Lync Server 2010: Microsoft Office と Lync Server を併用する

Microsoft Lync Server に組み込まれているプレゼンスと共同編集の機能を使用すると、共同作業のプロセスを簡略化できます。

William Van Winkle

今日の企業環境では、チームで仕事しています。営業担当者が 1 人で PowerPoint プレゼンテーションの準備をしているとしても、各コンテンツ要素は別の担当者が提供または作成しています。広報担当者が作成した文章、マーケティング担当者が作成した画像、経理担当者が作成した表などがあります。営業担当者が、プレゼンテーションの最終的な仕上げを行っているときには、必ずと言ってよいほど他のチーム メンバーに問い合わせることになります。それは、すべての変更とバージョンを追跡して管理する必要があるからです。

古き良きと呼べるかどうかはわかりませんが、以前は、ドキュメント作成にかかわったユーザーを特定することが、今よりも困難でした。ですが、Office 2010 では、Word、Excel、または PowerPoint ファイルで [ファイル] タブの [情報] 画面にある "関連ユーザー" のセクションで、この情報を確認できます。ここには、ドキュメントの作成と編集にかかわったとされるユーザーの情報が表示されます。

[今すぐ送信] ボタンをクリックすると、Lync Server のインスタント メッセージング (IM) 経由で、ドキュメントの作成にかかわったユーザーに最新のバージョンを送信できます。また、[今すぐ共有] ボタンをクリックすると、アプリケーションの共有機能を使用して、ドキュメントをユーザーに表示することもできます。

Microsoft Lync Server と Microsoft Office アプリケーションを併用すると、今までよりも短い時間でさらに有益なコンテンツを作成し、作成したコンテンツをチーム メンバーと効率的に共有できるようになります。従来の共同作業では、チーム メンバーは、異なるファイルやセクションを担当していました。また、1 人のメンバーが、すべてのコンテンツを取りまとめるというのが通例でした。Lync Server と Office 2010 を使用すると、共同編集者は、ドキュメントを開いているユーザーを確認したり、同時に同じドキュメントに対して作業を進めることが可能になります。

プレゼンスの威力

Lync Server を使用すると、現在または過去にドキュメントの作成にかかわったユーザーのオンライン状況を確認できます。オンライン状況は、各ユーザーの名前と共に表示されるボタンの色で識別されます (図 1 参照)。これらのボタンは、ユーザーの状況 (オンライン、取り込み中、外出中など) を表します。

ドキュメントの作成や編集にかかわったユーザーとそのユーザーが質問に対応できる状態かどうかがわかることで貴重な時間を節約できます

図 1 ドキュメントの作成や編集にかかわったユーザーとそのユーザーが質問に対応できる状態かどうかがわかることで貴重な時間を節約できます

たとえば、Bob と Doug が Word 2010 で文書を編集しているとしましょう。Bob の所在地は、米国ミネソタ州のダルース、Doug の所在地はアイルランドのダブリンです。Bob も Doug も、これまでのように国際電話の代金を負担して、時差を調整することは望んでいません。Word 2010 の共同編集ツールを使用すると、Bob は、彼が開いている文書で Doug が編集しているときに、そのことを把握できます。また、Doug のプレゼンス状態も表示され、Doug が編集を行うためにロックしている段落も把握できます。

このような共同作業の方法は、従来の方法よりも効率的なので生産性を高めることができます。Doug が特定の段落を 15 分間ロックしているときに、Bob が同じ段落にどうしても変更を加える必要がある場合、Bob は Doug が電話中であることを確認して、IM で Doug に段落のロックを解除するように依頼できます。数秒後、Bob はロックされていた段落に変更を加えられるようになります。Lync Server と Word 2010 を併用していなければ、このような依頼に対応してもらうまでに、少なくとも数分はかかります。

Outlook、Exchange Server、および SharePoint と Lync Server を併用する

これらを併用すれば、ボイスメールを確認するために、重要な会議を中座する必要がなくなります。Lync Server により、ボイスメールをテキストに自動変換したデータが提供されます。

ボイス メッセージは、マイクロソフトが何年もかけて改良を重ねている、音声入力エンジンで解析されます (図 2 参照)。その後、送信者、送信者の連絡先情報、会社名と肩書き、Lync Server のプレゼンス状態を含む電子メール メッセージが表示されます。

音声入力の一般的な精度は、80 ~ 95% です。完璧ではありませんが、ボイス メールを送信したユーザーの意図、緊急度、対応を伝えるには十分な精度です。その結果、会議中に中座したり、音声を再生することなくボイス メールを確認できます。

Lync Server 2010 の音声ボイスメールの機能を使用すると、他の用事で忙しいときにもメッセージを確認できます

図 2 Lync Server 2010 の音声ボイスメールの機能を使用すると、他の用事で忙しいときにもメッセージを確認できます

Lync Server から提供される連絡先情報は重要です。多くの専門家は、豊富な情報と経験を持っていますが、時間に追われているので、データを瞬時に共有できるツールは、企業の生産性と競争力を高める一助となります。Lync Server が Outlook 経由で表示する連絡先とプレゼンスの要素が非常に重要なのは、そのためです。この情報により、適切なユーザーに適切なタイミングで、すぐにアクセスできます。

Outlook で表示されるプレゼンスの情報源は、Lync Server の連絡先カードです (図 3 参照)。連絡先カードには、電話番号、住所、プレゼンス状態、所在地、肩書き、Exchange Server の予定表に登録されているデータに基づいた空き時間情報が含まれています。連絡先カードの [組織] タブでも、重要な情報が提供されます。このタブには、チーム メンバーやマネージャーのプレゼンス状態が表示されます (図 4 参照)。

Lync Server の連絡先には、個人と組織に関するメタデータが設定されたフライアウトの連絡先カードがあります

図 3 Lync Server の連絡先には、個人と組織に関するメタデータが設定されたフライアウトの連絡先カードがあります

Office 2010 と SharePoint Server は、密接に統合されていて、一方についてだけ言及するのは適切ではないので、SharePoint についても触れておきましょう。通常、ビジネス チームでは、SharePoint サイトを作成して、ドキュメント、スケジュールなどのリソースを格納しています。

チーム メンバーは、各自が所属するチームのサイトに表示されます。Lync Server のプレゼンス機能を使用すると、各メンバーのプレゼンス情報が自動的に表示されます。SharePoint と Lync Server により、チーム メンバーは、アドホックな IM、インターネット通話、ビデオ チャット、ホワイト ボードと画面共有のセッションに各メンバーをドラッグ アンド ドロップして追加できます。

Lync Server により、多くのアプリケーションでプレゼンス状態が表示され、ユーザーがオンラインかどうかを確認できます

図 4 Lync Server により、多くのアプリケーションでプレゼンス状態が表示され、ユーザーがオンラインかどうかを確認できます

以前、Convergent で CTO を務めていた Douglas Splinter 氏は「Office、SharePoint、および Lync Server を並行して活用すると、細かい部分を詰められるので、プロジェクトをスムーズに進めることができる」と述べています。Convergent では、日常作業にマイクロソフトの統合コミュニケーション (UC) を使用し、UC システムを使用するアプリケーションを開発しました。

また、Splinter 氏は「以前は、企画書が完成するまでに 5 ~7 日かかっていました。企画書は、さまざまな担当者の間を行き来していました。Lync Server によって、この期間が 2 ~ 3 日に短縮されました。コンサルティング会社にとって、この期間短縮は大きな影響があります。営業担当者は、以前の約 1/3 の期間で企画書を手に入れられます。適切なスキルを持ったエンジニアの予定を調整するのは困難だったので、ストレージの慣例には、さらに大きな影響がありました。以前は、10 日ほどかかっていた作業が、数日で対応できるようになりました」と述べています。

Lync Server は「単独で仕事をしている人はいない」という 21 世紀におけるワークスタイルの単純な事実を明らかにしたまでです。私たちは持ちつ持たれつの世界に生きています。個人的な接続状況とつながりを公開すればするほど、効率的に仕事を行えるようになります。Lync Server を使用すると、現代のエンタープライズ環境で働いているワーカーは、Office などの生産性ツールの活用方法を大きく飛躍させることができます。

William Van Winkle

William Van Winkle は、以前 Reseller Advocate Magazine の編集長を務めていました。1997 年からフリーランスのテクニカル ライターとして活躍し、PC Magazine、CPU、Smart Computing、Processor、Tom's Hardware などに寄稿しています。彼は、日々テクノロジがもたらす影響について、ブログを書くことを楽しんでいます。米国オレゴン州ポートランドの近郊であるヒルズボロに住んでいます。

関連コンテンツ