ソフトウェアの境界を計画する (Windows SharePoint Services)

この記事の内容 :

  • テスト環境

  • テスト結果

  • 許容範囲のパフォーマンスに関するガイドライン

ここでは、Windows SharePoint Services 3.0 のテスト済みパフォーマンスと容量の制限を理解するために役立つ情報、およびテスト環境とテスト結果についての情報を提供し、許容範囲のパフォーマンスに関するガイドラインを示します。この記事の情報を使用して、計画した展開が許容範囲のパフォーマンスと容量の制限内に収まるかどうかを確認してください。

ここで提供するテスト結果とガイドラインは、Windows SharePoint Services 3.0 の単一インストールに適用されます。インストールにサーバー コンピュータを追加しても、「許容範囲のパフォーマンスに関するガイドライン」の表に記載されているサイト オブジェクトの容量制限は増大しません。一方、サーバー コンピュータを追加すると、サーバー ファームのスループットは増大します。これは、多数のオブジェクトで許容範囲のパフォーマンスを達成するために必要な場合があります。場合によっては、ソリューション内の多数のオブジェクトに対する要求により、複数のサーバー ファームの使用が必要になります。

この記事では、ガイドラインはパフォーマンスによって決定されます。つまり、このガイドラインを超過することはできますが、規模の拡大によってパフォーマンスが低下する場合があります。

特定の環境でパフォーマンスに影響する多くの要因があり、これらの各要素が別の領域のパフォーマンスに影響する可能性があることに注意してください。この記事のテスト結果と推奨事項の中には、それぞれの環境に存在しない機能やユーザー操作に関連しているため、自分のソリューションには適用されないものがある可能性があります。テストによってのみ、独自の環境に関連する正確なデータが得られます。

このガイドのテスト作業には含まれなかった、パフォーマンスおよび容量に影響する可能性があるその他の要因については、「パフォーマンスおよび容量のその他の計画要因 (Windows SharePoint Services)」を参照してください。

テスト環境

次の表は、テスト環境内のコンピュータの仕様の一覧です。

役割 仕様

スタンドアロン コンピュータ

デュアルコア Intel Xeon 2.8 ギガヘルツ (GHz) 64 ビット プロセッサ × 1、2 ギガバイト (GB) RAM

Web サーバー コンピュータ

デュアルコア Intel Xeon 2.8 GHz 64 ビット プロセッサ × 2、4 ギガバイト (GB) RAM

Microsoft SQL Server を実行しているデータベース コンピュータ

デュアル コア Intel Xeon 2.8 GHz 64 ビット プロセッサ × 4、2 GB RAM × 3

クライアント コンピュータ

Pentium III 1.2 GHz プロセッサ、1 GB RAM

ギガビット イーサネット ネットワーク (10 億ビット/秒) がファーム コンピュータ間で使用されました。

テストは、次の表に示す構成で実行されました。

データベース サーバー Web サーバー × 1 Web サーバー × 2 Web サーバー × 3 Web サーバー × 4 Web サーバー × 5 Web サーバー × 6 Web サーバー × 7 Web サーバー × 8

0

X

1

X

X

X

X

X

X

X

X

環境固有のテストも複数のファーム構成で実行されました。環境固有の構成テストの詳細については、「パフォーマンスと容量の要件を予測する (Windows SharePoint Services)」のシナリオ記事を参照してください。

テスト結果

以下のチャート、グラフ、表は、テスト環境で特定のパラメータ セット、ユーザー操作、および負荷条件をどのように実行したかを示しています。これらのテストはすべて、8x1 Windows SharePoint Services ファームで行われました。得られた結果は、すべての Windows SharePoint Services 3.0 環境に適用されます。

注意

今後、追加の構成をテストする予定です。 テスト結果は、使用可能になった時点で公開されます。

異なる操作に対するパフォーマンスの判断基準は、サイト コレクションの使用方法に応じて異なります。たとえば、単一のサイト コレクションには数千のサブサイトを含められますが、コンテナを列挙する操作に対するユーザーの応答時間は、サイト コレクション数が増えるに従って増加し始めます。コンテナを列挙しない他の操作は、許容範囲で実行し続けます。

テスト用に作成されたサブサイトの内訳は次の表のとおりです。

サブサイトの種類 合計の割合 (%)

チーム サイト

55%

ドキュメント ワークスペース

20%

会議ワークスペース

10%

ブログ

10%

Wiki

5%

サイト数の増加に伴う、サイト作成時とサイト列挙時のスループットの変化

特定の操作に対するユーザーの応答時間は、サイト コレクション内のサイト数に伴って増加します。

このグラフは、サイト コレクション内のサイトを列挙する場合と、新しいサイトを作成する場合に、既存のサイト数の増加に伴ってユーザーの応答時間がどのように変化するかを示しています。

ユーザー応答時間とサイト数の分析グラフ

スループットとサイト コレクション数

スループット (RPS で測定) は、ファーム内のサイト コレクション数が増加すると低下します。

次の図は、さまざまなサイト コレクションのホーム ページを閲覧するときに、単一のコンテンツ データベース内のサイト コレクション数が増加するとスループットが低下することを示しています。サイト コレクションの合計数が 2,000 (RPS=265) から 16,000 (RPS=66) に増加するとスループットは瞬時に低下します。その後、サイト コレクションの合計数が 50,000 まで増加すると RPS は約 50 のまま変わらなくなります。

SharePoint の計画 - スループット対サイト数

フラットなドキュメント ライブラリとフォルダを含むドキュメント ライブラリとのスループットの違い

特定の操作に対するスループットは、フォルダ内のアイテム数が増加すると低下します。

次の図は、フォルダ (拡張に不可欠) を効果的に使用したドキュメント ライブラリでアイテムを表示する場合と、フォルダを使用しないドキュメント ライブラリでアイテムを表示する場合でのスループットの違いを示しています。下のグラフに示すように、フラットなライブラリ記憶域を使用した場合、ドキュメント数が増加するとスループット パフォーマンスは低下します。スループットの最も急激な低下は、ドキュメントの合計数が 2,000 以下の場合、つまり 151 RPS (200 ドキュメント) から 63 RPS (2,000 ドキュメント) で起こります。4,000 ドキュメントになると、スループットは約 13 RPS に低下します。つまり、全体のスループットは、ライブラリが空の状態から 90% 以上低下します。

グラフ : RPS とライブラリ内のドキュメント数

次の図は、ドキュメントの格納と整理にフォルダを使用するときのフォルダ ビューと、フラットなライブラリ構造でのインデックス付きのビューとの相対的なパフォーマンスを示しています。各フォルダには、複数のユーザーが作成した 500 のドキュメントが含まれています。このシナリオでは、ビュー内のアイテム数がシステムのパフォーマンスのしきい値を超えない限り、どちらのシナリオでも 100 万のドキュメントまで大幅なスループットの低下はありません。ただし、フォルダを使用したほうがパフォーマンスは優れています。

パフォーマンスとライブラリ内のドキュメント数のグラフ

フォルダ内のアイテム数が増加すると、フォルダ ビューのパフォーマンスは徐々に低下します。上記の結果は、ここでのテストに基づいた測定値であり、環境に応じて結果は異なる可能性があります。

許容範囲のパフォーマンスに関するガイドライン

容量には、スケーラビリティの影響が直接及びます。ここでは、ソリューションを構成するオブジェクトを挙げ、オブジェクトの種類ごとに許容範囲のパフォーマンスに関するガイドラインを示します。制限値を取得した条件と、追加情報が利用できる場合はそのリンクと共に、制限値データが示されます。この記事のガイドラインを使用して、ソリューション計画全体を見直してください。

1 つ以上のオブジェクトに対し、ソリューション計画が推奨ガイドラインを超える場合は、次のいずれかの対応策を実行します。

  • ソリューションを評価して、他の分野で埋め合わせます。

  • ソリューションを構築して展開するときに、これらの領域をテストおよび監視するためのフラグを付けます。

  • ソリューションを再設計して、容量ガイドラインを超えないようにします。

次の表では、カテゴリ別にオブジェクトを挙げ、許容範囲のパフォーマンスに関する推奨ガイドラインを示しています。許容範囲のパフォーマンスとは、テストされるシステムがそのオブジェクト数をサポートでき、ただし、その数を超えるとパフォーマンスが低下することを意味します。アスタリスク (*) は、ハード的な制限値を示します。アスタリスクがない場合は、テスト済みまたはサポートされる制限値を示します。

次の表は、サイト オブジェクトの推奨ガイドラインの一覧です。

サイト オブジェクト 許容範囲のパフォーマンスに関するガイドライン メモ パフォーマンスが低下したときの影響の範囲

サイト コレクション

Web アプリケーションあたり 50,000

サイト コレクション数が増加すると、ファームのスループット全体が低下します。

ファーム

Web サイト

サイト コレクションあたり 250,000

サブサイトを入れ子にすれば、合計数が非常に大きな Web サイトを作成できます。たとえば、それぞれが 1,000 のサブサイトを持つサイトが 100 あれば、100,000 の Web サイトになります。サイトとサブサイトの推奨する最大数は、125 のサイトそれぞれに 2,000 のサブサイトが含まれる場合であり、合計で 250,000 サイトになります。

サイト コレクション

サブサイト

Web サイトあたり 2,000

所定の Web サイトのサブサイトを列挙するインターフェイスは、サブサイト数が 2,000 を超えると適切に機能しなくなります。

サイト ビュー

ドキュメント

ライブラリあたり 500 万

フォルダを入れ子にし、標準ビューとサイト階層を使用すれば、非常に大きなドキュメント ライブラリを作成できます。この値は、ドキュメントとフォルダの構成方法と、格納されるドキュメントの種類およびサイズによって異なる場合があります。

ライブラリ

アイテム

ビューあたり 2,000

テストでは、アイテムが 2,000 を超えるとパフォーマンスが低下することが示されています。フラットなフォルダでインデックス付けを使用するとパフォーマンスを改善できます。

リスト ビュー

ドキュメント ファイル サイズ

50 MB (2 GB 最大*)

ファイル保存のパフォーマンスはファイルのサイズに比例します。既定の最大サイズは 50 MB です。この最大サイズはシステムによって定められたものですが、2 GB までなら任意の値に変更できます。

ライブラリ、ファイル保存のパフォーマンス

リスト

Web サイトあたり 2,000

テストでは、エントリが 2,000 を超えるとリスト ビュー パフォーマンスが低下することが示されています。

リスト ビュー

フィールドの種類

リストあたり 256

これはハード的な制限値ではありませんが、リスト内のフィールドの種類が増加すると、リスト ビュー パフォーマンスが低下する場合があります。

リスト ビュー

ドキュメント ライブラリあたり 2,000

リストあたり 4,096

これはハード的な制限値ではありませんが、ドキュメント ライブラリまたはリスト内の列数が増加すると、ライブラリおよびリスト ビュー パフォーマンスが低下する場合があります。

ライブラリおよびリスト ビュー

Web パーツ

ページあたり 50

この図の値は、単純な Web パーツに基づいた推定値です。Web パーツの複雑さによって、パフォーマンスに影響を与えずにページで使用できる Web パーツの数が決まります。

ページ

次の表は、ユーザー オブジェクトの推奨ガイドラインの一覧です。

ユーザー オブジェクト 許容範囲のパフォーマンスに関するガイドライン メモ

グループ内のユーザー数

Web サイトあたり 200 万

個々のユーザーを使用するのではなく、Microsoft Windows セキュリティ グループを使用してセキュリティを管理すれば、Web サイトに数百万人のユーザーを追加できます。

ユーザー プロファイル

ファームあたり 500 万

この数値は、Active Directory などのディレクトリ サービスから、ユーザー プロファイル ストアにインポートできるプロファイル数を表します。

セキュリティ プリンシパル

Web サイトあたり 2,000

アクセス制御リストのサイズは、2,000 ~ 3,000 のセキュリティ プリンシパル (Web サイト内のユーザーおよびグループ) に制限されています。

次の表は、検索オブジェクトの推奨ガイドラインの一覧です。

検索オブジェクト 許容範囲のパフォーマンスに関するガイドライン メモ

検索インデックス

検索サーバーあたり 1

インデックス付きドキュメント

検索インデックスあたり 5,000 万

インデックス サーバーあたり 5,000 万のドキュメントと、インデックス サーバーあたり 1 つの検索インデックスがサポートされています。つまり、インデックス サーバーあたりのドキュメントの事実上の制限は 5,000 万です。

次の表は、論理アーキテクチャ オブジェクトの推奨ガイドラインの一覧です。

論理アーキテクチャ オブジェクト 許容範囲のパフォーマンスに関するガイドライン メモ

共有サービス プロバイダ (SSP)

ファームあたり 3 (最大ファームあたり 20)

 

領域

ファームあたり 5*

ファームに対して定義される領域数は、5 にハード コードされています。

インターネット インフォメーション サービス (IIS) アプリケーション ツール

Web サーバーあたり 8

最大数はハードウェア性能によって異なります。

サイト コレクション

Web アプリケーションあたり 50,000

コンテンツ データベース

Web アプリケーションあたり 100

サイト コレクション

データベースあたり 50,000

次の表は、物理オブジェクトの推奨ガイドラインの一覧です。

物理オブジェクト 許容範囲のパフォーマンスに関するガイドライン メモ

インデックス サーバー

SSP* あたり 1

 

Excel Calculation Services を実行しているアプリケーション サーバー

無制限

 

検索サーバー

無制限

検索サーバーごとに 100 のコンテンツ データベースがサポートされているので、ファームあたりに必要な検索サーバー数は、ファーム内のコンテンツ データベース数に基づきます。たとえば、ファーム内にコンテンツ データベースが 500 ある場合、少なくとも 5 台の検索サーバーが必要になります。

Web サーバー/データベース サーバー比

データベース サーバーあたり 8* Web サーバー

スケール アウト係数は操作の組み合わせにより異なります。

Web サーバー/ドメイン コントローラ比

ドメイン コントローラあたり 3 Web サーバー

生成される認証トラフィックの量に応じて、ドメイン コントローラあたりさらに多くの Web サーバーをサポートできる環境もあります。

スループットと Web サーバー数

テスト環境では、ファーム スループットは、データベース サーバーあたり 5 台の Web サーバーで横ばいになり、さらに Web サーバーを追加しても大きな変化は見られませんでした。データベース サーバーあたり最高 8 台の Web サーバーを展開できますが、5 台目以降はスループットの大幅な向上は望めません。これは、単一のデータベース サーバーに対して呼び出しを行う Web サーバーが増加すると、データベース サーバーの容量が事実上 100% に達してしまうためです。実際の環境での結果は、データベース サーバーのパフォーマンス特性に応じて異なります。実際のファーム環境での最適な Web サーバー数を特定するには、各自でテストを行う必要があります。

Web サーバーの CPU 使用率の大部分がユーザー認証に消費されている場合などの理由から、最適なスループットが達成されてもそれ以上の Web サーバーをファームに追加したほうがよいことがあります。このような場合には、テストを行って、適切なソリューションを特定する必要があります。

ユーザーの応答時間

次の表は、4 種類のユーザー操作について、許容範囲のユーザーの応答時間のガイドラインを示しています。ただし、ビジネス要件に応じて、許容できる応答時間は、提示の範囲よりも長くなることも短くなることもあります。

テストの目標は、すべてのエンドユーザー操作について秒未満の応答時間を得ることでしたが、これはすべての場合で実現できず、したがって次の表のガイドラインが使用されました。

操作の種類 許容範囲のユーザーの応答時間

一般的な操作

  • ホーム ページの参照

  • ドキュメント ライブラリの参照

<3 秒

一般的でない操作

  • サブサイトの作成、リストの作成

  • ドキュメント ライブラリへのドキュメントのアップロード

<5 秒

まれな操作

  • サイトのバックアップ

  • サイト コレクションの作成

<7 秒

長時間の実行処理

  • サイトのインデックス作成

操作とシステム構成によって異なります。すべての長時間の実行処理には情報または状態ページがあります。