IT スキルの習得: 重要な IT スキル トップ 10

ビジネス プロセスにおける急速なテクノロジの発展と変化、不安定な経済的背景により、一流の IT スキルを身に付けることが、これまでにないほど重要になっています。

Brien Posey

IT 業界に 20 年ほど携わってきましたが、正直なところ、IT プロフェッショナルという専門職は、ここ数年でこれまでにないほど大きく変化しました。この変化の中には、テクノロジの進歩や、政府規制によって働きかけられた変化もありました。

理由が何であれ、IT は、たった 5 年前の姿からも、ほとんど想像が付かないものになっています。IT プロフェッショナルが、このような変化に対応するには、どうすればよいでしょうか。変化に対応することは容易ではありませんが、変化に遅れずについていくために、注目すべきスキルがあります。今回の記事では、重要な IT スキル トップ 10 を紹介します。

1. Windows PowerShell

Windows PowerShell は、マイクロソフト製品で使用される頻度が高まっているので、十分に理解する必要があります。たとえば、Exchange Server 2007 と Exchange Server 2010 の GUI 管理ツールは Windows PowerShell をベースとしています。つまり、GUI で実行できる管理作業は、コマンド ラインや Windows PowerShell スクリプトを使用して実行することもできます。

Windows PowerShell を使用して、さまざまなマイクロソフト サーバー製品を管理できるという単純な事実だけでは、Windows PowerShell を重要なスキルと見なすには十分ではありません。Windows PowerShell を学習することが重要である本当の理由は、多くの最新のマイクロソフト サーバー製品の GUI では基本的な管理機能しか実行できないからです。高度な機能を実行するには、コマンド ラインから実行する必要があります。このため、Windows PowerShell を効果的に使用する方法を理解して把握していない限り、実務で貢献できる管理者となるのは、ますます難しくなっています。

2. サーバーの仮想化

実際のところ、ほとんどの組織で、サーバーの仮想化がある程度利用されていることは否定できません。そのため、サーバーの仮想化がどのように機能するかを理解することは、ネットワーク管理者にとって重要なスキルになります。

市場では、かなりの種類のサーバーの仮想化製品が出回っています。 すべて製品の詳細を把握する必要はありませんが、少なくとも 2 つの異なるサーバーの仮想化プラットフォームの知識を身に付けることが重要です。少なくとも 2 つのプラットフォームについて学習すれば、サーバーの仮想化のしくみを理解し、さまざまな仮想化製品に用意されている標準機能を理解するのに役立ちます。

サーバーの仮想化は、それ自体で 1 つの分野を形成しています。これまでのすべてのキャリアでサーバーの仮想化にかかわっている IT プロフェッショナルもいます。一般的なネットワーク管理者に、サーバーの仮想化について総合的に理解することを求めるのは現実的ではありませんが、リソースの割り当て、物理サーバーを仮想化する方法、仮想サーバーの管理や保守の方法について理解することをお勧めします。

3. フェールオーバー クラスタリング

フェールオーバー クラスタリングは、長年、さまざまな形で利用されてきました。にもかかわらず、最近になって、ようやく重要なテクノロジに進化しました。フェールオーバー クラスタリングにより、ネットワーク サーバーにフォールト トレランスが追加されることはご存じでしょうが、他にも、フェールオーバー クラスタリングが重要なスキルとなったことを示す要因がいくつか存在します。

まず、多くの大規模な組織では、IT 部門にサービス レベル契約 (SLA) が導入されています。現実問題として、IT 部門でこのような SLA に準拠するには、冗長なソリューションを導入するしかありません。

フェールオーバー クラスタリングが重要になったもう 1 つの理由には、サーバーの仮想化が広く利用されていることが挙げられます。以前は、サーバーで障害が発生して、サーバーが停止しても、それほど問題にはなりませんでした。最近では、多くの組織でサーバーの仮想化テクノロジが使用されているので、1 台のサーバーで障害が発生すると、多くの仮想サーバーで障害が発生するおそれがあります。このため、サーバー障害は、これまでよりも深刻な問題なので、サーバー障害を防ぐための対策を講じることが重要です。

フェールオーバー クラスタリングが重要なスキルとなった最後の理由は、サーバー ハードウェアの低価格が進んだことです。長い間、クラスター ソリューションには桁違いのコストがかかりました。最近では、サーバー ハードウェアは比較的安価になったので、サーバーをクラスター化しない理由はありません。

4. SAN 管理

記憶域ネットワーク (SAN) 管理も重要な IT スキルの 1 つです。SAN 記憶域を重要な IT スキルに含めるかどうかについては議論の余地があります。というのも、SAN は高価なので、SAN を導入する必要性がほとんどない小規模な組織の管理者にとって、SAN 記憶域を学習することは重要ではない可能性があるからです。

この考えにも一理ありますが、サーバーで直接接続型のストレージを使用することが一般的ではなくなり、複数のサーバーが、単一の記憶域プールに接続されることが多くなっています。これは、サーバーの仮想化を積極的に使用している組織に特に当てはまります。

私の所属する組織のすべての仮想化ホストでは、各ホストにある仮想サーバーと関連付けられている仮想ハード ドライブのファイルを、集中型のストレージ アレイに格納しています。SAN は使用していませんが、私が使用した記憶域の管理手法の多くは、SAN を利用している大規模な環境で使用されている手法と似ています。

SAN 記憶域を重要なスキルに含めたもう 1 つの理由は、クラウド ベースの記憶域が、今年の Tech•Ed の主要なトピックだったからです。大半のクラウド ベースのストレージ プロバイダーは、SAN を運用しています。クラウド ベースの記憶域を契約すると、記憶域の管理に関する基本的な手法を学ばなければならなくなることがあります。

5. 遵守

多くの IT プロフェッショナルは、コンプライアンスに関する問題に対処することを苦手としています。長年、特定の業界の会社を敬遠するだけで、コンプライアンスに対処しなくて済んだ IT プロフェッショナルもいました。しかし、最近では、このような戦略は通用しません。

この戦略が通用しなくなった理由の 1 つに、仕事が非常に少なくなっていることがあります。以前は、規制が厳しい業界で仕事を避けていた IT プロフェッショナルも、突如、このような環境で仕事をせざるを得ないことに気付くでしょう。この場合、少なくとも IT コンプライアンスの知識をある程度持っている必要があります。

また、コンプライアンスの問題に対処しないで済ませることが難しくなってきた理由の 1 つに、法の優位性があります。たとえば、ちょうど数日前、大幅な金融改革法案が可決されました。新しい規制要件が、IT プロフェッショナルにどのような影響を与えるのかは、まだわかりません。ただし、金融業界で仕事をしていない場合でも、IT プロフェッショナルは、規制の問題に対処する必要性が年々高まることは否定できません。

6. 回復の手法

おそらく、この中で一見最も奇妙なスキルは回復の手法でしょう。ただし、実は、回復の手法が重要な IT スキルであることには相応の理由があります。以前の障害回復は、現在に比べて単純なものでした。たとえば、数年前、障害回復時には、テープを挿入し、回復する必要があるファイルを選択して、[実行] をクリックするという操作が必要でした。

最近は、これほど単純な話ではありません。ほぼすべてのマイクロソフト サーバー製品には、それぞれに固有の障害回復要件があります。たとえば、SharePoint をバックアップして復元する手法を、Exchange Server をバックアップして復元する際に使用することはできません。Exchange Server、SharePoint、SQL Server など、すべてのサーバー製品には、情報を適切にバックアップして復元する方法を制御する非常に複雑なルールがあります。また、バックアップまたは復元するサーバーが、フェールオーバー クラスターや分散された展開の一部である場合、このような条件は大きく変化します。

現実問題として、大半の IT プロフェッショナルは、さまざまなサーバー製品のバックアップと回復に関連がある複雑な要件の全詳細を把握しているわけではありません。そうだとしても、このような製品には固有の要件があることを理解するのが大切です。IT プロフェッショナルにとっては、このような要件について理解を深めることも、同じくらい重要です。

7. トラフィック管理

長い間、トラフィック管理とは、特定の種類のトラフィックを指定のサーバーに転送しながら、他のトラフィックをブロックするようにファイアウォールを設定することでした。このような構成は現在も重要ですが、近い将来、トラフィック管理の意味は変化し、さらに重要なスキルになります。

最終的には、大半のアプリケーションが、クラウドで実行されるようになるでしょう。つまり、多くのアプリケーションが、ローカルにインストールされなくなります。このようなシナリオが進展すると、組織ではインターネットの帯域幅が不足リソースとなることに気付くでしょう。そして、帯域幅を調整するさまざまな手法を試す作業に着手せざるを得なくなります。ですが、現実問題として、アプリケーションをさまざまな方法で調整することができます。というのも、重要度や優先度はアプリケーションによって異なるからです。クラウド ベースのアプリケーションの優先度を決める必要性により、IT プロフェッショナルは、トラフィック全般について学習する必要があります。

8. IPv6

IPv6 は、IT プロフェッショナルが学習する必要のある重要なスキルの 1 つです。マイクロソフトは、10 年以上前に Windows 2000 のリリース時に、IPv6 を推し進めようとしましたが、10 年前に主流テクノロジにならなかったのには、それなりの理由があります。

当時、インターネット バブルの真っ盛りで、ユーザーはレコード番号でインターネットに接続していました。この結果、IP アドレスが不足するという重大な問題が発生しました。一般的には、IPv6 に移行すれば IP アドレスの不足を解決できると考えられていましたが、最終的には、ネットワーク アドレス変換 (NAT) ベースのファイアウォールによって問題が解決されました。

NAT ファイアウォールは現在でも広く使用されていますが、NAT は、近い将来再び発生する面倒な問題の一時しのぎのソリューションでしかないと思われます。ファイアウォールの内側にあるコンピューターが、外側の世界にアクセスする必要がなければ、NAT はうまく機能します。ただし、多くの場合、ユーザーは、コンピューターがある場所に関係なく、普遍的な接続を必要としています。

IPv6 では、IP アドレスの不足を解決し、自由にアクセスできる IP アドレスをすべてのコンピューターに割り当てることができます。また、IPv6 には、IPSec などの補足のプロトコルのサポートがなければ IPv4 で使用できない、セキュリティ メカニズムが用意されています。

9. 会議

経済状況により、多くの組織では、出張を止めて、オンライン会議を導入する傾向があります。このようなオンライン会議には、さまざまな形態があります。IP (VoIP) を使用した音声だけの電話会議、ビデオ電話会議、本格的な共同セッションなどがあります。いずれの場合も、管理者が社内に会議サーバーを導入する際には、以前ならテレフォニー プロフェッショナルだけが気にかけていた事項について学習する必要があることを知り、たいてい驚きます。

昨年、『Brien Posey's Guide to Practical Telecommuting』(CreateSpace、2009 年) という書籍を執筆しました。この書籍の目的は、Exchange Server、Office Communications Server などのテクノロジを組み合わせて、本格的な共同会議ソリューションを作成することでした。この書籍の執筆中には、通話のルーティング、電話番号の正規化文字列、セッション初期化プロトコルなどについて学ぶことになりました。これらのテクノロジはすべて、数年前の私にとって、程度の差はあるものの未知の存在でした。ただし、最近では定期的に使用するようになりました。

10. モバイル コンピューティング

最後の重要なスキルは、モバイル コンピューティングです。モバイル コンピューティングは、少なくとも 15 年間、さまざまな形で使用されてきましたが、本格的に注目され始めたのは、最近になってからです。多くのモバイル デバイスが現れては消えていきました。最終的に、大半のモバイル デバイスが、メディアに取り上げられなくなりました。普及しなかったのには、必ず原因があります。

デバイスによっては、非常に高価でした。また、あまりにも複雑なデバイスもありました。実用性を発揮するのに必要な処理能力や対応しているアプリケーションがないデバイスもありました。コストのかかるデータ転送プランも、多くのデバイスの廃止に一役買いました。

しかし、最近では、ほとんどの人が、何かしらの Smartphone を持っています。最近の Smartphone は、安価で、接続が安定しており、多種多様なアプリケーションを実行できます。このため、モバイル デバイスから企業ネットワークへの接続が、主要な課題となっています。IT プロフェッショナルは、モバイル デバイスを使用することで発生するセキュリティ上の影響と、従業員がモバイル デバイスを使用する際に必要な保護機能について理解することが大切です。

Brian Posey

Brien Posey は、MVP であり、数千件の記事と数十冊の書籍を執筆した実績のあるフリーランスのテクニカル ライターです。Posey の Web サイトのアドレスは brienposey.com (英語) です。

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