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展開の計画

公開日: 2007 年 11 月 30 日 (作業者: walterov (英語))

更新日: 2009 年 1 月 17 日 (作業者: walterov (英語))

はじめに

このフェーズでは、適切な展開シナリオと手法の選定、要件を満たすインフラストラクチャの確保、適切な構成設定やスクリプトの決定、監視計画の策定、チーム メンバーのトレーニングの実施といった作業を重点的に行います。表 1 に、計画フェーズの手順を大まかに示します。

この記事は、次の内容で構成されています。

  • チェックリスト
  • 展開シナリオの選択
  • 展開ツールと手法の選択
  • WDS の利点の理解
  • LTI (Microsoft Deployment Toolkit: MDT) と ZTI (SCCM) の比較
  • 必要なインフラストラクチャの存在の確認
  • 適切なプロセス ルールの決定 (MDT および SCCM のみ)
  • 監視計画の決定
  • チーム メンバーのトレーニング

チェックリスト

表 1. 計画チェックリスト

展開の計画フェーズの大まかな手順

1

適切な展開シナリオを選択します。

通常、環境では複数の展開シナリオが必要です。次の中から、適用する展開シナリオの組み合わせを決める必要があります。

  • 新しいコンピューター
  • コンピューターのアップグレード
  • コンピューターの更新
  • コンピューターの交換

2

展開の手法を選択します。

環境内のどのコンピューターが、WDS、MDT、または SCCM のうち、どの手法で新しいオペレーティング システムに移行できるかを検討します。自動化のレベルも特定する必要があります。MDT および SCCM には、このホスティング ガイドの PowerShell スクリプト、ライト タッチ インストール (LTI)、 またはゼロ タッチ インストール (ZTI) が用意されています。環境では、これらの手法の 1 つまたは複数を使用できます。

3

必要なインフラストラクチャが存在することを確認します。

展開を始める前に、使用するツールに必要なインフラストラクチャが存在することを確認します。WDS、MDT、SCCM の要件はそれぞれ異なります。詳細は、次の表を参照してください。

4

適切なプロセス ルールを決定します。この手順は、MDT または SCCM を使用する場合にのみ必要です。

ZTI または LTI を使用してオペレーティング システムを展開する前に、プロセス ルールを構成します。プロセス ルールは、展開されるオペレーティング システム イメージと、その構成設定を決定するのに役立ちます。

5

監視計画を決定します。

テスト環境および運用環境でオペレーティング システムを展開する際、展開の進捗を監視します。この段階は、SCCM を必要とする高度な展開では特に重要です。

6

チーム メンバーをトレーニングします。

テスト環境および運用環境で展開を始める前に、すべてのチーム メンバーが適切なトレーニングを受けていることを確認します。これにより、チームは、展開プロセス全体でターゲット コンピューターを展開、管理、運用、トラブルシューティング、およびサポートすることができます。

展開シナリオの選択

計画フェーズの最初の手順として、環境に適した展開シナリオを選択します。シナリオには、新しいコンピューター、コンピューターのアップグレード、コンピューターの更新、またはコンピューターの交換があります。表 2 で、展開シナリオの一覧と、各展開シナリオの簡単な説明を示します。

 表 2. 展開シナリオと説明

シナリオ

説明

ユーザー状態の移行

既存のターゲット コンピューターの使用

ファイル システムの維持

新しいコンピューター

新しいコンピューターに、Windows の新しいインストールが展開されます。このシナリオでは、維持しなければならないユーザー データやプロファイルが存在しないことを前提にしています。

×

×

×

コンピューターのアップグレード

ターゲット コンピューターの現在の Windows オペレーティング システムが、展開されるオペレーティング システムにアップグレードされます。既存のユーザー状態移行データ、ユーザー プロファイル、およびアプリケーションは維持されます (展開されるオペレーティング システムでサポートされる場合)。

コンピューターの更新

サポートされている Windows オペレーティング システムを現在実行しているコンピューターが更新されます。このシナリオは、イメージを標準化するためにコンピューターのイメージを再作成する場合や、問題を解決する場合に使用します。このシナリオでは、チームがコンピューター上の既存のユーザー状態データを維持することを前提にしています。

×

コンピューターの交換

サポートされている Windows オペレーティング システムを現在実行しているコンピューターが、別のコンピューターに置き換えられます。このシナリオでは、元のコンピューターの既存のユーザー状態移行データが保存されます。その後、新しいコンピューターに、Windows の新しいインストールが展開されます。最後に、ユーザー状態データが、新しいコンピューターに復元されます。

×

×

展開ツールと手法の選択

既存の環境と、使用するシナリオの組み合わせに基づき、最も適したツールと手法を決定します。たとえば、次のように決定します。

新しいコンピューターに Windows をインストールする場合は、このガイドで提供されている WDS とスクリプトを使用します。

コンピューターを更新または交換する場合は、PowerShell スクリプトの組み合わせを使用してユーザー データをバックアップし、WDS を使用してマシンのイメージを再作成します。最後に、スクリプトを再度使用してユーザー データを復元します。

ユーザー データとファイル システムを維持している多数のコンピューターをアップグレードする場合は、MDT または SCCM の使用を検討します。MDT または SCCM を使用する場合、ターゲット コンピューターへのオペレーティング システムの展開には、LTI と ZTI を組み合わせた手法を使用できます。Microsoft Deployment と、LTI および ZTI は、オペレーティング システムの展開で同じスクリプト セットと構成ファイル (CustomSettings.ini など) を使用します。ただし、場合によっては、一方の展開方法が他方よりも適していることがあります。(詳細については、MDT をダウンロードしてインストール (英語) し、『LTI ツールの準備 (英語)』ドキュメントを参照してください。)

  1. LTI を使用してオペレーティング システムを展開する。LTI には、MDTと、操作するための最低限のインフラストラクチャが必要です。チームは、共有フォルダーを使用してネットワーク経由でオペレーティング システムを展開することも、リムーバブル ストレージ (CD、DVD、USB フラッシュ ドライブ (UFD)、その他のデバイスなど) を使用してローカルで展開することもできます。展開プロセスは自動 (Windows 展開サービスを使用) または手動で開始できます。最初に Deployment Workbench を使用して LTI を構成します。次に、環境に合わせて CustomSettings.ini をカスタマイズします。LTI 展開では、チームが各コンピューター グループの構成設定を提供します。通常、各コンピューターの構成設定は、展開プロセス中に手動で行います。したがって、LTI のカスタマイズは、ZTI のカスタマイズよりも簡単です。
  2. ZTI を使用してオペレーティング システムを展開する。ZTI では、System Center Configuration Manager または Systems Management Server 2003 with SP2、および SMS 2003 OSD Feature Pack が必要です。チームは、System Center Configuration Manager または Systems Management Server 2003 配布ポイントから、オペレーティング システムを展開します。インストール プロセスは、System Center Configuration Manager、Systems Management Server 2003、または Windows 展開サービスで開始できます。ZTI 展開プロセスは、常に自動で開始します。LTI と同様、チームはまず Deployment Workbench を使用して ZTI を構成します。その後、環境に応じてさらに CustomSettings.ini をカスタマイズします。ZTI 展開では、ZTI を使用して移行される各ターゲット コンピューターについて、チームがすべての構成設定を提供する必要があります。ZTI では、手動の構成がありません。したがって、ZTI のカスタマイズは、LTI のカスタマイズよりも作業に時間がかかります。

WDS の利点の理解

Windows 展開サービスには、多くの利点があります。次に主な点を挙げます。

  • 非効率的な手動インストール プロセスに伴う展開の複雑さやコストを抑えます。
  • Windows Vista や Windows Server 2008 などの Windows オペレーティング システムを、ネットワーク ベースでインストールできます。
  • オペレーティング システムを使用せずに、Windows イメージをコンピューターに展開します。
  • Windows Vista、Windows Server 2008、Windows XP、および Windows Server 2003 を含む混在環境をサポートします。
  • Windows オペレーティング システムをクライアント コンピューターやサーバーに展開するためのエンドツーエンド ソリューションを提供します。
  • Windows PE、.wim ファイル、イメージベースのセットアップなど、標準の Windows Server 2008 セットアップ テクノロジーを使用します。
  • マルチキャスト テクノロジーを活用し、複数の展開を同時に実行できます。

LTI (Microsoft Deployment Toolkit: MDT) と ZTI (SCCM) の比較

表 3 は、展開で LTI および ZTI を使用した場合の違いを示しています。

表 3. LTI (Microsoft Deployment Toolkit) 展開と ZTI (SCCM) 展開の比較

LTI 展開

ZTI 展開

ターゲット コンピューターのグループに対して、共通の構成設定を提供します。

各ターゲット コンピューターで必要な構成設定をすべて提供します。

事前に構成する時間は少なくて済みます。

事前に構成する時間がさらに必要です。

接続速度が遅い場合や、ネットワーク接続がない場合でも使用できます。

高速の常時接続が必要です。

展開をサポートするインフラストラクチャがほとんど必要ないか、または不要です。

SMS 2003 OSD Feature Pack または System Center Configuration Manager のいずれかを使用し、オペレーティング システム イメージの展開に対応しているインフラストラクチャが必要です。

ネットワークまたはローカルの展開をサポートします。

ネットワークの展開のみをサポートします。

ターゲット コンピューターが、System Center Configuration Manager または Systems Management Server 2003 (あるいは他のソフトウェア管理ツール) で管理される必要がありません。

ターゲット コンピューターが、System Center Configuration Manager または Systems Management Server 2003 で管理される必要があります。

自動ソフトウェア インストールが禁止されるセキュリティ ポリシーをサポートします。

自動ソフトウェア インストールが許可されるセキュリティのみをサポートします。

ファイアウォールによって切り離されているターゲット コンピューターへの展開をサポートします。

ターゲット コンピューターとリモート プロシージャ コール (RPC) で通信することが必要です (したがって、ファイアウォールを通過する多数のポートを開く必要があります)。

コンピューターのアップグレード展開シナリオをサポートします。

コンピューターのアップグレード展開シナリオをサポートしません。

必要なインフラストラクチャの存在の確認

ほとんどの運用環境では、展開に必要なサービスの大部分が既に存在します。しかし、展開プロセスを開始する前に、必要なコンポーネントがすべて存在することを確認する必要があります。WDS をインストールする前に、「Windows 展開サービスをインストールするための必要条件」を参照してください。

Windows 展開サービスをインストールするための必要条件

次に、この役割をインストールするための必要条件を、展開サーバーをインストールする場合とトランスポート サーバーをインストールする場合にわけて示します。

: Windows 展開サービス サーバー サービスはクラスターに対応していないため、Microsoft Windows Cluster Server 上では実行しないでください。

展開サーバー トランスポート サーバー
Active Directory ドメイン サービス。Windows 展開サービス サーバーは、Active Directory ドメイン サービス (AD DS) ドメインのメンバーまたはドメイン コントローラーでなければなりません。AD DS のドメイン バージョンとフォレスト バージョンには関連性がありませんが、すべてのドメイン構成およびフォレスト構成は Windows 展開サービスをサポートします。
DHCP。Windows 展開サービスでは、IP アドレスの割り当てに DHCP を必要とする Pre-Boot Execution Environment (PXE) が使用されているため、ネットワーク上で有効なスコープが設定された動的ホスト構成プロトコル (DHCP) サーバーが必要です。
DNS。Windows 展開サービスを実行するためには、ネットワーク上で機能しているドメイン ネーム サービス (DNS) サーバーが必要です。
NTFS ボリューム。Windows 展開サービスを実行しているサーバーは、イメージを保存する場所として NTFS ファイル システム ボリュームが必要です。
資格情報。役割をインストールするには、ユーザーが Windows 展開サービス サーバーの Local Administrators グループのメンバーでなければなりません。Windows 展開サービス クライアントを開始するには、ユーザーが Domain Users グループのメンバーでなければなりません。

トランスポート サーバーをインストールするための必要条件はありません。

Microsoft Deployment を使用する場合は、必要なインフラストラクチャを詳細に示す次の内容を参照してください。

  • Microsoft Deployment および LTI を使用する展開: 『ファースト ステップ ガイド (英語)』の「システム要件 (英語)」を参照してください。
  • ZTI を使用する展開: 『インフラストラクチャの改善チーム ガイド (英語)』の「ZTI に必要なインフラストラクチャの存在の確認 (英語)」を参照してください。**

適切なプロセス ルールの決定 (MDT および SCCM のみ)

MDT または SCCM を使用する場合、このセクションは重要です。ZTI および LTI 展開では、ターゲット コンピューターにイメージを展開する際、プロセス ルールを使用して手順や構成パラメーターを特定します。これらの設定は、CustomSettings.ini に保存されて管理されます。

詳細については、MDT をダウンロードしてインストール (英語) し、該当する内容を参照してください。

  • LTI の最小限の機能に必要なプロセス ルールを決定するには、『LTI ツールの準備 (英語)』の「適切なプロセス ルールを構成する (英語)」を参照してください。
  • ZTI の最小限の機能に必要なプロセス ルールを決定するには、『Microsoft Systems Management Server 2003 の準備 (英語)』または『Microsoft Systems Center Configuration Manager 2007 の準備 (英語)』の「適切なプロセス ルールを構成する (英語)」を参照してください。
  • LTI および ZTI の機能を拡張するには、『展開カスタマイズ ガイド (英語)』を参照してください。
  • LTI および ZTI でプロセス ルールを構成する例については、『展開カスタマイズ デスクトップ サンプル ガイド (英語)』を参照してください。

監視計画の決定

この段階は、SCCM を必要とする高度な展開では特に重要です。System Center Operations Manager の ZTI 管理パックは、ターゲット コンピューターへのオペレーティング システム イメージの展開を監視し、データを収集します。ZTI 管理パックは、ZTI および LTI 展開プロセスを監視するために使用することもできます。Microsoft System Center Operations Manager 2007 Reporting Services を使用し、展開プロセスに関するレポートを生成できます。ZTI 管理パックの詳細については、Microsoft Deployment ドキュメントの『ゼロ タッチ インストール管理パック (英語)』を参照してください。

チーム メンバーのトレーニング

MDT や SCCM を必要とする高度な展開では、すべてのチーム メンバーが、展開プロセス/移行先コンピューターの展開、管理、運用、トラブルシューティング、およびサポートに関する適切なトレーニングを受けていることを確認してください。トレーニングは、各チームに合わせてカスタマイズします。

詳細については、https://technet.microsoft.com/en-us/library/bb960436.aspx#EBAA (英語) を参照してください。