Office Communications Server

OCS の計画と展開のための強力なツール

Stephanie Pierce

 

概要:

  • OCS 2007 R2 のオプションを指定する
  • 構成オプションを計画する
  • トポロジを調整する
  • 結果をエクスポートする

目次

OCS 2007 R2 のオプションを選択する
プライマリ データセンターを構成する
リモート サイトを構成する
トポロジを調整する
結果を処理する

Office Communications Server (OCS) 2007 R2 の展開の計画を支援するために、マイクロソフトでは Planning Tool を開発しました。Windows Presentation Foundation (WPF) アプリケーションであるこのツールでは、一連の質問を投げかけることで、組織で必要とされる機能、統合コミュニケーション ユーザーの数、およびサポートされる機能をユーザーがどのように使用するかについての情報が収集されます。

このツールでは、提供された情報を基に、さまざまな処理を行います。具体的には、各セントラル サイト (OCS 2007 R2 をローカルにホストするサイト) の推奨トポロジを作成し、必要なハードウェアを特定し、展開を計画する手順を調整し、OCS 2007 R2 を展開するための必要な手順を調整します。

トポロジは保存して後で Planning Tool から参照できるだけでなく、トポロジを Microsoft Office Visio 2007 のファイル形式でエクスポートして、必要に応じて変更を加えることもできます。また、全サイトのハードウェアと構成の一覧を Microsoft Office Excel 2007 のファイル形式でエクスポートすることもできます。

OCS 2007 R2 のオプションを選択する

Planning Tool を実行する前に、Microsoft .NET Framework 3.5 SP1 がインストールされていることを確認してください。確認できたら、Planning Tool をダウンロードしてインストールできます。このツールの実行可能ファイルを Windows XP で実行するには、[スタート] ボタンをクリックし、[すべてのプログラム] をポイントします。次に、[Microsoft Office Communications Server 2007 R2] をポイントし、[Planning Tool] (プランニング ツール) をクリックします。Windows Vista および Windows Server システムを使用している場合は、[スタート] ボタンをクリックし、[すべてのプログラム] をポイントします。次に、[Microsoft Office Communications Server 2007 R2] をポイントし、[Planning Tool] (プランニング ツール) をクリックします。

この記事では例として、Litware Inc. という架空の会社を使用します。同社では、ニューヨーク オフィスとダブリン オフィスの 2 サイトに OCS 2007 R2 を展開することを計画しています。ニューヨーク オフィスは Litware のプライマリ データセンターで、ダブリンは規模の小さいリモート サイトです。

Litware の担当チームは Planning Tool をインストールして実行します。チーム メンバは OCS 2007 R2 の機能を詳しく知らないため、[Welcome] (ようこそ) ページの [Get Started] (はじめに) をクリックして、重要な新機能をすべて確認することにしました。既に OCS 2007 R2 の機能を把握していれば、この手順を省略し、[Design Sites] (サイトの設計) をクリックして、各サイトの設計に着手できます。このウィザードでは、各サイトに必要な機能を確認できます。

ウィザードの手順を進めていくと、次のオプションが表示されました。

[Audio and Video Conferencing] (音声とビデオの会議) ユーザーが Office Communicator または Office Live Meeting クライアントを使用して、音声とビデオの会議に参加できます。

[Web Conferencing] (Web 会議) ファイアウォールの内側と外側のどちらにいるユーザーも、ファイアウォールの内側にあるサーバーでホストされる Web 会議を作成したり、Web 会議に参加したりできます。

[Communicator Web Access] ユーザーは、仮想プライベート ネットワーク (VPN) を介して接続しなくても、サポートされる Web ブラウザを使用して OCS 2007 R2 のインスタント メッセージング、プレゼンス、および会議機能を利用できます。

[Enterprise Voice] (エンタープライズ VoIP) エンタープライズ VoIP をインスタント メッセージングや会議機能と併せて展開し、Microsoft Outlook と完全に統合すると、ユーザーが最適な方法を選択して、同僚とコミュニケーションをとることができます。たとえば、コンピュータや Office Communicator Phone Edition を使用して、電話をかけることができます。

[Monitoring] (監視) 統合コミュニケーションのセッションに関して通話の詳細や品質の指標データが、各オーディオ セッションやビデオ セッションの最後に記録されます。また、監視機能では、使用状況の統計、傾向、メディア品質の状態を示すデータが提供されます。

[Archiving] (アーカイブ) インスタント メッセージングの会話が、法令遵守上の理由でアーカイブされます。

[Unified Communications Applications] (統合コミュニケーション アプリケーション) このオプションでは、統合コミュニケーション アプリケーションを展開、ホスト、および管理できるプラットフォームが提供されます。提供されるアプリケーションは 4 種類あります。応答グループ サービス (自動的に電話に応答して、対応可能なヘルプ デスク スタッフにつなぎます)、会議アテンダント (公衆交換電話網 (PSTN) から電話をかけてきたユーザーが、Office Communicator の会議に参加および接続できるようにします)、会議アナウンス サービス (参加者の名前など、会議においてアナウンスを行います)、外部 VoIP コントロール (携帯電話などのデバイスに対してエンタープライズ VoIP 機能と通話コントロール機能を提供します) の 4 種類です。

[Group Chat] (グループ チャット) 永続的なグループ チャットを使用してコミュニケーションをとることができます。複数参加のインスタント メッセージングと異なり、グループ チャットの会話は保持されるので、後からアクセスすることができます。また、会話はセキュリティで保護されるので、そのチャットのメンバしか、会話の記録とリソースにアクセスできません。

[Device Update Service] (デバイス更新サービス) Microsoft Communicator Phone Edition や Microsoft RoundTable など、すべての統合コミュニケーション デバイスの更新プロセスが自動化されます。

[Federation] (フェデレーション) ユーザーは他の外部組織とコミュニケーションをとることができます。インスタント メッセージング セッションを開始したり、通知をやり取りしたり、互いの "プレゼンス" を確認したりできます。

[Public Instant Messenger Connectivity] (パブリック インスタント メッセンジャーとの接続) MSN、Yahoo!、AOL などのパブリック プロバイダのインスタント メッセンジャーとの通信を確立できます。ただし、これには別途ライセンスが必要です。

[High Availability] (高可用性) スタンバイ サーバーにより、ダウンタイムを最小限に抑えます。

Litware のチームは、Communicator Web Access 以外の上記すべての機能の展開を検討することにしました。

プライマリ データセンターを構成する

ウィザードのすべての質問に回答したら、この例では、[Central Sites] (セントラル サイト) ページで [Site Name] (サイト名) ボックスに「New York」、[Domain Name] (ドメイン名) ボックスに「litwareinc.com」、[Number of Users] (ユーザー数) ボックスに「60,000」と入力します (図 1 参照)。

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図 1 ニューヨーク サイト用の Central Sites (セントラル サイト) ページ

[Central Sites] (セントラル サイト) ページで必要な情報を入力して [Next] (次へ) をクリックすると、エンタープライズ VoIP の設定ページが表示されます。Litware では、統合コミュニケーション ユーザーの 20% により、エンタープライス ボイスをパイロット運用したいと考えています。同社では、通常の平均的なトラフィックとして、ユーザーが 1 時間に約 2 回の通話を行うと予想しています。トラフィックが少ない場合は 1 時間につき 1 回、多い場合は 1 時間につき 3 回以上の通話を行うと予想しています。

Litware では T1 ネットワーク回線を使用しているので、回線の種類は [T1] を選択しました。また、OCS と互換性のある IP-PBX はないため、このオプションのチェック ボックスはオフのままにしました。

Litware ではさまざまな規模のゲートウェイの展開を計画しているため、ゲートウェイの種類は [Variety of gateways] (さまざまなゲートウェイ) を選択しました。展開する仲介サーバーの種類は、[2 processors, quad-core, 2.66GHz] (2 プロセッサ、クアッドコア、2.66 GHz) を選択しました。電話の設定が完了した時点のページは、図 2 のようになります。

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図 2 エンタープライズ VoIP の設定

[Next] (次へ) をクリックすると、グループ チャットの容量計画オプションが表示されます。ここでは、グループ チャットを同時に使用するユーザー数として、6% (既定の設定) を選択しました。

次のページでは、外部ユーザー アクセスについての情報と、外部ユーザーに対して高可用性が必要であるかどうかを指定します。ここでは、[Yes, and I want to deploy edge servers in my perimeter network] (はい。境界ネットワークにエッジ サーバーを展開する) という最初のオプションを選択しました。また、[Enable high availability for my external users] (外部ユーザーの高可用性機能を有効にする) チェック ボックスをオンにしました。

リモート サイトを構成する

Litware にはリモート サイトがあるため、[External User Access] (外部ユーザー アクセス) ページの [Add Another Site] (別のサイトを追加) をクリックします。[Central Sites] (セントラル サイト) ページで必要な情報を入力します。[Site Name] (サイト名) ボックスには「Dublin」、[Domain Name] (ドメイン名) ボックスには「litwareinc.com」、[Number of Users] (ユーザー数) ボックスには「4,000」と入力します。また、ダブリンでは高可用性は必要ないので、このオプションのチェック ボックスはオフにします。

次は、外部ユーザー アクセスのページに進みます。ダブリン オフィス用の External User Access (外部ユーザー アクセス) ページでは、すべての外部ユーザーがニューヨーク サイトを経由するように設定することにしました。そのため、[Yes, but I want to use edge servers deployed at another site] (はい。ただし、別のサイトに展開されているエッジ サーバーを使用する) を選択し、[New York] を選択します (図 3 参照)。Litware には、これ以上サイトがないので、[Finish] (完了) をクリックします。

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図 3 リモート サイト用の External User Access (外部ユーザー アクセス) ページ

トポロジを調整する

サイトの設定が完了すると、Planning Tool では Litware のグローバル トポロジが表示されます (図 4 参照)。画面の右側には、Litware の全サイトに必要なすべてのハードウェアが表示されます。いずれかのサイトをクリックすると、既定の Web ブラウザが起動されて、ドキュメントとハードウェア要件情報が表示されます。[Ports] (ポート) をクリックすると、ベンダの Web サイトに移動して、OCS 2007 R2 と互換性のあるハードウェアの一覧を確認できます。

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図 4 Global Topology (グローバル トポロジ) ページ

いずれかのサイトをクリックすると、次のようなさまざまなオプションが表示されます。

[Print Topology] (トポロジの印刷) グローバル トポロジとハードウェアの一覧を印刷します。

[Welcome Screen] (ようこそ画面) Welcome (ようこそ) ページに戻ります。

[Add Site] (サイトの追加) Central Sites (セントラル サイト) ページに移動して別のサイトを追加します。

[Save Topology] (トポロジの保存) XML ファイル形式でトポロジ情報を保存します。

[Export to Excel] (Excel にエクスポート) Excel XML ファイル形式でトポロジ情報を保存します。

[View Site] (サイトの表示) サイトのトポロジを表示します。

[Edit Site] (サイトの編集) Central Sites (セントラル サイト) ページに移動します。サイトの機能、サイト名、ドメイン名、ユーザー数、容量設定を変更できます。

ニューヨーク サイトをダブルクリックすると、図 5 のようなトポロジが表示されます。Planning Tool では、統合コミュニケーション ユーザー数と有効にする機能についての情報と併せて OCS 2007 R2 ユーザー モデルを使用することで、このトポロジを作成し、必要なハードウェアを算出します。ただし、提示されるトポロジは推奨にすぎません。OCS 2007 R2 とは異なるユーザー モデルを使用している場合は、トポロジの微調整や必要なサーバーの台数の調整が必要になる可能性があります。

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図 5 ニューヨーク サイトのトポロジ

OCS 2007 R2 ユーザー モデルは、オンラインで入手できます。たとえば、Litware では必要に応じて、アーカイブ サーバーと監視サーバーをダブリン サイトに配置することができます。

コンポーネントをポイントまたはダブルクリックすると、そのコンポーネントのハードウェア要件とポート要件を確認できます。また、ファイアウォールのアイコンをクリックすると、ファイアウォールのポート要件を確認できます。

画面の右側に、ニューヨーク サイトに必要なハードウェアと、次のような実行可能な操作が一覧表示されます。

[Print Topology] (トポロジの印刷) トポロジとハードウェア要件を印刷します。

[View Planning Steps] (計画の手順の表示) このトポロジ用に調整された計画の手順を表示するページに移動します。各手順は TechNet ライブラリで公開されているドキュメントにリンクされています。

[View Deployment Steps] (展開の手順の表示) このトポロジ用に調整された展開の手順を表示するページに移動します。各手順は TechNet ライブラリで公開されているドキュメントにリンクされています。

[View Global Topology] (グローバル トポロジの表示) Global Topology (グローバル トポロジ) ページに移動します。

[Welcome Screen] (ようこそ画面) 最初の Welcome (ようこそ) ページに戻ります。

[Export to Visio] (Visio にエクスポート) Visio XML 図面 (.vdx) ファイル形式でトポロジ情報を保存します。

ここでは、現在表示しているニューヨーク サイトのトポロジを Visio のファイル形式でエクスポートします。この .vdx ファイルを Visio で開くと、図 6 のようなトポロジが表示されます。この図面では、コンポーネントを追加、削除、または移動できます。

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図 6 Microsoft Office Visio で表示されたトポロジ

これで、このトポロジの適当な推奨サーバー数、場所、および構成をまとめられるだけの情報が揃いました。図 7 は、この構成を示しています。この図中の (A/P) はアクティブ/パッシブ構成の SQL Server クラスタを、(LB) はロード バランサ機器を表します。

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ダブリン サイトでは高可用性が必要ないので、Standard Edition Server の台数が 1 になっています。Litware では Communicator Web Access オプションを選択していませんが、このハードウェアの一覧では Communicator Web Access サーバーが 1 台必要であるとされています。これは、Litware では会議アテンダントと会議アナウンス サービスを展開することに原因があります。というのも、これらの機能でダイヤルイン会議の PIN 番号を構成するには、少なくとも 1 台の Communicator Web Access サーバーが必要だからです。

ここでは、このトポロジと両サイトの推奨サーバー構成でよいと判断したので、グローバル トポロジのページに戻ります。Planning Tool で再びこのトポロジを表示できるように [Save Topology] (トポロジの保存) をクリックします。それから、[Export to Excel] (Excel にエクスポート) をクリックして、サイトとハードウェアの情報をすべて保存しました。

結果を処理する

保存した Excel XML ファイルを Microsoft Office Excel 2007 で開くと、全サイトの概要、使用状況のプロファイル情報、サーバー プロファイル情報を確認できます (図 8 参照)。

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図 8 Excel で表示した Planning Tool の概要情報

この Planning Tool の概要情報は、次の 3 つのセクションで構成されています。

[Summary] (概要) 組織内のサイトの総数が表示されます。

[Usage Profile] (使用状況のプロファイル) 組織の全ユーザー数、各サイトのユーザー数、各サイトで有効になっている機能、各サイトの容量設定が表示されます。

[Server Profile] (サーバー プロファイル) 各サイトに必要なサーバーの役割の種類と数、および組織全体のサーバーの総数が表示されます。

[Hardware Profile] (ハードウェア プロファイル) シートをクリックすると、必要なハードウェアが種類別に表示されます (図 9 参照)。

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図 9 Excel で表示したハードウェア プロファイル

[Hardware Profile] (ハードウェア プロファイル) シートは、2 つのセクションで構成されています。[Summary] (概要) には、ハードウェア要件を基に、組織全体で必要なハードウェアの種類が表示されます。[Hardware Profile] (ハードウェア プロファイル) には、サイトごとのハードウェア要件、必要な数、各サーバーで有効にするサーバーの役割が表示されます。

[Ports Requirements] (ポート要件) シートには、各サーバー コンポーネントで有効にする必要があるポートが表示されます。これで、Litware のニューヨーク サイトとダブリン サイトへの OCS 2007 R2 の展開を計画する準備が整いました。

Stephanie Pierce は、Microsoft Office Communications Server ユーザー アシスタンス チームのシニア テクニカル ライターです。以前は、統合コミュニケーション グループのプログラム マネージャを務めていました。