SharePoint 2010: SharePoint ダッシュボードでインテリジェンスを提供する

SharePoint ダッシュボードを使用すると、ソースが異なるデータをスコアカードに統合して、豊富なデータの視覚機能でスコアカードを拡張して、対話機能とワークフローの自動化を実現できます。

Joshua Hoffman

私たちはデータに基づいて判断を下す時代を生きています。堅牢なデータ インフラストラクチャは、組織がさまざまな場所に格納されている無尽蔵なデータを収集するのに役立ちます。組織では収集したデータを統合して分析することで、具体的な情報に基づいて賢明なビジネス上の判断を下すことができます。

Microsoft SQL Server のような強力なデータ バックエンド システムは必要不可欠ですが、情報を使用して意思決定プロセスを推し進めるのに役立つ豊富な機能を備えたプレゼンテーション層も必要不可欠です。このようなビジネス インテリジェンス (BI) は、できる限り効果的な方法で提示する必要があります。ユーザーが自分のエクスペリエンスを管理できるようにして、IT インフラストラクチャにある既存のプレゼンテーション リソースとコラボレーション リソースを活用するのが望ましいでしょう。

SharePoint 2010 では、組織内のインフォメーション ワーカーに BI ソリューションをじかに提供できます。また、使いやすいツールとなじみのある環境を活用することで、セルフサービス型の BI 機能を提供し、ユーザーに権限を与えて、IT 部門のコストを削減できます。

BI インフラストラクチャの構成要素である SharePoint 2010 ダッシュボードと PerformancePoint Services は、強力な意思決定ツールです。SharePoint ダッシュボードでは、ソースが異なるデータをスコアカードに統合して、豊富なデータの視覚化機能によりスコアカードを拡張して、掘り下げ可能な対話機能とワークフローの自動化を実現します。

最初のダッシュボードを構築する

SharePoint ダッシュボードを構築するには、まず、PerformancePoint ダッシュボード デザイナーをインストールする必要があります。ダッシュボード デザイナーは、データ ソース、ダッシュボード、スコアカード、KPI、カスタム インジケーター、フィルター、およびレポートを作成できるリッチ クライアント アプリケーションです。これらは、すべて SharePoint の Web サイトに直接発行できます。

PerformancePoint Services を構成したら、SharePoint インフラストラクチャに含まれるビジネス インテリジェンス センター サイトにアクセスしてダッシュボード デザイナーをインストールできます。初期インストールが完了すると、[スタート] メニューからダッシュボード デザイナーに直接アクセスできます。

次は、ダッシュボードで使用するデータ ソースを選択する必要があります。データ ソースには、SharePoint リスト、SQL Server のインスタンス、SQL Server Analysis Services、Excel Services、Excel ブックを指定できます。

データ ソースの接続を確立したら、KPI の構築に着手できます。KPI を作成するときには、評価するデータ ポイントを選択します。たとえば、SQL Server Analysis Services の販売データを選択します。また、選択したデータの評価基準となるものも選択する必要があります。たとえば、営業担当者の SharePoint リストで定義されている販売ノルマなどです。

複数のデータ ソースのデータを受け付ける KPI は、PerformancePoint Services が重要なビジネス データを接続して、ビジネス上の判断を下すユーザーに有意義な方法でデータを表現するのに役立ちます。SharePoint 2010 の KPI は、計算値 (販売地域の売上を表すいくつかの販売数値の合計) に基づいて作成することもできます。KPI を定義するときには、適切な視覚インジケーターを選択できます。これは、値が一定ラインを満たしている、超えている、または下回っていることを示す "赤"、"黄"、"緑" の停止信号のようなものになる場合もあります。

KPI を定義したら、ダッシュボードで使用するスコアカードを構築できます。スコアカードには、組織の業績の概要を理解できるように一連の KPI が表示されています。たとえば、販売地域や製品ラインごとに販売ノルマに対する業績を表示するスコアカードを構築できます。ダッシュボード デザイナーのスコアカードに適切な KPI を追加したら、SharePoint ダッシュボードにスコアカードを発行できます (図 1 参照)。

Performance ダッシュボード デザイナーで構成されたスコアカード

図 1 Performance ダッシュボード デザイナーで構成されたスコアカード

データの視覚化

1 枚の画像は 1,000 ワードの説明に勝ると言われますが、それには正当な理由があります。画像からは、一目見ただけで多くの情報を得られます。PerformancePoint ダッシュボード デザイナーを使用すると、重要なビジネス データを視覚に訴える方法で提示するのに役立つデータの視覚要素を作成および発行できます (図 2 参照)。

データの視覚要素を含む構成された SharePoint ダッシュボード

図 2 データの視覚要素を含む構成された SharePoint ダッシュボード

ダッシュボード デザイナーでは、なじみのある分析を行うための表やグラフを使用するレポートを作成できるだけなく、高度な対話機能が用意されています。たとえば、営業担当者別の売上収益を表す円グラフを作成できます。また、ユーザーは、レポートを棒グラフや線グラフで表示し直したり、データを並べ替えたり、値フィルターを適用したり、特定の情報の表示/非表示を切り替えたりするなどの操作を行えます。

PerformancePoint では、表やグラフなどの従来からある表示形式以外に、データの視覚化に新しい革新的なアプローチを使用できます。たとえば、図 3 に示すように戦略マップを使用すると、ビジネス データを Visio 図面の図形 (地図、プロセス図など) に接続できます。戦略マップは、実際のビジネス プロセスを視覚的に表現したものにビジネス データを接続するのに役立ちます。また、地域別の販売実績、戦略プランにおける進捗、サプライ チェーンの実績を一目で確認することができます。

ビジネス データを視覚的に表現したものに接続する戦略マップ

図 3 ビジネス データを視覚的に表現したものに接続する戦略マップ

対話型のインテリジェンス

SharePoint 2010 を使用してビジネス データ ダッシュボードを作成すると、ビジネス ユーザーには、他の BI ソリューションでは得られないレベルの対話機能を提供できます。SharePoint ダッシュボードでは、ユーザーは、データを掘り下げることが可能です。KPI を掘り下げて、KPI の基盤になっている情報とそれが組織の実績に与える影響について理解を深めることができます。

たとえば、地域別の売上収益を表示する KPI では、ユーザーは、掘り下げて、最も業績が良い製品ラインと業績を改善する必要がある製品ラインを確認できます。また、KPI に表示されているデータを軸として、フィルターを適用して、追加のデータ ソースを組み合わせて、そのような結果になった原因を解明できます。

この作業を行うのに最も有益な PerformancePoint ダッシュボードの分析機能は、分解ツリーです。分解ツリーは、ユーザーが原因分析を行うのに役立つ分析ツールです (図 4 参照)。Silverlight ベースの対話型のコントロールを使用すると、レポートの要素を分解して、複合的な数値の個別の構成要素を確認できます。これは、さまざまな要素が、最終的な数値に与える影響を理解するのに役立ちます。

KPI の要因を示す分解ツリー

図 4 KPI の要因を示す分解ツリー

ダッシュボードの要素を接続すると、新たな対話機能が提供されます。たとえば、地域別の販売データのスコアカードで特定の地域を選択すると、そのページ上にある別の Web パーツ (KPI の詳細レポート) が更新されて追加の情報が表示されるようにダッシュボードを構成できます。追加の情報としては、その地域を担当している営業担当者、販売ノルマ、連絡先情報などを表示できます。このデータは、まったく別のデータ ソースから取得できますが、その際、ダッシュボードを経由することで一般的な属性 (販売地域など) を通じて接続できます。

ワークフローを操作する

SharePoint ダッシュボードでは、SharePoint に組み込まれている強力なワークフロー機能を使用しています。SharePoint ダッシュボードでユーザーが実行したビジネス タスクは、SharePoint ワークフロー エンジンによって実行されます。たとえば、ある営業担当者が自分のダッシュボードを確認して、販売ノルマを達成できない可能性が高いと判断した場合には、上長に値の調整を依頼できます。上長は部下からの依頼を承認または拒否できます (上長が操作するまで、ダッシュボードに変更は反映されません)。

SharePoint ダッシュボードでは、統合および調整された BI が提供されます。SharePoint ダッシュボードにより、インフォメーション ワーカーは、データに基づいて判断を下せるようになります。機能が豊富で視覚的な要素を備えた対話型のインテリジェンスにより、組織内で判断を下す必要があるユーザーは、必要な情報にすばやくアクセスして、なじみのある形式で有益な情報を参照することができます。セルフサービス指向のアプローチにより、IT 管理者と IT スタッフの負担は大幅に軽減され、時間とコストの両方を節約することができます。

この記事の執筆に協力してくれた Leif Brenne と Craig Boobar に感謝します。

Joshua Hoffman

Joshua Hoffman は、TechNet マガジンの前の編集長です。現在は、フリーランスで執筆活動とコンサルティングを行っており、クライアントにテクノロジとそれぞれのクライアントに合ったマーケティング手法に関するアドバイスをしています。また、市場調査の分野の成長と強化に注力している ResearchAccess.com (英語) で編集長を務めています。現在、ニューヨーク市に住んでいます。

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