互換性ツールを使用した旧バージョン OS 対応アプリケーションの Windows XP 環境への移行プロセス

発行 : 2003 年 6 月 12 日

概要

この文書では、Microsoft Windows XP 以前のバージョン用に作成されたアプリケーションを、Windows XP 環境に移行するためのプロセスについて説明します。移行するプロセスとして、Windows XP に組み込まれている機能およびツールを使用したアプリケーションのテスト方法から、互換性に関する問題点の解決方法、移行後の環境への修正ファイルの配布までを手順を交えて紹介します。

トピック

Windows XP 環境への移行プロセス概要
アプリケーションの動作確認概要
[互換性]
Compatibility Administrator を使用したテストについて
互換データベースの作成と配布
関連情報

Windows XP 環境への移行プロセス概要

Windows OS を新しいバージョンに移行すると、既存のアプリケーションに問題が発生する場合があります。Windows XP ではアプリケーションの互換性を広くサポートしており、多くの既存アプリケーションを Windows XP 上で正常に動作させることができます。

ここでは、 Windows XP 以前のオペレーティング システム用に開発されたアプリケーションを、 Windows XP 環境に移行するためのプロセスと手順の概要を説明します。

移行プロセスと手順についての詳細は、こちらのドキュメントを参照してください。

  1. Windows XP 上での動作確認

    既存アプリケーションを Windows XP 上で実行して問題点を洗い出します。

  2. Windows XP に組み込みの機能で互換性テストを実施

    Windows XP に組み込みの機能である [互換性] タブ、およびプログラム互換性ウィザードを使用して、互換性に関する問題が解決できるかをテストします。

  3. Compatibility Administrator を使用した互換性テストの実施

    互換性の問題を解決するためのツール Compatibility Administrator を使用して問題が解決できるかをテストします。

  4. 問題を修正する互換データベース (SDB) ファイルの作成と配布

    Compatibility Administrator のテスト結果から、問題の解決に必要なファイルを作成し、他の Windows XP コンピュータに配布します。

アプリケーションの動作確認概要

まず、 Windows XP 上で既存アプリケーションの動作確認を行います。

Windows XP 上でアプリケーションのセットアップから開始し、セットアップ完了後はアプリケーションの機能の動作を確認します。セットアップ中やセットアップ完了後のアプリケーションの動作に発生した問題を洗い出し、互換性テストの対象にします。

セットアップの動作確認

セットアップの方法や手段はアプリケーションによって異なります。たとえば、 SETUP.EXE を利用する一般的なセットアップ プログラムの場合、次のような原因でセットアップが続行できない可能性が考えられます。

  • セットアップ プログラムに OS のバージョン チェックがあり、 Windows XP のバージョンでは実行が拒否されてしまう。

  • ディスクの空き容量のチェックで古い Win32 API が使用され、十分な空き容量 (約 2GB 以上) があるにもかかわらず、予期しない値が返され、容量不足と判断されてしまう。

アプリケーションの機能の動作確認

セットアップが実行できた場合、次にアプリケーションの機能について動作確認を行います。アプリケーションの動作確認は、使用頻度などにより機能の重要度をいくつかのレベルに分け、最も重要度の高い機能から行うことを推奨します。

まず、最も重要な機能を確認し、正しく動作する場合は次のレベルの機能を確認します。問題が発生した場合には、同じレベルの機能まで動作確認を行い、次のレベルの確認は行わないようにします。次のレベルの確認は、この後のテストで既存の問題点が解決された場合に行います。また、アプリケーションのテスト項目書に該当する技術文書が存在する場合、動作確認時に利用することで適切なテストの実施に役立てることができます。

すべてのアプリケーションの動作確認が終了したら、次のプロセスに進むかを判断します。問題が発生したアプリケーションは、次のプロセスに進み互換性テストを行います。正しく動作したアプリケーションは、 Windows XP と互換性のあるアプリケーションと判断し、ここでテストを終了します。

[互換性]

アプリケーションの互換性に関して問題の洗い出しが終了したら、次にそれらの問題点が解決できるかをテストします。

ここでは、 Windows XP の組み込みの機能である [互換性] タブとプログラム互換性ウィザードを使用してテストします。

注意 ここで紹介するテストの対象は、スタンドアロンのコンピュータや、ユーザーが個人的に使用しているアプリケーションなど、 1 台のコンピュータでのみ使用するアプリケーションです。複数のコンピュータで使用するアプリケーションの場合は、「Compatibility Administrator を使用したテストについて」 を参照してください。

[ 互換性 ] タブを使ったテスト

[ 互換性 ] タブは、アプリケーション ファイル (.EXE, .BAT など) のアプリケーションのプロパティに表示されるタブの 1 つで、アプリケーションのファイルに手動で互換性に関するプロパティを設定できる機能です。

このプロパティでは、さまざまなモード (環境)、さまざまな設定を選択し、簡単にテストすることができます。たとえば、アプリケーションが Windows 95 で動作するように作成されたものであれば、モードを Windows 95 に設定してテストを行います。モードの他に、画面の表示を 256 色に変更したり、解像度を 640 x 480 ピクセルに切り替えるなど、さまざまな設定をテストできます。

[ 互換性 ] タブでの設定ヒント

設定項目名

予想される問題点の現象

256 色で実行する

アプリケーションから返されるメッセージなどから、 256 色 (8 ビット) が必要であると考えられる場合

640 x 480 の解像度で実行する

アプリケーションが 640 x 480 ピクセルのウィンドウで起動されてしまい、最大化表示ができない場合

視覚テーマを無効にする

アプリケーションのダイアログボックスが表示しきれない場合、ボタンがオーバーラップしてしまう場合など、問題点の原因が Windows XP のテーマによるものと考えられる場合

図 1: 手動で互換性に関するプロパティを設定できる、[互換性] タブ

1 : 手動で互換性に関するプロパティを設定できる、 [ 互換性 ] タブ

[ プログラム互換性ウィザード ]

[ プログラム互換性ウィザード ] は、[互換性] タブの設定をウィザード形式で設定できる機能を提供し、 Windows XP のヘルプとサポート センターに組み込まれています。ウィザードの指示に従い、テスト対象のアプリケーションや設定値を選択することで、指定したアプリケーションの [互換性] タブに自動的に設定されます。

注意 対象のアプリケーションが、いくつかのファイル (EXE など) が連動して動作するような、複数のファイルで構成されるアプリケーションの場合は、[プログラム互換性ウィザード] も使用できますが、[互換性] タブを使用したテストを推奨します。[互換性] タブは、互換性プロパティの設定後、手動でアプリケーションを実行できますが、プログラム互換性ウィザードの場合は、 1 つのファイルの設定に 1 回のテスト実行が含まれるため、すべてのファイルの設定が完了する前に不要なテスト実行が何度か発生してしまうことがあります。

図 2: ウィザード形式で指定したアプリケーションの [互換性] タブを自動的に設定できる、[プログラム互換性ウィザード]

2 : ウィザード形式で指定したアプリケーションの [ 互換性 ] タブを自動的に設定できる、 [ プログラム互換性ウィザード ]

[ 互換性 ] タブおよび [プログラム互換性ウィザード] を使用した結果、アプリケーションの問題点が解決された場合は、互換性プロパティの設定を適用した状態で、再びアプリケーションの全体の機能について動作確認を行います。

その結果、すべての問題点が解決されアプリケーションが正しく動作する場合はここでテストを終了します。また、残った問題点が日常の業務にほとんど支障がない程度である場合、テスト終了と判断することができます。

すべての問題点が解決されない場合や部分的だが重要な問題が残った場合には、次の Compatibility Administrator を使用したテストを実施します。

Compatibility Administrator を使用したテストについて

Compatibility Administrator では、約 200 の互換性 FIX を使用したより詳細で的確なテストが行えます。互換性 FIX は、Windows XP の互換性の問題点を解決するために用意されており、自由に選択してアプリケーションに適用できるため、[互換性] タブと比べてより柔軟なテストが可能です。

Compatibility Administrator を使用したテストの手順は以下の 3 つのプロセスで行います。

テストのための準備

同じ操作を何度も行う手間を省くために、事前に互換データベースを作成し、ファイルに保存しておくことができます。互換データベースには、アプリケーションに適用する互換モードや互換性 FIX の情報を保存します。

互換モードを使用したテスト

事前に作成した互換データベースの SDB ファイルを使用してテストを実行します。互換モードは互換性 FIX の集合で、Compatiblity Administrator では各互換モードに含まれるすべての互換性 FIX を確認できます。互換モードに含まれる互換性 FIX は必要に応じて追加/削除をおこなうことや、互換モード自体をカスタマイズすることができます。

互換モード

説明

Microsoft Windows 95

最も一般的な Windows 95 の互換性の問題を解決します。

Microsoft Windows NT 4.0 (SP5)

Windows NT Server 4.0 Service Pack 5 用のバージョン情報を返します。

Microsoft Windows 98 / ME

最も一般的な Windows 98 および Windows Millennium Edition の互換性の問題を解決します。

Microsoft Windows 2000

Windows 2000 用のバージョン信用を返します。

256 Color

画面を 256 色に設定します。ゲームや教育用のソフトウェアに有効です。

640 x 480

解像度を 640 x 480 ピクセルに設定します。ゲームや教育用のソフトウェアに有効です。

Disable Themes

Windows XP Professional または Windows Server 2003 の視覚テーマを無効にします。

International

2 バイト文字セットを処理します。

LUA

アクセス権限が不十分な制限ユーザーからのファイル システムおよびレジストリへの書込み要求を、制限のないエリアにリダイレクトします。セキュリティが関連するユーザ アカウントを導入していない Windows バージョン用のアプリケーションに有効です。

Profiles Setup

現在のユーザーだけではなく、コンピュータのすべてのユーザーに対してアプリケーションをインストールします。

互換性 FIX を使用したテスト

互換モードを使用しても問題点が修正されなかった場合は、互換性 FIX を使用してテストを行います。ただし、互換モードを使用して一部の問題点が修正された場合は、その互換モード (または互換モードをカスタマイズした互換性 FIX) を適用した状態でこのテストを行います。

互換性 FIX は 200 近く存在し、問題点の現象から対応する互換性 FIX を推定する必要があるため、Application Compatibility Toolkit 3.0 では、従来の Windows 用に作成されたアプリケーションで発生すると考えられる互換性の問題点と、その問題点に対応する互換性 FIX の一覧表がカテゴリ別に用意されています。

問題点のカテゴリ

概要

16 ビット アプリケーション

16 ビット アプリケーションに問題が発生した場合

アプリケーションの削除

アプリケーションが正しく削除できない場合

クリップボード

コピーや貼り付けの操作中にクリップボードに問題が発生する場合

カラー パレット

カラーパレットに問題がある、またはアプリケーションウィンドウのコンポーネントが異なる色で表示される場合

ディスプレイ

画面の解像度や画面の色が正しくないなど、画面の表示に問題が発生する場合

アプリケーションの実行

アプリケーションの実行中に問題が発生する場合

アプリケーションの終了

アプリケーションの終了時にアクセス違反が発生する場合

ファイル入出力

アプリケーションにファイルアクセスの問題が発生する場合

フォーカス

アプリケーション上のフォーカスが正しく動作しない場合

グラフィック コントロール

アプリケーション上の画像の項目が正しく表示されない場合

インストール

アプリケーションのインストールに問題が発生する場合

キーボード入力

キーボードによる入力によって問題が発生する場合

マルチメディア

サウンド、グラフィック、アニメーション、およびビデオに問題が発生する場合

ネットワーク接続

ネットワーク接続に問題が発生する場合

パーミッション (権限)

アクセス権限に関する問題が発生する場合

印刷

印刷が正しく機能しない場合

レジストリ

不正なレジストリ エントリによって問題が発生する場合

スタート メニューおよびショートカット

スタート メニューやショートカットが作成されない、または動作しない場合

スタートアップ

アプリケーションの起動時やプロセスの初期化時に問題が発生する場合

TAPI (テレフォニー API)

電話のダイヤラが正しく機能しない場合

バージョン

アプリケーションが別の Windows のバージョンを要求する場合

ウィンドウ管理

アプリケーションのウィンドウが正しく動作しない場合

その他

これらのカテゴリに該当しない問題点

互換性 FIX はアプリケーションの各問題点に適用するものに絞って、テストを行います。ただし、場合によっては複数のカテゴリを使用する必要がある場合があります。たとえば、「アプリケーションのウィンドウが正しく表示されない」 という問題点の場合は、「カラーパレット」 と 「ディスプレイ」 の 2 つのカテゴリについてテストします。

互換データベースの作成と配布

Compatibility Administrator でテストした、複数のアプリケーションに対する互換モードや互換性 FIX はパッケージ化して、他の Windows XP コンピュータに配布できます。互換データベースには複数のアプリケーションに関する互換性 FIX に対応しているので、複数のアプリケーションに関する互換性問題を解決する場合に便利です。

各コンピュータに配布する .SDB ファイルは、Compatibility Administrator で作成します。配布を行う場合は、サーバー上の共有フォルダ (読み取り専用) に .SDB ファイルを格納し、 割り当てるログオン スクリプトに Sdbinst.exe を使用します。

Active Directory を使用して、ログオン スクリプトをユーザー単体に割り当てる場合は、サーバー上の systemroot・SYSVOL・sysvol・DomainName・Scripts フォルダに格納します。また、ログオン スクリプトを使用してグループ ポリシーに割り当てることもできます。

図 3: 互換データベースはログオン スクリプトを使用してグループ ポリシーに割り当てることも可能

3 : 互換データベースはログオン スクリプトを使用してグループ ポリシーに割り当てることも可能

関連情報

Windows XP Professional に同梱される Application Compatibility Tool Kit 3.0 を利用した自社開発アプリケーションの互換性検証と移行手順については、「Windows XP Professional の優れた互換性を事例が実証 -自社開発アプリケーションの移行もスムーズな高い互換率を実現」をご参照ください。

Windows XP Professional の互換性技術へのリンク

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