コミュニケーションとコラボレーション

ユニファイド メッセージングへの移行を計画する

Jeff Goodwin

 

概要 :

  • ボイスメールの簡単な歴史
  • 移行を計画する際の考慮事項
  • 移行戦略
  • 複数のサイトが直面する課題

目次

ボイスメールの簡単な歴史
移行を計画する
実際的な移行戦略
移行のチュートリアル
計画に従うことの重要性

従来のボイスメール システムからユニファイド メッセージング プラットフォームへの移行は、厄介なプロジェクトになる場合があります。ただし、適切に計画を立てることによって、エンド ユーザーの作業が中断される可能性を最小限に抑えつつ、非常に簡単にこの移行作業を完了できます。実際、

このような移行プロジェクトを遂行する際は、サービスの中断を最小限に抑えることが最も重要です。

移行作業を行ううえで、何を計画すればよいかを把握するには、まず、なぜボイスメールが企業でミッション クリティカルなアプリケーションと考えられているかを理解する必要があります。この基本的な情報は、ユニファイド メッセージングへの移行時に実装する必要がある機能や、それらの機能が管理者にとってなぜ重要であるかを理解するのに役立ちます。

ボイスメールの簡単な歴史

旅の出発点がわからなければ、目的地にたどり着くための計画を立てることはできません。まず過去にさかのぼり、ボイスメール システムの概要を簡単に説明します。具体的には、ボイスメール システムの起源、およびボイスメール システムがどのように設計されたかを紹介します。ボイスメール システムを最初に開発した人物については議論が分かれていますが、最初に市販されたボイスメール システムは VMX と呼ばれるもので、この正式名称は Voice Message Exchange でした。

当初 VMX は、現在使用されている電子メールと同じように、企業内にいる他の従業員と音声でコミュニケーションを取るための手段として設計されました。このシステムでは、メッセージの送信、メッセージの転送、メッセージへの返信などのコマンドが提供されました。メッセージが録音された場合は、そのことがユーザーに通知されました。通知方法には、発信 (特定の電話番号を使用してユーザーを呼び出す) や未再生のメッセージがあることを知らせるライト (ユーザーの電話機に組み込まれているインジケータが光る) など、さまざまな方法がありました。

VMX の評判が高まるにつれて、組織ではボイスメール システムどうしをネットワーク経由で接続するようになりました。これによって、従業員が全社規模の配布リストにブロードキャスト メッセージを送信できる、全社規模のボイスメール ソリューションが提供されました。

もちろん、ボイスメール システムとの対話方法を提供するために、タッチトーン ユーザー インターフェイス (TUI) を作成する必要がありました。これらの TUI は長年の間に変化を遂げ、残念ながら現在では、ボイスメール用の標準的なインターフェイスは存在しません。携帯電話にボイスメール機能が備わっている場合、「ボイスメールを聞くには 1 を押してください」のようなメッセージを耳にしたことがあるでしょう。ボイス ユーザー インターフェイス (VUI) を使用する音声主導型のボイスメール システムの普及に伴い、TUI 自体の重要性は以前よりも低くなっています。ただし、ユーザーが使用する特定のインターフェイスには、TUI が付属していることもあるので、これらを軽視しないようにしてください。

現在普及しているエンタープライズ ボイスメール システムでは、分散型と集中型という 2 つのアーキテクチャが使用されています。図 1 のシアトル、ニューヨーク、およびオースティンのオフィスでは、分散型ボイスメール アーキテクチャが使用されています。このアーキテクチャでは、各サイトにボイスメール システムが配置されます。これに対して、ロンドン、パリ、およびグラスゴーのオフィスでは、集中型のモデルが使用されています。このアーキテクチャでは、PBX インフラストラクチャがネットワーク経由で接続され、ロンドンの集中管理された場所にすべての通話がルーティングされます。どちらのモデルにも長所と短所はありますが、分散型モデルでも、ボイスメール システムどうしをネットワーク経由で接続して、サイト間でメッセージを配信できることに注意してください。

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図 1 2 つの一般的なボイスメール アーキテクチャ モデル (画像をクリックすると拡大表示されます)

組織で分散型モデルを使用する理由は、主に 3 つあります。それは、ローカルでの可用性を確保する必要があること、使用する異種 PBX システムをネットワーク経由で接続できないこと、およびダイヤル プランを統一すると制限が発生することです。

組織によっては、ネットワーク障害が発生した場合でも、ローカルの PBX とボイスメール システムを引き続き正常に実行し、サイト内でボイスメール システムの機能をすべて提供できるようにする必要があります。また、その場合、音声自動応答装置 (IVR) システムも問題なく動作し、外部のユーザーも引き続きメッセージを録音できる必要があります。つまり、実質的にはエンド ユーザーに一切影響を与えず、通常どおり動作を継続するということです。この説明には聞き覚えがあるかもしれません。上記の理由は、多くの組織で、Microsoft® Exchange Server を実行するサーバーをローカルに配置するのと同じ理由です。組織でリスク評価を実施して、ローカルでサービスを提供する必要があるかどうかを判断することをお勧めします。

買収によって組織が拡大すると、多くの場合、リモート サイトには、インフラストラクチャの残りの部分にネットワーク経由で接続できない PBX プラットフォームが残ります。この場合、組織では PBX を別の機器に変更するか (これはコストのかかるプロジェクトになる可能性があります)、サイトの環境を変更せずにボイスメール プラットフォームをネットワーク経由で接続することによって、シームレスなボイス メッセージ交換を提供できます。また、サードパーティ製のサーバーを使用して、異種ボイスメール システムどうしをネットワーク経由で接続することもできます。

PBX どうしをネットワーク経由で接続するには、統一されたダイヤル プラン (UDP) が必要です。UDP を使用すると、電話とボイスメールの内線番号の重複を防ぐことができます。図 1 では、シアトル、ニューヨーク、およびオースティンで使用されている内線番号の範囲が重複しています。この理由は、米国内サイト用の UDP が存在しないからです。内線番号の範囲を 7 桁または 10 桁に拡張して UDP を作成することもできますが、これによって他の問題が発生します。

まず、各電話のダイヤル テンプレート、PBX のすべてのユーザーの内線番号、およびボイスメール システムと連動するすべてのアプリケーションを変更することが必要になる場合があります。また、従業員は、すぐそこにいる同僚に電話をかける場合でも、7 桁または 10 桁の番号を思い出してダイヤルしなければならないので、フラストレーションの発生につながる可能性があります。

このような基本的な機能や設計上の問題点は、長い年月をかけて改善されてきましたが、ボイスメールの基本原理は変わっていません。メッセージ交換、ネットワーク、通知方法、ユーザー インターフェイス、およびアーキテクチャはすべて重要な要素であり、移行を計画する際には、これらを考慮する必要があります。

移行を計画する

ユニファイド メッセージングに移行すると、ユーザーがボイスメールを使用する方法から、アーキテクチャの設計方法、管理者が行う管理作業に至るまで、組織のあらゆる部分に変化がもたらされます。ユニファイド メッセージング システムに移行する際は、これらすべての変化に対処する必要があります。移行を計画する際に考慮する必要がある項目のチェックリストを次に示します。

メッセージ ネットワーク 従来のボイスメール プラットフォームから Exchange ユニファイド メッセージングに移行する組織では、共存期間を設ける必要があります。既にメッセージ ネットワーク (異なる複数のボイスメール システムを相互運用するシステム) が組織に展開されている場合は、既存のシステムにユニファイド メッセージング システムを追加するだけで済みます。複数の場所に個別のボイスメールまたは PBX システムを展開している組織では、メッセージ ネットワークを使用することを強くお勧めします。

インフラストラクチャ ユニファイド メッセージングのインフラストラクチャを設計する場合、ネットワーク要件、テレフォニーの統合、サーバーの配置などについて決定を下す必要があります。基本的な展開戦略に詳しくない場合は、以前の記事「Exchange Server 2007 を使用してユニファイド メッセージングを展開する」(technet.microsoft.com/magazine/cc137737) を参照してください。

自動応答 多くのシステムには、たとえば、日中と夜間、および部門間で異なる、複数の自動応答機能が備わっています。従来のボイスメール システムの自動応答を反映するには、組織の通信チームと協力して作業を行う必要があります。

未再生メッセージの通知 実装するソリューションで、未再生のメッセージがあることを知らせるインジケータを使用しなくても問題ないと思われるかもしれませんが、ユーザーがこの機能を必要とする可能性は大いにあります。そのため、メッセージがあることを通知するこの赤色のライトとユーザーをどのように関連付けるかも重要です。さいわい、数社の企業によって、Exchange Server 用のメッセージ インジケータ アプリケーションが開発されました。

FAX のサポート 多くの従来のボイスメール プラットフォームでは、FAX の受信がサポートされています。Exchange ユニファイド メッセージングでも FAX の受信機能がサポートされているので、新しく展開するシステムでもこの機能をサポートすることをお勧めします。

音声自動応答装置 一部の従来のボイスメール プラットフォームでは、Exchange ユニファイド メッセージングで再現できない音声自動応答装置 (IVR) アプリケーションがサポートされています。適切な代替システムが見つかるまでは、このシステムを残しておくことをお勧めします。

管理 Exchange ユニファイド メッセージングは、Active Directory® と Exchange メールボックス サーバーの役割に依存します。このため、ユニファイド メッセージングの展開が、管理作業やシステム要件などにもたらす影響を考慮する必要があります。

ユーザー インターフェイス 新しい UI を展開する際は、ユーザーを対象としたトレーニングを実施する必要があります。Exchange ユニファイド メッセージングでは、多くの携帯電話プロバイダとよく似たインターフェイスが使用されるので、ほとんどのユーザーが直感的に操作を行うことができます。また、音声認識機能も使用されるので、ユーザーはタッチトーンを使用する必要がありません。Exchange Server では、この機能を Outlook® Voice Access と呼んでいます。

トレーニング ユニファイド メッセージングに移行すると、ユーザーがコミュニケーションを取る方法やボイスメールを使用する方法が一新されます。ユーザー向けのトレーニングを実施し、UI だけでなくベスト プラクティスについても説明することによって、ユーザーがより効率的な新しい方法を使用してコミュニケーションを行うことができるようにする必要があります。たとえば、ユーザーは、電子メールの受信トレイにあるボイスメールをどのように操作したらよいかや、ユニファイド メッセージングに関するいくつかの詳細設定をどのように構成したらよいかを理解していない場合があります。

実際的な移行戦略

大規模な組織でユニファイド メッセージング ソリューションへの移行作業を行う場合、いくつかの課題に直面するに違いありません。ただし、私はユニファイド コミュニケーションに 10 年間携わっており、組織の要件が非常に具体的である複雑な移行作業でさえ、無事に成功するのを目の当たりにしてきました。

組織のサイトが 1 つであるか複数であるかにかかわらず、次の 5 つの基本手順に従って移行戦略を考えると役立ちます。

  1. ソリューションを計画および設計します。
  2. ユニファイド メッセージング サーバーの役割をインストールして構成します。
  3. パイロット グループを移行します。
  4. パイロット グループから返されたフィードバックに基づいて設計を変更します。
  5. ユーザーを移行します。

もちろん、複数のサイトを所有する組織は、通常 1 つのサイトのみを所有する組織は遭遇することがない、いくつかの課題に直面します。これらの課題については、補足記事「複数のサイトが直面する課題」で別途説明します。

ソリューションの計画と設計は、移行プロセスの最も重要な段階です。このプロジェクトは、ユニファイド メッセージング チームに任命することをお勧めします。ユニファイド メッセージング チームには、通信、Active Directory、Exchange、ネットワーク、セキュリティ、トレーニング、プロジェクト管理などに関する専門知識を持つ、組織のさまざまな部門の代表者を含める必要があります。これによって、組織の既存の PBX、ボイスメール、および電子メール インフラストラクチャの詳細を把握できます。

設計が完了したら、ユニファイド メッセージング サーバーの役割をインストールして構成できます。ユニファイド メッセージング サーバーは、既存のボイスメール システムと共存させる形でインストールできます。文書化されたベスト プラクティスに従って、作業を進めるようにしてください。

これで、ユニファイド メッセージング サーバーをテストする準備ができたので、小規模なパイロット ユーザー グループを指定して、新しいシステムに移行します。このグループは、25 ~ 50 人のユーザーで構成することをお勧めします。グループに含めるユーザーは慎重に選択してください。IT 部門と通信部門のスタッフから、部門管理者と販売員に至るまで、さまざまなグループのユーザーで構成されるパイロット グループを作成するようにします。このように広い範囲のユーザーを含めることによって、設計が目的に合っているかどうか、どのような要件を考慮すればよいか、ユーザーにはどのようなトレーニングが必要であるかなどの判断をより適切に下すことができます。

パイロット グループからフィードバックを受け取ったら、テスト中に発見されたすべての問題に対処できるように、設計を変更する必要があります。具体的には、考慮事項に関するセクションで説明した項目を再度確認し、組織の要件に合わせて、これらの項目に適切に対処します。通常、この段階で最もよく発生するのは、トレーニングに関連する変更であることに注意してください。

最後に、ユーザーを移行します。システムを完全な運用環境に移行する方法については、多くの考えと戦略があります。主な 2 つの方法論は、段階的な移行とフラッシュ カットです。

数週間から数か月にわたってユーザー コミュニティを段階的に移行すると、従来のボイスメール システムのユーザーとユニファイド メッセージングのユーザーとの間にどこにも接続されないボイスメールが生まれます。これにより、ユーザーどうしがボイスメールを使用してメッセージを転送できなくなります。また、設計にメッセージ ネットワーク ソリューションを含めなかった場合、一部のビジネス コミュニケーションが中断されます。これらのコミュニケーションが必要である場合は、初期設計にメッセージ ネットワーク ソリューションを含めることをお勧めします。

フラッシュ カット移行の場合、すべてのユーザーを一度に移行します。一般に、組織ではこのような移行を週末に行います。これは、システムをテストし、構成を変更し、深刻な問題が発生した場合は移行前の環境に戻すことができる時間を確保するためです。

どちらの方法を使用する場合でも、パイロット グループから挙げられた一般的な質問と回答に基づいて、ヘルプ デスク スタッフのトレーニングを実施するようにしてください。また、ヘルプ デスク スタッフが、ユーザーの有効化、ユーザーが有効であるかどうかの確認、パスワードの変更など、主要な作業を確実に行うことができるようにする必要があります。

移行のチュートリアル

これから移行のサンプルを紹介しますが、環境をユニファイド メッセージングに正常に移行するうえで最も重要なのは、内部および外部ユーザーの作業をできる限り中断することなく、ユーザーのボイスメール ボックスを従来のボイスメール プラットフォームからユニファイド メッセージングに移行することです。

図 2 は、組織のアーキテクチャを詳しく示しています。ここでは、この混合型 Exchange アーキテクチャには変更を加えません。米国に拠点を置くオフィスのプライマリ データセンターは、シアトルにあります。オースティンの IT アプリケーションはすべてシアトルから提供され、ニューヨーク オフィスではローカルの Exchange サービスが提供されます。米国のオフィスでは、異種 PBX インフラストラクチャが使用されているので、オフィスごとに異なるボイスメール システムが展開されています。技術的に考えると、PBX インフラストラクチャをネットワーク経由で接続して、集中管理された場所からボイスメールを提供することはできません。一方、ヨーロッパのオフィスの場合は、集中管理されたデータセンターがロンドンにあります。ヨーロッパの IT アプリケーションと通信アプリケーションは、すべてこのデータセンターから提供されます。

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図 2 移行前のサンプル アーキテクチャ (画像をクリックすると拡大表示されます)

ボイスメール インフラストラクチャ全体は、Octel (現在は Avaya) プラットフォームに基づいています。すべてのボイスメール システムは、Octel Analog Networking (OAN) を使用して、ネットワーク経由で接続されています。OAN は、アナログ電話回線と長距離電話を使用して、ネットワーク経由でボイスメール メッセージを送信するための専用ネットワーク プロトコルです。このアーキテクチャを使用すると、サイト間、つまり全社規模のボイス メッセージングが可能になります。

複数のサイトが直面する課題

複数のサイトで構成される組織は、ユニファイド メッセージングを展開する際、非常に多くの課題に直面します。さいわい、既に他の組織が直面したいくつかの課題から、解決策を導き出すことができます。この記事ですべての課題を取り上げることはできませんが、さまざまな組織の作業にかかわった際に遭遇した最も一般的な課題について説明します。

集中管理された Exchange Server アーキテクチャと混合テレフォニー環境を使用している

分散環境の設計は簡単です。これを行うには、ユニファイド メッセージング サーバーを配置し、それを各サイトのローカル PBX と統合します。では、集中管理された環境、さらには混合環境の場合はどうでしょうか。サイトでローカルのユニファイド メッセージング サービスを提供する必要があるかどうかを考えてみてください。ローカルでユニファイド メッセージング サービスを提供すると、集中管理された Exchange サーバーにそのサイトから接続できなくなりますが、引き続き自動応答機能が提供されるので、外部のユーザー (おそらくその多くは顧客です) はメッセージを録音できます。どちらを取るかは、そのサイトがどの程度ミッション クリティカルであるか、およびソリューションをどれくらい簡単に管理できるかによって異なります。

サイトでローカルのサービスを提供する必要がある場合は、サイトにリモート ユニファイド メッセージング サーバーを配置することをお勧めします。また、その必要がない場合は、ローカル サイトに SIP ゲートウェイをインストールできます。Exchange ユニファイド メッセージングには柔軟性があり、PBX インフラストラクチャをネットワーク経由で接続する必要はありません。また、統一されたダイヤル プランも必要ありません。

現在 Exchange アーキテクチャをアップグレードしている最中である

多くの顧客は、Exchange インフラストラクチャをアップグレードしている最中にユニファイド メッセージングへの移行を開始することをためらいます。ユニファイド メッセージングに移行することが既に決定している場合は、Exchange サーバーのアップグレード中に移行に踏み切ることをお勧めします。アップグレード計画に従って作業を進めれば、プロジェクトが大幅に複雑になることはありません。

10 人未満のメンバで構成される小規模なサイトが多数あり、その一部のサイトには PBX が配置されていない

ローカルに PBX が配置されている小規模なサイトでは、ローカル サイトに SIP ゲートウェイをインストールすれば問題ありません。ローカルに PBX が配置されていないサイトでは、テレフォニー技術を使用して、集中管理された PBX に通話を転送することによって、ユニファイド メッセージング システムに通話をルーティングできます。つまり、ほとんど費用をかけずに、組織の小規模なリモート サイトにユニファイド メッセージング サービスを展開できます。

重要なことを 1 つ述べておくと、実はこのような小規模なサイトは、移行の優れた実験台になります。一般的な移行戦略の 1 つに、ネットワークの境界から中核となる部分に向かって移行を進める方法があります。まず小規模なサイトを移行してから、ユニファイド メッセージング チームと協力して事後分析を実施し、どの部分が正常に機能したか、およびどのような問題が発生したかを把握します。これによって、次のサイトを移行する際に、この結果を反映できます。

ユニファイド メッセージング チームは、ネットワークの境界から中核となる部分に向かって移行を進めることにしました。どのサイトでも、ユニファイド メッセージング サーバーを配置する際は、Exchange Server アーキテクチャに従うというベスト プラクティスに基づいて作業を行います。チームでは、考慮事項に関するセクションで説明した項目を考慮しながら、サイトごとに独自の計画ドキュメントを作成します。このドキュメントは、サーバーのインストールと構成、ユーザーのトレーニング、移行戦略の計画などに使用します。

チームは、サイトごとにユーザーをユニファイド メッセージング システムにフラッシュ カットし、今後も使用を続ける IVR アプリケーションをサポートするために、代替ソリューションが見つかるまで従来のプラットフォームをそのまま使用する計画を立てました。また、あるサイトの移行後、30 日間待ってから、次のサイトを移行することにしました。この期間は、さらに多くのユーザーを移行し、ヘルプ デスク サポートへの問い合わせが増える前に、各サイトを新しいプラットフォームに適合させることを目的としています。

まずは、オースティン オフィスを移行します。オースティンの電子メールはシアトルから提供されるので、チームは、ユニファイド メッセージング サーバーの役割をシアトルにインストールし、オースティンに SIP ゲートウェイをインストールして PBX 統合を提供します。従来のボイスメール プラットフォームはネットワーク経由で接続されているので、メッセージ ネットワーク サーバーをインストールすることによって、ユニファイド メッセージング プラットフォームをネットワーク経由で接続する必要があります。その後、ユーザーが新しいシステムに関するトレーニングを受け、移行がスムーズに進行したので、次はニューヨーク オフィスを移行することにしました。

ニューヨーク オフィスには、独自のメールボックスとハブ トランスポート サーバーが配置されています。そのため、ベスト プラクティスに従うと、ニューヨークにユニファイド メッセージング サーバーをインストールする必要があります。このサーバーは、移行計画のドキュメントに従ってインストールします。インストールしたサーバーは、メッセージ ネットワーク サーバー ノードとしてボイスメール ネットワークに追加されます。このオフィスのユーザーもトレーニングを受け、ユニファイド メッセージングにスムーズに移行できました。

シアトル オフィスには、オースティンの移行段階で展開したユニファイド メッセージング サーバーが既に配置されています。チームは、シアトル オフィスとオースティン オフィスをサポートするのに十分なボイスメール ポートがサーバーに実装されていると判断しました。シアトルのユーザーもトレーニングを受け、ユニファイド メッセージングに移行できました。

ヨーロッパのアーキテクチャは、はるかに簡単に設計できます。PBX インフラストラクチャをネットワーク経由で接続し、Exchange を集中管理します。ユニファイド メッセージング サーバーをロンドンに展開し、各サイトを小規模なサイトから順に移行します。図 3 は、最終的なアーキテクチャを示しています。

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図 3 移行後のサンプル アーキテクチャ (画像をクリックすると拡大表示されます)

計画に従うことの重要性

私はこれまでに何度も、ユニファイド メッセージングへの移行が失敗した原因を解明するよう依頼されたことがあります。これらの組織の多くでは、1 つ以上の重要な規則が守られていませんでした。

まず、ユニファイド メッセージングは、単なるボイスメール システムではないことを忘れないでください。これはミッション クリティカルなアプリケーションなので、それを意識して移行作業に取り組む必要があります。また、ユーザーは、ボイスメール テクノロジを使用して情報交換を行います。ユニファイド メッセージングはビジネス アプリケーションなので、この記事で説明したすべての考慮事項を念頭に置いて移行を計画してください。

ユニファイド メッセージングに移行する際は、必ず通信チームの協力を仰ぐ必要があります。通信チームは、企業のインフラストラクチャに統合されているテレフォニー アプリケーションに最も精通しています。

ユニファイド メッセージングに移行する際は、これがエンタープライズ ソリューションであることを前提とした計画を立ててください。最初の段階で 1 つのサイトを実装している場合でも、常に全体像を念頭に置いて作業する必要があります。たとえば、1 つのサイトを実装する際に、他のサイトにメッセージ ネットワークをインストールしなかった場合、ユーザーどうしのコミュニケーションに影響を及ぼすことがあります。もちろん、これはたいへんな作業になるので、すべての IT アプリケーションを考慮したアーキテクチャを設計する際は、専門家に相談することをお勧めします。

最後に、トレーニングの重要性を軽視しないでください。ユニファイド メッセージングに移行すると、ユーザーがコミュニケーションを取る方法やボイスメールを使用する方法が一新されます。自分にとって直感的に理解できるものでも、他の人が同じように理解できるとは限りません。最もスムーズに移行を完了するには、適切なトレーニングを実施する必要があります。

Jeff Goodwin は、The VIA Group のシニア テクノロジストです。専門分野は、Exchange とユニファイド メッセージングの設計と展開です。連絡先は jgoodwin@theviagroup.com (英語のみ) です。

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