何でも屋: スクリプト要らずの自動化の接着剤

System Center Orchestrator 2012 では、コードやスクリプトを 1 行も記述することなく、Runbook を使用して活動や作業を自動化できます。

Greg Shields

マイクロソフトが "接着剤" と呼んでいるものがあります。これは "あらゆるものの自動化" と呼ぶこともできます。Windows PowerShell スクリプトが注目の的になっていますが、System Center Orchestrator 2012 は、働きすぎの何でも屋である IT 担当者に、きわめてシンプルで実質的にスクリプトが要らない自動化の機能を提供します。

信じられませんか。それもそうでしょう。System Center Orchestrator 2012 は大規模な製品で、皆さんが管理している環境は小規模であるか、大規模な環境のほんの一部かもしれません。System Center Orchestrator 2012 のようなエンタープライズ ソリューションで、他のレベルの作業を困難にすることなく、あるレベルで皆さんの作業をどのように簡略化できるのでしょうか。

その答えは、System Center Orchestrator 2012 が自動化 Runbook を構築するためにまとめた活動のコレクションにあります。既定で、System Center Orchestrator 2012 の活動は、ディスクにおけるファイルの作成、編集、および再配置、システム動作の監視、およびリモート システムにおける幅広い種類のカスタマイズ可能な活動の開始に役立ちます。このすべて作業を行うために、コードは 1 行も必要ありません。小規模な環境でも、System Center Orchestrator 2012 は役に立つでしょう。クリックとドラッグ操作だけで、ほとんどなんでも自動化できます。

構築する価値があるパイプライン

Windows PowerShell を使用すると、すぐにそのパイプラインの威力に気付くでしょう。Windows PowerShell のパイプラインは、データにオブジェクト指向の柔軟性をもたらします。一連のコマンドレットを組み合わせて使用すると、情報の収集とフィルター処理、情報の整理、および実行結果のデータに対する後続処理を簡単に実行できます。ただ、Windows PowerShell の場合は、目的を達成するのに適切なコマンドレットを見つけるのが困難なことがあります。こうしたコマンドレットを集めるには追加の労力が必要となる場合があり、便利さを感じられなくなることがあります。

System Center Orchestrator 2012 の活動と Runbook により Windows PowerShell のコマンド ラインからコマンドを取り除きます (図 1 参照)。図 1 の例では、リンクで結ばれた 6 つの活動があります。それぞれの活動では、ターゲット コンピューターで実行する操作を定義しています。それぞれのリンクは、活動を結ぶ矢印で表されており、活動の操作順序を定義します。この Runbook では、コンピューターがネットワークに接続していることを検証し、ネットワーク ドライブをマッピングし、ファイルをコピーし、ログ ファイルに 1 行追加し、電子メールを送信して Rubbook の実行結果 (成功または失敗) を報告します。

操作と操作の順序を定義する System Center Orchestrator 2012 の Runbook
図 1 操作と操作の順序を定義する System Center Orchestrator 2012 の Runbook

[Activities] (活動) ツール バーから System Center Orchestrator 2012 の Runbook Designer に活動を直接ドラッグ アンド ドロップできます。次に各活動のプロパティをカスタマイズし、その活動で実行することを定義します (図 2 参照)。リンク自体にもプロパティがあります。多くの場合、リンクのプロパティでは、それぞれの活動が終わった後に Runbook の実行を継続するか停止するかを決める一連の条件を定義しています。Append Line (行の追加) 活動は、2 つの Send Mail (メールの送信) という後続の活動にリンクしています。1 つ目の活動は前の活動が正常に行われたときに電子メールを送信するように構成されており、2 つ目の活動は前の活動が失敗したことを報告するように設定されています。

ネットワーク パス プロパティをマッピングできる Runbook
図 2 ネットワーク パス プロパティをマッピングできる Runbook

System Center Orchestrator 2012 の自動化が "接着剤" と呼ばれるのは、活動により、ほぼ無制限に Runbook の操作をカスタマイズできるためです。[Activities] (活動) ツール バーで公開されていない操作は、Windows PowerShell も含め、あらゆるコマンド ラインから構築できます。

Windows PowerShell が、多くの活動の負担になることを心配する必要はありません。System Center Orchestrator 2012 の活動のライブラリは、統合パックを使って拡張できます。System Center Operation Manager の監視範囲を拡張するのに使用する管理パックと同様に、System Center Orchestrator 2012 の統合パックは、特定の目的を達成するための新しい活動を追加します。図 3 に、System Center Virtual Machine Manager (VMM) 2012 の統合パックで追加されたいくつかの活動を示します。ご覧のとおり、これらの操作は、特に VMM で仮想マシン (VM) を管理するのに必要な作業に焦点を当てています。

System Center Virtual Machine Manager 2012 における仮想マシンの管理に焦点を当てた統合パック
図 3 System Center Virtual Machine Manager 2012 における仮想マシンの管理に焦点を当てた統合パック

統合パックは、ただの新しい動詞ではなく、System Center Orchestrator 2012 とお使いの外部ソリューションを統合するものでもあります。VMM 2012 統合パックの構成エディターでは (図 4 参照)、System Center Orchestrator 2012 のインフラストラクチャ全体に統合パックを登録または展開するプロセスの一環として、利用可能な VMM サーバーに接続情報を提供します。

統合パック自体に統合を集中することにより、活動オブジェクトから Runbook を構築するのに必要な手順が大幅に簡略化されます。登録された統合パックのオブジェクトは、リモート サーバーで実行するように構成されているので、必要なのは、活動を接続することだけです。

編集可能な System Center Virtual Machine Manager 2012 統合パックの構成
図 4 編集可能な System Center Virtual Machine Manager 2012 統合パックの構成

作成者よりもひそかに長生きする

非常に小規模な環境でも享受できる System Center Orchestrator 2012 の最大のメリットは、Windows 環境の運用を継続するすべての自動化の集中だと言えるでしょう。スクリプトを作成したことがある方なら、スクリプトが IT 環境にとってどれほどもろ刃の剣となり得るかをご存じでしょう。スクリプトは手間のかかる手動による Windows の管理作業を自動化するのにたいへん役立ちますが、多くの場合、スクリプトの処理内容はサーバーを運用し続けるための日々の作業の中で見失われてしまいます。

このようなスクリプトは、スクリプトの作成担当者よりも長く存続することさえあります。スクリプトを熟知した管理者が異動になった場合、持ち主のいない自動化スクリプトが取り残されます。これは、放置されたスクリプトが機能しなくなったときに大混乱が起こり得る問題です。

System Center Orchestrator 2012 は、スクリプトの実行を 1 台のサーバーに集中することで、スクリプトが分散するという問題を取り除きます。スクリプトは、System Center Orchestrator 2012 のサーバーで実行されます。活動は単一の Web ベースの Orchestrator Console で管理できます (図 5 参照)。自動化のカスタム スクリプトを統合することで、何年もたってから長い間放置されて処理内容がわからない自動化スクリプトを追跡しなければならない連絡を受けることがなくなります。

自動化の管理に役立つ Web ベースの Orchestrator Console
図 5 自動化の管理に役立つ Web ベースの Orchestrator Console

セルフサービスの自動化

System Center Orchestrator 2012 自体も強力ですが、System Center Service Manager 2012 と統合すると自動化ツールキットがさらに有益なものになります。図 2 の新しい VM Runbook をもう一度見てみましょう。この一見シンプルな Runbook には 2 つの活動が含まれています。後者の操作では、VMM でテンプレートから新しい VM を作成します。

このシンプルな自動化は、Runbook の 2 つ目の活動を 1 つ目の活動と組み合わせるまでは不要に思うかもしれません。1 つ目の活動である Initialize Data (データ初期化) は、実行時に受信データを追加するためのプレースホルダーです。Initialize Data (データ初期化) のプロパティ ウィンドウ (図 6a 参照) と、Create VM from Template (テンプレートから VM を作成) 活動のプロパティ ウィンドウ (図 6b 参照) では、左側で Cloud および VMName という 2 つのパラメーターを作成します。これらのパラメーターは、どちらも文字列型になります。これらのパラメーターには、2 つ目の活動が VM を作成するときに、ウィンドウの右側で Destination と VM Name に使用する値が含まれています。

Initialize Data (データ初期化) のプロパティ ウィンドウ
図 6a Initialize Data (データ初期化) のプロパティ ウィンドウ

Create VM from Template (テンプレートから VM を作成) 活動のプロパティ ウィンドウ

図 6b Create VM from Template (テンプレートから VM を作成) 活動のプロパティ ウィンドウ

この方法で Runbook を作成すると、System Center Service Manager 2012 でサービス要求を作成するときに詳細を文書化できます。このプロセスには、System Center Service Manager 2012 と System Center Orchestrator 2012 の統合を含む一連の追加手順が必要になります。また、System Center Service Manager 2012 で、必要なテンプレート、サービス要求、およびサービス提供のオブジェクトを作成する必要もあります。これらの手順については、来月号のコラムで紹介します。

最もすばらしいと思われるのは、System Center Orchestrator 2012 と System Center Service Manager 2012 を接続することで得られる最終的な結果でしょう。サービス要求の完全な自動化を実現できます。いくつかの追加の手順を実行すれば、実行に移す前に、ビジネスで必要なあらゆる承認ルートを自動化することもできます。

万人のための接着剤

System Center は包括的で大規模なエンタープライズ プラットフォームだと考えるかもしれませんが、小規模な環境でも同様に効果を発揮します。自動化できる手動による作業は必ず存在します。このような作業を自動化することで、働きすぎのスタッフがより付加価値のある作業に取り組めるようになります。さらに良いことに、長くて厄介な Windows PowerShell スクリプトを必要とせず、すばやく自動化を実現できます。

System Center Orchestrator 2012 は、Windows PowerShell の次の時代を切り開くと言えるでしょう。System Center Orchestrator 2012 の視覚的でオブジェクト指向のインターフェイスは、あらゆるものの完全な自動化を実現します。

Greg Shields

Greg Shields (MVP) は、Concentrated Technology の共同経営者です。何でも屋である IT 担当者向けのヒントとテクニックについては、ConcentratedTech.com (英語) を参照してください。

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