社内事例: Microsoft Tech・Ed Japan 2009 の参加者向け限定ポータルとして Microsoft Online Services を利用

オンラインで 2,000 人以上にイベント情報を提供、従来に比べ約 70% のコスト削減を実現

発行日: 2010 年 3 月

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年に一度開かれる IT エンジニアのための技術の祭典、Microsoft Tech・Ed Japan 2009 (以下、Tech・Ed Japan 2009 と略)。2009 年 8 月 26 日から横浜で 3 日間開かれた Tech・Ed Japan 2009 では、2,000 人以上の来場者に 70 のテクニカル セッション、38 のハンズオン ラボ、14 のシアター セッションをはじめとする数多くのコンテンツが提供されました。来場者、セッション スピーカー、および開催者をオンラインで結びつけ、セッション情報やコンテンツを共有するための期間限定クローズド ポータルのインフラとして SharePoint Online を中心とする Microsoft Online Services が採用されました。SharePoint Online を採用したことにより、一時的なイベント情報の共有を、手軽に、かつコストをかけずに実現し、参加者への利便性を向上させることに成功しました。

導入背景 -プロジェクト開始からソリューション選択まで

齊藤 賢一

マイクロソフト株式会社
セントラル マーケティング本部
宣伝部
イベント マーケティング マネージャ
齊藤 賢一

「パートナー企業である株式会社トライソルグループに、Tech・Ed Japan 2009 のオンラインでのイベント・コンテンツ情報の共有の仕組みについて依頼をしたのは、2009 年 3 月のことでした」と、マイクロソフト株式会社 セントラル マーケティング本部 宣伝部の Tech・Ed Japan 2009 運営総責任者である齊藤 賢一は当時を振り返ります。Tech・Ed Japan 2008 まではポスト コンファレンス DVD を制作していましたが、参加者の手元に届くまでに時間がかかっていたので、参加者の方により早くインタラクティブな情報届けるために Web を使ったオンラインでの情報共有サイトの提供を企画しました。「オンラインのサイトを活用することで、参加者は事前にイベントの詳細情報やセッション資料をダウンロードすることができるようになり、利便性が向上しただけでなく、事前にセッションの内容を確認することができ、当日会場でのスケジュールも立てやすくなります。また、開催後は、ポスト コンファレンス DVD 製作に時間を有していた部分をカットすることで、有益な情報をいち早く提供でき、会場で参加できなかったセッションもオンラインで受講できたり、復習ができるというメリットもあります。」(齊藤)。

「オンラインにおいて参加者限定でコンテンツを共有する仕組みを作るに当たっては、いくつかの選択肢がありました。」と、株式会社トライソルグループの天利 健介氏は語ります。「普通の Web サイトの仕組みとマイクロソフト ダウンロード センターなどを組み合わせてクローズド サイトを作成することもできたのですが、100 以上のセッションの Web ページをゼロから作りこんでいくのは手間がかかることが予想されたため、SharePoint テクノロジーを利用して構築時間の短縮を図りました。また、その他の選択肢では、ブログなど外部のサイトに直リンクを公開されてしまうと、だれでもコンテンツをダウンロードできてしまうところが問題となったので、コンテンツは SharePoint のサイト内に置くことにしました」(天利氏)。「Tech・Ed Japan 2009 は有料コンファレンスであるため、参加登録者限定特典として、参加登録者にのみにセッション コンテンツをいち早く提供したいという課題と思いもあったのです」(齊藤)。

SharePoint の社内での活用については前年の Tech・Ed Japan 2008 をはじめとするイベント プロジェクトの管理で実績がありました。これを外部向けに展開するに当たり、自前でサーバーを用意して SharePoint Server の運用を行うわけにはいかないので、パートナー企業が提供している Windows SharePoint Services のホスティング サービスを使うか、当時日本でサービスを開始したばかりの SharePoint Online を使うかの 2 つの選択肢が検討されました。その結果、利用可能な容量やコストの面から SharePoint Online を採用することになりました。こうして、SharePoint Online を利用した「Tech・Ed Online Services」としてサイトを構築していくことになります。

サイト構築中の状況

天利 健介氏

株式会社トライソルグループ
イベント ビジネス事業部
天利 健介氏

「SharePoint Online を活用しましょう! と提案したものの、SharePoint については、社内向けのサービス サイトをいくつか作成した程度で、テクノロジーを深く理解していたわけではなく、構築する側としては初心者に近い状態でした」(天利氏)。SharePoint は基本的には Web ページと同じなので、HTML を自由に埋め込むことができるコンテンツ エディタ Web パーツをページに埋め込み、画像を埋め込むことで進めていきました。

「SharePoint はやろうと思えばページの HTML を大幅に変更して、カスタム HTML の Web ページとして加工できなくもありませんでしたが、専用エディタを使わなくても Web ページ上からの設定操作だけでサイトを作っていけるという、SharePoint が持っている良さを生かしたかったため、サイトのカスタマイズは最小限にとどめるようにしました」(天利氏)。SharePoint が持っている標準のデザイン テンプレートをベースに、画像の入れ替えと CSS の変更のみで、Tech・Ed Japan 2009 のイメージに合ったサイトを作成することができました。

“Tech・Ed Online Services” の画面

図 1 “Tech・Ed Online Services” の画面

SharePoint Online には、外向けのサイトと、約 260 名の Tech・Ed Japan 2009 運営関係者が利用するプロジェクト管理サイトを両方作成しました。権限設定を適切に行うことで、外部の参加者には参加者用のページのみが見え、プロジェクト関係者は参加者用のページとプロジェクト管理サイトの両方を見ることができます。(※プロジェクト管理サイトの利用についての詳細は SharePoint Server 2007 を利用した宣伝部のチーム サイト活用事例をご参照ください。)

「外向けのサイトは、当初イベント情報の共有と各セッションの資料のダウンロードだけが企画されていましたが、セッション スピーカーと参加者がインタラクティブにコミュニケーションを行うことができる掲示板やブログなどのテンプレートも活用できるのではないかという話が後から出てきて、各セッションのサブサイトも急きょ作成することになりました。SharePoint はこの計画変更にも柔軟に対応することができ、サイトを作りながらサイトの微調整をしていくフレキシブルな対応が可能でした」(天利氏)。「最終的には全テクニカル セッション、全シアター セッション、スポンサー ブログ、"Women in Technology" などのイベントなど、120 を超える合計 10 GB のサイトが作成され、それらをすべて自分たちで運営することができました」(齊藤)。

イベントの様子をブログや写真で公開

図 2 イベントの様子をブログや写真で公開

ユーザーの作成と管理の様子

Tech・Ed Online Services を利用する約 2,300 人ものユーザーの管理については、期間限定のサイトということもあり、すべてのユーザーをオンライン上で管理する方法が選択されました。ユーザー情報が記載された CSV ファイルを作成して、何回かに分けて SharePoint Online にアップロードしました。ユーザーは電子メール アドレスが識別子となり、"@" の前の部分のアリアスと、ドメイン名の組み合わせによって作成されます。ドメインには独自ドメインを利用することもできましたが、今回は簡易的に Microsoft Online Services が標準で提供している microsoftonline.com のドメイン名を利用しました。このユーザー アカウントは、初期パスワードと共に参加者にあらかじめ配布されました。「ユーザー管理画面は、ユーザーの種類別にフィルターを作成することができ、ユーザーの種類ごとに設定を一括で適用することができ、アカウント発行は簡単に進みました」(天利氏)。

ユーザーの管理画面

図 3 ユーザーの管理画面

メリット

「Tech・Ed Online Services の導入によって、参加者の利便性は向上することができ、かつ大幅なコスト削減をすることができました」と齊藤は振り返ります。このオンライン サービスの導入によるメリットは、主に以下の 3 点に集約されます。

参加者と開催者の間のコミュニケーションがよりインタラクティブに

120 を超えるセッション情報・イベント情報サイトを 8 月中旬から参加者に事前に公開することにより、参加者はセッション スライドを事前に入手でき、それぞれのセッションやイベントについての詳細情報も事前に入手することができるようになりました。各サイトは、参加者や開催者がコメントを入れられるようになっており、参加者からの書き込みやお問い合わせも多数受け付けられ、サイト上でインタラクティブなコミュニケーションが展開されました。

イベント中は、会場にも Tech・Ed Online Services にログインをすることができる端末が多数設置され、サイトのアンケート機能を使って投票を行う催しも開催されました。Tech・Ed Japan 2009 のスポンサーからは、毎日のイベント案内や会社のアピールも行いました。イベント終了後はスピーカーから参加者へのフォローアップや、セッション ストリーミングへのリンクなども公開され、イベント終了後も Tech・Ed Online Services を活用していただくことができました。Tech・Ed Online Services はTech∙Ed Japan 2009 の 2,000 名の参加者のうち、約 8 割の方にお使いいただきました。

セッション サイトの一覧
図 4 セッション サイトの一覧

各セッションのサイト

図 5 各セッションのサイト

簡単なサイトの作成と管理

SharePoint Online の魅力の 1 つは特定のメンバーの間だけで情報共有を行うクローズドなサイトを簡単に作成して管理できてしまうことです。大幅にカスタマイズすることも可能ですが、標準テンプレートに少し手を加えるだけで見栄えがして、かつ機能的なページを作成することが可能です。

「サイトの作成は短期間でフレキシブルに行うことができます。実際、6 月中旬からアカウントを発行しはじめ、7 月頭からサイトを作成し始めました。途中何回か方針変更があったにもかかわらず、8 月中旬には参加者への公開ができました」(天利氏)。サイトが作成されたら、お知らせ、掲示板など必要なテンプレートをサイトに追加します。あとは、これらにアイテムを追加していくだけです。サイトのひな型が完成したら、同じ形式のサイトをどんどんコピーしていくことが可能です。

コストの削減

Tech・Ed Japan 2009 では Tech・Ed Japan 2008 と比較して、コンテンツのデリバリーに関する費用をオンライン化することで約 70 % と、大幅に削減することができるようになりました。「ポスト カンファレンス DVD を提供したり、スライドの印刷資料を配布したりしなくても、参加者はあらかじめ資料を自分のパソコンにダウンロードしておくことができ、利便性も損なうことはありませんでした」(齊藤)。

SharePoint サイト自体の費用については、10 GB のストレージを 40 ユーザー分の SharePoint Online Standard アカウントで確保し、残りの 2,220 ユーザーは、基本的なフォーム以外は読み取り専用の SharePoint Online Deskless Worker アカウントで取得すると、サイト維持にかかる年間費用は約 570 万円となります。SharePoint Server を自前で構築しようとすると、初期費用だけでこの金額よりも高額になりますので、このような短期限定サイトにおいては、オンライン サービスを利用するコスト効果が如実に表れます。

今後の抱負

「Tech・Ed Japan 2009 では、Microsoft Online Services の導入によって、参加者への利便性とコスト メリットを両立させながら運営を行うことができました。今後も Tech・Ed Japan では、その時旬なテクノロジーをどんどん採用して、テクノロジーがユーザーの利便性を高めていくことを、Tech・Ed の参加者自身にも体感していただけるような仕掛けを考えていきたいです」と齊藤は締めくくります。今年開催される Tech・Ed Japan 2010 もご期待ください。

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