DHCP サーバーの実装

Brien M. Posey - MCSE for TechRepublic.com

ネットワーク上で TCP/IP プロトコルを使用する環境で、ネットワーク クライアントに自動的に IP アドレスを割り当てるためには、 Dynamic Host Connection Protocol (DHCP) を使用しなければなりません。 DHCP サーバーを使用すると、一般的なネットワーク構築の問題の多くが解消されます。 また、Microsoft Windows 2000 へのアップグレードを計画している場合、DHCP サーバーをインストールするのが一番良いでしょう。この文書では、DHCP サーバーの重要性について説明します。 さらに、DHCP サーバーをインストールし、適切に構成する方法についても説明します。

トピック

DHCP とは? DHCP とは?

DHCP を使う理由 DHCP を使う理由

DHCP と Microsoft Windows 2000 DHCP と Microsoft Windows 2000

DHCP の動作 DHCP の動作

DHCP のインストール DHCP のインストール

DHCP の構成 DHCP の構成

まとめ まとめ

DHCP とは?

DHCP は、Dynamic Host Configuration Protocol の略です。 DHCP は、ディスクレス ワークステーションをネットワークに接続し、自動的に IP アドレスを取得できるようにする BOOTP プロトコルの拡張です。 DHCP には、各ネットワーク クライアントに IP アドレス、サブネット マスク、既定のゲートウェイ、WINS サーバー用 IP アドレス、および DNS サーバー用 IP アドレスを提供する機能があります。

DHCP を使う理由

DHCP は、自動的に TCP/IP 用クライアントを構成することができますが、既に静的 IP アドレスを使用するように設定している場合、わざわざ切り替える必要があるかどうかという疑問に直面するでしょう。

この疑問に答える前に、DHCP を使用するかどうかに関係なく、常に静的でなければならない IP アドレスがあるという点を指摘する必要があります。 たとえば、DHCP、WINS、および DNS を実行するコンピュータでは静的 IP アドレスを使う必要があります。 また、プライマリ ドメイン コントローラに静的 IP アドレスを使うのはベストな選択です。

これらの例外を念頭に置いた上で、すべてのほかのコンピュータには動的 IP アドレスを使用する方が効率的です。 動的 IP アドレス使用の利点は、一般的な問題の多くを避けることができる点です。 たとえば、IP アドレスを手動で構成する場合、割り当て済みのアドレスと未割り当てのアドレス、およびアドレスが誰に割り当てられているかを常に確認する必要があります。 誤って同じアドレスを 2 人に割り当てた場合、またはユーザーが自分のアドレスに操作を加えた場合、解決が困難なネットワークの問題につながる可能性があります。

さらに、多くの組織では、建物全体でまたはフロワー内、建物間でコンピュータを定期的に移動することがよくあります。 このような場合、静的 IP アドレスを使用していると、PC を移動するたびに IP アドレスを新しいサブネットに適合するアドレスに変更しなければなりません。 しかし、DHCP を使用している場合、コンピュータは自動的に DHCP サーバーに接続し、新しいサブネットに適合する IP アドレスを受け取ります。

最後に、DHCP は IP アドレスを低速の回線で使用している場合にとても便利です。 IP アドレスを静的に割り当てる場合、各コンピュータに一意の IP アドレスを提供する必要があります。 電源が入っているかどうかに関係なく、コンピュータがこれらのアドレスを保持し続けます。

ただし、必ずしもすべてのコンピュータが常に使用されているとは限りません。 そのような場合、DHCP は必要に応じて IP アドレスを割り当てることができます。 これにより、各 PC に必要な IP アドレスがあるかどうかを確認する必要がなくなります。 代わりに、電源が入っている PCだけに必要な IP アドレスを割り当てればよいのです。

DHCP と Microsoft Windows 2000

お気づきのように、Microsoft Windows 2000 は、動的 DNS と呼ばれる新しいサービスの使用を推奨しています。 動的 DNS は、Microsoft Windows NT の現在の DNS サービスと同様に、ドメイン名を IP アドレスに自動的に変換します。 動的 DNS が異なる点は、Microsoft Windows NT の WINS サービスと同じ方法で NetBIOS 名も IP アドレスに自動的に変換する点です。

このサービスが動的 DNS と呼ばれる理由は、コンピュータがオンライン接続されたり、切断されたりするたびにテーブルが更新されるからです。 気づかれた通り、このような機能が有効なのは DHCP サーバーを使用している場合のみです。

新しいコンピュータがオンライン接続されると、DHCP によって IP アドレスが割り当てられます。 次に、DHCP は動的 DNS サーバーに接続し、コンピュータの NetBIOS 名と IP アドレスを知らせます。 さらに、動的 DNS サーバーは、この情報を要求するコンピュータでこの情報を使用可能にします。

DHCP の動作

DHCP は、ディスクレス ワークステーションで使用される BOOTP プロトコルの拡張であると説明しましたが、DHCP サーバーでどのようにジョブが処理されるかは不明瞭かもしれません。

DHCP は、同報通信ベースのプロトコルです。 他の種類の一斉同報通信トラフィックと同様に、特に設定されない限りルーターを通りません。 ルーティングが必要な場合は、UPD ポート 67 および 68 を介して行われる DHCP トラフィックを渡すようにルーターを構成しなければなりません。

DHCP の操作は、以下の 4 つの基本フェーズに分けられます。 IP リース要求、IP リース提供、IP リース選択、および IP リース確認です。

IP リース要求

コンピュータがオンライン接続される場合、必ず、現在 IP アドレスがリースされているかどうかが確認されます。 リースされていない場合、DHCP サーバーからリースを要求します。 クライアント コンピュータでは DHCP サーバーのアドレスを認識していないので、クライアント自身の IP アドレスとして 0.0.0.0、宛先アドレスとして255.255.255.255 を使用します。 これにより、クライアントは、ネットワークを介して DHCPDISCOVER メッセージを同報通信することができます。 DHCPDISCOVER メッセージは、クライアント コンピュータのメディア アクセス制御 (MAC) アドレス (ネットワーク カードに組み込まれているハードウェア アドレス) とその NetBIOS 名で構成されます。

IP リース提供

DHCP サーバーはクライアントから IP リース要求を受け取ると、IP リース要求を IP リース提供に拡張します。 これは、クライアントの IP アドレスを保存し、ネットワークを介して DHCPOFFER メッセージを同報通信することによって行われます。 このメッセージにはクライアントの MAC アドレスが含まれ、その後にサーバーが提供する IP アドレス、サブネット マスク、リース期間、およびこの IP リース提供を作成した DHCP サーバーの IP アドレスが続きます。

IP リース選択

クライアント PC は IP リース提供を受け取ると、この提供を受け入れているすべてのほかの DHCP サーバーに通知します。 これは、この提供を作成したサーバーの IP アドレスを含む DHCPREQUEST メッセージを同報通信することによって行われます。 その他の DHCP サーバーは、このメッセージを受け取ると、クライアントに作成した提供を取り消します。 次に、別のコンピュータに提供できる有効なアドレスのプールにクライアント用に保存したアドレスを返します。 IP リース要求に反応することができる DHCP サーバーの数は任意ですが、クライアントは、ネットワーク インターフェイス カードに付き 1 つしか提供を受け入れることできません。

IP リース確認

DHCP サーバーは、クライアントから DHCPREQUEST メッセージを受け取ると、構成プロセスの最終フェーズを開始します。 この確認フェーズでは、DHCPACK パケットをクライアントに送信します。 このパケットには、リース期間およびクライアントが要求したその他の構成情報が含まれます。 以上で、TCP/IP 構成プロセスが完了します。

DHCP のインストール

DHCP の動作について理解していただけたところで、次ぎに、DHCP サーバーの構成手順について説明します。 組織内の Microsoft Windows NT サーバーの選択から開始します。 DHCP のインストール後、選択したサーバーは常に静的 IP アドレスを使用する必要があります。

サーバーを選択する場合、[コントロール パネル] を開き、[ネットワーク] アイコンをダブルクリックします。 ネットワークのプロパティ シートが表示されると、[サービス] タブを選択します。 次に、[追加] ボタンをクリックして [ネットワーク サービスの選択] ダイアログボックスにアクセスします。 続いて、[ネットワーク サービス] リストから [Microsoft DHCP サーバー] を選択し、[OK] をクリックします。 Microsoft Windows NT CD-ROM の場所を要求するメッセージが表示されたら、 Microsoft Windows NT インストール ファイルへのパスを入力し、[続行] をクリックします。

Microsoft Windows NT による必要なファイルのコピーが完了すると、サーバー内のネットワーク アダプタによって動的 IP アドレスが使用されている場合、静的アドレスに変更する必要があるという警告メッセージが表示されます。 [OK] をクリックして警告を解除します。 次に、[閉じる] ボタンをクリックして、ネットワークのプロパティ シートを閉じます。 Microsoft Windows NT によってバインドが更新され、コンピュータを再起動するように要求されます。

DHCP の構成

新しくインストールした DHCP サービスの構成を始める前に、次のことを理解しておく必要があります。 DHCP によって、最低 1 つのスコープを提供するように要求されるということです。 スコープとは、サーバーがクライアントに割り当てることができる IP アドレスの範囲です。

簡単なことのように思われますが、注意しなければならない点がいくつかあります。 まず、DHCP サーバーは相互に情報を交換しないという点です。 したがって、2 つの DHCP サーバーのスコープが決して重ならないことが重要です。

次に、組織内には静的 IP アドレスを保持する必要のあるサーバーがあるという点です。 たとえば、DHCP、DNS、および WINS サーバーは、すべて静的 IP アドレスを使用する必要があります。 したがって、割り当て済みの IP アドレスのいくつかはスコープの範囲に入れないようにしなければなりません。 たとえば、147.100.100.25 から 147.100.100.50 までの IP アドレスを所有しているとします。 DHCP のスコープに 147.100.100.35 から 147.100.100.50 のアドレスのみを含むようにすると、静的 IP アドレスを必要とするサーバー用に 10 個の IP アドレスが確保されます。

最後に、ネットワーク上のサブネット数を考慮に入れる必要があるという点です。 単一の DHCP サーバーで複数のサブネットを処理することができますが、ルーターが DHCP リレー エージェントとして構成されている場合に限ります。 また、DHCP が各サブネットに割り当てることができるのは 1 つのスコープのみです。

DHCP の構成を計画する場合、[管理ツール] メニューから [DHCP マネージャ] を選択します。 DHCP マネージャ プログラムが起動すると、 [DHCP サーバー] 列の [ローカル マシン] エントリを選択します。

次に、DHCP マネージャの [スコープ] メニューから [作成] を選択します。 [スコープの作成] ダイアログ ボックスが表示されたら、 [開始アドレス] および [終了アドレス] の入力から始めます。 これらのアドレスは、スコープの最初と最後をマークするアドレスです。 次に、スコープ内のアドレスの [サブネット マスク] を入力します。

必要に応じて、除外範囲の開始および終了アドレスを設定することもできます。 これは、DHCP クライアントに割り当てられないアドレスの範囲です。 DHCP は、静的アドレスを必要とするサーバー用にこれらのアドレスを保存します。 複数の除外範囲を使用することも可能です。

また、リース期間を設定することもできます。 多数のアドレスを所有する場合、リースを無制限に設定します。 それ以外の場合は、リース期間に適切な期間を設定してください。

最後に、名前をスコープに割り当て、スコープの目的を識別するのに便利なコメントを追加することができます。 完了すると、[スコープの作成] ダイアログ ボックスが表示されます。

この時点で、[OK] をクリックしてスコープを作成します。 スコープが作成されたが、アクティブ化されていないことを示すメッセージが表示されます。 このメッセージは、スコープをアクティブ化する機会を提供するためのものです。 通常は、先に進んでスコープをアクティブ化します。ただし、まず再構成しなければならないクライアントがある場合は例外です。 スコープの状態を後で変更する必要がある場合、[スコープ] メニューの [アクティブ化] および [非アクティブ化] を使用します。 次に、[ローカル マシン] エントリを展開すると、その下にスコープを表示することができます。

以上で基本的な設定を行ったので、より高度な構成オプションを見てみましょう。 高度な構成オプションは、グローバル、スコープ、または個別のクライアントに適用することができます。 高度なオプションを設定するには、[DHCP オプション] メニューから目的の適用レベルを選択します。 たとえば、スコープ全体にオプションを設定する場合、[スコープ] コマンドを選択します。

[使用しないオプション] ウィンドウ内に高度なオプションの長いリストがあります。 最初はこのリストに戸惑うかもしれませんが、Microsoft クライアントに設定できるのはこれらのオプションの中でいくつかです。 以下のオプションを設定することができます。

  • **ルーター: **ルーターのアドレスを指定します。 これは、既定のゲートウェイと同じ値です。
  • **DNS サーバー: **ネットワーク上の DNS サーバーのアドレスです。
  • **WINS/NBT ノードタイプ: **TCP/IP ネットワークを介して使用される NetBIOS 名解決の種類を指定します。 有効なオプションは、以下のとおりです。
  • WINS/NBNS サーバー: WINS または NetBIOS 名サーバーのアドレスです。
  • NetBIOS スコープ ID: TCP/IP を介して NetBIOS を実行しているコンピュータでは、同じ NetBIOS スコープ ID を使用するほかのコンピュータとのみ NetBIOS 情報を交換することができます。

以上のオプションを設定するには、[使用しないオプション] ウィンドウからオプションを選択し、[追加] をクリックします。選択したオプションが [使用するオプション] ウィンドウに移動します。 次に、オプションを選択して [値] ボタンをクリックすると、オプションの現在の値を表示することができます。 新しい値を編集または追加するには、[配列の編集] をクリックします。

まとめ

この文書では、DHCP サーバーのインストールがネットワーク上の多くの問題解消にどのように役立つかについて論じてきました。 次に、Microsoft Windows 2000 の DHCPを前提としていることについて説明し、 最後に、DHCP サーバーのインストールおよび構成の方法を示しました。

著者 Brien M. Posey は、マイクロソフト認定システム エンジニア (MCSE) で、フリーランスのテクニカル ライターでもあります。 また、米国国防省のネットワーク エンジニアでもあります。

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