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サービスの品質 (QoS) の概要

 

適用対象: Windows Server 2012

QoS とは、コスト効果の高い方法でネットワーク トラフィックを管理し、エンタープライズ環境だけでなく、小規模オフィス、ホーム ネットワークなどの環境でもユーザー エクスペリエンスを向上させることができる一連のテクノロジです。

このドキュメントでは、Windows Server® 2012 におけるサービスの品質 (QoS) の概要を示します。

QoS テクノロジを使用すると、ネットワーク帯域幅を測定し、ネットワーク状態の変化 (帯域幅の輻輳や可用性など) を検出し、ネットワーク トラフィックに優先順位を付けて (調整して) ワークロードまたはアプリケーションのサービス要件を満たすことができます。 たとえば、QoS を使用して、待機時間の影響を受けやすいアプリケーションのトラフィック (音声、ビデオ ストリーミングなど) の優先順位付けや、待機時間の影響を受けにくいトラフィック (一括データ転送など) の影響の制御を行うことができます。

QoS には次のような機能があります。

これらの機能の詳細については、以降のセクションで説明します。

System_CAPS_noteメモ

QoS は、Windows Server 2012 と Windows® 8 のすべてのバージョンに含まれ、Windows Server ® 2008 R2 と Windows® 7 の QoS で提供されるすべての QoS API と機能をサポートします。 QoS は Windows® RT では利用できません。

以前のバージョンの QoS では、Windows Server 2012 の QoS と同様に、ワークロードの絶対的な上限 (調整速度) を設定する機能である最大帯域幅が用意されています。Windows Server 2012 では、最小帯域幅が導入されています。

最小帯域幅は、ネットワークに輻輳が発生したときに指定されたレベルのサービスをワークロードに提供する一方で、ネットワークに輻輳が発生していないときはこのワークロードがより多くの帯域幅を使用できるようにします。 ネットワークの輻輳は、コンピューター システムの複数のワークロードが 1 つのネットワーク アダプターを経由して外部ネットワークへのアクセスを競い合っているときに発生します。

すべてのネットワーク アダプターの容量は限られているため、ワークロードの合計がその容量を超えた場合、各ワークロードのネットワーク スループットは非決定的なものになります。 最小帯域幅を使用すると、競合するアプリケーション間で帯域幅をどのように共有するかを定義できます。

たとえば、Hyper-V サーバーの役割を実行しているコンピューター上で、記憶域、ライブ マイグレーション、およびクラスターが 10 GB の NIC を共有しているとします。 記憶域、ライブ マイグレーション、クラスターのそれぞれに対して 50、30、20 の重みを割り当てた場合、NIC に輻輳が発生したときにそれに対応する比率で帯域幅が共有されます。

最小帯域幅と最大帯域幅のどちらを使用しても、各ワークロードの予測可能なネットワーク スループットを適用できます。 管理者の視点で見た最小帯域幅と最大帯域幅の主な違いは、ネットワーク リソースの使用方法にあります。

ネットワーク リソースの使用

あるワークロードに最大帯域幅を設定した場合、システム内にネットワーク帯域幅を使用している他のワークロードがない場合でも、そのワークロードが限度を超えることはありません。 あるワークロードに最小帯域幅を設定した場合、そのワークロードは、ネットワークの輻輳が発生するまで、可能な限り多くの帯域幅を使用できます。 前の例でライブ マイグレーションが実行されていないとき、記憶域とクラスターのワークロードは、ネットワーク帯域幅の事前に定義された共有を超えることができます。

特定のシナリオの要件に基づいて、最大帯域幅、最小帯域幅、またはその両方を有効にできます。 たとえば、パブリックなホストでは、ホストされている VM によって予期せずにすべての利用可能なインターネット帯域幅が使用されるのを防ぐ目的で VM に QoS の最大帯域幅設定を適用できます。 逆に、データ センター内で Hyper-V サーバーの役割を実行している任意のコンピューターで帯域幅の使用率を最大化するには、サーバーに最小帯域幅設定を適用することができます。

サーバー メッセージ ブロック ダイレクト (SMB ダイレクト) およびデータ センター ブリッジング (DCB)

最小帯域幅と最大帯域幅は、QoS パケット スケジューラによって適用されます。 これらの設定は、Windows Server のネットワーク スタックを経由するトラフィックでうまく機能します。

ただし、ネットワーク スタックをバイパスするネットワーク トラフィックもあります。 その代表的な例が、リモート ダイレクト メモリ アクセス (RDMA) に基づく Windows Server 2012 の機能である、サーバー メッセージ ブロック ダイレクト (SMB ダイレクト) です。 SMB ダイレクトは、RDMA 対応の NIC に直接 SMB トラフィックをオフロードして、待機時間とネットワーク上で費やされる CPU サイクルの数を減らします。 SMB ダイレクトは依然として NIC ハードウェアで他のネットワーク トラフィックと帯域幅を競い合うため、確認を怠ると、あるトラフィックが他のトラフィックに影響を与えたり、帯域幅の枯渇を招いたりする可能性があります。

この問題を解決するために、データ センター ブリッジング (DCB) を使用することができます。 DCB は、一部の NIC ベンダーによってネットワーク アダプターに実装されます。 DCB は、最小帯域幅と同じように機能します。トラフィックの各クラスには、オフロードされているかどうかに関係なく、帯域幅が割り当てられます。ネットワークの輻輳が発生した場合、各クラスはその共有を取得します。それ以外の場合、各クラスは可能な限りの帯域幅を使用します。

ワークロードの帯域幅を管理するには、事前にワークロードを分類するかまたはフィルターで除外して、QoS パケット スケジューラまたは DCB 対応 NIC がワークロードを操作できるようにする必要があります。 Windows には、高度なトラフィックの分類機能が用意されています。 トラフィックは、5 組、ユーザーの種類、または URI に基づいて分類できます。Windows Server 2012 では、管理タスクが簡略化され、Windows PowerShell の組み込みのフィルターを呼び出して最も一般的なワークロードのいくつかを分類できるようになっています。 これらの組み込みフィルターを次の表に示します。

ワークロード

Windows PowerShell の組み込みフィルター (パラメーター)

フィルターの実装

iSCSI

-iSCSI

TCP または UDP ポート 3260 に一致

NFS

-NFS

TCP または UDP ポート 2049 に一致

SMB

-SMB

TCP または UDP ポート 445 に一致

ライブ マイグレーション

-LiveMigration

TCP ポート 6600 に一致

SMB ダイレクト

-NetDirect<port>

指定したポートに一致

ワイルド カード

-Default

他の条件に当てはまらないすべてのトラフィック

System_CAPS_noteメモ
  • SMB ダイレクトは、SMB トラフィックを NIC にオフロードします。 "-NetDirect <port>" を QoS ポリシーに指定した場合、Windows は、SMB ダイレクトをサポートする任意の NIC にこの命令を送信します。この互換性のある NIC は、指定されたポートに基づいてネットワーク トラフィックのフローをフィルターで除外します。

  • ワイルド カードを使用すると、フィルターで除外または分類されていないすべてのトラフィックをキャプチャできます。 たとえば、このワイルド カード フィルターを使用して、Hyper-V サーバーの役割を実行しているコンピューター上で管理用のトラフィックのクラスを作成できます。

帯域幅管理は、QoS ポリシーで指定できる唯一の操作ではありません。 たとえば、トラフィックに優先順位を設定し、タグ付けすることで、データ センター全体にわたって QoS が適用されるように設定できます。

以前のバージョンの Windows では、ネットワーク パケットの IP ヘッダーでの優先順位のタグ付けがサポートされます。 この優先順位ビットは、Differentiation Service Code Point (DSCP) として知られています。Windows Server 2012 では、802.1p のタグ付けのサポートが追加されています。 802.1p は、レイヤー 2 イーサネット フレームの 3 ビットの優先順位値です。 そのため、RDMA over Ethernet などの非 IP パケットに適用されます。

RDMA などのワークロードでは、ロスレス転送が必要になります。 RDMA をイーサネット上に直接構築した場合 ("RDMA over Converged Ethernet" と呼ばれます)、イーサネット転送をロスレスにする必要があります。 これまでは、802.3 Pause フレームに依存するリンク レベルのフロー制御を解決先として利用してきました。 しかし、リンク レベルのフロー制御では、Head of Line Blocking などの問題が発生します。

この問題は、IEEE (Institute of Electrical and Electronics Engineers) の DCB ワークグループによって定義された 1 つの標準である、優先順位ベースのフロー制御 (PFC) によって解決することができます。Windows Server 2012 では、NIC によってサポートされている限り、PFC を有効にすることができます。 イーサネット リンクの両端で (優先度値で示される) ROCE に対して PFC を有効にした場合、ROCE 用に指定された仮想リンクのみがロスレスになります。また、同じ物理リンク上の他のワークロードで Head of Line Blocking 問題は発生しません。

Windows Server® 2012 の QoS は、ネットワーク管理者が物理ネットワークおよび仮想ネットワーク上のネットワーク トラフィックを管理する場合に役立ちます。 ポリシー ベースの QoS は、物理ネットワーク上のトラフィック管理用に設計されています。 Hyper-V QoS と呼ばれる QoS の新機能を使用すると、仮想ネットワーク上のトラフィックを管理できます。

ポリシー ベースの QoS を使用すると、物理ネットワーク上のネットワーク トラフィックを管理できます。 ポリシー ベースの QoS では、アプリケーションの種類、ユーザー、コンピューターに基づいてネットワーク帯域幅を制御できます。 ポリシー ベースの QoS を使用してトラフィックを管理することで、帯域幅コストの制御、帯域幅プロバイダーまたは部署とのサービス レベルのネゴシエートを行うことができ、エンド ユーザー エクスペリエンスも向上します。 ポリシー ベースの QoS はグループ ポリシーに組み込まれているため、既存の管理インフラストラクチャの一部です。したがって、実装に関するコスト効果の高いソリューションです。

ポリシー ベースの QoS の機能は次のとおりです。

  • トラフィック フローに対する最小帯域幅の適用。5 組のトラフィック フィルターでトラフィック フローを識別します。

    System_CAPS_noteメモ

    "5 組" は、伝送制御プロトコル/インターネット プロトコル (TCP/IP) 接続を構成する 5 種類の異なる値のセットを示す、コンピューター ネットワーク用語です。

  • フィルター処理されたパケットに対して最小帯域幅、最大帯域幅、802.1p (DSCP: Differentiated Services Code Point) マーキングを適用する QoS ポリシーの構成および照会 (表示)。WMI または PowerShell を使用します。

    System_CAPS_noteメモ
    • DSCP は、コンピューター ネットワーク内の IPv4 または IPv6 ヘッダーのフィールドの 1 つです。

    • 802.1p は、トラフィックの優先順位付けと動的マルチキャスト フィルタリングをレイヤー 2 スイッチで実現する、Institute of Electrical and Electronics Engineers (IEEE) の仕様です。

  • 802.1p 値のタグをパケットに付ける Extended Quality of Service (eQoS) ポリシーの構成。グループ ポリシー エディターを使用します。

  • ドメインに参加していないコンピューターに対するローカル QoS ポリシーの構成。

詳細については、「ポリシー ベースのサービスの品質 (QoS)」を参照してください。

Hyper-V QoS を使用すると、仮想ネットワーク上のネットワーク トラフィックを管理できます。Windows Server® 2012 では、QoS に新しい帯域幅管理機能が導入されました。この機能により、クラウド ホスティング プロバイダーおよびエンタープライズは、Hyper-V サーバーの役割を実行しているサーバー上の仮想マシンで予測可能なネットワーク パフォーマンスを実現するサービスを提供できます。 Hyper-V QoS では、許容される帯域幅の最大値と最小値の管理がサポートされます。許容される帯域幅の最大値と最大値は、一般的に、それぞれ最大帯域幅、最小帯域幅と呼ばれます。

ホスト環境では、Hyper-V QoS を使用して、顧客との間で同意したサービス レベル アグリーメント (SLA) に基づいて、特定のパフォーマンス レベルを保証することができます。 Hyper-V QoS は、コンピューティング、記憶域、ネットワーク リソースなどの共有インフラストラクチャ上で、顧客が他の顧客から影響を受けたりセキュリティを侵害されたりしないようにする場合も役立ちます。

加えて、エンタープライズ ネットワークで同様の機能が求められる場合があります。 社内で Hyper-V QoS を使用することで、Hyper-V を実行しているホスト サーバー上で複数の仮想マシン ベースのアプリケーション サーバーを実行し、それぞれのアプリケーション サーバーが予測可能なパフォーマンスを発揮することを保証できます。

Hyper-V QoS の機能は次のとおりです。

  • トラフィック フローの最小帯域幅と最大帯域幅を強制します。トラフィック フローは Hyper-V 仮想スイッチのポート番号により識別されます。

  • PowerShell コマンドレットと Windows Management Instrumentation (WMI) のいずれかを利用し、Hyper-V 仮想スイッチごとに最小帯域幅と最大帯域幅を構成します。

  • Hyper-V で複数の仮想マシン アダプターを構成し、仮想ネットワーク アダプターごとに QoS を指定します。

Windows Server 2012 の Hyper-V QoS では、データ センター ブリッジング (DCB) に対応するハードウェアを利用して、複数の種類のネットワーク トラフィックを、それぞれのトラフィックの種類についてサービス レベルを保証しながら、単一のネットワーク アダプターに収束できます。 Windows PowerShell を使用すると、これらの新しい機能を手動で構成できます。また、スクリプトの自動化を有効にして、サーバーがドメインに参加しているかどうかに関係なく、サーバーのグループを管理することもできます。

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