ビジネスにおける IT: モビリティと神話
モバイル コンピューティングが主要なプラットフォームとして台頭したことは、世間で思われているほど IT プロフェッショナルにとって革命的な変化ではないかもしれません。
Romi Mahajan
モビリティが重要なコンピューティング シナリオとして台頭したことにより、IT プロフェッショナルは再び膨大なプレッシャーを背負い込むことになりました。ですが、モビリティは、多くの専門家が考えているでほど、IT に変化をもたらしていないようです。しょせん、多くの専門家は、あらゆる新しいトレンドは革命的であると主張することで、収入を得ているのです。
真実は、常に、もっと穏当で、停滞と革命の狭間にあります。IT プロフェッショナルにとって重要なのは、モバイル デバイスの爆発的な普及が、自らを取り巻く世界にどのような変化を与えるかを理解することです。また、その変化を誇張しないことも同じくらい重要です。
問題は、モバイル デバイスの普及にかかわるテクノロジにあるのではなく、IT プロフェッショナルが担当する業務の性質と、各事業部や会社の目的をサポートする体制にあります。
このコラムは、次の 3 つの主題を軸に展開します。
- IT プロフェッショナルとしての真価が問われるのは適応力です。テクノロジ、ビジネス シナリオ、および最新スキルは、絶えず変化します。IT プロフェッショナルは、これまでと同じように、見事に自らを改革して目の前にある課題に対応して、未来の課題に備えることでしょう。
- IT プロフェッショナルが何かを学習するときには実験が付き物です。他の業種と異なり、IT では、理論よりも "実際にいじってみる" ことが重要視されます。
- IT は、一般に認識されているよりも、はるかに革新的です。IT 部門には、顧客 (つまり、ビジネス ユーザー) から事実に即したフィードバックが絶えず提供されます。フィードバックを受け取るまでに時間がかかり、その内容が抽象的なマーケティングなどの部門と異なり、IT 部門では、リアルタイムのフィードバックを得ることが可能で、そのメリットを享受しています。
上記の 3 つの主題は、モビリティが IT にとって非常に大きな問題でありながら、一部で予想されていたような大きな変化はもたらさないという事実と、どのような関係があるのでしょうか。IT プロフェッショナルは、モビリティが及ぼす影響の程度を把握しているだけではなく、会社のビジネス部門よりもかなり前から詳細を理解しています。また、ビジネスと個人の生活にモビリティがもたらすことが予想される変化の程度についても十分認識しています。
ここで前述の主題を基に、IT とビジネスを比較してみましょう。
- 適応力: 規模の大小にかかわらず、業務体制の迅速なモバイル化に歯止めをかけるよう IT 部門に働きかけたことがある企業はありません。どちらかと言うと、モビリティがもたらす手段による業務最適化の準備が最初に整うのは、他でもない IT 部門です。
- 実験: IT プロフェッショナルは、本質的に実験を好むので、往々にしてテクノロジの最前線にいます。IT 部門のメンバーは、最新のデバイスを持っているだけでなく、十中八九、最新のデバイスが使われるさまざまなビジネス シナリオで実験をしています。
- 革新: 革新において顧客の意見が果たす役割については、多くの研究者とビジネス リーダーによって広く書き著されています。IT プロフェッショナルは、絶えずフィードバックを得られる立場にあるため、これまで巧みに自らを改革し、モビリティにより生まれたシナリオも含めて、さまざまなシナリオに備えることができています。IT の戦略や戦術と比べると、ビジネス モデル、マーケティング プラン、および販売戦術を生みだすときに真の革新が起こることは少ないのが一般的です。
モバイル コンピューティング デバイス、スレート テクノロジ、ユビキタスに近い状態のワイヤレス ネットワーク、インターネットによって可能になった多数の革新的な製品とサービスは、人々の暮らし、仕事、コミュニケーションのあり方に大きな変化をもたらしました。このような変化は地殻変動のようなもので、変化を遂げたが最後、そこからは "後戻りできない" 根本的な変化が起きていると主張する人もいます。
たしかに地殻変動のような変化もありますが、モビリティがもたらした変化は、さまざまな意味で、革命的ではなく進化的なものであることを私たちは理解する必要があります。IT プロフェッショナルは、この進化において、先見的、進歩的、先導的な役割を果たしてきました。それは、高尚な動機に基づく取り組みによるものでもありますが、この進化が IT プロフェッショナルの仕事の一部でもあるからです。
ですから、台頭しているモビリティ プラットフォームがもたらす "IT プロフェッショナルにとっての脅威" を唱える人に出会ったときは、上記の論旨をもって反論してみてください。実際、IT 部門は、現行の業務体制のモバイル化をたゆまず推進してきた組織における唯一の部門なのだと。
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Romi Mahajan KKM グループの代表取締役です。連絡先は、romi.mahajan@ascentium.com (英語のみ) です。KKM に加わる前は、Ascentium Corporation のマーケティング最高責任者でした。Romi はテクノロジとメディア回路に関する著名な講演者で、さまざまな諮問機関の委員を務め、また、年間 12 個以上の業界イベントで講演を行っています。