SharePoint 2010: SharePoint アプリケーションを管理する

お使いの SharePoint 環境用にアプリケーションを開発するのは、効率と生産性を保証する最善の方法ですが、いくつかの制御を適用する必要があります。

Steve Wright、Corey Erkes

出典: 『Pro SharePoint 2010 Governance』(Apress、2012 年)

SharePoint 環境用のソリューションを作成することは、多くの点で他の種類のアプリケーションの開発と似ています。重要なのは、予測可能で再現可能プロセスを提供できるように、要求、バージョン、およびアップグレードを管理することです。また、多くの場合、SharePoint アプリケーションを開発するときには、異なる種類のコンポーネントとモジュールを作成します。

SharePoint ソリューションは、"コンテンツ" および "機能" という 2 つの主なコンポーネントのカテゴリに分けられます。コンテンツは、ページ、リスト、ドキュメントなど、ユーザーが作成して SharePoint に格納するアイテムです。機能は、コンテンツを管理または処理するロジックです。SharePoint サイトをカスタマイズするときには、コンテンツと機能を区別するのが難しくなることがあります。

従来は、エンド ユーザーがコンテンツを作成し、開発者や他の IT 担当者が機能を作成して展開していました。ただし、SharePoint の場合は、ビジネス ユーザーが、ワークフローや InfoPath フォームなどのビジネス プロセスのロジックを含むアイテムを作成する必要があります。

コンテンツとロジックは、格納される場所で区別することもできます。SharePoint では、コンテンツを一連のコンテンツ データベースとして格納します。残念ながら、いくつかのアイテムは、コンテンツ データベースに格納されたアプリケーションのコンポーネントとして管理する必要があり、これも適切ではありません。

SharePoint の管理という目的で、ここではアプリケーションを、作業を一任されたチームが開発、展開、およびアップグレードする一連のコンポーネントと定義します。これには、UI コンポーネント、再利用可能なコンテンツ、ソフトウェア モジュール、ワークフローの定義などが含まれることもあるでしょう。専任のチームが、これらのコンポーネントを作成、テスト、およびパッケージ化して、使用する準備ができたら運用ファームに展開します。

既存の管理方針によっては、組織内の他のチームもこれらの種類のコンポーネントを作成できる場合があります。この場合、SharePoint では、個々に作成されたアプリケーションがファーム全体で問題を引き起こさないように制御できます。

SharePoint プラットフォームでは、異なる種類のカスタマイズに対応したさまざまなツールがサポートされています。また、異なる用途に対応したさまざまなツールもあります。運用環境でのツールの使用を制限するために適用すべき適切な種類の制御もあります。

SharePoint Designer

SharePoint Designer は、豊富な機能を備え、大幅にカスタマイズされた SharePoint ソリューションを設計するのに使用できる Windows クライアント アプリケーションです。SharePoint Designer 2010 は、FrontPage として知られていた製品の最新版です。使用する OS とクライアント コンピューターにインストールされている Microsoft Office のバージョンに応じて、32 ビット版と 64 ビット版のどちらも利用できます。

SharePoint Designer は、主に Web サイトの設計者が使用することを想定しているツールです。SharePoint Designer を使用すると、設計者は、ページ、リスト、ライブラリなどの SharePoint の成果物を詳細にカスタマイズできます。開発者や管理者の役に立つ機能もありますが、SharePoint Designer は、なによりも設計を目的としたツールです。

SharePoint Designer は、ビジネス プロセスのワークフローを作成し、基幹業務データベースと統合して、SharePoint Server プラットフォームでビジネス情報をカスタマイズして提示するのに理想的なツールです。SharePoint Designer 2010 と互換性があるのは、SharePoint Foundation 2010 と SharePoint Server 2010 だけであることに注意してください。

当初、SharePoint Designer (および前身の FrontPage) は、従来型の市販製品として提供されていましたが、2009 年 3 月の時点で、マイクロソフトは SharePoint Designer の販売を停止し、無料で提供するようになりました。32 ビット版64 ビット版をマイクロソフトから無料でダウンロードできます。

SharePoint Designer 2010 は、SharePoint 2010 ソリューションを作成する強力なツールになります。ただし、他の強力なツールと同様に、使い方を誤ると危険な場合があります。SharePoint Designer は、運用環境での使用には適さないことがあります。そのため、SharePoint Server 2010 には、SharePoint Designer ユーザーが実行できる操作を制御する複数の構成オプションが用意されています。

いくつかのオプションでは、SharePoint Designer のアクセスを無効にしたり、実行できる変更処理を制限できます。これらの設定は、SharePoint サーバーの全体管理 Web サイトの [アプリケーションの全般設定] ページで構成できます。[アプリケーションの全般設定] ページで、[SharePoint Designer 設定の構成] をクリックします。このページには、利用可能なオプションと現在の設定が表示されます。

これらのオプションは、Web アプリケーションごとに設定できます。これらのオプションを既定以外の Web アプリケーションで設定するには、フォーム上部のドロップダウン ボックスの一覧からアプリケーションを選択します。[サイト コレクションの管理] ページで、次の SharePoint Designer の設定オプションを確認します。

この Web アプリケーションで SharePoint Designer を使用できるようにする: この設定では、SharePoint Designer の機能を Web アプリケーションにアタッチできるかどうかを制御します。この設定のチェック ボックスをオフにすると、他のすべての設定が無効になります。

サイト コレクションの管理者がページへのサイト テンプレートの適用を解除できるようにする: この設定を有効にすると、SharePoint Designer を標準モードではなく、詳細モードで実行できるようになります。詳細モードで実行すると、ユーザーは、サーバーのハード ドライブに格納されているサイト定義のコンテンツからページを変更することでページを非実体化できます。カスタマイズしたページは、SharePoint のコンテンツ データベースに格納されます。サイト定義ファイルに加えた変更は、デタッチされたページには反映されません。この仕様により、保守の問題が生じることがあるため、注意して使用する必要があります。

サイト コレクションの管理者がマスター ページおよびレイアウト ページをカスタマイズできるようにする: マスター ページとレイアウト ページ (およびテーマ) は、SharePoint でサイトをブランド化するときに中心的な役割を果たします。SharePoint Designer には、これらのページを更新する強力なツールがあります。ほとんどの組織は、サイトのブランド化を厳密に制御することを望んでいます。この設定を無効にすると、運用環境でサイトの外観をロックするのに役立ちます。

サイト コレクションの管理者が管理対象の Web サイトの URL 構造を確認できるようにする: SharePoint Designer では、サイト内のページとフォルダーを調べて再配置できます。これはサイト ユーザーに大きな影響を与えることがあるため、ほとんどの環境では、この機能を制限する必要があります。

SharePoint Designer の Web アプリケーションやサイト コレクションへのアクセスを構成する以外に、サイトに接続するユーザーにはリモート インターフェイスの使用権限が必要です。この権限は、ユーザーに SharePoint Designer、Web サービス、および Web 分散オーサリングとバージョン管理 (WebDAV)、投稿インターフェイスを含むいくつかの種類のリモート インターフェイスへのアクセスを付与します。

リモート インターフェイスの使用権限は、制限付きアクセスと制限付き読み取りを除く、すべての既定の許可レベルに含まれています。他の権限レベルが割り当てられているユーザーは、SharePoint Designer で Web サイトに接続できます。ただし、SharePoint Designer は SharePoint Server で適用されるすべての通常の権限レベルの設定に従います。そのため、SharePoint サイトのアイテムの読み取りや変更の権限が付与されていないユーザーは、SharePoint Designer を使用して、これらの操作を実行することはできません。

Visual Studio

Microsoft Visual Studio 2010 も、SharePoint ソリューションの作成に役立ちます。これは、マイクロソフトのプロフェッショナルな開発環境です。開発者は Visual Studio を使用して、新しい機能、Web パーツ、イベント レシーバー、および SharePoint の "舞台裏" で実行するその他のコードの構成要素を作成できます。Visual Studio は、強力なツールで、開発者以外が使用することは想定していません。

Visual Studio 2010 には、すべての種類の SharePoint の成果物を作成し、パッケージ化して SharePoint に展開するためのテンプレートが数多く用意されています。通常、これらの成果物は、ソリューション パッケージにコンパイルされ、"サンドボックス" または "ファームレベル" の展開物として SharePoint のサーバー ファームに展開されます。ソリューション パッケージは、サーバー ファームにコンポーネントの作業セットをインストールするのに必要なすべての実行可能ファイルとメタデータを含む単一のファイルです。

Visual Studio は、SharePoint プラットフォームでカスタム機能を開発するための主要ツールです。サーバー ファームが不安定になる可能性があるため、Visual Studio は SharePoint サーバーの開発に直接取り組む目的にのみ使用する必要があります。Visual Studio では、運用環境に影響することなく、必要に応じてデバックやソリューションを更新できます。

開発とテストが完了したら、Web インターフェイス、STSADM コマンドライン ツール、または Windows PowerShell スクリプト言語を使用して、コンパイルしたソリューション パッケージを運用ファームに展開できます。

これらのツールは、開発者やビジネス ユーザーのコミュニティ メンバーが、お使いの SharePoint 環境用にカスタマイズしたアプリケーションを開発して展開するのに役立ちます。適切な制御を適用し、必要に応じてアクセス レベルを制限していれば、SharePoint 環境を安全かつ効率的にカスタマイズできます。

Steve Wright

Steve Wright は、米国ネブラスカ州オマハにある Sogeti USA LLC のビジネス インテリジェンス管理部門 (BIM) でシニア マネージャーとして働いています。ここ 20 年、航空管制、金融、保険など、多数のシステムに関与してきました。また、Windows、SharePoint、SQL Server、BizTalk など、マイクロソフト製品に関する多数の書籍の執筆とテクニカル レビューを行ってきました。

Corey Erkes

Corey Erkes は、米国ネブラスカ州オマハにある Sogeti USA LLC でマネージャー コンサルタントとして働いています。SharePoint の実装のさまざまなライフ サイクルで、多数の企業を支援してきました。また、彼は、Omaha SharePoint Users Group の創設メンバーの 1 人です。

©2012 Apress Inc. All rights reserved.Apress の許可を得て掲載しています。Copyright 2012. 『Pro SharePoint 2010 Governance』(Steve Wright と Corey Erkes 著) この書籍と類似書籍の詳細については、apress.com (英語) を参照してください。

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