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シャドウ冗長メール フローのシナリオ

 

適用先: Exchange Server 2010 SP2, Exchange Server 2010 SP3

トピックの最終更新日: 2010-06-07

Microsoft Exchange Server 2010 のシャドウ冗長機能により、メッセージ送信中の期間全体にわたって、冗長性が提供されます。「シャドウ冗長について」で一般的なメッセージの流れについて説明します。ここでは、Exchange に関連する特定のメッセージ フロー シナリオごとの動作について詳細に説明します。

メール フローのシナリオ

次の図は、Exchange 組織で可能な各冗長性シナリオ、およびそれぞれのシナリオでメッセージの冗長性がどのように実現されているかを示しています。網掛けの領域は、シャドウ冗長が有効になっている箇所を示します。Exchange 2010 シャドウ冗長は、網掛けの領域内でメッセージ転送中のデータ損失を防ぎます。

注意

簡略化のため、図ではクライアント アクセス サーバーが省略されています。

シャドウ冗長メール フローのシナリオ

シャドウ冗長メール フローのシナリオ

前の図からわかるように、Exchange 組織で可能なすべてのメール フロー パスが、次のシナリオのいずれかに該当します。

A. MAPI/Windows モバイル クライアント送信

B. メールボックス サーバーからハブ トランスポート サーバーへのメール フロー

C. ハブ トランスポート サーバーからメールボックス サーバーへのメッセージ配信

D. Exchange 2010 トランスポート サーバー間のメール フロー

E. Exchange 2010 トランスポート サーバーからシャドウ冗長をサポートしないメール サーバーへのメール フロー

F. シャドウ冗長をサポートしないメール サーバーから Exchange 2010 トランスポート サーバーへのメール フロー

ここでは、メール フローのシナリオごとの動作について説明します。

A. MAPI/Windows モバイル クライアント送信

MAPI または Windows モバイル クライアントからのメッセージ送信は冗長ではありません。メッセージがメールボックス サーバーに正常に格納されると、Exchange の高可用性機能が有効になり、データの損失を防止できます。このシナリオでは、始めから終わりまで、メッセージ フローの全体像が得られます。

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B. メールボックス サーバーからハブ トランスポート サーバーへのメール フロー

Exchange 2010 メールボックス サーバーが Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーにメッセージを送信すると、次の処理が行われます。

重要

Exchange 2010 メールボックス サーバーは、以前のバージョンの Exchange を実行しているトランスポート サーバーと通信できません。したがって、ここでは Exchange 2010 メールボックス サーバーから Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーへのメール フローについてのみ説明します。

  1. メール発信サービスが、新しいメッセージがあることをハブ トランスポート サーバーに通知します。

  2. ハブ トランスポート サーバーが、メッセージを送信するメールボックスの送信トレイからメッセージを取得し、それをデータベースに格納します。

  3. メッセージの受信者が同じ Active Directory サイトにあるメールボックス サーバー上に存在する場合、ハブ トランスポート サーバーは、シナリオ C に示した手順に従ってメッセージを送信先のメールボックスに配信します。他のすべての受信者に対し、ハブ トランスポート サーバーは、メッセージを次ホップに配信します。

  4. 次ホップへの配信が終了すると、ハブ トランスポート サーバーは、メッセージの処理を終了し、メッセージの所有権を引き受けたことをメールボックス サーバーに通知します。この通知の後、メッセージは、送信トレイから削除されます。

  5. そのメッセージに対してシャドウ冗長をサポートする他のホップがない場合、ハブ トランスポート サーバーがメッセージを削除します。それ以外の場合は、メッセージをシャドウ メッセージに変換するため、メッセージを配信したホップのシャドウ キューにメッセージを格納します。

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C. ハブ トランスポート サーバーからメールボックス サーバーへのメッセージ配信

Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーが Exchange 2010 メールボックス サーバーにメッセージを配信すると、次の処理が行われます。

重要

Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーは、以前のバージョンの Exchange を実行しているメールボックス サーバーと通信できません。したがって、ここでは Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーから Exchange 2010 メールボックス サーバーへのメール フローについてのみ説明します。

  1. ハブ トランスポート サーバーが、メッセージを送信先のメールボックスに配信します。

  2. メッセージがすべての送信先のメールボックスに配信されると、ハブ トランスポート サーバーは、メッセージをトランスポート収集に追加します。

  3. ハブ トランスポート サーバーが、メッセージを受け取ったホップに対する破棄通知をキューに入れます。これらの破棄通知は、ホップがハブ トランスポート サーバーをクエリしたときに作成されます。

  4. 前のホップが、対応するシャドウ メッセージを削除します。

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D. Exchange 2010 トランスポート サーバー間のメール フロー

Exchange 2010 を実行するトランスポート サーバー間でのメッセージ交換のメール フロー プロセスは、2 つのハブ トランスポート サーバー間の場合もハブ トランスポート サーバーとエッジ トランスポート サーバー間の場合も、すべて同じです。メッセージをある Exchange 2010 トランスポート サーバーから別のトランスポート サーバーに転送すると、次の処理が行われます。簡略化のため、メッセージを送信しているサーバーの名前を Hub01、メッセージを受信しているサーバーの名前を Edge01 とします。

  1. Hub01 が、Edge01 への SMTP 接続を確立します。

  2. Edge01 が、シャドウ冗長サポートを通知します。

  3. Hub01 が、SMTP セッションでシャドウ冗長を要求するため XSHADOW コマンドを発行します。このプロセスは、SMTP セッションでのトランスポート層セキュリティ (TLS) の確立と類似しています。

  4. Hub01 が Edge01 に送信する必要のあるメッセージごとに、以下を実行します。

    1. Hub01 が、Edge01 にメッセージを送信します。

    2. Edge01 が、メッセージを Hub01 によるシャドウとしてマークします。

    3. Hub01 が、Edge01 をプライマリ サーバーとしてマークし、それを Edge01 のシャドウ キューに追加します。

    4. Hub01 が、メッセージの受信場所のホップに送信されたメッセージの破棄通知を準備します。

  5. Hub01 が Edge01 に、前に Edge01 に送信したメッセージの破棄状態をクエリします。

  6. Edge01 が、Hub01 用に準備したすべての破棄通知を送信します。同じ SMTP セッションで送信されたメッセージに対するものも、前の SMTP セッション中に送信されたメッセージに対するものもあります。

  7. Hub01 が、Edge01 が破棄通知を送信したすべてのシャドウ メッセージを削除します。

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E. Exchange 2010 トランスポート サーバーからシャドウ冗長をサポートしないメール サーバーへのメール フロー

Exchange Server 2007 トランスポート サーバーも Exchange Server 2003 ブリッジヘッド サーバーも、シャドウ冗長をサポートしません。このため、以前のバージョンの Exchange との共存シナリオがある場合、Exchange 2010 冗長機能は、送信先までではなく、従来の Exchange ホップまでのメッセージ配信のみを保証します。同じことは、Exchange 2010 エッジ トランスポート サーバーが Exchange 以外のメール サーバーにメッセージを送信する場合にもあてはまります。

Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーが以前のバージョンの Exchange を実行している Exchange トランスポート サーバーにメッセージを送信している場合、または Exchange 2010 エッジ トランスポート サーバーが Exchange 以外のメール サーバーにメッセージを送信している場合、次の処理が行われます。簡略化のため、Hub01 という Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーが、Legacy01 という古い Exchange トランスポート サーバーにメッセージを送信しているとします。

  1. Hub01 が、Legacy01 への SMTP 接続を確立します。

  2. Legacy01 は、シャドウ冗長サポートを通知しません。

  3. Legacy01 がシャドウ冗長を通知しなかったため、Hub01 は SMTP セッションでシャドウ冗長を開始しません。

  4. Hub01 が、Legacy01 にメッセージを配信します。

  5. Hub01 が、メッセージを削除します。

  6. Hub01 が、メッセージの受信場所のホップに対する破棄通知を準備します。

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F. シャドウ冗長をサポートしないメール サーバーから Exchange 2010 トランスポート サーバーへのメール フロー

Exchange 組織には、シャドウ冗長をサポートしないメール サーバーが Exchange 2010 トランスポート サーバーに対して SMTP 接続を確立し、メッセージを送信できる 4 つのエントリ ポイントがあります。

  • Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーに接続する Exchange 2010 ユニファイド メッセージング (UM) サーバー。

  • Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーに接続する、Exchange 2007 または Exchange 2003 を実行している Exchange トランスポート サーバー。

  • Exchange 2010 エッジ トランスポート サーバーに接続する、インターネット上の Exchange 以外のメール サーバー。

  • UNIX サーバーなどの組織内の Exchange 以外のメール サーバー、または Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーにメッセージを送信している SMTP クライアント。

このシナリオでは、Exchange 2010 は受信確認の遅延と呼ばれる機能を使用してシャドウ冗長を実現します。Exchange 2010 トランスポート サーバーがシャドウ冗長をサポートしないメール サーバーからメッセージを受信すると、メッセージが送信先に正常に配信されたことを確認するまで、送信メール サーバーへの受信確認の送信が遅延します。受信確認の遅延の詳細については、「シャドウ冗長について」を参照してください。

このシナリオを説明するため、Edge01 という Exchange 2010 エッジ トランスポート サーバーが Internet01 というインターネット上の Exchange 以外のメール サーバーからメッセージを受信しているとします。この例では、次の処理が行われます。

  1. Internet01 が、Edge01 への SMTP 接続を確立します。

  2. Edge01 が、シャドウ冗長サポートを通知します。

  3. Internet01 は、シャドウ冗長をサポートしないため、単にメッセージを Edge01 に送信します。

  4. Edge01 が、メッセージを遅延受信確認メッセージとしてマークします。

  5. Edge01 が、シナリオ D で示した手順を使用して次ホップにメッセージを配信します。

  6. Edge01 が、次ホップにメッセージの破棄状態をクエリします。

  7. Edge01 は、すべての次ホップから破棄通知を受信すると、受信確認を Internet01 に送信します。

  8. Edge01 が、メッセージをデータベースから削除します。

    注意

    Edge01 は、すべての次ホップに 30 秒以内にメッセージを正常に配信できないと、タイムアウトし、受信確認を Internet01 に送信します。このタイムアウト値は、受信コネクタの MaxAcknowledgementDelay 属性の値によって制御されます。

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