱う際のセキュリティを確保すること) を満たすソリューションが、情報と人材を最大限に活用するうえで不可欠です。

Microsoft® Office SharePoint® Server (MOSS) 2007 は、多様な技術を 1 つの統合プラットフォームと企業向けサービス群にまとめたものです。これらの技術は、コラボレーション、ポータル、エンタープライズ検索、ワークフロー、ビジネス プロセスなど多岐にわたります。MOSS は、Windows® SharePoint Services (WSS) をベースにした、SharePoint Portal Server (SPS) の次世代製品です。MOSS と WSS の連係動作については、図 1 の円グラフを参照してください。緑の部分は、WSS によって提供される機能を表します。MOSS は WSS をベースにしており、円グラフ全体は MOSS によって提供される機能を表します。MOSS が備えている機能には、ポータル、検索、エンタープライズ コンテンツ管理、ビジネス プロセス、ビジネス フォーム、ビジネス インテリジェンス (BI) などがあります。

図 1 MOSS および WSS によって提供されるサービス

図 1** MOSS および WSS によって提供されるサービス **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

ここからは、MOSS の技術面の特長、および、これらの技術を利用してユーザーの生産性を向上させる方法について説明します。

SharePoint と Web 2.0

Web 2.0、Enterprise 2.0、複合アプリケーション、コミュニティ主導型コンテンツなどさまざまな名前で呼ばれているインターネット技術 (Ajax、RSS、ブログ、Wiki) を利用すると、コンテンツ、コラボレーション、およびデータ フローをより効率的に制御できます。また、これらの技術では、Windows の双方向性、および、Web の特長である配備しやすさと使いやすさが必要です。ただし、インターネットの概念を企業環境に持ち込むと、別の問題が発生します。たとえば、サービス提供元を検証して信頼できるか、そのサービスを自社の現行の基盤にスムースに組み込むことができるか、などの問題です。

MOSS 2007 では、多くの新機能が提供されていると共に、既存のコラボレーション プラットフォームが強化されています。具体的には、ドキュメント管理機能や警告機能が組み込まれているほか、ブログ (図 2 を参照)、Wiki、RSS フィード公開/受信を行う Web パーツなどの機能が追加されています。Microsoft Office Outlook® 2007 を使用している場合、Outlook と SharePoint との間で、コラボレーション データ (予定表、仕事、連絡先など) の双方向同期を実行できます。たとえば、連絡先を変更したい場合や予定を移動したい場合は、Outlook と SharePoint のいずれか一方で変更作業を行えば、その変更内容がもう一方に反映されます。

図 2 ブログと Wiki をサポートする MOSS 2007

図 2** ブログと Wiki をサポートする MOSS 2007 **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

また、Outlook は、オフラインでのドキュメント ライブラリの取得をサポートします。ネットワークに接続していない状態でドキュメントに変更を加え、次にオンラインになったときに変更点を同期できます。

さらに、MOSS にはコミュニティー主導型コンテンツを監査し遵守すべき規則を強制する機能が実装されています。それによりこれらの新しい機能を提供するために、ユーザーが管理体系またはセキュリティを犠牲にする必要はありません。

MOSS 2007 の主要な新機能の 1 つとして、ポータル エクスペリエンスの個人用設定が拡張されています。MOSS には SharePoint サイトの機能を十分に利用できるように機能強化された My Site が導入されています。ユーザーは、リスト、ドキュメント ライブラリ、またはサブサイトを My Site に作成でき、個人用ビューとワークグループ ビューの両方でサイトの表示をカスタマイズできます。また、My Site は、組織階層および同僚の情報追跡に関する新しい Web パーツを提供します。たとえば、電話番号、肩書き、オフィス所在地、その他の情報など同僚に関するメタデータが変更された場合に警告できます。図 3 は、MOSS のカスタマイズされた My Site を示しています。

図 3 より SharePoint を中心に据えた機能をサポートする My Site

図 3** より SharePoint を中心に据えた機能をサポートする My Site **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

エンタープライズ検索

ハード ドライブの容量が小さかったときは、どこにデータが保存されているかを覚えておくことはあまり問題になりませんでした。しかし、記憶領域が爆発的に大きくなり、ユーザーはいわば無制限にデータを記録できるようになりました。これにより検索があらゆる情報アーキテクチャにおいて重要な要素になりました。MOSS では、最初に SPS 2003 で提供された検索プラットフォームを基に構築された、企業リポジトリ検索機能が向上しています。MOSS 2007 は引き続き、ファイル共有、Web サイト、Exchange Server、Lotus Notes リポジトリなどの、構造化されていないと思われるデータ リポジトリをすべてクロールします。

SPS では、基幹業務アプリケーションまたはリレーショナル データベースなど構造化されたリポジトリの検索を行うのは容易ではありませんでした。加えて、構造化されたリポジトリまたは構造化されていないリポジトリはメタデータにより補完されており、使いこなすためには従業員各自に専門知識が必要でした。MOSS では、ビジネス データ カタログ (BDC) と呼ばれる新しい技術により、新しい Knowledge Network を介して特定の知識や経験を持った人員を検索できるようになりました。

BDC を使用して、ADO.NET プロバイダ経由または Web サービス経由でデータを公開するシステムに対して、接続、クロール、および検索を行うことができます。接続するシステムに関する必要な情報を含む XML 設定ファイルを作成します。これには、サーバーまたはエンドポイントの名称、システムからオブジェクトを列挙し取得する方法、バックエンド システムがサポートするフィルタリング、バックエンド データが SharePoint データにマップされる方法などを含めることができます。次に、SharePoint のエンタープライズ検索機能を使用して、他のエンタープライズ リポジトリをクロールするのと同様に BDC データを検索できます。

既定では、SharePoint はバックエンド システムから各ビジネス エンティティに対してプロファイル ページを作成します。これらのプロファイル ページは SharePoint の他のページと同様にカスタマイズできます。図 4 は、ビジネス データと他の情報の両方を返す、カスタマイズされたプロファイル ページを示しています。また、SharePoint には多数のビジネス データ Web パーツがあります。これにより、ユーザーのページに BDC データを表示できます。必要に応じて、それらのページ上のデータに、利用可能なメタデータに基づいてフィルタをかけることもできます。ビジネス データが SharePoint にマップされたので、新しいビジネス データの列タイプを使用して SharePoint リスト内のデータにアクセスできます。今後は、データ入力エラーおよびデータの最適化作業は発生しません。なぜなら、リストに保持されているデータは信頼できるバックエンド システムから提供されるからです。

図 4 バックエンド サービスから SharePoint ページへのビジネス データの取り出し

図 4** バックエンド サービスから SharePoint ページへのビジネス データの取り出し **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

Knowledge Network では、高度な機能を使用して、特定の知識や経験を持った人員を検索できます。企業内のソーシャル ネットワークにより業務は遂行されます。多くの場合、遂行している業務で直面する問題を解決できる専門家を見つけることができれば従業員の生産性はより向上します。しかし、直接面識のある同僚の中に必要としている知識を持っている同僚がいない場合、おそらくその問題に対する専門家を探すことをやめてしまうでしょう。Knowledge Network は、物理的なソーシャル ネットワークではなく、ソフトウェアが、ユーザーの組織におけるソーシャル マップの構築を支援し、構築されたソーシャル ネットワークの検索を可能にします。結果は、社会的距離で分類したり、肩書きや部署などのメタデータ プロパティでフィルタ処理したりできます。

個人情報を扱う他のソリューションと同様に、Knowledge Network は優れたセキュリティおよびプライバシー モデルを提供します。それによって、ネットワークに参加するかどうかを選択でき、ネットワーク内のどの関係者に何を表示するかを制限できます。Knowledge Network は、ユーザーの SharePoint My Site などサーバー側の情報をクロールします。Knowledge Network にはクライアント側のコンポーネントもあります。それは Outlook とインスタント メッセンジャーに組み込まれ電子メールと連絡先をクロールします。クライアント側では、スケジュールされたクロールが行われる日時、およびクライアントのクロールによりサーバー プロファイルに公開される情報を制御できます。このシステムの課題の 1 つは、人に関するデータを最新の状態に保つことです。Knowledge Network では、ソフトウェアによって情報の更新がすべて保持されると共に、ユーザーが情報の可視性とアクセシビリティを制限できます。

エンタープライズ コンテンツ管理

単なるドキュメント管理からさらに進化した MOSS 2007 は、レコード、Web コンテンツ、電子フォームの管理に対するサポートを追加することにより、堅牢なエンタープライズ コンテンツ管理ソリューションを提供します。SharePoint のレコード管理機能では、コンテンツの保持、監査、バーコード化、ラベル作成などの遵守すべきニーズを満たす、管理されたリポジトリを構築できます。Exchange Server との統合が強化されたことにより、レコード リポジトリは、SharePoint 内に作成および保管された情報に加えて、電子メール メッセージを公式な記録として保持できます。保存ポリシーで指定されている期間よりも長く保存する必要があるという法的要件がある場合は、レコード管理機能で、レコードおよび法的な記録を検索する法的検索を行うことにより、保存ポリシーを解除できます。

Web コンテンツ管理の領域では、MOSS 2007 は Microsoft Content Management Server 2002 に取って代わるものとなります。この変更により、SharePoint はイントラネットからエクストラネットおよびインターネット対応サイトまで、ユーザーの Web ニーズに対応できます。SharePoint にこれらの機能すべてを組み込むことにより、インフラストラクチャ全体で 1 つのテクノロジをサポートするだけで済みます。SharePoint は、テスト サーバーと展開サーバーを別にしたコンテンツの展開をサポートします。また、SharePoint では、ASP.NET 2.0 Master Pages がサポートされているので、サイトのカスタマイズをより容易に行うことができます。加えて、多言語対応については、SharePoint はサイト バリエーションをサポートします。1 つのサイトに複数のバリエーションを使用でき、ページを表示しているクライアントのブラウザの言語設定に基づいて自動的に対応する言語ページにリダイレクトできます。

電子フォームについては、SharePoint は InfoPath® Forms Services と呼ばれる新しい機能を追加します。これにより InfoPath フォームを電子フォームに変換できます。InfoPath フォームの作成プロセスでは、デザイナ内のボックスがチェックされます。Web に変換されない機能を使用しようとすると警告が発生し、フォームを SharePoint リスト内の信頼できる場所に保存するように促されます。次に、ユーザーは Web ブラウザだけを使用して、フォームの表示、編集、送信を実行できます。

SPS 2003 のユーザーから要望のあった重要な機能の 1 つは、ワークフロー機能を強化することでした。多くのユーザーは SharePoint に保存したコンテンツにワークフローを組み込むことを希望していました。MOSS は単なるワークフローの強化以上の、.NET Framework 3.0 の新しい Windows Workflow Foundation 機能を追加します。これにより Windows Workflow Foundation にワークフローを構築でき、これらのワークフロー機能を SharePoint 内に埋め込むことができます。Windows Workflow Foundation のホスティングに加えて、SharePoint には、ドキュメント承認ワークフローおよびドキュメント検証ワークフローを含む多くのワークフローも既定で含まれています。図 5 は、MOSS の既定のワークフローを設定する方法を示しています。

図 5 MOSS でのワークフローの設定

図 5** MOSS でのワークフローの設定 **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

MOSS ではワークフローを監視でき、現在のタスクのステータスや履歴を表示できます。さらに、SharePoint は Office クライアントと統合されたので、エンド ユーザーは Office アプリケーションからワークフローを開始できます。加えて、エンド ユーザーは、ワークフロー タスクが割り当てられるとそれをすぐに知ることができます。また、Office アプリケーションを終了することなくそれらのタスクを完了できます。

また、MOSS は、ビジネス インテリジェンス ポータルとしての役割がさらに向上しています。これらのポータルには通常、並べ替えやフィルタ処理が可能なレポート、チャート、データのテーブルが含まれ、グラフィックスによってデータのステータスを視覚的に表すことができるという特徴があります。MOSS では、ビジネス インテリジェンス ポータルは、単にビジネス インテリジェンス (BI) ダッシュボード テンプレートを使用して新しいページを作成するだけで構築できます。BI ダッシュボードには、既定で主要業績評価指数 (KPI) リストと Excel® Web Access Web パーツが含まれています。

KPI リストは MOSS での新しいリスト タイプで、これを使用して Excel、SQL Server™ Analysis サービス、SharePoint リスト、手動で入力した情報などの情報ソースに接続できます。またこれらのデータ ソースから KPI を追跡することが可能です。KPI リストにより、視覚的な指標を使用して、現在の値、ターゲットの値、傾向、ステータスを表示できます。

Excel Web Access は、MOSS での Excel サービスの一部で、Excel のサーバー側バージョンです。これによって、Web ブラウザを介して Excel の情報を計算して表示できます。Excel サービスを使用して、スプレッドシートをデスクトップ上の Excel アプリケーションから直接 SharePoint 内の信頼できる場所に公開できます。するとユーザーは、Web ブラウザから Excel のスプレッドシートまたはチャートを表示できます。次に、パラメータまたはフィルタリングがある場合、ユーザーはこれらの機能を使用して Excel 情報の Web ブラウザでの表示を修正できます。

詳細について

ここでは、MOSS の新しい機能のほんの一部を取り上げることしかできませんでした。詳細については、オンライン リソースを参照してください。SharePoint Team Blog (英語) および SharePoint Server TechCenter (英語) から始めることをお勧めします。

Thomas Rizzoマイクロソフトの SharePoint グループのディレクターです。Thomas は以前、SQL Server グループおよび Exchange Server グループで働いていました。また、本を 4 冊執筆しています。彼の連絡先は、thomriz@microsoft.com (英語) です。

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