マイクロソフトのモビリティ構想

David Chernicoff

発行 : 2002 年 11 月

概要

マイクロソフトのモビリティ構想は、組織やユーザーが必要とするデータやアプリケーションに、いつでもどこからでも、任意のデバイスから接続する手段を提供します。マイクロソフトは、マイクロソフト製とエンドユーザーのサードパーティ製アプリケーション ツールやハードウェアが通信できるインフラストラクチャを提供して、IT 管理者の仕事をシンプルにし、IT スタッフの生産性を向上させ、モバイル IT 投資からの収益向上を可能にします。

トピック

はじめに
ロードマップ
モビリティ向上の恩恵を受けるのは誰か
プラットフォーム
インフラストラクチャ サーバー
サービス
結論

はじめに

ビジネスコミュニケーションはもはや、電子メールや留守番電話のメッセージを確認することだけではなくなっています。リアルタイムなやり取りには、必要なときにすぐデータにアクセスできる機能が必要です。マイクロソフトは、人、アプリケーション、およびデータ間のインテリジェントな通信の実現に取り組んでいます。アプリケーションやハードウェアへの機能追加は、ユーザーにとって大きな利益ですが、それも、新しいアプリケーションについて勉強したり、これ以上電子デバイスを持ち歩く必要がなければの話です。マイクロソフトのモビリティ構想では、最新のWindows オペレーティングシステムでエンドユーザーに新機能と利点を提供するとともに、一般的なわかりやすいエンドユーザーエクスペリエンスを実現するので、IT サービスや IT サポートの必要性が少なくなります。

毎日のように、PC 業界では 5 年前には考えられなかったような変化が起こります。今後 10 年のうちに、PC は日々の暮らしと仕事の両面で、コミュニケーションの中心的存在になるでしょう。しかし、それは、新機能を集めてきて、今仕事で使っている既存の方法に追加するのではなく、普段の暮らしや仕事の上で不可欠なコンポーネントとなるはずなので、コンピューティングに対する私たちの考え方が根本的に変わるでしょう。

このホワイトペーパーでは、IT プロフェッショナルにとって、マイクロソフトのモビリティ構想が意味するものに焦点を当てます。マイクロソフトが成しとげたエンドユーザーの強化は大きな前進ですが、こうした新オペレーティングシステムやデバイスの展開、構成、およびサポート業務を簡素化するテクノロジの進歩こそ、市場投入への原動力となります。

Windows XP には、802.1x(WIFI) やBluetooth などの最新のワイヤレステクノロジに対する組み込みサポートが含まれます。また、リモートデスクトッププロトコル、仮想プライベートネットワーク (VPN)、およびIP v6 など、リモート通信に必要となる主要なネットワーキングテクノロジも含まれます。

モバイルユーザーのための拡張、接続、および導入という、マイクロソフトが長く表明してきた目標に、この最新オペレーティングシステムが非常に貢献しています。これには、コンピューティングとワイヤレス業界のプラットフォーム、アプリケーション、およびツールにおける協調という相乗効果的な目的もあります。エンドユーザーが直面する複雑さや制約を減らすという目標も、ハードウェアやソフトウェアの複数のプラットフォームを構成、統合する際の複雑さについての面倒な問題を減らすという成果を上げています。この問題は、IT プロフェッショナルが包括的なワイヤレスおよびモバイルソリューションを展開するのを困難にしていました。これらの最新のオペレーティングシステム、アプリケーション、およびツールを用いると、IT プロフェッショナルは会社にとって競争力が得られる業務ビジネスプロセスの展開に専念できます。システムの機能の問題点に対応するために、展開や統合サイクルに長期間付き合わずにすむのです。

PC は日常の生活の中に絶えず入り込んでいますが、今は、コンピュータ統合がまったく新しい世代へと移り変わろうとしている時です。ワイヤレスコンピューティングによって、PC プラットフォームは簡単に利用できるようになり、ケーブルでつながれたコンピュータを引きずりまわすのは面倒すぎる作業だとだけ思われていた分野にも広がっています。ノートブックコンピュータでさえも、ワイヤレスの世界によって広がりを見せており、携帯性に接続性の利点が加わって、ユーザーの生産性は大幅に向上しています。

現在、経済全体は低迷しているにもかかわらず、この生産性向上のおかげで、ワイヤレス対応コンピュータは力強く成長し続けています。IDC は、ポータブルコンピュータ (ノートブック PC と超小型ポータブルコンピュータ) の世界全体の出荷数は、2001 年の 2800 万台から 2003 年には 3750 万台に増加し、さらに 2005 年までには PC の出荷数全体の約半分を占める (8580 万台) と推計しています。現在出荷されているビジネス向けのポータブルコンピュータの多くは、すでに何らかの統合ワイヤレス接続を装備しています。2004 年までには、モバイルデバイスはすべて、ワイヤレスデバイスでもあるということになるでしょう。2005 年までに、8 億人近い様々なワイヤレスユーザーが存在するでしょう。

モバイル PC ユーザーの生産性向上 (Gartner による推計では週単位で 7.5 時間) と総保有コスト (TCO) の低減 (Gartner グループによる推計では 30 % 弱) を組み合わせると、Windows XP と Office XP を中心に構築したモバイルコンピューティングソリューションが、ビジネスコンピューティング環境に競争力をもたらす理由は容易に理解できるでしょう。Windows XP と Office XP は、このモバイルソリューションへの需要増大に対応できる唯一のものです。Tablet PC は、長寿命バッテリ、軽量、超高解像度表示、そして多くはワイヤレス接続を備えた、これまででもっとも汎用的なモバイルコンピュータです。Windows XP Tablet PC Edition の汎用性によって、顧客がモバイルコンピュータをもっといろいろな場所で、長時間使えるようになり、従来になく社員の作業効率と効果が向上します。

Windows XP と Office XP のモビリティの利点は、もはや秘密でも何でもありません。Macromedia の CIO、Larry Rowland 氏は、「ラップトップがユーザーの生産性を向上させ、Windows XP Professional がラップトップの生産性を向上させる。この方程式は強力です。」と述べています。つまり、今や、あなたの組織が先頭を行くか、あるいは後からチャンスを追いかけるかというだけの問題なのです。

ロードマップ

以前は、モビリティとは単に移動時にコンピュータを携帯できることでした。モバイルユーザーを展開するのは、基本的には、適切なノートブックコンピュータを選択して電話回線をたくさん設定し、会社のネットワークへダイヤルインでアクセスできるようにするという作業でした。簡単なファイルアクセスと会社の電子メールサーバーへの接続が、モバイルユーザーに可能だったことのすべてであり、また、実際、期待していたことのすべてでした。

しかし、リモートネットワークによる簡単なファイルと印刷サービスでは十分ではありませんでした。モバイルユーザーは業務アプリケーションへアクセスし、生産性を高める必要がありました。マイクロソフトは、強力な VPN 機能をWindows Server ファミリに組み込み、こうした要求に対応し始めました。これにより、企業の IT 部門は企業ネットワークのリソースやアプリケーションへの接続を安全に提供できるようになりました。

サードパーティがWindows 2000 Server の産業向けの強みを生かして、SFA (Sales Force Automation) やCRM (Customer Relationship Management) ツールなどのアプリケーションを組み込んだので、マイクロソフトはモバイルユーザーサポートのために自社で提供するものを改良し続けました。Outlook Web Access のようなツールを IT プロフェッショナルに提供し、会社の電子メールやカレンダー機能へのインターネット接続が簡単になったため、IT スタッフの作業が大幅に簡素化されました。これらのツールは、Internet Security and Acceleration Server (ISA Server) などのサーバーアプリケーションのほんの一部にすぎませんでした。サーバーアプリケーションは、外部ユーザーによる企業ネットワークリソースへの安全なアクセスの実現に付随する諸問題に対して、完全な機能を備えたソリューションを提供します。

マイクロソフトのモビリティ構想の焦点は、依然として、データおよびアプリケーションにいつでも、どこでも、どのデバイスを使っても接続できるようにすることですが、実際の作業はMicrosoft ソフトウェアインフラストラクチャに対して行われつつあります。オペレーティングシステムとアプリケーションの改良により、ユーザー、データ、およびアプリケーションのモビリティが向上するだけでなく、さまざまなモバイルアプリケーション、デバイス、およびユーザーにインフラストラクチャとサポートを提供する IT スタッフの作業負荷が軽減されます。

マイクロソフトは次世代のモバイルテクノロジを改良、統合し続けます。その成果はワイヤレスネットワーキングとWindows Powered Smartphone およびWindows Powered Pocket PC に表れるでしょう。こうしたツールに対してエンドユーザーが期待する価値を提供することに集中するだけなく、IT プロフェッショナルがこれらの新テクノロジを既存および将来のビジネスプロセスに統合するために必要なインフラストラクチャと展開の選択肢を提供することにも、焦点を当てていきます。

モビリティ向上の恩恵を受けるのは誰か

組織内のどのユーザーも、Windows XP と Office XP におけるモビリティ向上の恩恵を受けられます。Macromedia のIT 業務およびサービス部門のディレクターであるNader Djafari 氏は、「Windows XP Professional により、ユーザーは自由に好きな場所で働くことができ、ストレスが減り、生産性が向上します。リモートデスクトップ、オフラインファイルとフォルダなどの機能とはつまり、Windows XP Professional を使うとき、生産性向上を妨げるものはなく、ただ、いろいろな作業方法と作業場所から好きなものを選べるだけだということを意味しています。」と述べています。

マイクロソフトは、この最新Windows オペレーティングシステムに含まれるモビリティ向上の恩恵を受けるユーザーは、4 種類に分けられると考えています。外出して飛び回る人々、社内で飛び回る人々、在宅勤務者、およびデータを収集する人々です。これらのカテゴリのユーザーはそれぞれ、オペレーティングシステム機能を異なる方法で利用します。

外出して飛び回る人々

同僚がようやく顔と名前を一致させられる程度にしかオフィスに戻ってこない、外出して飛び回っている人たちは、勤務時間の 80 % 以上をオフィスの外で過ごします。企業の幹部や外勤の営業担当者、あるいは現場の担当者であれ、外出して飛び回る人々は会社の IT 部門が選択したハードウェアとソフトウェアに依存しています。

こうした人たちは会社の IT 部門とすぐにはコンタクトできないため、外出先では信頼性と安定性のあるアプリケーションとハードウェアが必要です。しかし、ほとんどの時間は外出しているからと言って、企業ネットワークでしか得られないアプリケーションやデータの必要性が低くなるわけではありません。いつでも、どこからでも、顧客や同僚と接続した状態でいられる必要があります。

外勤の営業担当者であるRick は外出して飛び回る人たちのうちの一人です。持ち歩いているWindows XP ノートブックコンピュータでは、会社の製品カタログがすべて収められたカスタムSQL Server" アプリケーションが動作しています。Windows XP クライアントとWindows サーバーオペレーティングシステムのリモートネットワークサービス機能のおかげで、Rick は、ダイヤルアップで接続するか、あるいはインターネットの公衆ホットスポットから接続して、カタログをホストしているこのSQL Server を更新できます。注文情報や在庫情報は、インターネット接続が利用できるところならリアルタイムに更新されます。あるいは毎晩ホテルの部屋に戻ってから、本社のSQL Server アプリケーションと同期することもできます。

Rick は、会社のSharePoint" Portal へ接続して、時差に関係なく、社内のパートナーと提案やドキュメントについて共同で作業できます。Word、PowerPointョ、およびOutlookョ などのMicrosoft Office アプリケーションを使用して、Rick はポータルサイトからデータを収集して、翌日のクライアントとの会議に使うプレゼンテーションに組み込んだり、電子メールやスケジュールの情報を簡単に同期、更新できます。

社内で飛び回る人々

その性質上、社内で飛び回る人々と考えられるモバイルユーザーがどんどん増えています。こうした社員にとって、机で一日過ごすのは単に無理というものです。会議が次から次へとあり、不定期に外出したりと、常に動き回っているため、こうした社員はオフィスにいながらも机の前に座る時間がほとんどありません。ワイヤレス接続は、このような社員の生産性を保つ鍵となり、Windows XP を備えたノートブックコンピュータ、Windows Powered Pocket PC、またはWindows Powered Smartphone を用いると、日常のビジネスタスクを管理することができます。

こうした社員は、どこでも接続できるとよいのにと期待するようになっています。彼らの出身大学の多くでは、学内全体にワイヤレスネットワークが実装されるようになっているからです。この新しい社員層は、常時接続による利便性と、そのための安全で信頼性のあるワイヤレスインフラストラクチャの導入を求めています。そうすれば、会社のネットワークから入手できるサービスやアプリケーショを十分に活用できるからです。Microsoft Exchange Server 2000 や SharePoint Portal Server などのインフラストラクチャアプリケーションのコラボレーション機能を追加すると、自分の机に戻る時間のないこうした社員の生産性をさらに向上させることができます。

彼らは、デスクトップの代わりにノートブックを使い、それを外して会議から会議へと持ち歩くかもしれません。あるいは、Pocket PC か Smartphone を使って、机を離れているときも接続を維持して、仕事の管理を行うかもしれません。新 Windows XP Tablet PC は、どこにいても会社のインフラストラクチャの全リソースを常に必要としている人のために、ぴったりのソリューションである可能性があります。

企業の IT プロフェッショナルにとってもっとも重要なことは、使い方がやさしくて、社内で飛び回る人たちが動き回れることです。しかも、コンピュータを設定し直す必要なしにです。Burlington Northern Santa Fe Railroad のコンサルティングシステムエンジニアであるPeter Tijerina 氏は、「ワイヤレスネットワーク接続への需要は増大していると思います。Windows XP Professional のサポートの水準があれば、ユーザーは設定を変えたり、コンピュータを再起動したりせずに、ドッキング構成とワイヤレス構成を切り替えられるようになるでしょう。」と指摘します。

George は社内で飛び回る人たちの典型です。中間管理職の彼は、机にしばり付けられることだけが選択肢ではないと知っています。Windows XP ベースのノートブックかあるいはTablet PC を手に、Outlook でスケジュールを確認して、オフィスのどこで次の会議があるのか探して見つけます。その会議の場所に座っていると、アシスタントからWindows Messenger で、直前に会議の場所が変わり、今いる会議室は違うことを知らせてきます。

正しい会議室に着くと、会議の司会者がWindows XP の赤外線ワイヤレスリンク機能を使って、PowerPoint のプレゼンテーションをGeorge のTablet PC に直接映し出します。George はそのPowerPoint のスライドにメモや変更を付け足して、後で配れるようにすることができます。

オフィスのカフェテリアで急いで昼食を取ると、George は自分のチームのSharePoint Portal を開き、プロジェクトの現在の状況を確認します。Microsoft Word の変更履歴の記録機能を使用して、プロジェクト文書の最終改訂内容を承認し、その文書を新規に保存します。

George は、さっきの会議で机を離れた後に着信した電子メールがないかOutlook で確認し、スケジュールを再確認して、この先の会議数件に予定変更がないことを確認します。まだ少し時間があるので、Pocket PC 型電話とアドレス帳の最新の連絡先情報を同期して、翌日の訪問先の電話番号が入っていることを確認します。

在宅勤務者

伝統的な在宅勤務者が労働力の主要な部分を占めるようになっています。少なくとも週に 1 日は自宅で働くこうした人たちは、IT 部門にとって特別なケースです。多くの場合、在宅勤務者は広帯域接続やインターネットへのダイヤルアップ接続を使用して、自宅のコンピュータから会社のリソースにアクセスします。Windows XP とリモートデスクトップ機能を導入すると、在宅勤務者はオフィスのデスクトップにアクセスできるようになり、この接続を通して、すべての企業ネットワークリソースにアクセスできます。在宅勤務者が自宅やリモートで仕事をするのはごく時々だけである場合は、オフィスのWindows XP ノートブックコンピュータを持ち運ぶことがあります。

在宅勤務者は自宅のWindows XP PC を起動し、自宅の広帯域インターネット接続を使用して、IPSec でセキュリティを保護した VPN 接続をオフィスとの間で生成します。IT 部門が選定した内容によっては、在宅勤務者はそのあと、RDP 接続を起動し、会社のターミナルサーバーファーム、およびオフィスのいつものデスクトップコンピュータで利用できるアプリケーションすべてにアクセスできます。

会社がターミナルサービスを利用していない場合は、代わりに自宅のWindows XP Professional コンピュータからWindows XP デスクトップシステムに接続して、リモートデスクトップセッションを起動できるため、オフィスで通常利用できるすべてのツールにアクセスすることが可能です。パフォーマンスを得るために、自宅のコンピュータにバンドルされているMicrosoft Office XP のコピーを使用して作業を行っても、Outlook をリモートデスクトップセッションで実行していれば、会社のネットワークのセキュリティ対象から外れることはありません。ローカルのWindows XP デスクトップからリモートデスクトップに作業内容をコピーするのは、Windows XP では簡単なことであり、これがオフィスではなく自宅でも生産的な作業を実施できる理由の 1 つです。

データを収集する人々

フィールドサービスに従事し、勤務時間中、ずっと外出している従業員がいる業界はたくさんあります。そうした人たちは、その仕事のうちの第一または第二の業務として、データの収集、処理を行っています。患者のデータを収集する医療ワーカーから入出荷情報を記録する倉庫の担当者まで、膨大な数の垂直市場アプリケーションがワイヤレスデバイスで活用されています。このデバイスは Pocket PC で動作している Windows と同じものをベースにしています。

こうした人たちは、単純なPocket PC デバイスよりも、ワイヤレスWindows XP ノートブックコンピュータと、データ収集機能を備えた通信デバイスを利用できます。ここでのポイントは、ネットワーク接続にケーブルが必要ないということです。こうした人たちの仕事には、できる限り、モバイル性能のすぐれた情報収集ツールが必要です。

たとえば、データ収集を業務とする人たちの一人であるMaria の仕事は、自動車保険の請求査定です。彼女の一日はこんなふうに始まるかもしれません。スマートカードを使って VPN 接続を認証し、Outlook と Exchange 間の電子メールを同期します。これは、Windows XP ラップトップかTablet PC で行います。Maria は仕事場に向かい、そこで.NET Compact Framework カスタムアプリケーションが搭載されたPocket PC Phone Edition を使います。このアプリケーションは、会社の IT 部門が構築したもので、Visual Studioョ .NET を使って、仕事に必要な情報を追跡しています。現場で仕事をしながら、GPRS 接続を通して、SQL Server のマスタデータベース上のデータを更新できます。現場では同時に、SQL Server Notification からSystems Management Server (SMS) の自動メッセージもPocket PC Phone Edition で受信します。このメッセージで、ここの仕事が終わった後で、他にもう一件、寄るところがあることがわかりました。都合よく、カスタムアプリケーションはMapPointョ .NET Web サービスに接続しているので、次の仕事場所への行き方がわかりました。現場に到着すると、そこはかなり郊外だったので GPRS ネットワークに接続できません。しかし、カスタムアプリケーションがPocket PC Phone Edition にあるSQL Server 2000 Windows CE Edition (SQL Server CE) を使用して、ネットワークを受信可能な地域に戻るまでデータをローカルに保存するので、問題ありません。

その日の仕事が終わると、Maria はWiFi に接続できるインターネットカフェに立ち寄り、広帯域接続を利用してSQL CE からSQL Server のマスタデータベースとローカルデータを同期します。夕方のフライトが定刻通りか確かめたかったので、Pocket PC Phone Edition でフライト遅延を通知するメッセージがないか確認し、続いて、Pocket Internet Explorer で社内 Web の出張用サイトに移動して次の目的地のホテル情報を取得します。これらのサイトでは.NET Framework Windows を備えた.NET Server が実行されているので、Pocket PC のブラウザ (あるいは 200 以上の異なるデバイス/ブラウザの組み合わせ) に対してサイトの正常な表示を保証するASP.NET Mobile Control が含まれています。

プラットフォーム

IT プロフェッショナルにとって、モバイル IT インフラストラクチャの構築は、ユーザーにモビリティの利点を実装する上で鍵となります。マイクロソフトは、Microsoft オペレーティングシステムとサーバーソフトウェアに組み込まれたモバイルデバイスとアプリケーションに対して、きめ細かなサポートを実施し、このインフラストラクチャの構築に必要なアプリケーションとサービスを提供しています。

概要

まず、Windows Server のバックボーンから、IT 部門はモビリティソリューションの実装準備を始められます。それには、サーバーオペレーティングシステムの段階で VPN やリモートアクセスサーバーなどのサービスを有効にします。ユーザーの環境で必要であれば、ターミナルサービスをコアサーバーオペレーティングシステムに実装することも可能です。こうすると、サーバーベースのアプリケーションに、リモートディスプレイプロトコル (RDP) 経由でリモートアクセスできるようになります。このプロトコルは、多数のクライアントプラットフォームで利用可能です。

さらに、Exchange Server を追加すると、電子メール以外のこともできるようになります。つまり、SharePoint Portal Server などのサーバー製品を使用して、モバイルユーザーと、そうではないユーザーの間で協同作業を行うためのサービス生成を実現するための、基本的な要素を提供します。この上の階層にISA Server などのアプリケーションサーバーを構築すると、リモート接続を安全に保ち、制御することができるので、IT プロフェッショナルは安心して、プライベートネットワークの境界を越えるサービス拡張を実施できます。

モバイルクライアントシステムとしては、Smartphone から Windows XP Tablet コンピュータ、およびデスクトップコンピュータの代わりとしてまったく十分なWindows XP ノートブック PC まであります。これらはすべて、適切なバージョンのOffice XP クライアントソフトウェアと一緒に、Windows XP、Windows CE、Embedded Windows などWindows オペレーティングシステムのバージョンを実行しており、モバイルコラボレーションのコンピューティング環境を実現するツールを備えています。信頼性のあるWindows Server オペレーティングシステムを基盤として、その上に、モバイルデバイスのサポートを含む、モバイルユーザーに必要なアプリケーションとサービスを構築し、マイクロソフトは Windows ベースのエンドツーエンドのモビリティソリューションを顧客に提供します。次の表をご参照ください。

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エンドユーザーにモビリティ構想を提供するには、オペレーティングシステムとアプリケーションセットという 2 つのプラットフォームが不可欠であると、マイクロソフトは考えます。特に、組み込みモビリティ機能を備える 2 つのMicrosoft オペレーティングシステムであるWindows XP とWindows CE、およびユビキタスアプリケーションセットであるOffice XP は重要です。これらのオペレーティングシステムとアプリケーションは、IT プロフェッショナルを意識して構築されており、エンドユーザーへの提供を担当する IT スタッフに多大な利益をもたらすとともに、エンドユーザーがいつでも任意のデバイスから重要なビジネスデータにアクセスし、それに基づいて行動できるようにすることを目標としています。

Windows XP

Windows XP オペレーティングシステムは、使う上で長いトレーニングを受ける必要がないので、これまでより多くのことを短い時間で行うことができます。その結果、組織の中で IT に頭を悩ませる必要が減り、コンピューティング環境の生産性が向上します。

飛躍的な進歩の結果、Windows XP は最も IT 志向、モビリティ志向の強いWindows バージョンになりました。システムの復元、ドライバのブロックとロールバック、および Windows ファイル保護など、ユーザーが自分流に操作してしまうのを防ぐ機能から、リモートユーザーまたはモバイルユーザーへのサポートが具体的かつほとんど手間がかからなくなる機能まで (リモートアシスタンスやリモートデスクトップなど)、Windows XP はデスクトップおよびモバイルユーザーのための優れたオペレーティングシステムです。

Windows XP の信頼性が強化され、IT プロフェッショナルはWindows XP デスクトップを簡単に展開、サポート、および管理して、余った時間で他の IT 関連問題に対処できるようになります。ただ、このところ、IT プロフェッショナルを困らせるトピックがあるとすれば、それはセキュリティです。社内環境にモバイルユーザーを参加させるには、ユーザーが直接、データを制御して利用できるようにする必要があり、それは同時に、ネットワークが外部からの攻撃の危険にさらされる可能性があることを意味します。

Windows XP は、暗号化ファイルシステムにより、ユーザーのコンピュータ上のデータをすべて暗号化したり、IPsec の実装により、企業ネットワークに接続するリモートアクセスを保護したりするなど、これらの問題に真剣に取り組んでいます。また、グループポリシーの構成機能を追加して、リソースと情報へのユーザーアクセスを制限および定義できるため、Windows XP は高度なモバイルコンピューティングエクスペリエンスを実現する完璧なクライアントオペレーティングシステムです。しかも、Windows XP でエンドユーザーが得られる利点には何ら影響しません。

Office XP

Office XP を装備したモバイルユーザーは、社員が一人、出向いて行っていたタスクを何でもほとんど引き受けられるので、IT プロフェッショナルは安心です。Microsoft Outlook の改良によって、電子メールのセキュリティが危険にさらされることが非常に少なくなっています。また、Windows XP オペレーティングシステムの Update サービスと併用すると、IT プロフェッショナルは、モバイルユーザー全員のシステムを確実に最新の状態に保つことができます。さらに、モバイルユーザーは、Office XP のコピーをインストールするのに、オフィスに戻る必要さえありません。HTTP、HTTPS、およびFTP プロトコルのインストールサポートによって、安全な Web サイトから直接Office XP をインストールできます。

最新バージョンのOutlook では、エンドユーザーは複数の電子メールアカウントを構成して、データを単一のOutlook インターフェイスに配信することができ、MSNョ または HotMailョ Web ベースの電子メールサービスによる同一インターフェイスへのメッセージ配信さえも可能です。また、Windows Messenger を直接 Office に組み込むことができ (パブリック Web バージョンまたは企業ホストExchange Server バージョン)、ユーザーは社内で同僚とすぐ通信およびコラボレーションを実施できます。Office XP をWindows XP と組み合わせると、IT プロフェッショナルはモバイルユーザーのニーズに合った、強力で管理しやすいソリューションを得られます。

Windows CE

現在はWindows CE .NET という名称の、好評だったWindows CE 3.0 オペレーティングシステムの後継モデルである CEの最新バージョンは、堅牢なリアルタイムオペレーティングシステムであり、Pocket PC や Smartphone など、次世代のスマートデバイスを構築するために設計されています。Pocket PC や Smartphone などの設計に必要な、信頼性のあるコアオペレーティングシステムが提供されることで、Windows CE .NET デバイスは、使用者であるモバイルユーザーに豊かなパーソナルエクスペリエンスをもたらすでしょう。Windows CE .NET は .NET framework に直接、統合されており、次世代のモバイルデバイスのための優れたオペレーティングシステムです。

インフラストラクチャ サーバー

クライアント側のオペレーティングシステムとアプリケーションは、モビリティ構想の一部に過ぎません。信頼性のあるモバイルの利用を可能にする、アプリケーションサーバーを企業ネットワークに提供することは、モビリティという高度なパズルの中の大事なピースの 1 つです。

ISA Server

モバイルユーザーに企業ネットワークのリソースへのアクセスを提供するには、公衆インターネットとプライベートネットワーク間で、適所に強力で信頼性のあるセキュリティのしくみが必要です。この問題に対処する IT プロフェッショナルを支援するために、マイクロソフトはWindows 2000 Server 上で動作するISA Server を提供します(Windows .NET Server 2003 のプレリリースバージョンでも動作します)。

ISA Server は完全な Web キャッシュ、プロキシサーバー、および企業ファイアウォールソリューションを備えますが、企業ネットワークの外側にいるモバイルユーザーは、Windows Sever VPN テクノロジと IPsec セキュリティモデルのサポートに最も関心を持っています。ネットワーク管理者にとっては、ISA Server は集中的な管理ツールであり、使い慣れたWindows Server 管理のパラダイムを使用して、ネットワークリソースに対するモバイルユーザーのアクセスを制御できます。この集中管理機能によって、ネットワーク管理者は 1 か所でネットワーク実装を実行するのと同じくらい簡単に、大規模な分散ネットワーク環境を制御できます。

ISA Server は拡張性の高いアーキテクチャを備えており、マイクロソフトやサードパーティのソフトウェアベンダがモバイルアクセスアプリケーションを構築し、モバイルユーザーに企業ネットワークの恩恵と能力をフルに提供するために、理想的なプラットフォームです。ISA Server のその他の情報については、https://www.microsoft.com/japan/isaserver/ のISA Server のホームページから入手できます。

SharePoint テクノロジ

組織内およびインターネットを介した情報共有のために設計されたMicrosoft SharePoint テクノロジは、SharePoint Portal Server 2001 およびSharePoint Team Services から成り、IT 管理者が、組織内のグループが抱える情報共有の課題に対して、そのグループの大小に関わらず、対応できるようにします。

マイクロソフトは、個別のチームのコラボレーションを実現するためにSharePoint Team Services を設計しました。一方、SharePoint Portal Server は企業のポータルと検索ツールを提供します。2 つのテクノロジは共に、ユーザーに対して、情報やデータへのアクセスと整理や、ナレッジワーカーなら誰もが扱う文書の管理、およびその場所に関わらず、同僚との効率的なコラボレーションを可能にする能力を提供します。その特徴は、いったん IT プロフェッショナルがこうした機能を実装すると、それらすべての機能を使い慣れた Web ブラウザインターフェイス、または直接Microsoft Office アプリケーションから、利用できるようになるということです。SharePoint テクノロジに関するその他の情報については、https://www.microsoft.com/japan/sharepoint/ から入手できます。

Exchange Server 2000

マイクロソフトのメッセージングテクノロジのコアコンポーネントとして、Exchange Server 2000 は、社員とナレッジとをいつでも、どこででも結びつけるために設計されました。アクセス方法は、Outlook や Outlook Web Access などの幅広い選択肢から選ぶことができます。Exchange 2000 をMicrosoft Mobile Information Server 2002 と併用すると、Pocket デバイスとモバイルブラウザベースのデバイスにもアクセスできるようになります。Windows Server、Active Directoryョ ディレクトリサービス、インターネット情報サービス、Mobile Information Server 2002、Microsoft Operations Manager、および他の Microsoft 製品とのシームレスな統合から、マイクロソフトおよびサードパーティのソフトウェアベンダの付加価値のあるコラボレーションソリューションの幅広い選択まで、Exchange Server 2000 はあらゆる規模の組織が抱える、メッセージングとコラボレーションの要望に応えます。

モバイル環境には堅固なメッセージング基盤が必要です。Exchange Server 2000 は、今日の成長企業が求める複雑なモビリティソリューションを構築するための、信頼性と安定性のある非常に堅固な土台となり、システム管理者に安心感を与えます。Exchange Server 2000 に関するその他の情報については、https://www.microsoft.com/japan/exchange/ から入手できます。

サービス

マイクロソフトのモビリティ構想を実現するには、アプリケーションソフトウェアとオペレーティングシステムだけでは足りません。今日のビジネスの専門家たちが求める、信頼性の高い、包括的なソリューションを提供するには、強力なバックグラウンドサービスセットが必要です。マイクロソフトが開発、提供し続けているサービスが有能なモバイルワーカーであることを可能にすると理解されれば、IT プロフェッショナルのみなさんも安心していただけるでしょう。

.NET

Microsoft .NET は、情報、人、システム、およびデバイスの世界を接続するための、Microsoft ソフトウェアテクノロジの集まりです。インターネット上で、従来とはまったく違う高水準のソフトウェア統合が、XML Web サービスを利用して可能になります。XML Web サービスはそれぞれが独立した、小さな基礎単位アプリケーションであり、相互に接続、または他の大きなアプリケーションとも接続できます。

マイクロソフトは XML ベースの Web サービスの包括的なセットを開発しています。この設計の要は、アプリケーションによるシームレスなデータ共有を可能にすることです。XML サービスは Web ベースなので、分散モバイルアプリケーションの構築に使用して、組織のビジネスプロセス強化のために、いつでもどこでも使える、どのデバイス用のアプリケーションも

.NET は、スマートクライアントアプリケーションとオペレーティングシステムソフトウェアを使用して、わかりやすい方法でいつでもどこでも情報にアクセスできるクライアント側のアプリケーションとデバイスを作成できるように設計されています。Microsoft .NET イニシアチブの詳細については、Microsoft .NET Home (https://www.microsoft.com/japan/net/) を参照してください。

Hailstorm

Hailstorm とは、データの保存と検索用の Web ベースサービスを定義するテクノロジグループに付けられた、マイクロソフトのコード名です。Hailstorm の目的は、ユーザーがいつでもどこでも、任意のデバイスからデータにアクセスできるようにすることです。

実際の Web ベースのファイルシステム構築では、データを常にユーザーに属するものとして定義しており、そのデータへのアクセス方法に関係なく、従来のファイルとデータのストレージテクノロジではできなかったようなモバイルコンピューティングエクスペリエンスを、Hailstorm が可能にします。

Passport

基本的には、インターネットアクセスとオンラインショッピング用のシングルサインオンテクノロジである.NET Passport テクノロジは、顧客のオンラインエクスペリエンス向上のために、ビジネスで利用できる Web ベースのサービスの集まりです。

Passport は、安全な、そしてこれがもっとも重要ですが、保護されたオンラインエクスペリエンスを顧客に提供する上で、基礎となるものです。Passport では、Secure Sockets Layer (SSL) やTriple Data Encryption Standard (3DES) などの強力な暗号化テクノロジを統合して、データの秘密を守り、キーの所有者のみが企業および消費者の情報にアクセスできるようにデータを暗号化します。このサービスに関するその他の情報については、http://www.passport.com/ の.NET Passport テクノロジから入手できます。

結論

モビリティはもはや、単なる選択肢の 1 つではありません。企業のコンピューティングという高度なパズルの中の、要となるピースです。マイクロソフトがモバイル製品の方向性を改善および定義するために努力を続けていることは、現在および将来の製品開発を最優先と考えている姿勢の表れです。Windows XP の優れた機能セットはデスクトップユーザーに提供され、それを拡張してモバイルユーザーにも提供されましたが、マイクロソフトは企業の IT プロフェッショナルにこの機能を提供して、モビリティのための堅固な基礎を展開し始められるようにしています。モバイルの成長の未来は、マイクロソフトのオペレーティングシステムとアプリケーションセットによって支えられ、強化されるはずだということを理解しているからです。