展開の概要 (SharePoint Foundation 2010)

 

適用先: SharePoint Foundation 2010

この記事では、Microsoft SharePoint Foundation 2010 のファーム展開の概要について説明します。Microsoft SharePoint Foundation のファームの複雑さと規模は多様ですが、綿密な計画と継続的なテストおよび評価を行うフェーズ別展開によって、想定外の結果が生じる危険性を大幅に抑えることができます。

注意

この記事では、サイトおよびソリューションの計画については説明しません。これらについては、「サイトおよびソリューションの計画 (SharePoint Foundation 2010)」を参照してください。

この記事で説明する内容を表す図については、「技術ダイアグラム (SharePoint Foundation 2010)」の SharePoint 2010 製品展開モデルを参照してください。

この記事の内容

概念

SharePoint Foundation は柔軟性に優れ、さまざまな機能を豊富に備えていますが、そのため、SharePoint Foundation を適切にインストールおよび構成する作業は非常に複雑になることがあります。SharePoint Foundation 2010 製品を適切に展開およびサポートするには、SharePoint Foundation 環境を構成する次の重要な要素について基礎的な理解が求められます。

  • サーバー ファーム: SharePoint Foundation の論理アーキテクチャ設計のトップレベル要素。

  • Web アプリケーション: SharePoint Foundation 2010 によって作成および使用される IIS Web サイト。

  • コンテンツ データベース: Web アプリケーションのコンテンツを格納する記憶域。ただし、サイト コレクション レベルで、コンテンツを複数のコンテンツ データベースに分けることができます。

  • サイト コレクション: 所有者が同じで、管理の設定を共有する Web サイトの集合。

  • サイト: サイト コレクション内でホストされる 1 つ以上の関連 Web ページと他のアイテム (リスト、ライブラリ、ドキュメントなど)。

SharePoint Foundation 環境の各要素ついて、また、それらの要素をソリューション用に構成する方法について理解するほか、物理アーキテクチャ、インストールおよび構成、および各種展開ステージについて理解する必要もあります。

物理アーキテクチャ

(1 台以上のサーバーとネットワーク インフラストラクチャで構成される) 物理アーキテクチャにより、SharePoint Foundation ソリューションの論理アーキテクチャを実装できます。一般に、物理アーキテクチャは、規模とトポロジの 2 つの観点から記述されます。規模は、ユーザー数やドキュメント数などを単位として測定でき、ファームを小規模、中規模、または大規模として分類するのに使用されます。トポロジは、階層またはサーバー グループの概念を使用して、ファーム サーバーの論理的な配置を定義します。

規模

規模は、ユーザー数やコンテンツ アイテム数などを基本単位として測定されます。サーバー ファームが小規模、中規模、または大規模のいずれであるかは、規模によって決まります。

  • 一般に、小規模サーバー ファームは、最低 2 台以上の Web サーバーと 1 台のデータベース サーバーで構成されます。どちらか一方の Web サーバーでサーバーの全体管理サイトをホストし、他方の Web サーバーで追加のファーム関連タスク (ユーザーにコンテンツを提供するなど) を処理します。

    小規模ファームは、ユーザー数、コンテンツ アイテム数、および必要なサービス数に応じて、専用アプリケーション サーバーを使用して 3 層にスケール アウトできます。

  • 一般に、中規模サーバー ファームは、2 台以上の Web サーバー、2 台のアプリケーション サーバー、および複数台のデータベース サーバーで構成されます。最初は上記の小規模構成から始めてください。その後、サーバーのワークロードに適合するようにスケール アウトすることをお勧めします。

    サービスがリソースを過剰に使用することがわかっているシナリオでは、アプリケーション層をスケール アウトできます。パフォーマンス データを調べると、専用サーバーへのオフロードを検討した方がよいと思われるサービスがわかります。

  • 中規模ファームを大規模サーバー ファームにスケール アウトする要因としては、容量とパフォーマンスの要件を満たす必要がある、または SharePoint Foundation ソリューションの実装前の設計が考えられます。一般に、3 層トポロジ環境では、すべての層で専用サーバーを使用します。また、これらのサーバーは、通常、ファーム内での役割によってグループ化されます。たとえば、クライアント関連のすべてのサービスを 1 台または 2 台のサーバーにグループ化します。その後、これらのサービスに対するユーザー要求に応じて、必要であれば、このグループにサーバーを追加してスケール アウトできます。

    注意

    ファームをスケール アウトするときは、パフォーマンス特性が同様のサービスまたはデータベースどうしを数台の専用サーバーにグループ化し、それらのサーバーをグループとしてスケール アウトすることをお勧めします。大規模環境で、どのグループをスケール アウトするかは、ファーム内の各サービスに対してどのような要求があるかによって異なります。

小規模、中規模、および大規模ファームに関連する特定の数値については、「パフォーマンスと容量の管理 (SharePoint Server 2010)」を参照してください。

トポロジ

トポロジでは、ファーム サーバーでホストするコンポーネント、またはサーバー ファーム内でのファーム サーバーの役割に応じて、ファーム サーバーを論理的に配置するモデルとして層を使用します。SharePoint Foundation のファームは、次のように、1 層、2 層、3 層のいずれかで展開されます。

  • 1 層展開では、SharePoint Foundation とデータベース サーバーは 1 台のコンピューターにインストールされます。

  • 2 層展開では、SharePoint Foundation のコンポーネントとデータベースは、それぞれ別のサーバーにインストールされます。これは小規模ファームに相当する展開です。フロントエンド Web サーバーは第 1 層に、データベース サーバーは第 2 層に配置されます。コンピューター業界では、第 1 層を Web 層と、データベース サーバーをデータベース層またはデータベース バックエンドと呼びます。

  • 3 層展開では、フロントエンド Web サーバーが第 1 層に、アプリケーション サーバーが第 2 層 (アプリケーション層と呼びます) に、データベース サーバーが第 3 層に配置されます。3 層展開は、中規模ファームと大規模ファームで使用されます。

インストールおよび構成

SharePoint Foundation ソリューションの計画が終了したら、ソリューションをホストする SharePoint Foundation ファームを作成できます。最初の手順では、SharePoint Foundation 2010 をインストールし、ソリューションに必要なファームを作成します。環境を準備するプロセスは、次のフェーズで構成されます。

  1. サーバーを準備する。

  2. ファームを作成する。

  3. 設定、サービス、ソリューション、およびサイトを構成する。

注意

作成および展開するファームは、SharePoint 2010 製品展開モデルに示すさまざまな展開ステージを経過するのに伴い、その規模、トポロジ、および複雑さは大きく変化していきます。SharePoint 2010 製品展開モデルは、一般的なフェーズ別展開とその予想結果を示しています。この記事の「展開ステージ」に記載されるすべてのステージに従うことをお勧めするのは、これが理由です。

サーバーを準備する

このフェーズでは、サーバーで製品をホストする準備を行います。このフェーズには、サポート サーバーや、SharePoint Foundation をインストールするサーバーなどが該当します。次のサーバーは、ファームをサポートおよびホストするように構成する必要があります。

ファームを作成する

このフェーズでは、製品をインストールし、各サーバーをファーム内での役割をサポートするように構成します。また、構成データベースと、SharePoint サーバーの全体管理 Web サイトも作成します。SharePoint Foundation ファームには次のサーバーが必要です。

  • データベース サーバー: DBA によって作成されるデータベースを使用するように計画していない場合は、構成データベース、コンテンツ データベース、およびその他必要なデータベースが SharePoint 製品構成ウィザードの実行時に作成されます。

  • アプリケーション サーバー: アプリケーション サーバーの準備が終了したら、Information Rights Management (IRM) や意思決定支援などの機能のサポートに必要な追加コンポーネントをインストールします。SharePoint サーバーの全体管理 Web サイトをホストするサーバーに SharePoint Foundation をインストールし、SharePoint 製品構成ウィザードを実行してファームを作成および構成します。

  • フロントエンド Web サーバー: SharePoint Foundation を各 Web サーバーにインストールし、言語パックをインストールし、SharePoint 製品構成ウィザードを実行して Web サーバーをファームに追加します。

    注意

    すべてのフロントエンド Web サーバーの追加および構成が終了したら、トポロジ デザインの一部として別のアプリケーション サーバーをファームに追加できます。

サポートされている展開シナリオの詳細については、「展開シナリオ (SharePoint Foundation 2010)」を参照してください。

設定、サービス、ソリューション、およびサイトを構成する

このフェーズでは、ファームでサイト コンテンツをホストする準備をします。そのためには、次の手順を実行します。

注意

ファームの構成手順は、サーバー インフラストラクチャの特定の層に限定されたものではありません。

展開ステージ

SharePoint Foundation 2010 ソリューションをステージ別に展開すると、体系的なアプローチを利用できます。たとえば、パフォーマンスおよび使用状況データを収集してソリューションを評価できます。また、ファームを運用ステージに移行する前に、容量管理に関する前提事項を検証して、問題点を洗い出すこともできます。

ファームの展開は、次のステージに分けて行うことをお勧めします。

  • 計画

  • 開発

  • 概念実証 (POC)

  • パイロット

  • ユーザー受け入れテスト (UAT)

  • 運用

計画

ファームを展開する前に、展開するソリューションを計画し、サーバーのリソースやファーム トポロジなどのインフラストラクチャ要件を決定する必要があります。計画ステージの完了時には、次の内容に関する文書が完成している必要があります。

  • ソリューションをサポートするインフラストラクチャ デザイン

  • ファームとソリューションの実装方法の詳細な記述

  • ソリューションのテストと検証の計画

  • サイトとソリューションのアーキテクチャ

  • ソリューションをサポートするための監視および持続的エンジニアリング要件

  • ソリューションの管理方法の記録

  • ソリューションの導入推進を目的とした、ユーザーへのソリューションの伝達方法

SharePoint Foundation 2010 の計画とアーキテクチャ」に、計画に関する資料と記事が記載されているので参照してください。

重要

リソースと時間の制約から、計画ステージにおける綿密性が欠けてしまうことがあります。計画時に見過ごしたり軽視したりした要素が運用時になって重大な問題として表面化する場合もあるので、できる限り入念に計画することをお勧めします。このような問題が発生すると、多くの余分な作業と予算外のリソースが必要となり、SharePoint Foundation の成功を妨げる可能性につながります。

計画ステージが終了したら、次の展開ステージに進みます。展開ステージでは、テストを通じて、計画、構成、およびトポロジの更新と見直しを行います。

開発

開発ステージでは、SharePoint Foundation を単一または複数のサーバーに展開して、実装するソリューションを開発、テスト、評価、および改良します。この環境はソリューションの開発時に、必要に応じてスケールされ、将来の開発およびテストのためにスケール ダウンした環境として残しておくことができます。これは安定した環境ではなく、サービス レベル アグリーメントはありません。

概念実証 (POC)

概念実証ステージの目標は 2 つあります。それは、SharePoint Foundation を理解すること、およびビジネス ニーズへの対応という観点から SharePoint Foundation を評価することです。第 1 レベルの製品評価は、すべての製品コンポーネントを単一サーバーにインストールして行うことができます。より広範な製品評価は、概念実証展開によって行います。

単一サーバーまたは小規模ファームに概念実証展開を行うと、評価の範囲を広げることができます。この展開では、IT スタッフ以外のスタッフも評価チームに参加するので、SharePoint Foundation の機能が組織において実際にどのように利用されるかに関する広い視野が得られます。概念実証展開の利点は、初期計画の改良に利用できるデータを収集できることです。このデータ (ページの外観、ユーザーの行動パターン、サーバー リソース使用率など) に基づいて、ファームの規模を決めるベンチマーク設定も開始できます。概念実証は、サービス アプリケーションの評価と、エンド ユーザーに提供する機能セットの決定にも役立ちます。

概念実証ステージでこれらの機能の固有の特徴と機能性を理解することは、トポロジ全体を定義するのに役立つので重要です。概念実証展開では追加のリソースが必要となり、SharePoint Foundation を運用環境に移すのにかかる時間が増加することに注意してください。

ヒント

仮想環境は柔軟性に優れ、迅速な展開機能を備え、仮想マシンを以前のステージにロールバックできます。このような点から、仮想化を利用すると、SharePoint Foundation の評価に最適なプラットフォームが得られます。

パイロット

ソリューションに小規模なテストを行う場合は、パイロットを使用します。パイロット展開の使用には 2 つのアプローチがあります。1 つ目のアプローチでは、機能テストを重点的に行い、実際のデータは使用しません。2 つ目のアプローチでは、実際のデータを使用して運用特性をテストし、パイロット ユーザーはさまざまな種類のタスクをテストします。幅広い視点が得られること、また、実際のデータを収集してソリューション デザインの改良に利用できることから、後者のアプローチをお勧めします。

パイロット展開には多くの利点があります。収集したデータを利用して、ファーム デザインの次の側面を検証できます。

  • インフラストラクチャ デザイン

  • 容量の管理の想定

  • サイトとソリューションのアーキテクチャ

  • ソリューションの使用の想定

また、パイロット ステージでは、一段と詳細なベンチマークを行うために追加で収集する必要があるデータを決定できます。これは、ファームに追加する付加機能や付加サービスの潜在的な効果をユーザー受け入れテスト前に評価する場合に重要です。

パイロット展開の結果、収集したデータを利用して、ソリューションの各種コンポーネントとサポート インフラストラクチャを調整できます。

ユーザー受け入れテスト (UAT)

ユーザー受け入れテスト展開 (運用前環境とも呼ばれます) は、パイロット展開から運用展開への移行ステップとして使用されます。ユーザー受け入れテストの範囲、規模、および期間は、組織のビジネス プロセスによって決まります。

運用前環境のトポロジは、計画時の運用トポロジと同じであるか、またはよく似たものである必要があります。ユーザー受け入れテストでは、SharePoint Foundation ソリューションは、運用データの一部またはすべてと比較検証されます。この展開ステージは、パフォーマンスを調整したり、バックアップと復元などの運用手順を検証したりできる最後の機会です。

運用

最後のステージでは、ファームを運用環境に展開します。このステージでは、ユーザー受け入れステージで見つかった、ソリューションとインフラストラクチャの必要な調整を実装します。

ファームを運用に移行するには、次のタスクを実行する必要があります。

  • ファームを展開します。

  • ソリューションを展開します。

  • 操作計画を実装します。

  • 必要に応じて、オーサリング ファーム、ステージング ファーム、サービス ファームなどの追加環境を展開します。