統合コミュニケーション: 十分なコミュニケーションをどこからでも

Microsoft Lync Server 2010 は、地理的な制約をなくし、複数のコンピューティング デバイスで機能するので、大幅な節約を実現できます。

William Van Winkle

数年前、マイクロソフトが同社の従業員について調査したところ、平均的なワーカーがデスクに向かっているのは、勤務時間のうちたったの 40% であるという興味深い事実が判明しました。現代のユーザーは、外出していてもオフィスにいても、だれもがモバイル ユーザーです。ところが、ほとんどの企業は、今もなお、デスクに縛られているユーザー向けの通信インフラストラクチャを構築しています。ですが、他にもっと良い方法があるはずです。

毎年約 3 億ドルを売り上げている中東の高級車ディーラーである Bavarian Auto Group 社のケースを見てみましょう。同社は、約 1,300 人の従業員を抱えており、大半の従業員が 1 年を通して海外に出張しています。

Siemens 社の構内交換機 (PBX) システムの機能は次第に不十分になり、従業員が電子メールと音声メールの返信を待たなくてはならない一方で、国際電話の料金は 1 分ごとに数ドル単位で加算されます。そのうえ、自動車販売店が、顧客をサポートして新しい得意先を獲得しようとすればするほど、出張費がかさみます。

同社は、2008 年までにもっと良い解決策を見つける必要があることは自覚していたため、既存のシステムを、マイクロソフトが提供する統合コミュニケーション (UC) システムである Office Communications Server (OCS) 2007 と Exchange Server 2007 Unified Messaging に変更しました (どちらの製品も、最近 Lync Server プラットフォームに対応するようにアップグレードされました)。従来の PBX システムと並行して OCS を実行することで、従業員は、プレゼンスとインスタント メッセージング、インターネット ベースの音声、ビデオ チャット、共同作業が可能なホワイトボードへの書き込み、および Office SharePoint Server を通じたシームレスなドキュメント共有をたちまち活用できるようになりました。

これらの UC ツールは非常に強力だったため、Bavarian Auto Group 社は、これらのツールを導入した初年度に出張の数を 20% 削減できました。その結果として、40 万ドル節約しました。同社は、従業員が UC プラットフォームの豊富な通信機能を使用して生産性を高めるにつれて、削減できるコストが増えることを期待しています。

LAN を超えた Lync Server

単にワーカーの共同作業を促進する手段として UC を取り入れている企業もあります。たとえば、2 階下のフロアにいる経理部門に電話をかけるよりも、簡単で安全なインスタント メッセージングを使用した方が用事を早く済ませることができます。ですが、UC は比較的新しいツールなので、多くの企業では、Lync Server などのプラットフォームがどのようにしてオフィス外での生産性を高めるかを完全に把握していません。

営業チームの 2 人のメンバー間で、従来の通話が行われるところを想像してみましょう。1 人はオフィスにいて、1 人はオフィス以外の場所にいます。どちらも、同じプレゼンテーションのプロジェクトに従事しています。会話を始める前から、どちらかが不在なため電話連絡が取れないという問題があります。

Lync Server では、電話をかける側が相手のプレゼンス状態を確認できるため、このような事態を避けられます。音声通話を開始する前に「ちょっとお話できますか」などの簡単な内容をインスタント メッセージで送信して、相手が通話できる状態かどうかを確認できます。実際に、ビデオ チャット機能を使用すると、2 人のチーム メンバーは、お互いの顔を見ながらコミュニケーションを取ることができます。

ある意味では、このような機能により、会話の内容により集中できるようになります。オフィス外にいるチーム メンバーが、クライアントから新しいファイルをいくつか受け取っていて、パートナーと共有しなければならない場合があります。外出中のメンバーは、オフィスにいるメンバーとデスクトップを共有できるので、まるで同じテーブルに座っているかのように、ドキュメントを一緒に確認できます。

どちらのメンバーも同じ通信ツールを持っているため、LAN に接続しているかどうかにかかわらず、操作がちぐはぐになることはありません。実際、どのような場所でもワーカーを統合できる Lync Server の機能によって、LAN が共同作業を行うための条件ではなくなります。こうした地理的な制約をなくすのに特に適している Lync Server の機能には、次のようなものがあります。

  • 同時呼び出し: 連絡先リストをスクロールすることなく、一度に複数の連絡先の番号 (携帯電話とソフトフォンを含む) に電話をかけます。
  • 通話の転送: Lync Server の通話を、ソフトフォンから携帯電話や別のオフィスのユーザーに転送する場合、転送プロセスはシームレスに行われるので、通話者が電話を切って新しい番号をダイヤルする必要はありません。
  • 場所の共有: プレゼンス機能によって、自分が今どこにいるかを他のメンバーに知らせることができます。
  • 委任: 通話をチーム メンバーに委任するよう Lync Server に指示できます。委任されたメンバーには、着信通話が委任者宛てのものであることが通知されます。
  • ホワイトボード機能を使用した共同作業への参加: アドホックな共同作業ツールによって、ホワイトボード機能でブレインストーミングを行えるチーム メンバーと接続できます。
  • 録音したものの確認: ビデオ、画面の共有、ホワイトボード、およびインスタント メッセージなどの会話を記録できます。記録した会話は、後で、保存、送信、および確認することができます。
  • スキルの検索: Lync Server の連絡先リストで、専門知識に関するキーワードで検索をかけて、特定のスキルを持つ人物を探し、プレゼンス状態を使用して、その中から手が空いている人を見つけ、インスタント メッセージを送信して、即座に返事を受け取ることができます。

デバイスにとらわれない

Lync Server は、複数のデバイスを使用するときに遭遇するいくつかの避けられない衝突をなくすこともできます。ユーザーは、スマートフォン、タブレット、ネットブック、ノートブック、デスクトップを併用したり、他のユーザーが所有するデバイスを使用せざるを得ないときがあるかもしれません。

Microsoft Office 365 の一部になった Lync Online を使用すると、ワーカーは、連絡先カード、プレゼンス、インスタント メッセージング、VoIP、画面の共有をはじめとする、ほとんどの重要な Lync Server の機能を、クラウドから利用することができます。また、デバイスではなくユーザーにライセンスが付与されているため、どのような場所からでも、互換性のあるデバイスを使用して自由に Lync Server を使用できます。

Lync Server とサードパーティ製のアプリケーションを組み合わせると、どのような場所からでも、どのようなデバイスを使用しても通信できるように、この機能を拡張できます。企業と ISV は、Lync Server のアーキテクチャで機能するツールを自由に設計できます。

たとえば、昨年 Avtex 社によって買収された Convergent 社は、電線が切断されるという緊急事態への対処をサポートする、電力会社用のアプリケーションを開発しました。システムのデータベースには、何百もの技術者が登録されていて、その技術者は全員 Web インターフェイスから Lync Server にアクセスできます。Lync Server 環境では、これらの技術者を一度に 20 ~ 30 人調査して、応答時間と到着予定時間を収集します。

Convergent 社の CTO を務めていた Douglas Splinter 氏は、だれよりも UC の能力について理解しています。これは、同社が UC プラットフォームを基盤としているからです。「私たちにはオフィスがなく、私たちの "内部環境" は、ホストしているデータセンターにある数多くのサーバー ラックです。当社の実態はインターネットがすべてです」と Splinter 氏は述べています。

このようなビジネスの哲学と方式は、同社が行うすべてのことに反映されています。Splinter 氏は、次のように続けました。「私たちとのすべての会話は、インターネット ベースの音声で行われます。当社は、常に、マイクロソフトがエッジ接続サービスと呼ぶものを使用して、従業員をサポートし、すべてのクライアントに対応しています。これが共同作業を行う方法です。SharePoint から、CRM 展開、そして Lync Server との通信に至るまで、すべてのものがインターネットに接続しています」。

純利益

Lync Server は数多くの機能を備えていますが、これらのメリットを、実際の投資収益率 (ROI) の数値で表すにはどうすればよいでしょうか。マイクロソフトの後援を受けて Forrester Research 社が実施した調査では、マイクロソフト製の UC を使用している顧客企業 15 社を調査し、その結果を 4,000 人のユーザーがいる架空の複合企業に反映しました。

この結果、この企業は、約 600 万ドルかけてマイクロソフト製の UC を展開し、3 年間で約 4,000 万ドルのリスク調整した総便益を実現したことがわかりました。つまり、563% の ROI を実現して、334 万ドル節約したことになります。

Forrester 社は、この ROI 分析で、いくつかの要素を計算しました。まずは節約時間です。ユーザーのプレゼンス情報を使用することで、ワーカーの 59% が、無駄な通話や不必要な音声メールを回避して、1 日に少なくとも 15 分の時間を節約できていることがわかりました。また、マイクロソフト製の UC の合理化されたインターフェイスと、グループ呼び出しのアドホックな性質は、ビデオの使用を促進します。60% のワーカーは、ライブ映像でビデオ会議が行われ、セッション設定、スケジューリング、およびトラブルシューティングへの対処が不要になることによって、毎週 1 ~ 5 時間を節約しました。

意思決定や作業効率の強化など、時間を節約するための考慮事項は他にもあります。Forrester Research 社の調査により、上級管理職が 1 年につき 100 時間を節約していることが判明しました。この 100 時間は、より生産的な作業に充てることができます。技術顧問は 100 時間、コンテンツ管理者は 60 時間、インフラストラクチャ ワーカーは 40 時間を節約しました。ですが、どの場合も、この節約された時間の一部は、出張中に浪費される時間になることが予測されました。Forrester 社は、各グループの平均時給を考慮して、従業員が追加で上げる業績が約 2,000 万ドルになると見積もりました。

出張費の節約も重要です。1 年目は出張費を 10% カットし、3 年目には 30% をカットすることによって、(1 回の出張費の平均が 1,500 ドルであると想定すると) 約 1,500 万ドルを節約できました。その他のハード面でのコストの節約には、ダイヤルイン会議にかかる料金 (60 万ドル) や通話料金の削減 (120 万ドル) などがあります。

Lync Server と UC は、出張とモビリティの効率を高めるのにも役立ちます。出張が良いものであることは明らかですが、出張中の時間の浪費は違います。Forrester では、どのようにしたら従業員が UC を使用してモビリティを高め、1 週間に平均 3 時間生産性を向上できるかということも調査しました。この状態を実現すると、300 万ドル以上のコストを節約できることになります。

聞き取りやすくする

Lync Server と UC によって実現されるメリットは、ユーザー エクスペリエンスの品質によるところがあります。これには、使用するオーディオ機器とビデオ機器がかかわってきます。従来の PBX システムの世界では、電話のオプションは制限されているうえに高価であることがほとんどでした。

Lync Server には、あらかじめ UC 用に最適化され、優れたエクスペリエンスを提供することがマイクロソフトによって保証された、ハードウェアのエコシステムが備わっています。これは、騒々しい環境で作業しているときに自分の言葉をはっきりと伝える必要があるモバイル ユーザーにとって、さらに重要なことです。

人間の耳は、基本的に 20 ~ 20,000 Hz の音声スペクトルを検知できます。また、人間は 80 ~ 14,000 Hz の範囲でしか発声することができません。この範囲外のものは、注意をそらしたり、声の明白さを損なったりする騒音にしか聞こえません。優れたノイズ キャンセリング ヘッドセットには、認知できる音声の範囲を超える音をフィルター処理できるという利点があります。

従来の PSTN の電話は、300 ~ 3,400 Hz の範囲にある "狭帯域" オーディオを使用していました。HD 音声とも呼ばれる "広帯域" オーディオの範囲は 50 ~ 7,000 Hz で、人間の声の範囲と一致することが意図されており、幅広い範囲の音声を再生することができます。広帯域のオーディオでは、このように最低値が低いことによって、自然な感じと存在感をより強く表現できます。スピーカーは、"まるでユーザーがそこにいるような" 音を発するため、内容を聞き返す必要がずっと少なくなります。

Lync Server 対応のヘッドセットは広帯域のオーディオを使用しますが、競合製品である IP テレフォニー デバイスは異なります。また、どの Lync Server のヘッドセット デバイスも、アナログではなく、コンピューターのサウンド アダプターを介して USB 接続されます。ヘッドセットで、音声のエクスペリエンスを制御できるので、潜在的に問題があるオーディオ ドライバーに振り回されることがなくなります。

Lync Server 対応のデバイスは、Lync Server 対応のデバイスは、有線のヘッドセットやコードレスのヘッドセットから、スピーカーフォンやワイド画面の Webカメラに至るまで、さまざまな出力先に対応しています。Dell、Hewlett-Packard、および Lenovo のノートブックには、Lync Server の基準を満たしていることが保証された、統合されたデバイス (マイク、スピーカー、カメラ) が搭載されているものがあります。このようなデバイスのほとんどは、わかりやすく、単一目的ですが、モバイル ワーカーに適した機能が追加されているものもあります。たとえば、ワイヤレス ヘッドセットの Jabra GO 6430 では、Bluetooth を使用して、モバイル フォンとコンピューター ベースのソフトフォンを接続します。

「IT がすぐに利用できない、オフィスが分散している企業では、ヘッドセットを使用することは大いに理にかなっています。訓練をほとんど受けていないユーザーやまったく受けていないユーザーでも、ヘッドセットは難しい設定なしに接続して使用することができます」と、Jabra とマイクロソフトのアライアンスの責任者である Travis Hatmaker 氏は述べ、次のように続けています。「複数の目的に使用できる少し複雑で高級なヘッドセットもありますが、一般的なソリューションは、単なるプラグ アンド プレイ デバイスです。ヘッドセットは、Lync Server で既定のデバイスとして認識され、完全に背後に隠れています。私たちは、複雑なところがエンドユーザーの目に触れないようにするために多大な努力をしました」。

デバイスの選択肢がたくさんあるため、ユーザーのニーズと環境に合ったヘッドセットやカメラを選択するのがより簡単になりました。マイクロソフトのデータによると、Lync Server 対応の USB ヘッドセットでも、競合製品である IP 電話の 3 分の 1 以下の価格で購入できる傾向があるということです。企業のユーザーの半分が、IP 電話から USB デバイスに切り替えた場合、通信に関する設備投資を 19% 削減できます。

全体像

コスト以外のところで言うと、Lync Server にはワーク ライフ バランスも関係してきます。オフィスの外で働くことで「より自由である」と感じる人もいるようですが、たいていはその逆です。

彼らは実のところ、交通渋滞に巻き込まれたり、会議の議長を務めたり、クライアントを訪問したときに担当者を待ったりする時間の方が多いことがほとんどです。モバイル ワーカーは、完全な機能を備えたコンピューターをすぐに使えない状況にあり、不十分なテクノロジで、少なくともデスクに向かって作業しているワーカーと同程度の生産性を上げようとすることがしばしばです。このような要因によって、負荷も高くなり、友人や家族と過ごす時間が少なくなります。

Lync Server を導入すれば、人々がより効率的に通信できるようになるため、奔走したり待機したりする時間が短くなります。多くの場合、ワーカーは、外出せず、自宅で作業できるので、ここで紹介したコスト削減と共に、"環境に優しい" というすばらしいメリットを享受できます。Lync Server は、仕事中もそれ以外の時間でも、より多くの方法でより頻繁に人々をつなげることができるプラットフォームです。TechNet Evaluation Center から無償の 180 日評価版がダウンロードできます。

William Van Winkle

William Van Winkle は、以前 Reseller Advocate Magazine の編集長を務めていました。1997 年からフリーランスのテクニカル ライターとして活躍し、PC Magazine、CPU、Smart Computing、Processor、Tom's Hardware などに寄稿しています。彼は、日々テクノロジがもたらす影響について、ブログを書くことを楽しんでいます。米国オレゴン州ポートランドの近郊であるヒルズボロに住んでいます。

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