SharePoint

強力なアンケート用インフラストラクチャを構築する

Jim Bradley

 

概要:

  • アンケート ソリューションを計画して実装する
  • SharePoint ライブラリにアンケート結果を収集して処理する
  • パフォーマンスとセキュリティの問題を管理する

情報なしに良い判断をすることなどできません。下した判断がビジネスに影響を与える場合は、勘ではうまくいきません。これは、チームのパーティ会場を決める場合にも、

新製品をリリースするために人材の 50% の再配置を検討する場合にも当てはまります。では、どうすればこうした情報を入手できるのでしょうか。

アンケートは、自社製品に対する顧客満足度から、前回のチーム ミーティングで手配したサンドイッチが好評であったかどうかなど、あらゆるトピックについてフィードバックを収集するうえで有効かつコスト効率の良い方法です。アンケートによって、将来の製品、システム、またはプロセスの改善や開発に必要な概略情報を得られます。問題は、IT プロフェッショナルであるあなたが、データを収集し、情報を意味のある形で使用できるように保存するアンケート システムをどのように実装するかです。

おそらく、このようなデータの収集、構造化、および分析に必要なツールは、既に所有されていると思います。2007 Microsoft® Office system では、このような、しかも非常に使いやすいツールを提供しています。実際、アンケートを実施する方法にはさまざまな方法があります。大切なことは、ニーズに合った方法を選ぶことです。たとえば、電子メール ベースのアンケートは、少数の回答者を対象とし、重要性の低いデータを扱う、即興でリアルタイムのデータ収集を行う方法として適しています。詳細については、補足記事「電子メールを使用して簡易アンケートを実施する」を参照してください。一方、データベースを使用するアンケートは、多数の回答者を対象とし、ミッション クリティカルなデータを扱う、より複雑なデータ収集に適しています。このトピックの詳細については、補足記事「データベースによるアンケート ソリューションを構築する」を参照してください。

この記事では、より包括的で柔軟な "SharePoint® ベースのオンライン アンケート" のソリューションを紹介します。このソリューションは、ミッション クリティカルなアンケートにも、ミッション クリティカルでないアンケートにも適しており、複雑さのレベルも問いません。SharePoint のアンケートは、Web ベースのアンケートなので、Web ブラウザを利用できるユーザーであればだれでも回答できます。モバイル デバイスもサポートされています。また、SharePoint のアンケートでは、記名または匿名での回答が可能で、リアルタイムで結果を入手でき、分析ツールを利用することもできます。

このようなアンケートは、Windows® SharePoint Services 3.0 (WSS) と Forms Server および InfoPath® を組み合わせるか、Microsoft Office SharePoint Server 2007 (MOSS) と Forms Services および InfoPath® を組み合わせて実装します (これらのテクノロジの説明については 図 1 を参照してください)。どちらのシナリオも基本的には同じ機能を提供するため、ここでは、後者の組み合わせを基に解説します。各 SharePoint 製品と各製品の機能の包括的な比較表については、「Microsoft Office SharePoint Server 2007 製品比較表のダウンロード」(office.microsoft.com/en-us/sharepointserver/HA101978031033.aspx) を参照してください。

Figure 1 SharePoint アンケートを構成するマイクロソフト テクノロジ

テクノロジ 説明
Microsoft Office InfoPath 2007 Microsoft Office InfoPath 2007 は、フォームを作成して情報を収集するツールです。詳細については、office.microsoft.com/infopath を参照してください。
Windows SharePoint Services 3.0 SharePoint Team Services の後継である Windows SharePoint Services 3.0 は、拡張された SharePoint アプリケーションを作成する基盤になります。詳細については、microsoft.com/technet/windowsserver/sharepoint/techinfo/overview.mspx を参照してください。
Microsoft Office SharePoint Server 2007 Microsoft Office SharePoint Server 2007 (旧 SharePoint Portal Server 2003) は、2007 Office system クライアントによって SharePoint アプリケーションのコンテンツを生成および利用できるようにするサーバー側のインフラストラクチャを提供します。詳細については、microsoft.com/sharepoint を参照してください。
InfoPath Forms Services、Microsoft Office Forms Server 2007 InfoPath Forms Services を使用すると、InfoPath がインストールされていなくても Web ブラウザを使用して InfoPath フォームに記入できるため、複数のプラットフォームや複数のブラウザに対応できるアンケートを実装できます。Forms Services には Windows SharePoint Services 3.0 が必要ですが、同じ機能は Microsoft Office Forms Server 2007 というスタンドアロン製品でも提供されています。Forms Services の詳細については、microsoft.com/ms540731 を参照してください。Forms Server の詳細については、office.microsoft.com/en-us/formsserver/FX100490391033.aspx を参照してください。
   

計画と実装

アンケートをデザインするときは、事前にさまざまな要因を検討する必要があります。これには高度な分析が必要になるため、時間をかけて、綿密なアンケート計画を策定してください。計画の初期段階では、問題の範囲と取得するデータの種類を定義し、使用する必要があるテクノロジを決定し、予算と管理面の要件を特定します。この作業が済んだら、実装に取り掛かることができます。一般的なワークフローは、アンケート フォームのデザイン、フォームの発行、回答の収集と検証、データの集約と分析、結果のレポートです。

アンケートの実装ワークフローには、通常、少なくともアンケートのデザイナ、回答者、およびアナリストが関与します (図 2 参照)。もちろん、アンケートのワークフローの複雑さはワークフローによって大幅に異なります。たとえば、全社規模のアンケートでは、デザインの編集と承認のプロセスを何度か繰り返すことになるでしょう。また、回答者に対する自動通知を使用したり、さまざまな形でのサポートやトラブルシューティング、および管理者がリアルタイムで結果を確認できる機能を提供したり、最終的な分析結果を決定して報告するための明確なプロセスが用意される可能性が高いでしょう。このような複雑なワークフローには、ワークフローとレポート機能をサポートする Web ベースのシステムが不可欠です。

図 2 フォーム デザインからデータ分析までのアンケート ワークフロー

図 2** フォーム デザインからデータ分析までのアンケート ワークフロー **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

包括的なソリューションの検討事項

包括的なアンケート ソリューションが満たすべき重要な要件は多数あります。このようなソリューションは、IT 部門のサポートを最小限にとどめ、プログラミング技術を必要とすることなく、個々のチームや部署がアンケートを作成および配布して、結果を収集できるものである必要があります。フォーム作成ツールは、使いやすい WYSIWYG 型のインターフェイスのほか、パイプ、分岐、条件ロジックを支援する機能を豊富に備えている必要があります。また、言うまでもなく、アンケート フォームの作成ツールは、規模や複雑さにかかわらず、あらゆるアンケートに対応できる必要があります。

さらに、アンケートを Web サーバー上で実行し、中央管理された SQL Server® データベースと統合し、各部署が専用の SQL データベース サーバーを管理しなくて良い状態にする必要があります。インターネットにアクセスできる回答者が、標準準拠の任意のブラウザからアンケートに回答できる必要があります。

アンケート プロセスは、ワークフローに簡単にリンクできるもので、セキュリティを損なうことなく、ビジネス ニーズを満たすことができる必要があります。また、多くの組織では、アンケート ソリューションで多言語がサポートされる必要があります。

MOSS 2007、WSS 3.0、および InfoPath 2007 を併用すると、このような要件をすべて満たす統合ソリューションを作成できます。図 3 に、SharePoint ソリューションを構成するさまざまなコンポーネントを示します。ただし、この包括的なアンケート ソリューションについて説明する前に、WSS 単体で実現できる機能について簡単に説明します。その後、ソリューションに MOSS と InfoPath を追加することで得られる、付加的な機能について説明します。

図 3 SharePoint ソリューションのコンポーネント

図 3** SharePoint ソリューションのコンポーネント **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

WSS 単体で作業する

他のコンポーネントなしでも、WSS を単体で使用してアンケートを作成して実装することができます。実際、WSS には、プロセスを容易にするアンケート テンプレートが含まれています。アンケートを作成するには、[スタート] メニューをクリックし、[すべてのプログラム] をポイントします。次に、[管理ツール] をポイントし、[SharePoint 3.0 サーバーの全体管理] をクリックします。ドロップダウン リストから、[サイトの操作] をクリックして、[作成] をクリックすると、[作成] ページが表示されます。このページには、[ライブラリ]、[通信]、[リスト]、[カスタム リスト]、[Web ページ] という見出しがあります。各見出しの下には、テンプレート オプションが表示されています。[リスト] 見出しにある [アンケート] をクリックします。

この時点で、WSS によってアンケート作成プロセスの手順が順を追って示されます。自由回答形式の質問 (オープン クエスチョン) や回答が限定される形式の質問 (クローズド クエスチョン) を作成したり、質問を無回答にできるかどうかを指定したりできます。また、回答に応じて別の質問へと回答者を誘導する分岐ロジック アンケートを作成することもできます。アンケートは匿名でも、必要に応じて、回答者を特定できるようにすることもできます。また、アンケートにワークフローを割り当てることもできます。

アンケートはブラウザ ベースなので、アンケートの作成や回答に特別なソフトウェアは必要ありません。回答者がアンケートに回答するのに必要な作業は、SharePoint サイトにアクセスして、フォームに回答を入力するだけです。アクセス許可は親サイトから継承されますが、SharePoint の [操作] メニューから直接編集することができます。アンケートの回答は SharePoint アンケート サイトに保存され、結果は一覧やグラフ形式で表示したり、Excel® にエクスポートしたりすることができます。

繰り返しになりますが、(図 4 のプロセスによる) このソリューションは、WSS だけを使用して実現できるもので、その他のソフトウェアは必要ありません。既に適切にデザインされた SharePoint サイトが運用されている場合は、各部門は IT 部門の支援をほとんどまたはまったく必要とせずに、アンケートを作成して実装できます。

図 4 Windows SharePoint Services ベースのアンケート

図 4** Windows SharePoint Services ベースのアンケート **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

WSS 単体のプロセスの制限事項は、アンケートをカスタマイズする必要がある場合に明らかになります。WSS では、さまざまな既定の ASPX ページ (AllItems.aspx、DispForm.aspx、EditForm.aspx、NewForm.aspx、overview.aspx,、および summary.aspx) を使用してアンケート リストを作成します。WSS の既定以外のパラメータを使用すればページをカスタマイズすることはできますが、ほとんどの機能は、容易にはカスタマイズできない Web パーツにより提供されています。また、WSS 単体のソリューションが最適であるのは、会社の ERP システムなど、外部データソースと統合する必要がないアンケートです。

アンケート ソリューションを拡張してカスタムの UI を組み込んだり、他のデータ ソースと統合する必要がある場合は、MOSS、WSS、および InfoPath を組み合わせたソリューションの使用を検討してください。

包括的なアンケート ソリューション

MOSS には WSS を拡張する多数の機能がありますが、ここでは 1 つのコンポーネント InfoPath Forms Services のみについて説明します。InfoPath Forms Services に関しては、InfoPath のインストールが必要になるのは、アンケート デザイナのみです。他のユーザーがアンケートにアクセスする場合は、Web ブラウザを使用できます。

デザイナが、InfoPath で、ブラウザを使用してフォームに入力できるようにするオプションを選択すると、どの標準準拠の Web ブラウザでも表示できるフォームが作成されます。Web ベースのフォームは、InfoPath フォームと同様に機能しますが、高度な InfoPath 機能 (ユーザー ロール、縦書きテキスト、ダイアログ ボックスの動作、高度なコントロールなど) を使用できる点が異なります。フォームは、作成されると SharePoint ライブラリまたはリストに発行されます。また、デザイン チェックと呼ばれる別の InfoPath 機能により、アンケート フォームの InfoPath Forms Services との互換性が確保されます。

InfoPath フォームのライブラリとブラウザ対応フォームのライブラリの間に、違いはありません。どちらの場合も、フォーム テンプレートは .xsn ファイルです。InfoPath Forms Services によってフォームがブラウザに表示されるか、ファイルがクライアントにダウンロードされて、直接 InfoPath で表示されます。アンケート デザイナが少なくとも SharePoint サイトに対する投稿者アクセス許可を保持している場合は、SharePoint ドキュメント ライブラリを使用して、フォーム テンプレートを発行できます。

回答者が標準準拠のブラウザを使用している場合は、InfoPath Forms Services アンケートに回答でき、回答はシームレスに SharePoint サーバーに返されます。データは SharePoint 内で安全に保存、解析、共有、および分析 (Excel、SQL、または他のネットワーク上で利用できるツールを使用) できます。このような作業はすべて、最低限の IT 管理者による支援を受けるだけで実現できます。

ポストバックとパフォーマンスの問題

ただし、パフォーマンスの問題が発生する可能性があります。たとえば、ブラウザ対応フォームは、SharePoint サーバーのシステム アカウントのコンテキストで実行されます。つまり、フォームにコードやデータ接続が含まれていると (図 5 参照)、コードまたはデータ接続がクライアントではなくサーバー上で実行されます。また、複雑なフォームではサーバーにデータを頻繁にポストバックしなければならない可能性があり、サーバーのワークロードが増加します。

図 5 追加のデータ接続がある InfoPath Forms Services ベースのアンケート ソリューション

図 5** 追加のデータ接続がある InfoPath Forms Services ベースのアンケート ソリューション **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

アンケートでポストバックが多く使用されるほど、フロントエンド Web サーバーの負荷が高くなります。ただし、回答に基づく分岐を実装する場合など、ポストバックを使用せざるを得ない場合もあります。システムに悪影響が出る可能性を最小限に抑えるため、アンケート デザイナはポストバックの問題を認識し、ポストバックの使用を回避できない場合にアンケートを実装する最適な方法を理解しておく必要があります。たとえば、ユーザーが [次へ] ボタンをクリックするとサーバーにデータがポストバックされるウィザードのようなアンケートを使用します。これにより、ボストバックの回数を減らすことができます。

InfoPath Forms Services では、サーバー上で現在アクティブな各フォームの状態を維持する必要があります。既定のセッションのタイムアウトは 60 分です。つまり、記入に 60 分より長くかかる複雑なアンケートで、その間ポストバックが発生しないと、サーバーのセッションが閉じられます。 入力されていても送信されていないデータは失われ、回答者は最初からやり直す必要があります。

これは、多数の回答者が同時に同じアンケート フォームに回答を入力しているときや、アンケートに大規模なデータ ソースが使用されていたり、添付ファイルが含まれていたりするときに、大きな問題になります。詳細については、「InfoPath 2007 フォームのパフォーマンスを改善する」(msdn2.microsoft.com/bb380251) を参照してください。

セキュリティの考慮事項

詳細なセキュリティについては、この記事の範囲外ですが、いくつかセキュリティの考慮事項について説明しておきます。まず、SharePoint と InfoPath 2007 をマイクロソフトが 2002 年初めに採用した Microsoft Trustworthy Computing (信頼できるコンピューティング) 活動に従って構成されています。InfoPath フォームには、3 つのセキュリティ レベルがあり、制限あり、ドメイン、および完全信頼のいずれかのレベルを設定できます。また、既定では、InfoPath によって自動的に推奨されるセキュリティ レベルが特定されて、フォームに適用されます。

デジタル署名機能も、フォームが特定のユーザーによって作成または入力され、改変されていないことを保証するうえで有効です。また、Information Rights Management (IRM) を使用すると、テンプレートや入力済みのフォームへのアクセスを制限できます。悪意のあるユーザーが有害なコードを含むフォームをアップロードしたり、SharePoint プラットフォームを使用してデータ接続を利用し、他のシステムに攻撃を仕掛けたりしないように、InfoPath では、ユーザーが展開したフォームと管理者が展開したフォームが区別されます。フォームにカスタム コードが含まれておらず、ドメイン間のデータ接続を制限するドメイン セキュリティ レベルを使用しているフォームであれば、ユーザーがフォームをアップロードできます。大半のアンケート ソリューションでは、このような構成で十分です。

アンケート デザイナが、完全信頼セキュリティ レベルを取得してリソースに無制限にアクセスできるようにする場合、フォームの発行には IT 管理者による承認が必要です。既定では、フォームにマネージ コードが含まれる場合、ドメイン間のデータ接続がフォーム テンプレートに定義されている場合、フォームが中央管理されるデータ接続ライブラリで定義されているデータ接続を使用する場合、およびモバイル デバイスでの表示をサポートするオプションが有効にされている場合は、IT 管理者による承認が必要です。

完全信頼セキュリティ レベルの場合、アンケート デザイナが InfoPath フォームを作成して、フォーム テンプレートを保存すると、テンプレートまたは .xsn ファイルが SharePoint の管理者に、電子メールの添付ファイルとして送信されるか、ネットワーク共有を利用して渡されます。次に、IT 管理者がアンケートの機能とそれに含まれるコードを確認してから、アンケートを運用システムに展開します。IT 管理者は、アンケート テンプレートをサイト コレクションにアップロードし、アンケート テンプレートをアクティブ化することで、展開を完了します。どちらの作業も、WSS のサーバーの管理コンソールの [アプリケーション構成の管理] ページで完了できます。つまり、IT 管理者はフォームの発行作業を各部門に委任しても、フォームが基本的なデータ収集以外の操作を行う場合には、発行プロセスを引き続き監督することができます。

IT 管理者による監督が必要な一般的な状況としては、フォームに既定のデータを入力する必要がある場合やアンケート結果が複数のデータ ソースに送信される場合などがあります。既定では、ドメイン信頼フォーム テンプレートでは、ドメイン間のデータ接続を確立できませんが、この制限を解消するために、以下のような対策を講じることができます。

  • 完全信頼アクセス許可を付与する。
  • データ接続ライブラリのデータ接続を使用して、ドメイン信頼を確立する。
  • 中央管理される接続ライブラリと併せてドメイン信頼を使用する。

完全信頼または中央管理された接続ライブラリを使用する場合は、フォームの発行時に管理者による承認が必要です。ただし、データ接続ライブラリ (DCL) では、サイト コレクション レベルで管理されている DCL を使用して、ユーザーが発行したフォームをドメインの境界を越えて使用できます。この DCL は、各部門で管理することができます。ただし、各部門が独自のサーバー ベースのデータ接続を確立できるようにすると、セキュリティ上の問題になり得ることに注意してください。

最も安全なのは、データ接続を中央管理されている接続ライブラリで定義し、IT 管理者がデータ接続を使用する高度なアンケート フォームを展開する方法です。中央管理されている接続ライブラリは、すべてのサイト コレクションとサーバー ファーム全体で利用できるため便利です。このようにすると、管理者が一元的に認証設定を定義して、ローカルの SharePoint サーバー上にないデータ ソースへのアクセスを管理できます。詳細については、「データ接続、認証、および代替アクセス マッピングについて」(msdn2.microsoft.com/ms771995) を参照してください。

まとめ

アンケートは、どの企業にとっても、どのレベルであっても、ミッション クリティカルな情報 (とミッション クリティカルでない情報) を収集するための強力な手段です。ただし、有効なアンケートを作成するには、適切なツールを使用し、綿密な計画を立て、デザインと技術のバランスを取る必要があります。事前によく計画を練ることは、組織内の各部署がアンケート データを作成、送受信、保存、分析できるソリューションを構築するうえで役立ちます。

最も有効なアンケートは、タイミングよく適切な情報を収集できるアンケートです。必要なときに情報を収集するためには、セキュリティを侵害することなく、部署レベルで、アンケートを簡単に作成および管理できるソリューションが必要です。InfoPath ではほとんどトレーニングなしに使用できる直感的なインターフェイスを採用し、インフォメーション ワーカーが質の高いアンケートを作成できるようにしています。また、InfoPath を使用すると、多くの IT 管理を必要とせずに、質の高いアンケート データを収集できます。

InfoPath 2007 は、WSS および MOSS とシームレスに連携し、複数のプラットフォームや複数のブラウザと互換性のある、機能が豊富で複雑なアンケート ソリューションを容易に構築できるようにしています。これにより、企業は最も重要な資産の 1 つである "情報" を活用できます。

電子メールを使用して簡易アンケートを実施する

即興のアンケートは、少数の回答者からデータをすばやく収集する場合に不可欠なツールです。電子メール ベースのアンケートは、すばやく作成でき、専用のサーバーや IT 部門の支援を必要としないため、このようなリアルタイムの調査には最適です。最も簡単な方法の 1 つは、Microsoft® Outlook® メッセージ内に返信ボタンを埋め込む方法で、アンケートを送受信し、結果を一覧にまとめることができます。

返信ボタンを使用するアンケートを発行すると、アンケートの質問と返信ボタン (ここには選択肢のドロップダウン リストが表示されます) が含まれたメールが受信者に送られます。受信者は、選択肢の 1 つをクリックして、回答します。クリックすると、"返信ボタンの " <選択肢> " を選択しました。" というメッセージのポップアップ ウィンドウが表示されます。このとき、回答を送信するか変更するかを選択できます。

アンケート デザイナまたは委任を受けたユーザーが、個々の回答を電子メールで受け取り、手動で結果を一覧にまとめます。アンケートが多数の受信者に送られる場合は、Outlook で (自動仕分けウィザードを使用して) 自動的に回答を専用のフォルダに振り分けるルールを作成します (図 A 参照)。

図 A 自動的に専用のフォルダに振り分けられたアンケートの回答

図 A** 自動的に専用のフォルダに振り分けられたアンケートの回答 **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

ただし、返信ボタンにはかなりの制限があります。電子メール メッセージにアンケート フォームを挿入すると、さらに多くのデータを収集できますが、このデータを手動で取得してまとめることは困難です。電子メール ベースでより複雑なアンケートを実現する場合は、VBScript を使用して Outlook アンケートをカスタマイズします。フォームをカスタマイズすることで、より複雑で多くのデータを収集して分析しやすくできます。Outlook 2007 の開発者向け機能を利用するには、まず [開発] タブを表示します (図 B 参照)。

図 B Outlook 2007 の [開発] タブ

図 B** Outlook 2007 の [開発] タブ **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

カスタムの Outlook フォームの作成は、一般の Outlook ユーザーの知識では及びません。しかし、InfoPath® 2007 では、カスタム フォームを簡単に実装できる新機能が提供されています。特別な専門知識がなくても、InfoPath フォームとテンプレートを次の 3 通りの方法で作成できます。

  • 既存の Microsoft Word 文書または Excel® スプレッドシートをインポートする。
  • デザイン済みの InfoPath テンプレートをダウンロードして、特定のニーズに合わせて変更する。
  • InfoPath のフォーム デザイン機能を使用して、ゼロからテンプレートをデザインする。

どの場合でも、テンプレートは Outlook に発行し、電子メールで配信できます。InfoPath 2007 と Outlook 2007 を使用すれば、数時間で、IT 部門の支援をほとんどまたはまったく受けることなく、20 項目から成るアンケートを作成し、これを一群のユーザーに電子メールで送信して、Outlook で結果を受信し、Excel スプレッドシートでデータを分析することができます。

このシナリオの唯一の要件は、InfoPath と Outlook がすべてのアンケート対象者のコンピュータにインストールされていることです。InfoPath 2007 により Outlook 2007 の機能が拡張されるため、アンケートの対象者は Outlook インターフェイスから直接アンケートに回答できます。

ただし、InfoPath でサポートされるのは、電子メール ベースのアンケートだけではありません。Web サービスや SQL Server® データベースに対するクエリ実行やデータ送信を行うテンプレートを作成したり、既存の XML ドキュメントまたは XML スキーマをデータ ソースとして使用したりできます。つまり、最低限のトレーニングを受ければ、コードをほとんどあるいはまったく追加せずに、XML の持つ威力と柔軟性を利用できます。

電子メールによるアンケート ソリューションには、目立った欠点がいくつかあります。たとえば、このようなアンケートでは、電子メール アドレスが知られてしまうため、匿名で行うことができません。このため、正直な回答が得られず、結果がゆがむ可能性があります。また、フィッシング攻撃などセキュリティ上の問題もあるため、電子メール ベースのアンケートを使用して収集できる情報の種類や細かさは制限されます。

データベースによるアンケート ソリューションを構築する

多数の回答者を対象とするより複雑な調査では、Outlook® のフォルダを使用して、すべてのデータの管理と分析を行うのは困難なので、電子メール ベースのアンケートは適していません。より堅牢なソリューションは、アンケートの回答をデータベースに送る方法です。データベースが提供する高度なストレージ、インデックス作成、処理、およびレポート機能は、非常に便利です。たとえば、Microsoft® SQL Server® 2005 には、アンケート結果の自動処理に使用できる SQL Server Reporting Services があります。

回答をデータベースに送信する InfoPath フォーム テンプレートを作成するには、まず Access® または SQL Server データベースをネットワーク内に作成する必要があります。データベースを作成したら、InfoPath® で、フォーム テンプレートのデザイン ウィザードを使用して、テンプレートの作成を開始できます。これにより、フォームをデータベースにリンクする手順を導くデータ接続ウィザードが表示されます。InfoPath では、データベース内の情報を使用して、データ ソース クエリとデータ フィールドが作成されます。

ほとんどの場合、トレーニングやサポートをほとんど受けずに、アンケートに回答して送信できます。ただし、(データが直接データベースに渡される) このシナリオでは、回答者のコンピュータに InfoPath と Outlook がインストールされていて、回答者が会社のファイアウォール内で作業をしているか、会社のネットワークに VPN を介してアクセスできる必要があります。

InfoPath のデータ接続ウィザードは、Microsoft SQL Server 2000 以降、または ADOXML をネイティブで使用する Access データベースにしか対応していません。他のデータベースにデータを直接送信することは、サポートされていません。また、InfoPath ではデータベース フィールドにリッチ テキスト コントロールをバインドできず、ラージ バイナリ データ型もサポートされていません。

ネットワーク トポロジが拡大し複雑になるほど、中間 Web サービスにデータを送信してから、データをデータベースに渡す方法が有効になります。また、Web サービスを利用して、アンケート フォームのフロントエンドとデータベースのバックエンドに分離することで、Web サーバーにビジネス ロジックを実装しやすくなります。Web サービスは HTTP または HTTPS 接続経由で実行されるため、回答者がデータをファイアウォールを利用して送信できます (図 C 参照)。ただし、この場合も、回答者のコンピュータに InfoPath 2003 または InfoPath 2007 がインストールされている必要があります。

このシナリオの欠点は、実装に IT 部門の関与が必要になることです。このプロセスの詳細については、この記事では説明しませんが、データベース ソリューションをゼロから構築する場合は、かなりの作業が必要になります。事前の計画、適切なアンケートのデザイン、Web サービスのプログラミング、データベース バックエンドのデザインが必要です。InfoPath 2007 を使用すると、このプロセスのフォーム デザインの作業が簡素化されますが、ソリューション全体では、確かなプログラミングとデータベース デザインの技術が必要です。また、ワークフローや多言語サポートなど、高度な機能を追加すると、実装コストは格段に高くなります。

図 C Web サービスを利用した InfoPath データ フロー

図 C** Web サービスを利用した InfoPath データ フロー **(画像を拡大するには、ここをクリックします)

Jim Bradley は、マイクロソフトのサーバー製品のユーザー支援ドキュメントを専門とするテクニカル コミュニケーション会社 CoyoteTech LLC の所有者です。「Microsoft Exchange Server 2007 エッジ トランスポートとメッセージングの保護」、「Microsoft Exchange Server 2007 での 64 ビットへの移行」、「Microsoft Exchange Server 2003 テクニカル リファレンス ガイド」などのドキュメント プロジェクトを手がけています。

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