通信

パブリック フォルダの強力な代替手段

Alan Maddison

 

概要:

  • 予定表と連絡先を共有する
  • ブログと Wiki を使用してコミュニケーションを図る
  • ドキュメントを共有および管理する

パブリック フォルダは、Microsoft Exchange Server の最初のバージョンで導入された機能であり、当初の目的は、ドキュメントの共有、配布リストのアーカイブ、カスタム アプリケーションの開発を実現する基本的なプラットフォームを提供するということでした。しかし、当初から、

管理者は、管理作業に悪戦苦闘し、パブリック フォルダを使用することは、多くの Exchange 環境において非常に複雑な作業でした。Exchange Server 2007 では、パブリック フォルダの管理作業が大幅に向上しましたが、依然として問題があります。パブリック フォルダは、企業が今日必要としている強力なコラボレーションとドキュメントの管理を実現するプラットフォームを提供しません。

マイクロソフトは、パブリック フォルダのサポートを Exchange Server 2007 で終了する可能性があることを表明しました。現在、パブリック フォルダは完全にサポートされており、Exchange Server 2007 のリリース後 10 年間は完全なサポートが提供されますが、これはパブリック フォルダの代替手段を検討するよい機会です。

さいわい、マイクロソフトでは、Microsoft® Office SharePoint® Server (MOSS) 2007 のリリースにより、強力なオプションを提供しました。MOSS 2007 は、パブリック フォルダで提供される機能の代替として使用できるプラットフォームを IT 管理者や企業に提供します。この記事では、MOSS が Exchange Server のパブリック フォルダよりも豊富な機能を提供する堅牢かつ強力なフレームワークであることを説明します。特に、予定表、連絡先、ドキュメントの共有など、パブリック フォルダの主な用途に SharePoint Server を使用することに重点を置いて説明します。

クライアントを更新するまでは、パブリック フォルダを継続して使用する必要があることに注意してください。Microsoft Outlook® クライアント (Outlook 97 から Outlook 2003 まで) では、オフライン アドレス帳、組織フォーム ライブラリ、空き時間情報の参照などにパブリック フォルダが必要です。Outlook 2007 と Exchange Server 2007 への移行が完了したら、準備が整い次第、パブリック フォルダの使用を完全に中止することができます。

SharePoint Server の予定表

予定表の共有は、パブリック フォルダの一般的な用途です。パブリック フォルダを使用している予定表の代わりに SharePoint Server の予定表を使用するのは簡単な作業です。SharePoint サイトの既定のインストールには 1 つの予定表が含まれていますが、組織のニーズに対応するには複数の予定表を作成する必要があります。これを説明するために、人事部用の共有の予定表を作成する方法を紹介します。まず、[すべてのサイト コンテンツの表示] を選択します。通常、このオプションは SharePoint サイトの左上に表示されます (図 1 参照)。

図 1 新しいサイト コンテンツを作成する

図 1** 新しいサイト コンテンツを作成する **

[すべてのサイト コンテンツの表示] を選択したら、[作成] ボタンをクリックします (このボタンも図 1 に表示されています)。作成ページが読み込まれると、既定のコンテンツ タイプのオプションが表示されます (図 2 参照)。予定表を作成するには、[リスト] の [予定表] を選択します。[名前] ボックスと [説明] ボックスに情報を設定し、予定表をクイック リンク セクションに含めるかどうかを選択します。

図 2 作成ページには多数の既定のオプションが表示される

図 2** 作成ページには多数の既定のオプションが表示される **

これで、予定表が作成されました。ユーザーは SharePoint サイトを使用するか、または Outlook から直接、共有の予定表を参照できます。Outlook から共有の予定表を参照するのに必要な作業は、Web ブラウザを使用して予定表に接続し、[操作] メニューの [Outlook に接続] をクリックするだけです。

初めて接続するときには、セキュリティ警告が表示されます。これは、ユーザーが既知の信頼できるソースにのみ接続するようにするためのものです。[はい] をクリックすると、予定表は Outlook に接続されます。図 3 は既定のビューです。既定のビューには、SharePoint の予定表と Outlook の予定表が並んだ状態で表示されます。

図 3 SharePoint の予定表と Outlook の予定表が並んだ状態で表示される

図 3** SharePoint の予定表と Outlook の予定表が並んだ状態で表示される **

予定表が Outlook に接続されると、双方向の同期が行われます。Outlook で入力されたイベントは SharePoint と同期され、予定表を参照するユーザーには更新されたエントリが表示されます。また、SharePoint Server で SMTP のサポートを有効にしている場合は、イベントを直接予定表に電子メールで送信し、SharePoint Server でそれらのエントリを追加することができます。

SharePoint Server の連絡先

多くの組織では、パブリック フォルダを利用する共有連絡先も使用されています。SharePoint Server では、連絡先についても、連絡先リストを簡単に作成および管理できるようにする、より堅牢な代替機能を提供します。同じ例を使用して、人事部用の共有連絡先リストを作成する方法を紹介します。

ここでも、[すべてのサイト コンテンツの表示] を選択し、[作成] ボタンをクリックします。[通信] の [連絡先] を選択します。名前、説明、およびクイック リンクの構成情報を指定する画面が表示されます (図 4 参照)。この情報を設定して [作成] ボタンをクリックすると、新しい連絡先リストが作成されます。

図 4 名前、説明、およびクリック リンクの構成を指定する

図 4** 名前、説明、およびクリック リンクの構成を指定する **

ユーザー コミュニケーション

SharePoint Server を使用してディスカッション掲示板 (ディスカッション リスト) を作成することもできます。予定表や連絡先と同様、作成手順は非常に簡単です。[すべてのサイト コンテンツの表示] を選択し、[作成] ボタンをクリックして、[通信] の [ディスカッション掲示板] を選択します。これまでと同様に、名前、説明、およびクイック リンクの構成情報を指定して、[作成] ボタンをクリックします。図 5 に、いくつかのサンプル投稿があるディスカッション掲示板を示します。

図 5 いくつかの投稿のあるサンプルのディスカッション掲示板

図 5** いくつかの投稿のあるサンプルのディスカッション掲示板 **

SharePoint Server では、ディスカッション掲示板以外に、ブログと Wiki という 2 つの一般的なコミュニケーション ツールがサポートされるようになりました。ブログと Wiki は SharePoint Server 2007 の新機能であり、パブリック フォルダでは利用できません。これらのツールは、機能セットに魅力的で有益なグループ作業の機能を提供します。

ブログは、対話的なフォーラムであり、ブログの作成者は、Web サイトに投稿することで自分の見解やアイディアを簡単に掲示できます。一般的に、ブログの投稿内容は、ブログにアクセスした人が興味のある投稿内容を検索しやすくするために分類されます。また、ブログの読者は、ブログ作成者のコメントに対して応答のコメントを投稿することができます。たとえば、企業では、経営幹部のブログを設けることができます。このようなブログは、従業員とのコミュニケーションを図る有益なツールとしての役割を果たし、スタッフ メンバがアイディアを共有する手段を提供し、あらゆるレベルでのコミュニケーションを円滑に行うことを可能にします。

SharePoint Server では簡単にブログを作成できます。まず、[すべてのサイト コンテンツの表示] を選択し、[作成] ボタンをクリックして、[Web ページ] の [サイトとワークスペース] をクリックします。この操作により、[新しい SharePoint サイト] ページが表示されます。このページでは、サイトのタイトル、名前、および URL を指定します。次に、サイトで使用するテンプレートを選択します。ここでは、ブログのテンプレートを選択します。最後の 3 つの構成オプションは、アクセス許可、ナビゲーション、およびサイト ディレクトリの一覧です。必要なすべてのオプションを設定したら、[作成] ボタンをクリックします。[作成] ボタンをクリックすると、トップレベル サイト内にサブサイトが作成され、サブサイト内にブログ機能を提供するライブラリとリストが作成されます。この処理が完了すると、新しいブログが表示されます。

Wiki は、グループ作業を促進することを目的にデザインされたツールです。ユーザーは、サイト コンテンツを追加、削除、編集したり、ページを相互にリンクしたりすることができます。Wiki を作成する最も簡単な方法は、[すべてのサイト コンテンツの表示] を選択し、[作成] リンクをクリックして、[Wiki ページ ライブラリ] を選択することです ([Wiki ページ ライブラリ] は [ライブラリ] にあります)。名前、説明、ナビゲーションなどの必要な構成フィールドに情報を設定したら、[作成] ボタンをクリックします。これで Wiki が作成されます。SharePoint Server で Wiki を使用する方法の詳細については、TechNet Magazine 2007 年 1 月号の記事「作業上での Wiki の使用」を参照してください。**

SharePoint ライブラリ

パブリック フォルダは、ユーザーが簡単にアクセスしてドキュメントを共有できる集中管理された場所を提供するドキュメント リポジトリとしての役割を果たしています。Exchange Server の管理者たちは、年月を経て、この使用方法がパブリック フォルダを扱いにくいものにした主要な原因の 1 つであるという結論にたどり着きました。このパブリック フォルダの用途は、パブリック フォルダのデータベースに関連する Exchange Server の I/O を増加させるだけでなく、Exchange Server インフラストラクチャ全体のレプリケーションにも影響を与えます。SharePoint ライブラリは、Exchange およびそのリソースへの要求を解放するための優れたオプションを提供します。

SharePoint ライブラリは、SharePoint サイト内にある場所であり、ユーザーは、ここにファイルを格納して管理することができます。SharePoint ライブラリには、画像、Wiki ページ、フォーム、およびドキュメントなど複数の種類があります。パブリック フォルダの代替として最適なのは、ドキュメント ライブラリです。ドキュメント ライブラリは、SharePoint サイト内でのドキュメントの格納、管理、および作成をサポートします。

ドキュメント ライブラリには、さまざまな種類のファイルを格納できますが、セキュリティ上の理由により、既定では、実行可能ファイルやスクリプトなど、特定種類のファイルの格納は制限されています。ただし、この制限は、SharePoint サーバーの全体管理サイトの [サーバー構成の管理] セクションで変更できます。

MOSS の既定のインストールには、カスタマイズできるドキュメント ライブラリが含まれています。ほとんどの組織では、さまざまな事業単位をサポートするのに複数のライブラリを作成する必要があります。SharePoint に付属するツールを使用すると、この作業は簡単にできます。たとえば、人事部用のドキュメント ライブラリを展開するには、[すべてのサイト コンテンツの表示] を選択し、[作成] をクリックし、[ドキュメント ライブラリ] を選択します ([ドキュメント ライブラリ] は [ライブラリ] にあります)。次のページには、構成する必要がある多数の設定が表示されます。ライブラリの名前と説明、ライブラリをクイック リンク セクションに含めるかどうか、バージョン管理を有効にするかどうか、ライブラリで直接作成された新しいドキュメントの既定の形式などを指定します。

特に注意する必要があるのは、ドキュメントのバージョン履歴のオプションです。既定では、このオプションは、無効に設定されています。ただし、バージョン管理は、多くの環境で有益かつ適切なオプションです。この機能は、ドキュメントの履歴を格納するだけでなく、いつ、だれが変更したのかということも追跡し、以前のバージョンを参照したり、復元したりする機能も提供します。

図 6 は、新しく作成されたドキュメント ライブラリにいくつかのドキュメントがアップロードされた状態を示します。ドキュメント ライブラリを作成したら、Microsoft Outlook とエクスプローラから、このリポジトリを使用できるようにすることができます。Outlook は、ドキュメント ライブラリのコンテンツをオフラインで利用することを可能にし、ネットワークにアクセスできないユーザーに読み取り専用のコピーを提供します。エクスプローラによるアクセスでは、マイ ネットワークを利用します。ドキュメント ライブラリの URL を入力することで、ユーザーにアクセスを提供できます。大規模な環境では、このようなネットワーク プレースの展開にグループ ポリシーを使用することを検討してみてください。

図 6 アップロードされたドキュメントを含むドキュメント ライブラリ

図 6** アップロードされたドキュメントを含むドキュメント ライブラリ **

高度な設定

SharePoint Server は、パブリック フォルダよりもはるかに優れた機能セットを提供します。SharePoint Server では、パブリック フォルダで提供される一般的な機能以外に、一般的な用途を拡張する強力な機能を提供します。このような拡張機能には、次のようなものがあります。

  • バージョン履歴
  • 承認の制御
  • チェックアウトの手続き
  • ワークフローの制御
  • ドキュメントの保持期間ポリシー
  • 監査
  • RSS

このような機能は、エンタープライズ コンテンツ管理プラットフォームには必要不可欠であり、SharePoint では管理者が簡単に使用できる堅牢なフレームワークを提供します。この拡張機能は、予定表、タスク、ディスカッション掲示板、ドキュメント ライブラリなど、多くの SharePoint Server 機能で有効にできます。

拡張機能を構成するには、[設定] メニューをクリックし、設定オプションを選択します。たとえば、[ドキュメント ライブラリの設定] をクリックします (図 7 参照)。このオプションを選択すると、設定ページが表示されます。このページでは、利用できるすべての構成オプションとユーザー設定オプションが表示されます。たとえば、[全般設定] の [バージョン設定] では、バージョン履歴を構成できます。

図 7 設定オプションを選択して強化機能を構成する

図 7** 設定オプションを選択して強化機能を構成する **

既に説明したように、この機能は、いつ、だれが変更したのかなど、ドキュメントの変更に関する記録を提供し、ユーザーは必要に応じて以前のバージョンを参照したり、復元したりすることができます。また、SharePoint Server で格納するバージョンの数を制御することもできます。この制限に達すると、アイテムは SharePoint Server のごみ箱に入れられることなく完全に削除されます。

バージョン設定セクションでは、コンテンツの承認やチェックアウトの要件を構成できます。コンテンツの承認を有効にすると、送信されたアイテムは、承認されるまで他のユーザーが利用することはできません。承認されていないアイテムは承認待ちの状態になります。チェックアウト プロセスでは、複数のユーザーが同時に 1 つのファイルを操作することを禁止することでコンテンツの制御機能を提供しています。

ワークフローは、パブリック フォルダにない SharePoint Server が提供する有益な機能の一例です。基本的に、ワークフローは、企業運営の合理化を図るのに役立つ業務プロセスの構造化されたアプローチを提供します。SharePoint で実装されるワークフローは、指定のプロセスを介してドキュメントの移動を自動化する、事前に定義された一連のタスクです。プロセスは、各ステップが次のステップに進む前に完了する必要のある反復的なプロセスにしたり、特定のタスクをいつでも完了できる並列的なプロセスにすることができます。SharePoint Server には、次の既定のワークフローが用意されています。

  • 承認
  • フィードバックの収集
  • 署名の収集
  • 廃棄承認

情報管理ポリシーは、法規制や業務上の要件に準拠するのに使用できます。ポリシーは、ドキュメントの管理に関する一連の規則で構成されています。SharePoint Server では、独自の規則もサポートしますが、次の既定の規則が用意されています。

  • 監査
  • 有効期限
  • ラベル
  • バーコード

監査は、サイトの設定で定義した一連の操作に基づいてイベントをログに記録します。ドキュメントを開く、アイテムやそのプロパティのダウンロードと参照、ドキュメントの編集、ドキュメントのチェックアウトとチェックイン、アイテムの移動とコピー、アイテムの削除と復元などのような操作を追跡できます。

コンテンツの有効期限により、組織で施行しているデータの保持期間に関するポリシーに準拠して、コンテンツを削除できます。このコンテンツの期日には、特定の日時を指定したり、特定のイベント (ドキュメントの作成など) が発生してからの期間を指定したりすることができます。

ラベルは、印刷機能と組み合わせて使用して、印刷物にテキストを追加します。実際、このポリシーは、さまざまな用途に使用できます。たとえば、法務部による規定に準拠するために、人事部で共有しているドキュメント ライブラリにあるすべてのドキュメントについて、機密情報である通知を含めることを条件付けることができます。

バーコードは、オンライン ドキュメントと印刷したドキュメントの両方について、正式な追跡方法を提供します。SharePoint が、すべてのドキュメントに一意の ID を作成するので、ユーザーはバーコードの画像をドキュメントに挿入できます。

SharePoint Server が提供するもう 1 つの重要な強化機能は、RSS フィードとの統合です。予定表、連絡先、ドキュメント ライブラリ、およびディスカッション掲示板では、ユーザーがサブスクライブできる RSS フィードが提供されます。ユーザーは自動的に配信される更新情報を受け取って、日々の役割を把握することができます。RSS フィードの受信に必要なのは Outlook 2007 などの RSS リーダーだけです。

まとめ

Microsoft Office SharePoint Server 2007 は、エンタープライズ クラスの機能を提供し、Exchange Server のパブリック フォルダに代わる強力な機能を提供します。堅牢な管理フレームワークにより、予定表、連絡先、およびドキュメントを共有するためのソリューションを簡単に実装できます。また、ディスカッション フォーラム、ブログ、Wiki など、さまざまなコミュニケーションの場を設けることができます。

Alan Maddisonは、MTI Technology Corporation でマイクロソフト テクノロジの導入支援を担当しているシニア コンサルタントです。主な担当分野は、Active Directory、Exchange Server、および仮想化です。

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