Exchange Server 2007

Exchange と Outlook を併用するメリット

Michael Khalili

 

概要:

  • 設定の簡略化
  • ボイス メール、ファックス、電子メールの統合
  • 準拠用の管理フォルダ

長年にわたって、Microsoft Exchange Server と Outlook は何百万人ものユーザーに信頼性の高い電子メールを提供し、共同作業や予定表の管理を支援し、連絡先の整理を容易にしてきました。この 2 つの組み合わせでこれ以上何ができるのか疑問に思う方もいるかもしれません。

Exchange Server 2007 と Microsoft Office Outlook 2007 がまもなくリリースされます。この 2 つを併用すると、コミュニケーションとコラボレーションの分野が飛躍的に向上します。

Exchange Server 2007 と Office Outlook® 2007 によって提供される機能強化は、Outlook クライアントを起動すればすぐにわかります。以前のバージョンでは、ユーザーは Exchange メールボックス サーバーの名前を知っている必要があり、これには多くのユーザーが苦労しました。このために、頻繁にヘルプデスクに電話をしたり、初期化のための複雑なスクリプトを用意したりすることになり、効率的なメッセージング環境の実行にコストと複雑さを増大させました。Exchange の自動検出 Web サービスを使用すると、クライアントがドメインに参加していれば Outlook によって自動的にアカウントが構成されます。クライアントがドメインに参加していない場合にユーザーが入力する必要があるのは、名前、電子メール アドレス、およびパスワードだけです。それ以外は Outlook と Exchange によって割り出されます (図 1 参照)。

図 1 アカウントの設定

図 1** アカウントの設定 **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

同様に、昔 (と言ってもほぼ差し支えないと思いますが) は、Outlook の初回使用時に設定が必要なだけでなく、メール サーバーが変わるたびに再構成が必要でした。メールボックスの移行が迫っているという警告の電子メールが送信されても、忙しい従業員たちは差し迫った移行に関してほとんど注意を払わず、ある朝出社してみたら Outlook からロックアウトされていた、などということが起こっていました。ここでまたヘルプデスクに電話することになるのです。これも自動検出 Web サービスによって解決されます。ユーザーのメールボックス サーバーが変更されると、Outlook は古い構成が無効になったことを認識し、自動検出 Web サービスに再び照会して、クライアントを新しいメールボックス用に再構成します。この一連のプロセスはエンド ユーザーがまったく意識することなく処理されます。

予定表を作り直す

これまでは、ほとんどの予定表ロジックは Outlook に備わっていました。会議の更新はそれぞれ個別の会議出席依頼として扱われていたので、間違った順序で通知が届く場合がありました。会議の更新が 2 件立て続けに送信され、受信者が 2 件目の更新を 1 件目より先に受け取った場合、受信者は古い情報を予定表に入れてしまう可能性があります。さらに、Smartphone や PDA を使用して Outlook の情報にアクセスすると、データを表示する方法によって空き時間情報が異なる場合がありました。

解決策は、すべての予定表ロジックを Outlook クライアントから Exchange Server 2007 に移すことでした。会議出席依頼がサーバーで受信されると、ユーザーがその予定を承諾または辞退するまで、その会議は自動的に仮の予定として予定表に配置されます。その会議の時間や場所の変更が受信されると、会議は自動的に更新され、ユーザーが誤って承諾しないように、古い出席依頼は自動的に古い情報として記録されます。適切な最新の会議だけが存在するようにするため、このロジックはすべてのクライアント (Office Outlook、Outlook Web Access、Outlook Mobile、および他のサードパーティのクライアント) で一貫したものになります。

予定表がきわめて正確なので、ユーザーの生産性を高める新しいツールの提供が可能になります。これまでは、多数の忙しい従業員のために会議を設定することは容易ではありませんでした。ユーザーは会議のための空き時間を手動で探す必要がありました。通知された複数の日にちの間をスクロールして、全出席者にとって都合のよい時間を見つけなければならなかったのです。Outlook 2007 のスケジュール アシスタントを使用すると、図 2 に示されるように、全員にとって都合のよい時間が探し出されます。必須出席者、任意出席者、および希望する部屋やリソースを入力すると、スケジュール アシスタントによって会議に最適な複数の日にちが色付きで表示されます。日にちを 1 つ選択すると、同じ構成を使用して、その日の中で最も都合のよい時間が探し出されます。

図 2 スケジュール アシスタント

図 2** スケジュール アシスタント **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

スケジュール アシスタントは、まず必須出席者、次に任意出席者、最後に部屋やリソース、という優先順位に従って、会議に最適な時間を決定します。スケジュール アシスタントを使用すると、フレックス タイム制や異なるタイム ゾーンなどの問題の処理も簡単になります。ユーザーは、毎朝の出社時間と一日の終わりの退社時間を決めて、自分の勤務時間を個別に設定することができます。したがって、午前 9 時や 10 時まで出社しない朝寝坊の人は、この時刻が自分の勤務開始時間になるように設定することができます。他のユーザーが会議のスケジュールを設定する場合に、午前 8 時などの早めの時刻は候補に挙がらなくなります。2 つの異なるタイム ゾーンのグループ (たとえばロンドンのグループとロサンゼルスのグループ) が会議をする必要がある場合、両グループの勤務時間の中で、重なる時間帯だけが候補として挙げられます。どちらかのグループは会議の時間が午前 2 時になるなどということなく、ロンドンのユーザーは午後遅くに、ロサンゼルスのユーザーは朝一番に会議をすることになります。

干し草の山の中から針を探す

平均的なユーザーの受信トレイに届く電子メール メッセージの数は、年々、驚くべきペースで増加しています。かつては、一般的な職場のメールボックスに格納されているメッセージは数百ほどでしたが、今では 1 日でそれと同数のメッセージが届くユーザーもいます。ビジネスの運営にとって重大な多くの情報が、この膨大なメッセージに埋もれてしまいます。適切な情報を必要なときに見つけることは、かなりの難題になります。

Office Outlook 2007 と Exchange Server 2007 の検索機能は、以前のバージョンと比較して大幅に向上しました。ユーザーがキャッシュ モードの場合もオンライン モードの場合も、同じ検索アルゴリズムがメッセージに適用されます。オンライン モードの場合は、検索クエリが Exchange サーバーに送信され、Exchange サーバーで検索が実行されます。Exchange Server 2003 のインデクサよりも最高 35 倍の速度の Exchange コンテンツ インデクサを使用して、メッセージをすばやく検索、取得することが可能になります。キャッシュ モードの場合は、Windows® デスクトップ サーチ 3.0 に基づいたクイック検索が使用され、インデックス エンジンが強化されて CPU 時間が短縮されます。図 3 に示すように、検索は、件名、本文、宛先、差出人の各フィールドにある文字列だけでなく、添付ファイルにある文字列についても実行することができます。

図 3 重要な電子メール メッセージを検索する新しい方法

図 3** 重要な電子メール メッセージを検索する新しい方法 **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

ユニファイド メッセージングを使用してあらゆる場所からアクセスする

Exchange Server 2007 の組み込みコンポーネントである Exchange ユニファイド メッセージングでは、電子メール、ボイス メール、ファックスなど、ビジネス上のあらゆる種類の通信が 1 つの受信トレイに届きます。従来のシステムでは、ボイス メールを利用するには電話、電子メールを利用するにはコンピュータ、ファックスを利用するには専用のファックスが使用されています。Exchange ユニファイド メッセージングを使用すると、ユーザーは特定の時間や場所でのニーズに最適なクライアントを選択することができます。Outlook 内では、ボイス メール メッセージとファックス メッセージが、受信トレイの中で電子メール メッセージとまったく同列に表示されます。ボイス メール メッセージを選択すると、メッセージにはプレーヤーが埋め込まれており、閲覧ウィンドウから直接メッセージを再生できるようになっています (図 4 参照)。

図 4 Outlook でボイス メール メッセージを再生する

図 4** Outlook でボイス メール メッセージを再生する **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

また、Outlook では、関連付けを考慮してメッセージを処理することができます。通常、ボイス メールを聞くときは紙にメモを取ります。これらのメモはメッセージと関連付けされていないので、なくなってしまうことがあります。これでは効率的なコミュニケーションとはとても言えません。Exchange ユニファイド メッセージングを使用すると、Outlook の中で直接メモを取ることができます。メモはメッセージと共に保持され、検索可能なテキストとしてインデックスが作成されるので、常に該当するボイス メール メッセージと関連付けて表示されます。そのため、Exchange Server 2007 や Office Outlook 2007 の高度な検索を使用してすぐに見つけることができます。

また、Outlook では、多くのボイス メール オプションを管理することができます (図 5 参照)。たとえば、ユーザーはボイス メールのメールボックスの暗証番号 (PIN) をクライアントから変更できます (PIN の再設定はボイス メール システムに関するヘルプデスクへの電話の原因の多数を占めます)。Outlook のボイス メール オプションを使用すると、ユーザーは新しい PIN を生成し自分宛てに電子メールで送信することができます。この PIN を使用して Exchange ユニファイド メッセージングの電話インターフェイスである Outlook Voice Access に 1 回アクセスすることができ、そこで PIN の変更を求められます。

図 5 PIN 再設定オプションを含むユニファイド メッセージング

図 5** PIN 再設定オプションを含むユニファイド メッセージング **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

セキュリティの確保と保護のために

現在、企業のメッセージング環境は多くの脅威に直面しています。Outlook と Exchange は連携して、このような脅威に対処します。スパムもそんな脅威の 1 つですが、Office Outlook 2007 ではスパムへの新しい対処方法である Outlook 電子メールの消印がサポートされます。Outlook によって送信メールにちょっとした演算パズルが実行され、このパズルの解答がメッセージに付加されます。そして結果は Exchange でチェックされます。これらの演算パズルは、正当なメールが一般的にそうであるように、単発で実行された場合は CPU 時間をほとんど使いませんが、スパム送信者がコンピュータで大量の電子メールに対してこのようなパズルを作成しようとすると、コンピュータに非常に大きな負荷がかかります。したがって、Outlook 電子メールの消印が押されたメッセージは押されていないメッセージよりも正当である可能性がはるかに高く、Exchange が各電子メール メッセージの正当性を判断する際にはこれが考慮されます。

スパムのような古くからの脅威に加えて、最近の規制制度もメッセージング システムの要件を変化させています。サーベンス オクスリー法、HIPAA、バーゼル II などの法令では、記録の保持や破棄に関して厳密なルールが定められています。この新たな要求を満たすために、Exchange と Outlook では管理フォルダが導入されています。管理フォルダは管理者によって特定の種類のメッセージ用に設定されます。エンド ユーザーが Outlook を使用すると、これらのフォルダは、何が格納されるべきかについての説明付きで表示されます (図 6 参照)。Exchange のトランスポート ルールを使用して、メッセージを自動的に特定のフォルダに送信することもできます。特定の管理フォルダでメッセージがそのフォルダのアーカイブ ポリシー、保存ポリシー、および有効期限ポリシーを保持すると、それらのメッセージは自動的に組織のポリシーと整合性の取れた方法で処理されます。

図 6 電子メールの準拠規則が適用される管理フォルダ

図 6** 電子メールの準拠規則が適用される管理フォルダ **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

どんなに注意していても、規則違反が発生してしまうことはあります。このような場合には、迅速な特定と修復が不可欠です。Exchange に用意されている高速検索は、コンプライアンス担当者が、規則違反を特定する手がかりになりうるメッセージを見つけるための非常に重要なツールとなります。このような違反を見つけ出し修正するために、メールボックス間を横断して検索を実行することができます。

より管理しやすい環境

Exchange Server 2007 と Office Outlook 2007 を併用すると、以前のバージョンよりもはるかに向上したメッセージング システムが提供されます。きわめて重要なビジネス コミュニケーションのすべてを 1 か所に集め、検索しやすく、設定しやすく、特別な設定なしでもより安全で規則に準拠したものにします。2 つを併用することで、一歩進んだコラボレーションとコミュニケーションが可能になります。

Michael Khaliliは、Exchange Server のプロダクト マネージャとして、クライアント アクセスとユニファイド メッセージングを担当しています。特に、Outlook と Exchange の統合を担当しています。

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