グループ ポリシーのコンピューター スタートアップ スクリプトを使用して Office 2010 を展開する

 

適用先: Office 2010

トピックの最終更新日: 2016-11-29

この記事では、グループ ポリシーによってコンピューター スタートアップ スクリプトを割り当てて Microsoft Office 2010 を展開するときのプロセスと手順に関する詳細な技術ガイダンスについて説明します。スクリプトの作成には、クライアント コンピューターでサポートされている任意の言語を使用できます。一般には、VBScript、Jscript など、Windows スクリプト ホストでサポートされている言語や、バッチ ファイルなどのコマンド ファイルが使用されます。

テスト環境での Office 2010 の展開

このセクションでは、グループ ポリシーのコンピューター スタートアップ スクリプト インフラストラクチャのためのテスト ネットワーク環境について説明します。また、グループ ポリシーのコンピューター スタートアップ スクリプトを使用して Microsoft Office Professional Plus 2010 を展開する手順も説明します。

ネットワーク環境

この記事のテスト ネットワーク環境を、次の図に示します。

グループ ポリシー スタートアップ スクリプトのテスト ネットワーク

すべてのサーバー (A と B) で Windows Server 2008 R2 が実行されています。これらのサーバーは同じドメイン (CPANDL.COM) のメンバーです。このドメインにはクライアント コンピューター (C など) も含まれており、これらのコンピューターでは Windows 7 Professional と Windows Vista が実行されています。各クライアント コンピューターの完全修飾ドメイン名 (FQDN)、各サーバーで実行されているアプリケーションとロール、組織単位 (OU) と含まれているコンピューター、およびグループ ポリシー オブジェクト (GPO) は次のとおりです。


  • A – <DC.CPANDL.COM> Active Directory、DNS、DHCP、GPO-Office2010_GPO、OU-Office2010_OU、W7C01 および WVC02 は OU Office2010_OU のメンバー


  • B – <FS.CPANDL.COM> ファイル サービス、ファイル共有-\\FS\Office2010SourceFiles (読み取り専用アクセス)、ファイル共有-\\FS\Office2010LogFiles (読み取り/書き込みアクセス)


  • C – <W7C01.CPANDL.COM および WVC02.CPANDL.COM>、Windows 7 Professional および Windows Vista Enterprise

重要

認証ユーザーにネットワーク共有への読み取りアクセスが付与されていることを確認してください。この例では、ネットワーク共有は \FS\Office2010SourceFiles です。

注意

Office2010_GPO は Office2010_OU にリンクされています。これにより、この OU 内に含まれているコンピューター オブジェクトに GPO の設定を割り当てることができます。GPO を OU にリンクするには、MMC スナップインのグループ ポリシー管理を使用します。

Office 2010 をカスタマイズして運用環境に展開する前に、次の記事を読むことをお勧めします。「Office 2010 のボリューム ライセンス認証を計画する」、「Office 2010 のボリューム ライセンス認証を展開する」、「Office 2010 のカスタマイズの概要」、「Office 2010 のネットワーク インストール ポイントを作成する」、「Office 2010 の Office カスタマイズ ツール」、「Office 2010 の Config.xml ファイル」、「Office 2010 をカスタマイズする」、「64 ビット版の Office 2010

Office 2010 のセットアップをカスタマイズする

Office 2010 用のセットアップ カスタマイズ ファイルを作成するためのプログラム ファイルは、Office インストール CD のすべてのファイルのコピーが格納されているソース ディレクトリから実行します。この例では、ソース ファイルが \\FS\Office2010SourceFiles にコピーされています。

Office 2010 では、インストール全体がセットアップによって制御されます。これには、2007 Office system より前のバージョンの Office で Windows インストーラーによって処理されていたプロセスも含まれます。セットアップの既定の動作をカスタマイズすることで、インストール プロセスを制御できます。この例では、Config.xml ファイルを使用して Office 2010 のサイレント インストール用のインストールをカスタマイズし、Office カスタマイズ ツール (OCT) を使用して Office 2010 製品のインストールをカスタマイズします (ボリューム ライセンス キーを指定する、インストールする Microsoft Office アプリケーションを選択するなど)。セットアップでは、Office のインストール時に、config.xml ファイルと .msp ファイル (OCT で作成) の両方のカスタマイズが適用されます。

Config.xml でサイレント インストールのオプションを指定するには

Office 2010 製品の "サイレント インストール" (無人インストール) では、ユーザーが操作を行う必要はありません。このインストールを構成するには、インストールする製品の Config.xml ファイルを編集して、Display 要素の Level 属性を "none" に設定 (Display Level="none") した後、Config.xml ファイルを保存します。Display 要素は、セットアップ時のユーザー インターフェイスの表示レベルを指定するものです。以下に手順を示します。

  1. インストールする Office 製品 (この例では Office Professional Plus 2010) の Config.xml ファイルを、メモ帳などのテキスト エディターで開きます。Config.xml の格納場所は、既定ではコア製品名に ".WW" の付いたフォルダーになっています。この例では、\\FS\Office2010SourceFiles\ProPlus.WW です。

  2. 次の例に示すような、Display 要素を含む行を探します。

    <!-- <Display Level="full" CompletionNotice="yes" SuppressModal="no" AcceptEula="no" /> -->

  3. 目的のサイレント オプションを使用するように Display 要素のエントリを変更します。コメント区切り記号 "<!--" と "-->" を削除します。たとえば、構文は次のようになります。

    <Display Level="none" CompletionNotice="no" SuppressModal="yes" AcceptEula="yes" />

    これらのオプションによって、サイレント インストールを実行し、情報の入力を求める画面をユーザーに表示せず、インストールでユーザー操作を待機しないようにセットアップに指示されます。構文および Config.xml の詳細については、「Office 2010 の Config.xml ファイル」の Display 要素 要素の説明を参照してください。

  4. Config.xml ファイルを保存します。この例では、\\FS\Office2010SourceFiles\ProPlus.WW に保存します。

OCT を使用して、ボリューム ライセンス キーを指定し、インストールするアプリケーションを選択するには

  1. Office のセットアップをカスタマイズするには、コマンド ライン setup.exe /admin を使用して Office カスタマイズ ツールを起動します。この例では、コマンド プロンプトでパッケージ ソース ディレクトリ \\FS\Office2010SourceFiles から setup.exe /admin を実行します。

  2. この例では、ボリューム ライセンス キーを入力し、インストールするアプリケーションを選択するために、次のように設定を変更して構成します。

  3. [使用許諾契約とユーザー インターフェイス] の下にある [別のプロダクト キーを入力する] オプションを選択し、有効なマルチ ライセンス認証キー (MAK) を入力します。

    注意

    この例では、サイレント インストールのパラメーターが Config.xml ファイルで構成されているので、それらのパラメーターを OCT で構成する必要はありません。なぜなら、Config.xml で定義したカスタマイズの方が、OCT で作成されるカスタマイズ ファイルのものよりも優先されるからです。

  4. [機能] の下にある [機能のインストール状況の設定] オプションを選択し、インストールするアプリケーションを選択します。この例では、インストール プロセスを高速化するために Microsoft Word だけを選択しています。

    OCT で構成できる種々のパラメーターに関するその他のリソースについては、「Office 2010 の Office カスタマイズ ツール」、「Office 2010 の機能のインストール状況を構成する」、および「Office 2010 でユーザー設定を構成する」を参照してください。

  5. 新たに作成された .msp ファイルに名前を付けて保存し、ソース ファイルが入っているコンピューター上の Office 2010 用の \Updates フォルダーに入れます。この例では、\\FS\Office2010SourceFiles\Updates\Office2010ProPlus.MSP となります。

警告

Updates フォルダーでサポートされるセットアップ カスタマイズ .msp ファイルは各製品について 1 つだけです。Office 2010 の初回インストールを展開し、Office 2010 のソフトウェア更新プログラム (サービス パックや修正プログラム) も展開する必要がある場合は、セットアップでインストール プロセスの一環として、それらの更新プログラムを適用できます。Office 2010 の更新プログラムはインストールの完了後に適用されますが、これらを Updates フォルダーに入れることができます。詳細については、「Office 2010 の Office カスタマイズ ツール」を参照してください。

次にすることは、ドメイン コントローラー (この例では DC.CPANDL.COM) のスクリプトを構成することです。

ドメイン コントローラーのスクリプトを構成する

ドメイン コントローラーのスクリプトを構成するプロセスでは、次の手順を実行する必要があります。

  1. スクリプトを GPO のスタートアップ フォルダーにコピーします。

  2. スクリプトを GPO に追加します。

  3. スタートアップ スクリプトの最大実行時間を設定します。

警告

グループ ポリシーは、組織内の数百数千ものコンピューターの構成に影響を与える機能を備えています。そのため、グループ ポリシーの新しい構成や展開をすべてテスト環境で厳格にテストしてから運用環境に移すことが非常に重要です。グループ ポリシー展開のステージングの詳細については、「グループ ポリシーの計画および展開ガイド」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=182208&clcid=0x411) の「グループ ポリシーの展開のステージング」を参照してください。

スクリプトを GPO のスタートアップ フォルダーにコピーする

この例のサンプル バッチ ファイル スクリプトでは、製品がまだインストールされていない場合に Microsoft Office Setup.exe を実行し、エラーまたは成功を一元化されたログ ファイル集中ログ ファイルに記録する方法を示しています。スクリプトの最初の部分にある変数は、このテスト展開シナリオに合わせて変更されています。たとえば、プレフィックス Office14 が付けられた製品名 ProPlus、Office のソース ファイルのパス \\FS\Office2010SourceFiles、およびログ ファイル \\FS\Office2010LogFiles が追加されています。そして、このサンプル スクリプトはメモ帳にコピーされ、Office2010StartupScript.bat というファイル名で保存されています。その後、このスクリプト ファイルはドメイン コントローラー上のスタートアップ スクリプト用の GPO の既定のディレクトリ (この例では C:\Windows\SYSVOL\sysvol\adatum.com\Policies\{GPO の GUID}\Machine\Scripts\Startup) に保存されます。

注意

GPO を表す GUID は、MMC スナップインのグループ ポリシー管理エディターで確認できます。それには、GPO (この例では Office2010_GPO) を右クリックしてから [プロパティ] をクリックします。GUID は "一意の名前" フィールドに表示されます。

setlocal

REM *********************************************************************
REM Environment customization begins here. Modify variables below.
REM *********************************************************************

REM Get ProductName from the Office product's core Setup.xml file, and then add "office14." as a prefix. 
set ProductName=Office14.PROPLUS

REM Set DeployServer to a network-accessible location containing the Office source files.
set DeployServer=\\FS\Office2010SourceFiles

REM Set ConfigFile to the configuration file to be used for deployment (required)
set ConfigFile=\\FS\Office2010SourceFiles\ProPlus.WW\config.xml

REM Set LogLocation to a central directory to collect log files.
set LogLocation=\\FS\Office2010LogFiles

REM *********************************************************************
REM Deployment code begins here. Do not modify anything below this line.
REM *********************************************************************

IF NOT "%ProgramFiles(x86)%"=="" (goto ARP64) else (goto ARP86)

REM Operating system is X64. Check for 32 bit Office in emulated Wow6432 uninstall key
:ARP64
reg query HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\WOW6432NODE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Uninstall\%ProductName%
if NOT %errorlevel%==1 (goto End)

REM Check for 32 and 64 bit versions of Office 2010 in regular uninstall key.(Office 64bit would also appear here on a 64bit OS) 
:ARP86
reg query HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Uninstall\%ProductName%
if %errorlevel%==1 (goto DeployOffice) else (goto End)

REM If 1 returned, the product was not found. Run setup here.
:DeployOffice
start /wait %DeployServer%\setup.exe /config %ConfigFile%
echo %date% %time% Setup ended with error code %errorlevel%. >> %LogLocation%\%computername%.txt

REM If 0 or other was returned, the product was found or another error occurred. Do nothing.
:End

Endlocal

スクリプトを GPO に追加する

スクリプトを GPO に追加するには、MMC スナップインのグループ ポリシー管理エディターを使用し、[スタートアップ] (GPO | コンピューターの構成 | ポリシー | Windows の設定 | スクリプト (スタートアップ/シャットダウン) | スタートアップ) を右クリックしてから、[プロパティ]、[追加]、[参照] の順にクリックし、スクリプト ファイル (この例では Office2010StartupScript.bat) を強調表示して選択します。

スタートアップ スクリプトの最大実行時間を設定する

一連のスクリプトの実行に対してシステムで許容される時間の上限は、既定では 600 秒 (10 分) にすぎません。管理者はポリシー設定を使用してこの時間を調整することにより、スタートアップ スクリプトが確実に最後まで実行されるようにすることができます。[スクリプトの実行時間の上限を設定する] ポリシー設定は、グループ ポリシーによって適用されるスクリプトが完了するのをシステムがどれだけの時間待つかを指定するものです。この設定により、グループ ポリシーによって適用されるログオン、スタートアップ、およびシャットダウンのすべてのスクリプトについて、実行の完了に対して許容される合計時間が制限されます。他のすべてのグループ ポリシー展開と同様に、スタートアップ スクリプトはステージング環境で完全にテストしてから運用環境に展開する必要があります。テストによって、目的のネットワーク環境で [スクリプトの実行時間の上限を設定する] ポリシーに使用する値を判断できます。この設定値が小さすぎると、インストールが途中で中断してしまうことがあります。この値に影響する可能性がある要因としては、ネットワーク速度、クライアント コンピューターのハードウェア、クライアント コンピューターで実行される他のスクリプトなどがあります。このポリシー設定を完全にテストすることにより、目的の環境で使用する適切な値を判断できます。

この例のシナリオでは、[スクリプトの実行時間の上限を設定する] ポリシーの値が 0 に設定されています。この値は、スクリプトが完了するまでいつまでも待つようにシステムに指示するものです。

GPO (この例では Office2010_GPO) の [スクリプトの実行時間の上限を設定する] ポリシーの値を変更するには、MMC スナップインのグループ ポリシー管理エディターを使用し、[スクリプトの実行時間の上限を設定する] (GPO | コンピューターの構成 | ポリシー | 管理用テンプレート | システム | スクリプト) をダブルクリックします。

GPO に対して行ったコンピューター スタートアップ スクリプト ポリシーの変更が対象のコンピューター (この例では W7C01.CPANDL.COM と WVC02.CPANDL.COM) に適用された後、コンピューター スタートアップ スクリプトがコンピューター スタートアップによって実行されます。クライアント コンピューター上でドメイン コントローラーからのポリシー更新が行われるのを待たずに、クライアント コンピューター上でコマンド プロンプトに対して gpupdate /forceというコマンド ラインを発行できます。ポリシーの結果セット (RSoP) MMC スナップインを使用すると、コンピューター スタートアップ スクリプトのコンピューター ポリシー設定がクライアント コンピューター上に存在することを確認できます。

コンピューター スタートアップ スクリプトの状態を確認する

この例では、スクリプトのログ情報が computername.txt ファイルに書き込まれ、ネットワーク共有 \\FS\Office2010LogFiles に保存されます。ログ ファイル内のリターン コード 0 は、インストールが正常に完了したことを示します。リターン コード 3010 は、再起動が必要であることを示します。Office 製品の Windows インストーラー プロセスのそれ以外のエラー コードの詳細については、マイクロソフト サポート技術情報の記事 290158「[OFF2003] Office 2003 製品および Office XP 製品における Windows インストーラー プロセスのエラー コードとエラー メッセージの一覧」を参照してください。