Share via


SQL Server の接続プール (ADO.NET)

通常、データベース サーバーへの接続は、時間のかかるいくつかの手順で構成されています。ソケットまたは名前付きパイプなどの物理チャネルの確立、サーバーとの最初のハンドシェイクの実行、接続文字列の情報の解析、サーバーによる接続の認証、現在のトランザクションへ参加するための検証などの手順を行う必要があります。

実際には、ほとんどのアプリケーションで、1 つまたはいくつかの違いがあるだけの構成を接続に使用しています。つまり、アプリケーションの実行時に、多数の同一の接続が繰り返し開かれ、閉じられているのです。接続を開くコストを最小化するために、ADO.NET は接続プールと呼ばれる最適化の手法を使用しています。

接続プールは、新しく開く必要のある接続の数を減らします。プーラーには、物理的な接続の所有権が保持されます。プーラーは、任意の接続構成それぞれのアクティブな接続のセットをそのまま保持して、接続を管理します。この接続の Open を呼び出すと、プーラーは、プールに使用可能な接続があるかどうかを確認します。プールされた接続が使用できる場合は、新しい接続を開く代わりに、プールされた接続を呼び出し元に返します。アプリケーションが接続で Close を呼び出すと、プーラーは接続を閉じる代わりに、プールされたアクティブな接続のセットに接続を返します。接続がプールに返されると、その接続は、次の Open 呼び出しで再度使用できる状態になります。

同じ構成を持つ接続のみをプールすることができます。ADO.NET は同時に複数のプールを保持し、各プールでの構成は 1 つです。接続は接続文字列によってプール内で区別されます。また、統合セキュリティを使用している場合は、Windows ID によっても区別されます。接続がプールされるかどうかは、その接続がトランザクションに参加しているかどうかにも依存します。

接続をプールすると、アプリケーションのパフォーマンスとスケーラビリティを大幅に改善できます。ADO.NET では、接続プールが既定で有効になっています。明示的に無効にしない限り、プーラーは、アプリケーションで接続が開かれたり、閉じられたりする際に接続を最適化します。また、接続プール機能の動作を制御する接続文字列修飾子を指定することもできます。詳細については、このトピックで後述する「接続文字列キーワードによる接続プールの制御」を参照してください。

プールの作成と割り当て

接続が最初に開かれると、完全一致のアルゴリズムに基づいて接続プールが作成され、接続内の接続文字列に関連付けられます。各接続プールが別の接続文字列に関連付けられます。新しい接続が開かれたとき、接続文字列が既存のプールと完全に一致しない場合は、新しいプールが作成されます。接続は、プロセス、アプリケーション ドメイン、接続文字列、Windows ID (統合セキュリティを使用している場合) ごとにプールされます。また、接続文字列は完全に一致していることが必要です。同じ接続に対してキーワードを異なる順序で指定すると別々にプールされます。

3 つの新しい SqlConnection オブジェクトを作成し、2 つの接続プールだけでこの 3 つのオブジェクトを管理する C# の例を次に示します。1 番目の接続文字列と 2 番目の接続文字列では、Initial Catalog に割り当てる値が異なります。

using (SqlConnection connection = new SqlConnection(
  "Integrated Security=SSPI;Initial Catalog=Northwind"))
    {
        connection.Open();      
        // Pool A is created.
    }

using (SqlConnection connection = new SqlConnection(
  "Integrated Security=SSPI;Initial Catalog=pubs"))
    {
        connection.Open();      
        // Pool B is created because the connection strings differ.
    }

using (SqlConnection connection = new SqlConnection(
  "Integrated Security=SSPI;Initial Catalog=Northwind"))
    {
        connection.Open();      
        // The connection string matches pool A.
    }

接続文字列で MinPoolSize が指定されていない、またはゼロに指定されている場合、プール内の接続は、アクティブではない一定の期間後に閉じられます。ただし、MinPoolSize がゼロより大きい値に設定されている場合、接続プールは、AppDomain がアンロードされ、プロセスが終了するまで破棄されません。アクティブでないプールまたは空のプールを維持するためには、最小限のシステム オーバーヘッドが発生します。

メモメモ

フェールオーバーなど、致命的なエラーが発生すると、プールは自動的にクリアされます。

接続の追加

一意の接続文字列ごとに 1 つの接続プールが作成されます。プールが作成された段階で、複数の接続オブジェクトが作成されてそのプールへ追加され、最小プール サイズ要件を満たします。必要に応じて、指定された最大プール サイズ (既定は 100) に達するまで、接続がプールへ追加されます。接続が終了または破棄されると、その接続は解放され、プールに戻されます。

SqlConnection オブジェクトが要求されると、プールに使用可能な接続がある場合はプールから取得されます。使用可能な接続とは、サーバーへの有効なリンクを持つ接続のうち、使用中でないか、一致するトランザクション コンテキストを持っているか、またはどのトランザクション コンテキストにも関連付けられていない接続のことです。

接続プーラーは、接続がプールに解放されたときに接続の再割り当てを行って、接続に対する要求に応えます。最大プール サイズに達すると、使用可能な接続を取得できなくなり、要求はキューに置かれます。プーラーは、タイムアウト (既定は 15 秒) に達するまで接続の再利用を試みます。接続がタイムアウトになる前に、プーラーが要求を満たすことができない場合は、例外がスローされます。

Caution メモ注意

接続がプールに返されるようにするために、接続を使い終えたら必ず接続を終了することを強くお勧めします。この操作は、Connection オブジェクトの Close または Dispose メソッドを使用するか、あるいは C# の using ステートメントまたは Visual Basic の Using ステートメント内ですべての接続を開くことによって実行できます。明示的に終了されていない接続は、プールに追加したり返したりすることができないことがあります。詳細については、「using ステートメント (C# リファレンス)」または「方法: システム リソースを破棄する (Visual Basic)」(Visual Basic の場合) を参照してください。

メモメモ

クラスの Finalize メソッド内で Connection、DataReader、またはその他のマネージ オブジェクトの Close または Dispose を呼び出さないでください。終了処理では、クラスに直接所有されているアンマネージ リソースだけを解放してください。クラスがアンマネージ リソースを所有していない場合は、クラス定義に Finalize メソッドを含めないでください。詳細については、「ガベージ コレクション」を参照してください。

メモメモ

接続が接続プールからフェッチされたり接続プールに返される場合、ログイン イベントとログアウト イベントはサーバーで発生しません。これは、接続プールに返されるときに接続が実際には終了していないためです。詳細については、SQL Server オンライン ブックの「Audit Login イベント クラス」および「Audit Logout イベント クラス」を参照してください。

接続の削除

接続が長時間アイドル状態のとき、またはサーバーとの接続が切断されているのを検出したときに、接続プーラーはプールから接続を削除します。サーバーとの通信を試みた後にのみ、切断されたサーバー接続が検出可能になることに注意してください。接続がサーバーに接続していないことがわかると、その接続は無効としてマークされます。無効な接続は、閉じられるか、または再利用された場合のみ、接続プールから削除されます。

既に存在しないサーバーへの接続が存在する場合は、接続プーラーが、その接続が切断されていることをまだ検出せず、無効というマークを付けていない状況のときでも、プールからその接続を削除できます。この機能は、接続がまだ有効であることを確認するオーバーヘッドによってサーバーへのラウンド トリップが実行されることにより、プーラーの利点が失われてしまうことを防ぐためにあります。この状況が発生した場合は、接続の使用を最初に試みたときに接続が切断されていることが検出され、例外がスローされます。

プールのクリア

ADO.NET 2.0 では、プールをクリアするために、ClearAllPoolsClearPool という 2 つの新しいメソッドが導入されました。ClearAllPools は、指定されたプロバイダーの接続プールをクリアし、ClearPool は、特定の接続に関連付けられた接続プールをクリアします。これらのメソッドが呼び出されたときに使用中の接続がある場合は、適切にマーク付けされ、接続が閉じられるとプールに返されずに破棄されます。

トランザクションのサポート

接続はプールから取り出され、トランザクション コンテキストに基づいて割り当てられます。接続文字列で Enlist=false が指定されていない限り、接続プールは、接続を Current コンテキストの中に参加させます。接続が閉じられ、参加した System.Transactions トランザクションと共にプールに返されると、同じ System.Transactions トランザクションを持つ接続プールに対する次の要求でも、使用可能であれば同じ接続を返すように接続が保持されます。このような要求が発行された場合で、なおかつ、プールされた接続が使用できない場合は、プールの非トランザクション部分から接続を取り出して参加させます。プールのどちらの領域にも使用できる接続がない場合は、新しい接続を作成して参加させます。

接続が終了すると、その接続は解放されてプールへ返り、さらに、そのトランザクション コンテキストに基づいて特定のサブプールへ返ります。そのため、分散トランザクションが保留状態である場合を含め、エラーを発生させることなく、開発者が接続を終了させることは可能です。これにより、分散トランザクションを後でコミットまたは中止できます。

接続文字列キーワードによる接続プールの制御

SqlConnection オブジェクトの ConnectionString プロパティは、接続プール ロジックの動作を調整するために使用できる接続文字列キーおよび値のペアをサポートします。詳細については、「ConnectionString」を参照してください。

プールの断片化

プールの断片化は、プロセスが終了するまで解放されないプールを多数作成できる Web アプリケーションの多くで一般的な問題です。これにより、多数の接続が開いたままになってメモリを消費し、パフォーマンスが低下します。

統合セキュリティによるプールの断片化

接続は、接続文字列とユーザー ID に基づいてプールされます。したがって、Web サイトで基本認証または Windows 認証を使用していて、統合セキュリティ ログインを使用している場合は、1 ユーザーにつき 1 つのプールが作成されます。これによって、単一のユーザーによる後続のデータベース要求のパフォーマンスが向上しますが、他のユーザーによって作成された接続は使用できません。また、1 ユーザーにつき少なくとも 1 つの接続がデータベース サーバーに存在することになります。これは、開発者がセキュリティおよび監査要件に対して、特定の Web アプリケーションのアーキテクチャに重点を置く必要があるために起こる副作用です。

多数のデータベースによるプールの断片化

インターネット サービス プロバイダーの多くは、1 つのサーバー上で複数の Web サイトをホストしています。インターネット サービス プロバイダーは、1 つのデータベースを使用してフォーム認証ログインを確認し、そのユーザーまたはユーザー グループの特定のデータベースへの接続を開きます。認証データベースへの接続はプールされ、すべてのユーザーが使用できるようになります。ただし、各データベースに対して個別の接続のプールが存在するため、サーバーへの接続数が増加します。

これもまた、アプリケーションのデザインの副作用です。SQL Server に接続するときにセキュリティを損なうことなく、この副作用を回避する比較的簡単な方法があります。各ユーザーまたはグループの個別のデータベースに接続する代わりに、サーバー上の同じデータベースに接続してから、Transact-SQL USE ステートメントを実行して目的のデータベースに変更します。master データベースへの最初の接続を作成し、databaseName 文字列変数で指定した目的のデータベースに変更するコード フラグメントを次に示します。

' Assumes that command is a valid SqlCommand object and that
' connectionString connects to master.
    command.Text = "USE DatabaseName"
Using connection As New SqlConnection(connectionString)
    connection.Open()
    command.ExecuteNonQuery()
End Using
// Assumes that command is a SqlCommand object and that
// connectionString connects to master.
command.Text = "USE DatabaseName";
using (SqlConnection connection = new SqlConnection(
  connectionString))
  {
    connection.Open();
    command.ExecuteNonQuery();
  }

アプリケーション ロールおよび接続プール

sp_setapprole システム ストアド プロシージャの呼び出しにより SQL Server のアプリケーション ロールが起動された後は、その接続のセキュリティ コンテキストをリセットすることはできません。ただし、プールを有効した場合は、プールに接続が返され、プール接続が再利用されると、エラーが発生します。詳細については、サポート技術情報の文書「OLE DB リソース プールでの SQL アプリケーション ロール エラー」を参照してください。

アプリケーション ロールに代わる方法

SQL Server 2005 を使用している場合は、アプリケーション ロールに代わる新しいセキュリティ メカニズムの使用をお勧めします。詳細については、「SQL Server でのアプリケーション ロールの作成 (ADO.NET)」を参照してください。

参照

概念

パフォーマンス カウンター (ADO.NET)

その他の技術情報

接続プール (ADO.NET)

SQL Server と ADO.NET