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Exchange Server 2013: すばらしきアーカイブ

アーカイブ メールボックスを設定すると、Exchange Server ユーザーは容量の制限と保持ポリシーを回避できます。

Brien M. Posey

見方によっては、Exchange Server インフラストラクチャの担当者とユーザーは、常に対立関係にあると言えます。ほとんどのユーザーは、すべての電子メール メッセージを無制限に保存できることを望んでいますが、Exchange Server では、各メールボックスの容量に実質的な制限を設ける必要があります。

ユーザーがどのように考えているかに関係なく、悪意があってメールボックスの容量を制限しているわけではありません (通常はそうではありませんが、そういうこともあります)。そうではなく、メールボックスの容量を制限するのには重要な理由があります。1 つは、メールボックスのデータベースが、許容範囲を超えて増大しないようにする必要があるためです。データベースのサイズは、バックアップや復元などのデータベースの保守タスクを効率的に実行する能力に直接影響します。

データ ストレージのコストについても考慮する必要があります。Exchange Server 2010 では、データベースの I/O を少なくすることに重点を置いて設計されたデータベース アーキテクチャを使用しているので、一般的なストレージ ハードウェアを使用できます。Exchange Server 2013 では、データベースの I/O 要件がさらに減少し、一般的なストレージの実用性がさらに高まっています。一般的なストレージの実用性が高まったと言っても、ストレージにはコストがかかります。Exchange Server を管理しているときには、パフォーマンスや信頼性の問題から、高パフォーマンスのストレージを一般的なストレージと取り替えるのは気が引けることも多いでしょう。

従来のソリューションでは、ユーザーがメールボックスに格納できるメールの容量を制限する方法として、メールボックスのクォータが実装されていました。このアプローチには、しばしば正当な業務上の理由から、特定のユーザーが、クォータで許可されているより多くのメールを格納する必要が生じるという問題がありました。

メールの有効期限ポリシーを設定した場合も、同様の根本的な問題が生じていました。一部のユーザーは指定された保持期間より長い間、メッセージを保持しなければならないことがあります。

アーカイブへ

このような問題に対処する方法の 1 つとして、アーカイブ メールボックスを使用できます。アーカイブ メールボックスは、ユーザーが、長期間保持する必要があるメッセージを格納できる 2 次的なメールボックスです。管理の観点では、アーカイブ メールボックスを使用すると、いくつかの問題が解決します。

1 つは、アーカイブ メールボックスは比較的静的であることです。ユーザーは必要に応じてアーカイブ メールボックスにメッセージを移動します (またはポリシーによって、メッセージが自動的に移動されることもあります)。しかし、アーカイブ メールボックスは、当然のことながらメールを送受信するための主要なメカニズムではありません。

そのため、アーカイブ メールボックスでは、運用メールボックスよりディスク I/O の負荷が大幅に少なくなります。オーバーヘッドが小さいということは、一般的に、アーカイブ メールボックスは、パフォーマンスへの影響を心配することなく、低価格で大容量のストレージに保存できると言えます。

他の種類のメールボックスと同様、アーカイブ メールボックスは、メールボックス データベースに存在しています。アーカイブ メールボックスはユーザーのプライマリ メールボックスと同じデータベースに保存することが可能ですが、アーカイブされたメッセージによってプライマリ ストレージの容量が消費されないように、通常、アーカイブ メールボックスは別のデータベースに格納されます。ただし、Exchange Server 2013 では、アーカイブの実行がプレミアム機能として位置付けられていることに注意してください。プレミアム機能を実行する場合、ユーザーは Enterprise クライアント アクセス ライセンス (CAL) が必要となります。

アーカイブ データベースを作成する

Exchange Server には、アーカイブ データベースというものは存在しません。アーカイブ メールボックスは、標準的なメールボックス データベースに存在しています。アーカイブをユーザーのプライマリ メールボックスと分けて保存する予定であれば、まず、アーカイブ メールボックスを格納する専用のメールボックス データベースを作成する必要があります。

Exchange 管理センターを開くと、Exchange Server 2013 にメールボックス データベースを作成できます。Exchange 管理センターが開いたら、[サーバー] タブをクリックし、コンソール上部の [データベース] をクリックします。この操作を行うと、既存のデータベースの一覧が表示されます。

新しいメールボックス データベースを作成するには、[+] アイコンをクリックします。このアイコンをクリックすると、[新しいデータベース] ダイアログ ボックスが表示されます (図 1 参照)。データベースの種類の指定について心配する必要はありません。Exchange Server 2013 では、メールボックス データベース以外のものを作成するオプションはありません。

Exchange 管理センターで新しいメールボックス データベースを作成する

図 1 Exchange 管理センターで新しいメールボックス データベースを作成する

データベースの名前を入力し、データベースの作成を始めます。データベースの目的を表す説明的な名前を使用する必要があります。次に、[参照] ボタンをクリックし、データベースを保存する Exchange Server の名前を指定します。

データベースは、データベース可用性グループ (DAG) のメンバー サーバーに作成できるので、組織内の他の Exchange Server にデータベースを複製することができます。アーカイブ データで高価なストレージがいっぱいになるのを防ぐため、多くの場合、アーカイブは DAG のメンバーではないメールボックス サーバーに格納されます。

次は、データベース ファイルのパスとトランザクション ログのパスを指定します。Exchange Server の既定の設定では、データベースとトランザクション ログの両方が C ドライブに保存されるようになっていますが、データベースとトランザクション ログは別のディスクに格納する必要があります。というのも、データベースを格納しているディスクで障害が発生し、バックアップを復元する必要が生じた場合には、トランザクション ログを使ってデータベースを現在の状態に戻すことができるからです。パスを指定したら、[保存] をクリックして、データベースを作成します。

アーカイブ メールボックス を作成する

データベースの作成は、最初の 1 歩に過ぎません。次は、アーカイブの実行を有効にする必要があります。アーカイブの実行を有効にするには、[受信者] タブをクリックします。次にコンソール上部のメールボックスをクリックします。ここで、アーカイブの実行を有効にするメールボックスを選択します。メールボックスを選択すると、メールボックスの右側のペインにメールボックスの機能一覧が表示されます。[インプレース アーカイブ] セクションの [有効にする] をクリックします (図 2 参照)。

[インプレース アーカイブ] セクションの [有効にする] をクリックしてアーカイブの実行を有効にします

図 2 [インプレース アーカイブ] セクションの [有効にする] をクリックしてアーカイブの実行を有効にします

[create archive storage] (アーカイブ ストレージを作成する) ダイアログ ボックスが表示されます (図 3 参照)。[参照] ボタンをクリックし、ユーザーのアーカイブ メールボックスを格納するデータベースを選択します。[OK] をクリックして、アーカイブ メールボックスを作成します。

アーカイブ メールボックスを作成するデータベースを指定します

図 3 アーカイブ メールボックスを作成するデータベースを指定します

複数のアーカイブ

ほとんどの場合、複数ユーザーのアーカイブ メールボックスを作成する必要があります。アーカイブ メールボックスを 1 つずつ作成するのが効率的でないのは明らかです。Windows PowerShell を使用して複数のアーカイブ メールボックスを作成する処理をスクリプト化できます。Windows PowerShell を使い慣れていない場合は、Exchange 管理センターに複数のアーカイブ メールボックスを作成する別の方法が用意されています。

その処理は、先ほど説明した手順とほとんど同じで、異なるのは 1 名の受信者ではなく複数の受信者を選択することだけです。複数の受信者を選択すると、受信者一覧の右側のペインには、図 2 と異なるオプションが表示されます。[インプレース アーカイブ] セクションは依然として存在しますが、このセクションにアクセスするには一覧の一番下までスクロールし、[More Options] (詳細の表示) をクリックする必要があります。

ユーザーのアーカイブ メールボックスを作成すると、Outlook または Outlook Web App では、アーカイブ メールボックスは、個人用アーカイブとして表示されます (図 4 参照)。ユーザーが個人用アーカイブをクリックすると、アーカイブされたメッセージを参照できるようになります。ユーザーは、受信トレイから個人用アーカイブに手動でメッセージをドラッグすることもできます。

Outlook Web App で表示したときのアーカイブ メールボックス

図 4 Outlook Web App で表示したときのアーカイブ メールボックス

本来、個人用アーカイブは、メールボックスのクォータの制限を回避するために作成します。にもかかわらず、アーカイブ メールボックスは標準的なメールボックス データベースに格納されています。既定では、Exchange Server 2013 のメールボックス データベースには制限が設定されています。データベースの制限を変更するには、アーカイブ メールボックスを含むデータベースを選択し、[Edit] (編集) をクリックして、次に [Limits] (制限) をクリックします (図 5 参照)。この手順を実行すると、データベースの制限を手動で構成できます。

データベースの制限は設定または削除できます

図 5 データベースの制限は設定または削除できます

自動アーカイブ

自動アーカイブの手法を使用して、保持する必要のあるアイテムを格納するのに使えるアーカイブ専用メールボックスをユーザーに提供できます。ただし、重要なメッセージを受信トレイから個人用アーカイブに移動するかどうかはユーザー次第です。組織によっては、アーカイブの処理を自動化するのが効果的な場合もあります。メッセージング レコード管理を使用すると、アーカイブの処理を自動化できます。

受信トレイなどの既定フォルダーに保持ポリシー タグを割り当てると、メッセージング レコード管理が作用します。通常、手動でタグ付けされていないアイテムの保持に使用するメールボックスには、既定ポリシー タグを適用する必要があります。ただし、ユーザーは保持する必要がある個々のアイテムに個人タグを割り当てることができます。

保持タグは、データが保持される方法を管理する一連のポリーシーの要素だと考えることができます。保持ポリシーは保持ポリシー タグの集合体です。メールボックスに保持ポリシーを適用すると、管理フォルダー アシスタントにより、定期的にメールボックスのコンテンツが分析され、適用した保持ポリシーに従ってメッセージが処理されます。保持ポリシーの展開の詳細については TechNet ライブラリの記事「チェックリスト: アイテム保持ポリシーの展開」を参照してください。

メッセージの保持に関して言えば、ユーザーの業務上の要件が IT 部門のポリシーと相容れないことはよくあります。アーカイブ メールボックスは、Exchange Server 環境のプライマリ ストレージに影響を及ぼすことなく、ユーザーに長期間使用できるストレージ機能を提供する効果的なソリューションです。

Brien M. Posey

Brien Posey は、MVP であり、数千件の記事と数十冊の書籍を執筆した実績のあるフリーランスのテクニカル ライターです。Posey の Web サイトのアドレスは brienposey.com (英語) です。

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