IIS 7.0 におけるメタベースの互換性

[アーティクル]
12/11/2009

公開日: 2007 年 11 月 22 日 (作業者: saad (英語))

更新日: 2008 年 3 月 11 日 (作業者: saad (英語))

はじめに

IIS 7.0 構成システムは、レガシー構成インターフェイスと API レベルで互換性があります。 IIS 7.0 構成システムは、Admin Base オブジェクト (ABO) インターフェイス (IMSAdminBase とも呼ばれる) や、IIS 6.0 の ABO 上に構築されている ADSI および WMI プロバイダーをサポートしています。 IIS 7.0 のメタベース互換性コンポーネントがインストールされていれば、既存のアプリケーションおよびスクリプトから IIS 7.0 上のこれらのプログラムインターフェイスを呼び出して、正しく実行させることができます。

注:既定では、このコンポーネントはインストールされません。

このドキュメントの内容:

メタベース互換性サポートのインストール
メタベース互換性の仕組み
その他のメタベース構成データ
レガシーメタベース機能

メタベース互換性サポートのインストール

このコンポーネントは、セットアップの [Internet Information Services] -> [Web 管理ツール] -> [IIS 6 と互換性のある管理] 機能の下にあります。

このコンポーネントは IIS 7.0 では使用しないので、既定ではインストールされません。 IIS 7.0 では、新しいインターフェイスを持つ新しい構成システムが使用されます。レガシーインターフェイスには一部制限があり、分散構成ファイルの操作には適していません (後出の「制限事項」を参照)。したがって、徐々に、また、構成システムに対してさらに多くの委任を許可する (つまり、IIS の設定を含む web.config ファイルの数が増加する) 場合は特に、レガシースクリプトおよびアプリケーションを新しいシステムおよびインターフェイスに移植することをお勧めします。

また、新しいスクリプトやアプリケーションは、新しいインターフェイスを使用して開発することをお勧めします。新しいシステムと連携してスムーズに動作するようになり、構成システムの新しいプロパティ、概念、構造にもアクセスできます。

レガシースクリプトおよびアプリケーションをすべて新しいインターフェイスに移植した後、メタベース互換性機能をアンインストールすることを推奨します。

メタベース互換性の仕組み

メタベース互換性機能は、メタベースサービス (IISADMIN) 内で実行されます。メタベースサービスは、ABO に対するすべてのメソッド呼び出しをインターセプトします。メソッド呼び出しに Web サーバーの構成に関する情報が含まれる場合、そのメソッド呼び出しは新しいシステムにマップされます。その情報が FTP、SMTP、または NNTP 構成に関するものである場合は、メタベースシステムの通常のロジックに従って、メタベースファイル内で処理されます。

Web サーバーの構成に含まれるカスタムプロパティも、新しいシステムにマップ (および永続化) されます。

こうしたマッピングは、対象のメタベースノードに基づいて決定されます。 Webサーバーの構成は、通常、カスタムプロパティを含め LM/W3SVC の配下にあり、MIME マップなどのいくつかの機能が追加されています。

マッピングの目的は、ABO ビューと新しいシステムビューとを相互に変換することです。たとえば、新しいシステムでは、各サイトの下、そしてすべての仮想ディレクトリの上にアプリケーションを置くという概念が採用されています。レガシーシステムではアプリケーションの扱い方が異なり、アプリケーションは単なる仮想ディレクトリで、アプリケーションであることを示す特殊なプロパティ (AppIsolated や AppRoot) でマークされています。

ABO を呼び出して Web サーバーの構成を書き込むと、メタベース互換性コンポーネントによってデータが applicationHost.config に保存されます。情報はメモリ内に保持されないため、この処理は "ライトスルー" と呼ばれます。 ABO を呼び出して Web サーバーの構成を読み込むと、メタベース互換性コンポーネントにより情報が applicationHost.config から読み込まれます。この処理も情報の取得先がメモリではないので、"リードスルー" と呼ばれます。

サーバーランタイムで利用することができない不完全なデータは、applicationHost.config の customMetadata と呼ばれる特別なセクションに保存されます。このセクションは、メタベース互換性機能用の永続ストアとして使用され、ユーザーはその内容を変更できません。不完全なデータとは、たとえば、レガシースクリプトによってサイト ID が設定されているが、サイトバインドが設定されていないような場合です。 IIS 6.0 では、このような呼び出しによって、無効なサイトオブジェクトが構成に追加されていました。 IIS 7.0 では、このような呼び出しはこのセクションに保持され、サーバーで使用されません。それ以降の呼び出しでサイトバインドが設定された場合、サイトオブジェクトは完全であると見なされ、サーバーランタイムによって選択されるセクションにすべて保存されます。その時点で一時的なデータは削除されるので、データの残滓をシステムからクリーンアップする必要はありません。このような後続の呼び出しが行われない場合、サーバーランタイムではこの無効なサイトは認識されませんが、レガシースクリプトでは、IIS 6.0 の場合と同様に、無効なサイトが ABO ビューに表示されます。レガシースクリプトから見ると、システムは IIS 6.0 と完全に互換しています。

レガシースクリプトおよびアプリケーションによって設定されたカスタム Web サーバーのプロパティは、常にこのセクションに保存されます。レガシーインターフェイスによって、IIS 6.0 の場合とまったく同様に取得できるので、システムは完全に互換しています。これは、IIS 7.0 構成システムの推奨される拡張方法とは明らかに異なります。したがって、ここでも、このようなアプリケーションを徐々に移植し、IIS 7.0 構成システムで提供されている新しいインターフェイスや新しい機能を使用することを検討してください。

その他のメタベース構成データ

FTP、SMTP、および NNTP の構成は引き続きメタベースシステムに保存され、新しい IIS 7.0 構成システムには移植されていません。これらの構成設定は、レガシープログラムインターフェイスと、metabase.xml ファイルの直接編集によって管理します。

概要

メタベースのキーおよびプロパティのほとんどの操作はシームレスに動作し、構成セクションや名前付きのプロパティなどの新しい IIS 7.0 の概念ではなく、従来の概念と名前が使用されます (従来同様、ABO ではプロパティ ID を、ADSI ではレガシープロパティ名を使用できます)。

従来のユーザーは、ADSI スキーマを使用したり、IIS 6.0 と同様に拡張したりすることができます。

XML ファイルの互換性

Web サーバーを拡張したカスタム構成を含む Web サーバー構成は、metabase.xml ではなく system32\inetsrv\applicationHost.config に保存されます。したがって、レガシーサポートのレベルは API レベルで、ファイル形式レベルではありません (一部のレガシー機能がサポートされていないのもこのためです)。レガシーインターフェイスの呼び出し元は、新しいファイル形式やファイル名または概念ではなく、IIS 6.0 の場合と同様に、構成の "ABO ビュー" を取得します。

これは、メタベース ACL などの概念がサポートされていないということを意味します。メタベース ACL がメタベースファイル形式と密接に関連しているからです。 IIS 7.0 構成システムでは、構成ファイル上の標準ファイル ACL を活用します。メタベース ACL と標準ファイル ACL のマッピングは提供されません。

履歴ファイル、バックアップ/復元、およびインポート/エクスポートなどの機能は、新しい構成システムを利用するので、動作が異なります。したがって、バックアップ構成に対する ABO 呼び出しは、無視されます。

レガシーメタベース機能

Windows Server® 2003 Service Pack 1 の IIS 6.0 では構成の監査機能が追加されました。現在、この機能は IIS 7.0 ではサポートされていません。新しい構成システムの設計が大きく異なるからです。たとえば、IIS 7.0 はインプロセス構成システムを使用していますが、IIS 6.0 では、カプセル化によって他のプロセスのユーザーコードから分離された専用の NT サービスを使用しています。

レガシーメタベースプロパティ

レガシープロパティのみがサポートされます。新しい IIS 7.0 構成プロパティは従来のユーザーには返されません。また、.NET Framework 構成プロパティも返されません。

マッピングの制限

マッピングアルゴリズムでは、IIS 6.0 と IIS 7.0 の構成システム間の相違点を考慮する必要があります。たとえば、IIS 6.0 ではサイトに名前 (サーバーコメント) を付ける必要はありません。名前を付ける場合も、一意の名前である必要はありません。 IIS 7.0 では、各サイトの名前が一意である必要があります。このため、古い ServerComment プロパティを新しい Name プロパティにマップすることは容易ではありません。マッピングアルゴリズムによって、名前は強制的にサイトごとに一意になります (これは IIS 7.0 構成システムの要件です)。一意の名前を作成するために、サーバーコメントに数字が追加されます。サーバーコメントとして実際に設定された値は、スクリプトで指定された値と異なります。

分散構成

メタベース互換性機能では、applicationHost.config のみがサポートされています。 web.config ファイル内の構成は、従来のユーザーには返されないからです。 applicationHost.config で使用される場所のタグでは、URL ごとの構成がサポートされます。