Windows 秘話: 発言には注意しましょう

記事にされたくないことは口にすべきではありません。このことは、特に Windows の新しいリリースに当てはまります。

Raymond Chen

9 月に開催された BUILD カンファレンスで、Windows 95 時代の懐かしい同僚にばったり出くわしました。そこで彼が初めて記者団の対応をしたときの次のような話を聞きました。

Windows 95 の完成が目前に迫ったころ、プロジェクト管理チームは Windows 95 について知りたくてたまらないメディアに製品をお披露目する記者会見を行うことにしました。New York Times などの主要な新聞社、Byte Magazine や PC World だけでなく、MacWorld までもを含むテクノロジ関連の情報誌など、あらゆる方面から記者を招待しました。出席者は主要メディアに限らず、中小企業の記者も招待しました。

メイン セッションで、シニア プロジェクト マネージャーが、群がる聴衆に向けて Windows 95 の実演を行いました。Windows 95 で導入された新しい UI の概念を紹介し、新しいシェル、プラグ アンド プレイ、よりスムーズなマルチタスキング、進化したネットワークのサポートなど、製品のデモでよく取り上げられる機能をすべて実演しました。

メイン セッションの後、記者団は、腰を下ろして管理チームのメンバーと話したり、1 対 1 で質問したりできる大部屋に通されました。記者たちは、Windows 95 に関連する技術的な問題だけでなく、Windows のような大きなプロジェクトを管理するにあたっての人間的な側面についても知りたがりました。こうして、おかしな話が誕生することになりました。

Wall Street Journal に掲載された記事では、ある開発マネージャーのインタビューが取り上げられました。彼女は、プログラマは非常に有能な反面、きわめて個人主義的で、チームを管理するのがたいへんだと次のような愚痴をこぼしていました。

「開発者は、不規則で常識外れな時間帯に働いているから、何か問題が起きて解決するのに 3 人必要なときでも、3 人全員が同時に仕事している時間なんて見つけられません。そこで私は、朝 10 時からお昼の 2 時までをコア タイムにして、1 日のうち最低でもその 4 時間は全員一緒に仕事するようにしましたが、それを聞いてプログラマがどうしたと思います? 10 時から 2 時までみんなでスキーに行ったのよ!」

パーティの時間

ご想像のとおり、記者会見のインタビューの時間では、上級のシニア マネージャーが主要報道機関の記者からの質問に対応し、下級のジュニア マネージャーが小規模な新聞社からの質問に対応しました。同僚は、ジュニア プロジェクト マネージャーの中でも一番の下っ端だったので、Redmond Reporter や Bellevue Business Journal のような地方紙の記者が固まるテーブルに配置されました。

1 人の地方紙の記者が「それで、Windows 95 の発売イベントは、どのようなものになるんですか」と質問しました。

同僚は、最近 Windows 95 チームに参加したばかりでした。それに加えて彼は、ジュニア プロジェクト マネージャーでした。Windows 95 の発売イベントの計画がどうなっているのか、そもそもそのようなイベントが開かれるのか、まったく知りませんでした。

そこで同僚は「正直なところ、わかりません」と答えました。

記者は次の質問に移ろうとせず、畳み掛けてきました。同僚が何かを隠そうとしていると思ったのでしょう。「これまでに製品の発売イベントに参加したことはありますか」と記者はたずねました。

同僚は「私が参加していた前のプロジェクトのイベントでは、シャンパンが山ほど用意されて、ビル ゲイツも顔を出したんですよ」と答えました。

記者は欲しい情報を手に入れました。数日後、その地方紙では Windows 95 についての記事が大きく掲載されました。その記事には、次のような記述がありました。

「Windows 95 のプロジェクト マネージャー Bob Smith 氏によると、Windows 95 の発売記念イベントでは、"シャンパンが山ほど用意されて、ビル ゲイツも顔を出す" そうです」

ですから、何をどう言うか、なによりもだれが聞いているかに十分気を付けてください。

Raymond_Chen

Raymond Chen は自分の Web サイト「The Old New Thing」および同じタイトルの書籍 (Addison-Wesley、2007 年) で、Windows の歴史、Win32 プログラミング、および経営陣の声明における独特のイントネーションについて扱っています。

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